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中国

作成年月日:2018年1月11日

海外情報プラス

海外情報−中国12月分

作成者:中国 上海 杉川 英哲
分野:人事・労務

2017年人材市場回顧と人事管理の変化について

 

ご挨拶

2017年も海外情報(中国)をご愛読頂き、誠にありがとうございました。実際に発生しているケースを題材に中国における人事労務関連の最新情報をご提供して参りました。微力ではございますが、少しでも皆様のお役に立たせて頂いていれば幸甚です。

2017年人材市場の回顧

2017年における日系企業の人材募集理由も9割以上が「欠員補充」となりました。(自社データ) 新たに設立された日系企業は皆無に等しく、むしろ撤退(会社清算)や他の新興国への移転の話題をよく耳にする経済環境状況ですので、新規設立や業務拡大、新規事業のような前向きな募集理由が非常に少ない状況です。

これに関連し、従来は日本人駐在員が担っていたポジション(職位)を現地従業員に任せてゆくための募集も目立つようになりました。いわゆるローカル化を推進するための募集です。営業やマーケティング等の職種に多く発生しており、日系企業がビジネスの重心を中国市場に移していることが表れています。

また、新たなニーズとして法務担当を新設する企業が目立ちました。背景には、ビジネスにおける契約や特許・商標、労務問題等におけるリスクヘッジの強化があり、日本本社の内部統制の一環としての機能も期待されています。このニーズは製造業、貿易業に共通しています。

求職者の動向としては、従来よりも「やむを得ない理由」による転職動機の割合が増加しました。(自社データ)

従来はキャリアアップや収入アップが転職動機の大半を占めていましたが、2017年は企業の撤退や移転、業績不振によるリストラ等、企業側の原因によるやむを得ない状況で転職を余儀なくされた求職者が目立ちました。

また、ローカル企業(民営企業)に在職中の人材が日系企業への転職を希望するケースも増えています。ローカル企業の管理面や福利面に不安或いは不満を抱える人材が、コンプライアンスや社内制度に基づき厳正に管理が実施されているイメージの日系企業にあらためて魅力を感じていることが分かります。

変われない、変えられない人事管理

毎年、年末年始から旧正月にかけて、急遽、募集を開始する企業が多数発生します。労働契約期間の統一管理により年度末に労働契約満了を迎えるケースが非常に多く、また、賞与支給も年末から旧正月の期間に集中しているため、この時期に退職者が集中し、欠員補充の募集が急増するサイクルになっています。

先日も日系商社の日本人副社長より、欠員補充が難航している旨のご相談がありました。

事務職で退職者が発生したため後任を募集していますが、応募者が非常に少ない状況で、面接をしても採用したいと思える人材は一人もいないとのことでした。

どのような条件で募集されているのかを伺ったところ、応募者が出ない原因がすぐに理解できました。給与設定が現在の市場に追い付いておらず、更に戸籍を重視しているためです。

給与設定については、これまでに多くの日系企業の給与テーブルを見てきましたが、募集職種と給与額から判断すると、約10年前の市場レベルをベースに作成されたものだと直感しました。現在の市場では未経験者や新卒者の採用すら厳しいと思われる給与設定です。応募者との面接結果が示す通り、募集条件における給与設定では必要とされる人材が採用できないことは明白です。また、給与設定が前任者の退職動機になっていた可能性も十分に考えられます。

同社も給与テーブルと現在の市場にギャップがあることは認識しているようですが、副社長は前任者が同じ給与で採用できているため、求職者が増加する時期が来れば採用が完了できると期待されています。更には「給与条件が合えば業務能力は多少落ちても良い」とのコメントもありました。前任者が退職した真の原因は副社長のこの一言に凝縮されていると言っても過言ではないでしょう。

給与テーブルのみならず、おそらく同社の人事管理は10年前から何も変化していないはずです。市場は常に変化していますが、変化に対応する努力を怠ったために各職種で欠員補充が繰り返され、会社全体の業務レベルは年々低下していると推測されます。人事管理において、変えないこと、変わらないことを優先すれば、現状維持はおろか、現状以下に落ちてゆくものです。

(なお、以前は採用時に戸籍を重視する日系企業も少なくありませんでしたが、現在ではほとんどなくなっています。戸籍を重視することにより優秀な人材を採用できるチャンスを失うだけでなく、同一の戸籍者ばかりで形成される組織のデメリットも充分に認識しているためです。)

人事管理全般に変化が必要

上述の事例は採用(欠員補充)の角度から人事管理の変化の必要性をご説明させて頂きました。実際には、評価、報酬、教育等、人事管理のあらゆる面で市場と時代を先読みした変化を図り、従業員の確保や成長を促進してゆくことが企業の継続的な成長の条件です。

例えば、評価の面では評価基準や評価サイクルを変えるくらいのチャレンジが必要な時代に突入していると感じます。これは従業員に対する企業のビジョンの提示という点で非常に有効です。

総じて、人事管理に変化がなければ、従業員や応募者に対して変化を求めることはできません。人事管理の変化は従業員に努力の方向を示す標識の役割を果たし、モチベーションにも良い影響を与えるはずです。業界・会社によってケースは異なりますが、実例としてご参考にして頂ければと思います。

(なお、欠員補充については2016年5月の情報もご参照下さい。)

 

以 上