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作成年月日:2017年10月16日

海外情報プラス

海外情報−中国9月分

作成者:中国 上海 杉川 英哲
分野:人事・労務

賃金テーブルの改定についてA

 

はじめに

ちょうど昨年の同じ時期に賃金テーブルの改定についてレポートしました。中国ではこの時期、最終四半期を迎えており、今年もやはり賃金テーブル改定の問題で悩まれている企業があるようです。

賃金テーブル改定必要性の背景

次年度の事業計画や予算作成に取り組む際、多くの場合は中期計画と今期の実績落着を比較し、来期の数値目標を検討されるかと思います。

同時に現有の人的資源(従業員)で数値目標が達成できるかという問題を検証する必要が出てきます。特にプロフィット部門の従業員については、今年度の実績や成長度を踏まえ、次年度にどのような貢献を期待するかを具体的な計画に落とし込んでゆくことが不可欠です。

従業員の今年度の個別評価はもう少し先の時期になりますが、予算作成の要素として、前年度の平均昇給率や昇給額を参考に昇給と人件費の仮予算を作成するのが一般的な方法だと思います。この過程で今年度の貢献度において、特に気になる或いは気にすべき従業員が出てくるものです。

企業によって様々なケースがあると思いますが、この検討過程において昇給の整合性を賃金テーブルで確認することとなり、あらためて現行の賃金テーブルの問題点を認識し、改定を検討する機会となっていることが考えられます。従業員の貢献状況に応じた昇給の考え方と賃金テーブルの問題点を見て参りたいと思います。

 

今年度の業績や活動に大きく貢献している従業員

次年度への期待やモチベーションの維持向上も考慮し、比較的大幅な昇給が必要と感じられるケースです。業績や活動に大きく貢献できた要因は様々ですが、客観的な数値による貢献の根拠が存在する以上、昇給に反映してあげなければなりません。急速に成長したモチベーションの高い若手従業員に多くみられるケースです。若手従業員の場合、従来の給与レベルがあまり高くないこともあり、昇給には昇級(昇格)が必要となります。ここで大幅な昇給は必要だが昇級にはまだ要件不足という賃金テーブル上の問題が発生し易くなっています。

 

退職されては困る従業員

評価が高く、会社にとって不可欠な従業員であることを目に見える「昇給」でも本人に伝える必要があるケースです。数的には多くありませんが、各社に1名ないし2名はいると思います。既に経営層や管理層になっている従業員に発生し、多くの場合、等級は年俸制度の対象となっています。年俸制度で柔軟に対応できる反面、具体的な昇給根拠が示し難いという問題が存在しており、毎年、同業界或いは同職位の賃金レベルや昇給率を調査して決定している企業もあります。

 

昇給や労働契約更新でもめたことのある従業員

次年度の昇給、労働契約更新の際に、再度もめる可能性が高いと感じられるケースです。毎年のようにもめているという従業員も存在するのではないでしょうか。先日も日系専門商社で同様のご相談がありました。

そもそも会社と従業員で目標や課題を共有できていないことが多く、それが原因となり双方の評価にギャップが生じます。業績や活動が数値で評価し難く、職能に対する要求の変化が少ないノンプロフィット系職種の従業員に発生し易く、一般的な等級を基準に作成された賃金テーブルの場合、平均的な昇給率が続くと数年間で賃金テーブルの上限に達してしまう点が問題です。昇級による職位や業務の変更ができないために発生しており、賃金テーブルに関する問題のご相談で最も多いケースとなっています。

 

勤続年数が特に長い従業員

今年度の評価だけではなく、勤続年数の長さも考慮して昇給を検討したいケースです。このような従業員は各層、各職種の従業員に存在しており、長期に渡る安定的な貢献は会社にとって非常に貴重な存在ですが、一般的な賃金テーブルでは勤続年数を昇給に反映できず、悩まれている総経理も多いかと思います。賃金制度にあらためて勤続手当を加えることで解決しているケースもあります。

 

継続的に実績や活動に貢献してきたが、今年度は低下している従業員

これまで一定以上の貢献をしてくれていた従業員の貢献度が突然大幅に低下するケースです。貢献度は低くても、賃金テーブル上は若干の昇給でも現等級の上限を超えてしまい、昇級が必要となる場合もあります。賃金テーブルのレンジ設定により、当然発生し得る問題です。

企業によっては上記以外の問題もあるかもしれませんが、総じて、昇給の整合性は賃金テーブルで必ず確認する必要があり、あらためて現行賃金テーブルの問題点を認識されることが多いはずです。

 

賃金テーブルの改定タイミングとポイント

賃金テーブルに関する問題の主な原因は、作成時のままの賃金テーブルをそのまま使用し続けている点にあると言えるでしょう。賃金テーブル作成時と現在では労働市場全体における賃金レベルにギャップが生じているためです。賃金テーブルを5年以上改定していない場合は改定を検討されることをお勧めします。10年以上改定していないケースでは絶対に改定が必要です。特に、近年従業員を募集しても採用できない企業、賃金を理由とした退職者が多数発生している場合、賃金テーブル改定が必要なサインだと言えるでしょう。

 

賃金テーブルは改定するタイミングも非常に重要であり、昇給と同時に行うのが最もスムーズです。昇給検討時に浮かび上がった問題を賃金テーブルの改定により解決できるだけでなく、年度末の評価面談等において、従業員のモチベーションを向上させる材料として活用できるためです。タイミングを逸しないため、董事会への申請や本社との協議等もこれに先駆けて進めておくよう注意が必要です。

 

最後に賃金テーブル改定のポイントです。先ずは下記の方法による昇級の試算をお勧めします。

@ 各等級の賃金レンジの見直し

 →下位等級から見直しを進めるとスムーズです。

A 各等級の賃金上下限を重ねる

 →「昇給のための昇級」を減少できます。

B 各種手当の追加

 →賃金テーブルを補完できます。

 

業界・会社によってケースは異なりますが、実例としてご参考にして頂ければと思います。

 

以 上