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中国

作成年月日:2019年2月15日

海外情報プラス

海外情報-中国1月分

作成者:中国 上海 杉川 英哲
分野:人事・労務、法務・税務

総経理の交代について

駐在員の人事異動について

日本では新年度の人事異動について内示があり、引き継ぎや赴任準備に取り掛かる時期になりました。日本企業から中国の現地法人に出向している駐在員も例外ではなく、毎年この時期は日本帰任や他地域への異動が決まった駐在員の送別会の案内が急増します。

 

以前に本欄でも触れましたが、駐在員の人事異動に際しては、現地法人運営への影響を想定し、本社と現地法人が協力し対策を準備しておく必要があります。駐在員の人事異動の影響により、副次的に現地社員の退職や売上減少、機密漏洩等の現地法人運営上のリスクが発生するためです。

 

駐在員の人事異動の影響として、最も多いのは現地社員の退職です。中国に限らず、社員は新しい上司を前任の上司と比較して評価するものです。日本では上司が変わったからという理由で退職する社員はほとんどいないと思いますが、中国の日系企業では上司の駐在員の帰任を理由に退職する現地社員が少なくありません。駐在員は仕事において尊敬できる師匠のような存在であって欲しいという現地社員の気持ちが垣間見えるような気がします。

 

売上の減少として代表的なのは、営業関連の駐在員の帰任を機に顧客とのパイプが細くなってしまうケースです。また、駐在員が担当していた日系顧客を現地社員に引き継ぐケースでも、顧客との関係が微妙に変化し、売上に影響しているというケースも耳にします(一方、現地顧客に対し戦略的に現地社員を担当させるケースは増えています)。顧客の立場としては前任者と後任者を比較するのは当然ですが、特に中国における経験値の差異はどうしても目についてしまうものです。

 

また、駐在員の帰任に際し、後任駐在員を派遣せず、一部業務を現地社員に引き継いだケースでは、本来は駐在員が取り扱うべき機密情報が現地社員に漏洩し、大きな問題になったケースも発生しています。

 

総じて、駐在員の人事異動については、現地社員や顧客から前任者と後任者が必ず比較評価されます。初めて中国に駐在する後任者にとっては大きなプレッシャーとなり、前任者も一定期間はメール等で情報を共有し、必要に応じサポートを継続することが求められます。

総経理(=社長)の交代

ご存知の通り、総経理とは董事会が任免する経営全般の責任者のことです。つまり、総経理=社長という認識です。(本欄でも従来、総経理を社長と表記していますが、今回はそのまま総経理と表記させて頂きます。)

 

先日、ある日系企業の総経理より日本への帰任が決定した旨のご連絡と後任者に対する引き継ぎやレクチャーに関するご相談を頂きました。 帰任となる総経理は長年の中国駐在経験をお持ちで、これまで様々なトラブルを解決し、同社を立ち上げから順調に発展させてきた功労者です。現地社員からは創業者のような信望を得ている印象です。

 

このような前任者から総経理を引き継ぐことには相当大きなプレッシャーがかかることが容易に想像できますが、総経理は帰任決定の後、すぐに総経理交代に伴い想定されるリスクをまとめ、引き継ぎやレクチャーの方法について検討を始められています。日頃から様々なリスクを想定されているからこそできるアクションであり、ご自身が帰任された後の現地法人や後任総経理への想いが感じられます。

総経理の心構え

総経理は、後任者にご自身の総経理としての経験に基づく助言を伝えておきたいとのことで、具体的には次のような内容を検討されています(抜粋)。

・総経理に逃げ場はないこと。

  全ての業務の責任は総経理が負う。

・総経理は公人であること。

  現地法人=総経理、公私とも常に身辺をきれいに保つ。

・総経理は常に現地社員に見られていること。

  現地社員にどう見られているかを常に意識。

・総経理の最も重要な仕事は人の管理であること。

  総経理としての求心力保持と信賞必罰。

 

総経理を経験された方にはすぐにご理解頂けると思いますが、これらは総経理としての「心構え」と言っても過言ではありません。全ての日系企業の総経理に共通する内容であり、レクチャーの有無により総経理就任への意識とその後の業務に大きな違いが出るはずです。

 

また、実際のレクチャーでは、同社特有の具体的な問題の存在も後任者に伝えてゆく予定です。先入観を与えることは良くありませんが、先入観を懸念し、重要な情報を共有しないことのほうが後任者にとっては災難になるでしょう。

 

総じて、総経理の交代が現地法人の運営に大きく影響することは確かです。特に現地社員にとっては、モチベーションやキャリアプランに影響を及ぼす動機となり得る重要な事項です。

 

本欄で紹介した総経理交代の事例は今後もフォローし、総経理交代後の状況についてもレポートできればと思います。 業界・会社によってケースは異なりますが、実例としてご参考にして頂ければと思います。

 

以 上