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作成年月日:2017年12月8日

海外情報プラス

海外情報−中国11月分

作成者:中国 上海 杉川 英哲
分野:人事・労務、危機管理、その他(企業経営)

日本人現地採用の難航について

 

全体では増加する中国の外国人就業者

11月の《労働報》中で上海市における外国人就業者の人数に関する報道がありました。2016年の統計では上海市で就業する外国人は約21.5万人で中国全体の約24%を占め、国籍別で最も多いのは日本の約2万人、次いでアメリカ約1.8万人、韓国約1万人となっており、うち4万人以上が外資企業で勤務しているという内容でした。依然として日本籍が最も多い状況は変わりませんが、あらためて調べてみると2013年から2014年を境に減少の傾向にあるという見方が主流になっています。確かにこの時期には外交や経済、環境の面で様々な要因があり、中国で就業する日本人が減少する転機になっていた可能性は十分に考えられます。

日系企業でも現地で日本人を採用できない

上述の傾向は日本人の現地採用において顕著に表れています。日本人の現地採用とは、現地法人である日系企業が日本人就業者と現地で直接労働契約を締結する雇用方式です。数年前まで現地採用の日本人は日系企業とのビジネスや製造業における技術指導等に不可欠な存在でした。後にはローカル系、欧米系企業からの需要も高まり、中国での就業を希望する日本人もブーム的に増加したことから、ひとつのカテゴリーとして成立するほど市場が活発化していました。しかし、2014年頃からは日系企業に需要があっても日本人求職者が極端に少ない状況が続いており、直近では募集しても候補者すら現れないというケースが大多数を占めています。

 

ある日系メーカーでは、現在、現地採用で日本人営業担当者を募集しています。人材会社や各種媒体を利用して募集を開始して数ヶ月が経過していますが、いまだ採用には至っていません。本社は上場企業です。取扱い製品は業界トップレベルのシェアを持ち、業務内容は日系企業の営業担当です。待遇条件面が劣っている、勤務地点が遠いといった問題もありません。

 

別の日系商社でも、現在、現地採用で日本人営業担当者を募集しています。同様に本社は上場企業であり、豊富なビジネスリソースを有する名門企業ですが採用活動には全く進展がありません。

 

上述の日系企業2社は、いずれも「現地採用の日本人営業担当の退社に伴う欠員」を「現地採用日本人で補充」しようとしていますが、現在の市場に適切な日本人求職者がおらず採用が難航しています。従来、現地採用の日本人に依存してきた重要業務に影響を与える可能性が次第に増大しており、日本人の現地採用という雇用方式自体を見直す必要にも迫られています。

 

日本人の現地採用について確実に言えることは「中国での就業を希望する日本人が存在しなければ成立しない雇用形式」であることです。企業に現地採用の需要があっても採用ができないという現状は、現地採用で中国での就業を希望する日本人が激減していることを如実に表しています。

 

尚、この状況は中国で就業する現地採用の日本人が全くいなくなったということではありません。まだまだ多くの現地採用の日本人の方々が、それぞれ在籍する企業において、ご本人が十分に満足できる業務内容、待遇条件で長期安定的に就業されていることを補足させて頂きます。

日本人技術者の採用が設計開発の鍵を握っている中国企業

先般、中国大手メーカーの採用責任者とお会いしました。同社では約10年前から同様の製品を生産する日本の大手企業出身の日本人技術者を二桁に上る人数で採用しています。直近の10年間、同社の設計開発は日本人技術者が行ってきたと言える状況ですが、当時採用した日本人技術者の年齢を考慮しなければならない時期に来ているため、「次世代」の日本人技術者を確保するというタスクを抱えています。

しかしながら、実際の採用活動は難航しており、ここ数年は通年募集を行っているにも関わらず、採用活動がほとんど進んでいないのが現状です。以前は業界トップクラスの日本企業の在職者からも応募があり、欲しい人材がスムーズに採用できていましたが、最近は応募者すらいないため、あらためて市場調査を行っているとのことでした。

 

同社の日本人技術者採用が難航している要因のひとつに日本国内の労働市場の変化があります。日本の労働市場は10年前とは大きく変わっており、特に影響が大きいのは労働者の減少と雇用の延長です。10年前は定年退職や早期退職等で50代の現役技術者が中国で就業するケースが多数見受けられました。現在では60代前半まで雇用が延長されており、特に技術者については企業が継続確保したい状況になっていると言えるでしょう。このように雇用不安が薄まることで、中国での就業が日本人技術者のキャリアプランから徐々に外れてきていると考えられます。

 

また、日系企業の海外展開が中国から東南アジア諸国に移行していることも、中国での日本人技術者の採用が難しくなっている要因になっています。これまで主に中国で必要とされてきた需要が東南アジアでも増加したことで日本人技術者の選択肢が増え、海外での就業先として各国を比較できるようになりました。

 

もちろん、比較のポイントは業務内容や待遇面だけではありません。中国で就業中の日本人技術者からも東南アジアに転職したいという相談を受けることがありますが、お話を伺ってみると業務内容や待遇面以外の理由が東南アジアへの転職検討動機になっているケースが多いのが現状です。

 

このように、中国での就業経験がある日本人技術者ですら東南アジアへの転職を検討し始めている事実は、採用責任者にとってショッキングだったことでしょう。日本人技術者の採用について、現在も買い手市場だと考えていたようですが、実際には今後の設計開発全体のリスクとなっていることを認識されたようです。

日本人が中国で就業する魅力

総じて、日本人にとって中国で就業する魅力は薄れてきているように感じます。日本人を現地採用で確保する必要のある企業は、業務内容や待遇条件面だけではなく、「日本人が中国で就業する魅力とは何か」について、あらためて考える必要があるでしょう。既に現地採用で就業している日本人がいる場合、その方にお話を伺うことも大変参考になるはずです。業界・会社によってケースは異なりますが、実例としてご参考にして頂ければと思います。

 

以 上


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