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インドネシア

作成年月日:2017年10月
インドネシア共和国

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インドネシア国情報2017年9月

今月のテーマ

「インドネシア配車アプリの事情」


◆オンライン配車サービスの登場

ジャカルタといえば交通渋滞をイメージする方も多いのではないでしょうか。首都であるジャカルタをはじめ、インドネシア全体で交通インフラの開発が遅れています。電車で移動できる範囲は限定的で、バイクや車を自分で運転するか、バスやタクシーなどの公共交通機関を利用しなければなりません。最近では中間層が増えた影響で車を購入できる人が急激に増えたことや、各地で建設工事が行われていることもあり、ますます交通渋滞は悪化しています。すぐ近くまで移動するだけで、何時間もかかるということはまるで当たり前かのようになってしまっています。

そんな渋滞のなかを縫うように走ることができるのがバイクです。当然ですが渋滞の日は車よりも何倍も早く目的地に到着することができます。インドネシアでは、オジェックと呼ばれるバイクタクシーが昔から庶民の足でもありました。個人で行っているオジェックの運転手を見つけ、目的地を伝えて値段交渉をすると、バイクの後ろの席に座って目的地まで運んでもらえるのです。そのため、渋滞がひどいとオジェックで移動しようと、オジェックの溜まり場に向かうのですが、交渉が厳しくかなり高い金額が要求されることになります。

そこに登場したのがGOJEK(ゴジェック)です。緑のヘルメットと緑のジャケットが印象的なGOJEKは、スマートフォンのアプリケーションを利用して、バイクタクシーで移動したいお客とバイクタクシーの運転手を仲介する現地資本のオンライン配車サービス会社です。GOJEKに続き、シンガポール資本のGrab(グラブ)やアメリカ資本のUber(ウーバー)が市場に参入すると、はじめは抵抗感があった利用者も少しずつ受け入れ始め、瞬く間にオンライン配車サービスが交通手段として浸透し、各社のユニフォームを着た運転手のバイクで道路があふれました。これまでのオジェックだと交渉して2万ルピアかかった距離がGOJEKだと数千ルピアで利用できたりするのです。

 

◆利用方法

オンライン配車サービスの利用方法はとても簡単です。まずは、スマートフォンに利用したい会社のアプリケーションをダウンロードします。そして簡単な個人情報を入力するとすぐに利用が可能に状態なります。アプリケーションを立ち上げ、出発地と目的地を入力し、料金を確認した上で支払方法を選択します。現金で支払うこともできますし、GOJEKやGrabだとプリペイドのようにお金をアプリケーション内に貯めて使うこともできます。

また、Uberだとカード決済をすることも可能です。予約が完了すると、運転手の顔写真、名前、電話番号、車種、ナンバープレート、それから到着までにかかる予定時間が表示されます。運転手が目的地に向かっている様子を地図上のGPSで確認することができるほか、なにかあれば電話やショートメッセージで連絡を取り合うこともできます。あとは運転手が出発地に到着するのを待ち、オジェックと同じようにバイクの後ろの席に座って目的地まで運んでもらうだけです。現金支払の場合は到着した先で最初に表示された金額を支払いますが、プリペイドやカード決済の場合は自動的に料金分が差し引かれますので、財布を開くことなくそのまま運転手と分かれられます。最後に運転手をアプリケーションで評価するという流れになっています。

これまでのオジェックと違い、こちらからオジェックの運転手を探さなくて済み、目的地を入力するので口頭で目的地を説明する手間も減り、運転手と料金の交渉をする必要もありません。また運転手は評価を受けるほか、顔や名前や電話番号まで分かるため、安心して利用できるようになったのです。

当初は、ジャカルタ周辺でしか利用できなかったサービスでしたが、バンドゥン、スラバヤ、バリ、マッカサル、メダン、パレンバン、スマラン、ソロ、マラン、ジョグジャカルタ、バリックパパン、マナド、ランプン、パダン、ペカンバル、バタム、ジャヤプラなど、インドネシア国内の75を超える地域にサービスの範囲が広がりをみせています。

 

◆サービスの種類

GOJEKをはじめとするオンライン配車サービスの注目するべきは、単なる移動手段ではないということです。当初はオジェックを手配するサービスだったものが成長し、バイクの運転手や決済システムを利用して、生活をとりまく色々なことがスマートフォンのアプリケーションを通して満たされるようになりました。

バイクや乗用車の手配のほか、モノの配送、レストランや屋台の飲食物のデリバリー、スーパーマーケットや薬局などでの買い物代行、さらには部屋のクリーニング、マッサージ、ヘアメイクまでスマートフォンから手配できてしまうのです。今後もさらにサービスの幅が広がっていき、Grabは近くヘリコプターの手配も視野に入れていると発表しています。

 

◆大手3社の比較

GOJEK、Grab、Uberの3社ではどの会社の評価がもっとも高いのでしょうか。それぞれ料金体系が異なり、時間帯や距離に応じて料金が変わります。また、各社ともに顧客を獲得するために、次々とプロモーションを打ち立てているため、3社のどれがもっとも安いかは一概には言えません。また、サービスにおいてはGOJEKがもっともラインナップが広いですが、品質についてはすべて同じようなものともいえます。実はどの会社を利用しても、どの運転手に当たるかというのがもっとも大きいな要因のように思います。それぞれに特徴はありますが、オンライン配車サービスを牽引する3社が競争することにより、サービス全体がさらに充実してきています。

 

・GOJEK

強み:予約が早い、サービスの種類が最も多い、運転手の数が多い、料金が固定式、クレームに対する反応が早い

弱み:混雑時にアプリケーションエラーが増える、ユニフォームを着ないドライバーが多い

 

・Grab

強み:アプリケーションエラーが少ない、料金が固定式、サービスを提供している地域が最も広い

弱み:運転手がGOJEKに比べて少ない、クレームの反応が遅い

 

・Uber

強み:自動車の台数が多い、近距離の料金が他より安い、プロモーションが多い

弱み:混雑時や渋滞時は料金が大きく上がる、メーターを利用するためはじめに表示された通りの料金にならない(料金が固定式ではない)、バイクの運転手が少ない

 

◆オンライン配車サービスを取り巻く問題

このように利用者からすると非常に便利なオンライン配車サービスではありますが、既存のシステムとの衝突がいたるところで発生しています。まず、新しいシステムのため情報通信省や運輸省での法規がまったく整えられていないこと、運転手はオンライン配車サービス会社の従業員ではなく、提携する個人なので現在の労働法の規定で守られていないことなどがあげられます。そして、利用料金が安いため既存のタクシーやオジェックからの反対運動も起こっています。オンライン配車サービス会社は、政府、運転手、既存の交通機関との問題をいかに乗り越えていくのかが今後の課題になっています。

 

運輸省は今年7月に配車アプリサービスについて、料金の上限と下限を定めて規制し、既存の公共交通機関を保護しようとしましたが、最終的には最高裁判所の判決によって取り消されています。また、GOJEKはタクシー最大手のブルーバードと、GrabとUberは2位のエクスプレスと、それぞれ協力関係を築きました。

規制や反対運動など、絶えず逆風にさらされていますが、利用者にとっては今や手放せないサービスとなっています。多くの利用者に支えられるオンライン配車サービスは、今後も問題を乗り越えながら、ますます利用者にとって便利なサービスを提供していくことが期待されています。

 

以 上