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作成年月日:2018年4月9日

海外情報プラス

海外情報-中国3月分

作成者:中国 上海 杉川 英哲
分野:法務・税務、危機管理

登録商標使用証拠提出通知

 

商標ブローカーの存在

中国では所謂「商標ブローカー」の悪質な行為が後を絶ちません。主には国外企業の商標を無断で登録し、当該企業が中国で事業展開する際、商標の権利を譲渡することにより金銭を得ようとするものです。その為、多くの日系企業が中国での事業展開と同時に法律事務所などを通じて自社商標の登録手続きを行い、商標ブローカーが自社よりも先に商標を登録してしまうリスクを防止しています。しかしながら、商標を登録しているからといって安心はできません。商標登録しているにも関わらず、或いは商標登録をしたことにより商標ブローカーのターゲットになる場合があるためです。

登録商標使用根拠提出通知について

ある日系サービス企業の事例でご紹介します。

同社に突然、商標局が発行した「登録商標使用根拠提出通知(关于提供注册商标使用证据的通知)」が郵送されました。

因みに同社は10年以上の商標登録実績があり、昨年、登録延長手続きを完了させたばかりでした。もちろん、実際の事業活動において一貫して合法的に商標を使用しています。

同通知の概要は、同社とは無縁の不明人物(商標ブローカーと推測される)が同社と同じ商標の登録申請を行い、受理されず、それを不服とし商標法第49条を根拠として、商標が3年間使用されていないことを理由に同社の商標登録取消しを求めたため、同社に商標局が指定する3年間における商標使用の証拠提出を期限付きで求めるというものです。

中国では商標法第44条第4号に基づき、登録商標が継続して3年間使用されていない場合、商標局は期限を定めてその是正を命令し又はその商標登録を取り消すことが定められています。

つまり、既に商標を登録している場合でも、商標ブローカーは申請が却下されることを見込んで、敢えて同じ商標を申請、申請却下を不服とし、3年間商標が使用されていないとして商標局に登録商標の取り消しを求め、期限までに商標使用の証拠が提出されず、商標が取り消され、商標ブローカーが新たな商標の登録者となり本来の商標登録者に金銭を要求するというスキームです。

同社社長は法に基づいて商標登録をしているにも関わらず、このような悪質な行為が法的に許されていることが腑に落ちなかったそうですが、取り急ぎ、商標登録申請手続きを依頼していた旧知の法律事務所に相談し、対応の代行を依頼しました。

提出期限に間に合わせないための手口

商標局が発行する商標使用証拠提出通知には発行日及び通知発行日から2ヶ月以内に商標の使用証拠を提出することが記載されています。但し、同社が通知を受け取ったのは提出締め切りの8日前で、発行から郵送までに1ヶ月以上経過していました。対応のための時間は数日間しか残されていない状況です。発行日から提出締め切りの期間にちょうど春節休暇が挟まれており、提出締切期日が清明節休暇中であることに商標ブローカーの悪意の存在を感じずにはいられません。春節休暇のため手続きや郵送が遅れ、提出期限が清明節休暇になるように逆算して商標取り消しの申請をした可能性があり、同じ時期にターゲットにされた企業は他にも多数あったものと推測されます。商標ブローカーは商標登録者が期限までに商標使用証拠を提出できないような時期を狙って、商標登録の取り消し申請時期を選んでいるのです。

商標使用の証拠

法律事務所の指導によれば、このようなケースでは提出する証拠が多いほど、商標登録者の正当性が認められるとのことでした。同社では、指定された一定期間において同社が商標を使用していた紙面媒体での記事や広告、関係者配布用カレンダー、会社入口及び会社受付の案内板や背景の写真、また、見積書、契約書、領収書をセットとした文書のコピー等を提出しました。

特に商標が入った見積書、契約書と当該取引の領収書のコピーは、同社が中国の法律に則って事業を行っていることの有力な証拠となり、商標使用証拠としての説得性が高まるとのことでしたので、万一、商標ブローカーのターゲットとなった場合に備え、業界を問わず必要となる見積書に商標を付されることをお勧めします。尚、これらの書類は全て中国語で作成されているか、中国語訳を添付することが必要となります。

商標法の悪用

商標ブローカーのこのような悪質な行為は中国の商標法の隙間を狙ったものであり、法律を悪用したものです。登録商標使用証拠提出通知には「商標局が商標登録取り消し申請者(=商標ブローカー)からの申請を受け、審査した結果、これを受理した。」と記載されていました。因みに、同社はホームページやWeChat(SNS中国版ライン)にも商標を使用しており、インターネットで調査すれば、すぐに商標使用の事実を確認することができたはずです。

総じて、現行の中国商標法のもとでは、商標を登録していても商標法を悪用する商標ブローカーのターゲットになるリスクが存在していることは確かです。

尚、万一、同様の商標局からの通知が郵送された場合、封筒は廃棄せずに保管しておく必要があります。法律事務所の指導によれば、封筒の消印を根拠として商標使用証拠の提出期限延長を図ることも可能とのことです。

業界・会社によってケースは異なりますが、中国における商標リスク管理のご参考にして頂ければと思います。

以 上


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