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作成年月日:2017年8月3日

海外情報プラス

海外情報−中国7月分

作成者:中国 上海 杉川 英哲
分野:人事・労務、その他(企業経営)

フレックスタイム制度の導入について

 

働き方改革の迅速な推進

今年5月に本欄で「働き方改革」を検討中の企業についてレポートさせて頂きました。2社の事例をご紹介しましたが、うち1社は既に8月から具体的な施策を実施することが決定しています。上海郊外の日系メーカーですが、具体的な施策として表題のフレックスタイム制度を導入します。ご存じの通り、フレックスタイム制度とは従業員自身が一定の時間帯において、始業と終業の時刻を設定することができる労働時間の制度です。事例としてあらためてご紹介させて頂きます。

フレックスタイム制度導入のメリットと目的

従業員にとってフレックスタイム制度の導入がもたらす最大のメリットは、自分の生活スタイルや家庭環境などを考慮して就業時間を設定することにより、いわゆるライフ・ワーク・バランスを主体的にコントロールできることでしょう。計画的に時間を活用して業務を行う必要があるため、業務の効率化や責任に対する意識の向上が期待できます。従来は休暇を取得しなければできなかった平日の私事を就業時間の調整によって出勤日に処理したり、また、平日にまとまった時間を確保して自己啓発のための学習に充てることなどが可能となります。

同社としては、単なる従業員満足度の向上だけではなく、個々の従業員の意識の向上や、業務効率化による残業の削減などの効果を目的としています。同社では事業の成長に伴い残業が増加していたため、業務の効率化を図る必要があったためです。(同社におけるフレックスタイム制度導入と残業削減の関係は後述します。)

試行期間の設定

フレックスタイム制度に限らず、新たな人事施策を実施する際の重要なポイントは「試行期間」の設定です。同社でもフレックスタイム制度の導入には2ヶ月間の試行期間を設定しました。フレックスタイム制度の説明会において、「状況に応じて試行期間中に制度の内容を修正する可能性」や「効果が認められないと会社が判断した場合には、随時、制度を廃止する可能性」があることを従業員に明示しています。これにより、従業員が制度の内容を履き違えることを防止し、フレックスタイム制度の本来の導入目的を実現ためのメンタル面でのブレーキとしているのです。もちろん、事前に様々なケースを想定し、従業員が制度を履き違えないための項目もあらかじめ制度に盛り込んでいます。

フレックスタイム制度におけるコアタイム

一般的なフレックスタイム制度では、必ず「コアタイム」を設定します。コアタイムとは会社が設定する必ず就業しなければならない時間帯のことです。例えば、コアタイムが午前10時から午後3時の場合、この時間帯には全従業員が就業しているということです。同時にコアタイムの開始時間である午前10時が最も遅い出勤時間であり、同じく終了時間である午後3時が最も早い退勤時間となります。 一日の所定就業時間から、このコアタイム(休憩時間を除く)を引いた時間がコアタイム以外に従業員が個別に設定できる就業時間となります。仮に12時からの1時間を休憩時間とすると、コアタイムの就業時間は5時間となり、一日の所定就業時間が8時間の場合、残りの3時間を次の例のようにコアタイム前後に配分することになります。 (所定就業時間8時間−コアタイム5時間=3時間=従業員自身が設定する就業時間) (例1)午前7時に出勤、コアタイムまで3時間就業し、コアタイム終了の午後3時に退勤。 (例2)午前10時に出勤、コアタイム後に3時間就業し、午後7時に退勤。 もちろん、3時間を午前と午後に分けて配分することも可能です。因みに同社では、従来、15分単位で就業時間の管理を行っていましたが、管理上の便宜を考慮し、フレックスタイム制度の導入を機に30分単位に変更します。

就業時間設定の基本ルール

フレックスタイム制度における個々の就業時間の設定には最低限のルールが必要です。同社では導入に際し、次の基本ルールを定めました。

@ チームで協力して行う業務は、他のメンバーと相談しながら就業時間を設定する。

A 顧客や取引先の業務の都合を考慮して就業時間を設定する。

B 就業時間は1週間前に社内のシステム上で申告する。

C 当日の就業時間の変更は認めない。

D 業務状況により、会社が就業時間を指定或いは変更する場合がある。

非常にシンプルですが、要点を押さえたルールとなっています。また、総経理はフレックスタイム制度の導入により新たな管理工数を増加させないことも考慮されています。シンプルなルールで運用を開始することで、従業員が受け入れ易く、すぐに意識の向上に繋がると考えられています。

計画的な時間配分で残業時間を削減

同社の業務では、製品の外注加工が多い点が特徴のひとつです。これらの業務に伴い発生する「製品の到着を待つ時間」が残業増加の大きな原因にもなっていました。外注先における手直しや配送中の交通事情により、製品の到着が予定時間から遅れることは避けることができませんが、この状態が恒常化すると、必然的に残業が増加してしまいます。フレックスタイム制度の導入により、従業員が外注先からの「製品到着予定日」の出勤時間を遅めに設定できるようになれば、製品到着を待つ時間が減少するだけでなく、製品到着後の就業時間が増加し、残業の減少に繋がるのです。

出張や業務外出における就業時間

また、同社では客先での据え付け・調整業務も多く、自己運転車による自宅からの直行直帰の日帰り出張が多いことも特徴です。従来、日帰り出張における就業時間は、一日の所定就業時間はそのままで、移動時間を残業として取り扱うという管理を行っていましたが、フレックスタイム制度の導入を機に、自宅からの出発時間を出勤時間、自宅への帰着時間を退勤時間とすることにしました。これにより、移動時間を含め8時間前後の就業時間で完了する日帰り出張業務では残業時間を削減できることとなります。(ただし、日帰り出張手当は従来通り適用されます。)

 

総じて、フレックスタイム制度説明会での従業員の反応は歓迎ムードが強く、特に子供を持つ女性従業員は、幼稚園や学校の時間帯に合わせて勤務時間を設定できると笑顔で説明を聞いていました。

勿論、働き方改革は制度導入がゴールではありませんので、同社の従業員の皆さんには試行期間を利用し、早くフレックスタイム制度に慣れ、業務効率化や残業削減という次のステップに進みながら、仕事と生活の調和を図って頂きたいものです。最後に同社の総経理の言葉を引用させて頂きます。

「最初はいろいろ(問題が)出ると思いますが、しばらく我慢して見てゆきます。フレックスタイムを導入するかしないかで今後の従業員の成長が大きく違ってくるはずですから。フレックスタイム制度により従業員が会社の主体として自主性を高めてくれることを一番に期待しています。」

業界や企業によってケースは異なりますが、ご参考にして頂ければと思います。

 

以 上