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インドネシア

作成年月日:2017年1月
インドネシア共和国

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インドネシア国情報2016年12月

今月のテーマ

インドネシアで発生した大規模デモ


インドネシア共和国

インドネシアは正式名称を【インドネシア共和国(Republic of Indonesia)】と言います特徴的なのは世界で最多の島々からなる島しょ国だということです。面積は日本の5倍にあたる約189万平方メートル、人口規模は世界4位で2億4,900万にも上っています。民族は大半がマレー系ですが多様な民族を抱える多民族国家です。言語はインドネシア語を公用語としていますが、実際には各地でそれぞれ異なる言語が使われており、まさに多文化・多言語社会でもあります。

インドネシアに住んでいると度々「デモ」が起こります。労使の対立=デモという形で労働に関するデモなどは度々起こっていました。

宗教

インドネシアの人々はイスラム教が約9割を占めていて。世界最大のムスリム人口を誇ると言われています。しかし、巨大な人口と広大な国土を持つインドネシアは宗教的な多様性があり、政府は各宗教を尊重する政策をとっています。

この国に暮らす駐在の邦人とその家族も、職場や使用人(ドライバー・メイド)など周りの多くのインドネシア人の生活が宗教からの影響を色濃く受けていることを身近に感じます。その最たるものは、やはり年に一度のラマダン(断食月)他にも一日5回のお祈り、豚肉を食すことも触ることもNGなど、日本人には馴染みのない習慣が多数あり、最初は戸惑います。しかし、彼らの宗教に基づく生活を尊重して共存していくことになります。

◆選挙活動と宗教への冒とく

2017年2月に予定されているジャカルタ特別州知事選挙を控え、2016年9月27日、プラウスリブ県でアホック現ジャカルタ州知事(華人でキリスト教)が住民との対話の中で、コーランを侮辱する発言をしたとして国家警察から刑事事件として立件され、ジャカルタ中心部で3回に渡る大規模デモを勃発する騒ぎとなりました。

その詳細は、プラウスリブ県でのアホック氏の発言は以下のようなものでした。

「みなさんは心の中で私の事を(選挙で)選べないかもしれません。アル・マイーダ章第51節を使ったいろいろに騙されて。それもみなさんの権利です、地獄に落ちると騙されて、みなさんが選べないと思う。それも仕方がない」と。

この発言のなかに使われているアル・マイーダ(食卓章)とは、第5章51節、「信仰する者よ、ユダヤ教徒やキリスト教徒を、仲間としてはならない。彼らは互いに友である。あなた方の中誰でも、かれらを仲間とする者は彼らの同類である」(日本ムスリム協会版、一部抜粋より)

日本語版のコーランでは「仲間」と訳されることが多い部分は、インドネシア語版では通常「指導者」と訳され、異教徒の政治指導者に反対する根拠に使われるそうです。

そのため、アホック知事がムスリムでないことを利用した選挙キャンペーンを揶揄しただけだと思われるが、「コーランに騙される」と言っているようにも聞こえます。

このコーランの一説に触れ、アホック氏の発言が「コーランを使って惑わされているから、あなたたちは私に投票できない」と発言しているという趣旨となった動画が、インターネット上で拡散されると広くムスリムの反発を呼びました。

10月6日以降、複数のイスラム強硬派団体らがアホック氏を刑事告発する事態にまで発展しています。

 

これに対し10月9日、アホック氏は、以下の謝罪を行いました。

「全イスラム教徒、またはわたしの言葉で傷ついた方々に対し謝罪します。私にイスラム教、またはコーランを冒涜するような意図はありません」

ジョコ・ウィドド大統領は11月1日、大統領宮殿にイスラム団体の代表を招いて会談を行い、一連のアホック氏の発言に対する抗議デモに向け、国の統一と調和維持のため宗教指導者に協力を求める一方で、宗教を政治利用する勢力をけん制しています。ジョコ・ウィドド大統領はイスラム指導者に対し、人々に冷静と平和を呼びかけるよう求めています。

◆大規模デモの経緯

国内はこの一件で、「宗教の冒涜」だとジャカルタを中心にインドネシア各地で同知事に対する法的措置を求めるデモが発生。

11月4日昼の金曜礼拝後、モナス周辺で大規模(5〜10万人程度)デモが行われた。デモ参加を呼びかけるパンフレットでは、このデモをジハード(聖戦)と位置づけ、イスラム教徒勝利のために祈りをささげるよう求める。

同様の大規模デモが11月25日も行われ、翌月12月2日には前回をさらに上回る35万人規模のデモが「合同礼拝」という名のもと再度行われた。

◆大規模デモと日本人社会への影響

ジャカルタ日本人学校では11月4日は臨時休校、その後の2回のデモでは緊急一斉下校となりました。日系の企業も中心部に職場がある所では休業としたところも多々あります。

JJS(ジャカルタ・ジャパンクラブ)各会員には、在インドネシア大使館注意喚起のメールも度々発令されるなど、日本人社会にも影響を及ぼす大きな出来事となりました。

ジャカルタでこの規模のデモはほぼ20年ぶりであり、インドネシアに駐在してまもない日本人で不安になった人も少なくないでしょう。

◆宗教と社会の動き

その後、2016年12月13日、宗教冒涜の罪で起訴されたアホック・ジャカルタ特別州知事の初公判が旧中央ジャカルタ地裁で開かれ、アホック氏は罪状認否で以下のように述べています。

「アル・マイーダ章第51節に解釈を加えたり、冒涜したり、イスラム指導者を侮辱する意図はなかった。私の発言は、アル・マイーダ章を不適切に利用し正々堂々と地方首長選挙を戦えない政治家に向けたものだった」と、無罪を主張。

その後の民間調査機関インディカトル・ポリティック・インドネシアによる世論調査では、この一連の問題について、50%が「(アホック氏は)こころから謝罪しており、許すべきだ」と回答したとの結果を公表した。大規模デモはひとまず鎮静したかのようですが、今後の社会の動きを注視していかなければなりません。

 

アホック氏の件はその後の裁判の行方を見守るしかありませんが、失言のひとつで政治的にも国家レベルの騒ぎとなる、それだけ、この国のおいては宗教の影響が非常に強いという事を再度思い知らされる出来事でした。

 

このような大規模なデモが起こると、日本人社会にも多大な影響を及ぼすことになります。また、政治の動きはビジネスに直結します。カントリーリスクと言ってしまえばそれまでですが、インドネシアは宗教が基礎に成り立っている国であるということを改めて感じた出来事でした。

ジャカルタを中心に活躍されている方、また、そのご家族の邦人においては引き続き情報収集を行い、充分な注意を払うことが賢明であると思います。

以 上