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作成年月日:2017年11月13日

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海外情報−中国10月分

作成者:中国 上海 杉川 英哲
分野:人事・労務

人事制度におけるコンピテンシーについて

 

はじめに

中国では第4四半期も中盤に入り、企業が来期に向けた様々な施策を具体的な計画に落とし込む時期を迎えています。人事制度の見直しや導入についても、この時期に独自に或いは本社と協力をしながら来期に向けた取り組みを進めている企業が多くなっています。

評価基準の見直し

人事制度の見直しを行っている日系企業の総経理や董事長、或いは本社の人事担当者とお話しをさせて頂くと、評価基準自体の見直しが大きなトレンドになっていると感じます。従来から人事制度が存在し、毎年、ルールに基づいた運用がなされているものの、会社側も従業員側も制度に基づいた評価が現実と合致しておらず、人事制度が形骸化している状況が課題になっています。

特に目標管理制度において、評価項目の内容と評価基準が目標達成とどのように関連しているかが不明確で、従業員が会社の意図を理解し難い場合が多いように感じます。このようなケースでは必然的に自己評価と評価者の評価ギャップが大きくなり、従業員の不満を招き易くなります。ひいては従業員が制度自体に対し不信感を抱く原因になり、「自分は評価されていない」という会社への不満に繋がっていると言えるでしょう。

コンピテンシーについて

現在、評価基準の見直しを行っている企業では「コンピテンシー」をキーワードにしているケースが増えています。従来はあまり耳にしなかった言葉ですが「行動特性」という理解が一般的で、企業においては「優秀な社員の業務における行動の特性」を指す言葉です。

従来の評価基準は、項目別にあらゆる状況にも当てはめて解釈できるように作成されているケースがほとんどですが、一方では、あらゆる解釈ができてしまうという問題も存在しています。これは企業の従業員評価の考え方と関係しており、会社として理想的或いは標準的な「想像上の従業員」がそれぞれの評価項目において如何にあるべきかを記述したものと言えます。

これに対しコンピテンシーは、実在する優秀な自社の従業員がどのように行動し効果を上げているかを分析し、優秀な社員が優秀である具体的理由を明確にしたものです。自社の優秀な社員と同じ行動ができているか否かを評価基準にすれば、目標達成度との関連を明確に示すことができ、社内に優秀な社員と同じ行動をする社員が増えて、会社全体の業績も向上してゆくという考え方です。評価基準は具体的行動ができているか否かだけです。非常にシンプル且つ明瞭な基準です。また、社員採用の選考基準としても同様に活用でき、優秀な人材を確保するための根拠として利用することができます。

コンピテンシーは意外と当たり前の行動!?

コンピテンシーについて、先般、ある日系販社の人事制度に関するマネージャー会議に参加した際の実例をご紹介します。会議では各部門の優秀な従業員に共通する行動特性をピックアップしていました。

比較的分かり易い例として、連絡業務の行動特性におけるコミュニケーションツールの使用方法がありました。中国では「WeChat」や「QQ」などのSNS、チャットツールが広く普及浸透しており、社内外を含む業務連絡でも頻繁に利用されています。お互いのスマートフォンで直接やり取りができるため、手軽でスピーディーなことが業務連絡にも利用される要因になっています。会議では自らもSNSを業務連絡のツールとして活用しているマネージャーが、そのメリットを発表しており、今後も利用は更に拡大してゆくことでしょう。

一方、業務上のコミュニケーションにおける根拠や機密性についても議論がなされました。この点ではまだまだメールの信頼性が高く、連絡業務に関する各部門の優秀な社員に共通する行動特性として、重要な内容は必ずメールで連絡していることがわかりました。これを連絡業務或いはコミュニケーションの評価項目にすることで、会社全体の連絡業務のレベルを向上させることができるようになります。 コンピテンシーという聞き慣れない言葉から難しく感じられるかもしれませんが、社内の優秀な従業員が効果を上げている行動は特別なことではなく「意外に当たり前のこと」である場合が多いのではないでしょうか。

評価基準の設定

コンピテンシーをもとに評価項目を作成する場合、評価基準は次のように定めるのが一般的です。

 

評価1:全くやっていない。

評価2:少しやっている。

評価3:やっている。

評価4:より良い方法でやっている。

評価5:より良い方法でやっており、他のメンバーにも教えている。

 

先ず、優秀な従業員と同じ行動をやっていれば5段階で3の評価となります。この場合、優秀な従業員と同等の業務成果が上がっているはずです。評価4はより良い方法、つまり、改善や工夫を行い、優秀な従業員と同等かそれ以上の業務成果があがります。評価5は評価4に加え、他のメンバーへの教育が全体の業務レベルの向上にも貢献しているという状態です。前述の例の「重要な内容はメールで連絡している」という評価項目では状況に応じてメールとSNSを併用することが更に高い評価に繋がってゆくと考えられます。やっていれば成果は上がり、やらなければ成果は上がらないという非常にシンプルな評価基準です。やっていても成果があがらないというケースでは、コンピテンシー分析と評価項目の設定に問題があったと言えるでしょう。つまりは方法が間違っていたということですので、次年度の評価項目を設定し直すことが必要となります。

 

今後、このような評価制度を採用する企業は増えてゆくものと予想されますが、ポイントは評価項目と基準が自社の実例に基づくオリジナルであるという点です。業界・会社によってケースは異なりますが、実例としてご参考にして頂ければと思います。

 

以 上


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