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インドネシア

作成年月日:2020年1月
インドネシア共和国

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インドネシア国情報2019年12月

今月のテーマ

「インドネシアの現状と所感」


今回が最後の記事となるため、インドネシアにおける諸々の現状について、筆者の意見を加え書かせていただきます。

 

2019年の最も大きなニュースは、ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)とマアルフ・アミン両候補が、55.5%の支持を得て再選された大統領選挙だと思います。当初、有権者の多い若年者層で、プラウボウォ・スピアントとサンディアガ・ウノ候補との支持率が拮抗していたことや、態度を決めかねる有権者が相当数存在していたこともあり、現職のジョコウィ大統領の再選が必ずしも確実視されている状況ではありませんでした。
大統領選挙終了後の第2期政権(2019年10月23日〜)の組閣において、政権を安定させるために、最大野党党首で大統領選挙を争ったプラウブォを国防省に据えたほか、インドネシアを代表するスタートアップ企業GOJEK(ゴジェック)創業者兼最高経営責任者のナディム・マカリム氏を教育・文化省に据えたことが目を引きます。
特にプラウブォ氏が入閣したことで、与党勢力が国会に占める割合は約4分の3となり政権は安定することにはなったが、政府に対するチェックやバランス機能を欠くことが懸念されるのではないかと考えています。

 

なお、大臣就任式でジョコウィ大統領が各官僚に対して行った訓示は以下となります。
1.汚職の禁止
2.各大臣のビジョン・使命はなく、あるのは大統領・副大統領のビジョン・使命だけ
3.迅速、勤勉、生産的に働くこと
4.単調なルーティンにとらわれないこと
5.成果実現を志向して働くこと
6.現場を確認してソリューションを見出すこと
7.真摯に働くこと

 

第2期ジョコウィ政権は、1期目に進めたインフラ開発に加えて、産業構造の高度化を目指しています。2045年までに1人当たりのGDP2万ドル超を目指し、経済規模で世界第5位内に入ることも目指しています。

 

また、ジョコウィ大統領は、第2期の方針として以下をあげています。
 1.インフラ開発
 2.人材開発
 3.投資促進
 4.官僚主義の改革

 

国家予算のより効率的な使用の必要性を述べたジョコウィ大統領は、就任直後にカリマンタンのバリックパパンへの首都移転構想を発表し、国会議長へ書簡を出しています。これは、ジャワ島とジャワ島外の格差是正、自然災害のリスク低減、全国土の中央に位置している、インフラが比較的整っていることなどを移転の理由として挙げているが、首都移転ができるか否かは不透明だと言われています。

 

同時にジョコウィ大統領は、他民族国家において、国家的統一をもたらすために必要な建国5原則の「パンチャシラ(サンスクリット語で「五つの徳」の意)」を唯一の国民のアイデンティティーとし、国是である「多様性の中の統一」の精神の下、全国民が互いを認め合い、融和することの重要性を強調しています。
 1.唯一神への信仰
 2.公正で文化的な人道主義
 3.インドネシアの統一
 4.合議制と代議制における英知に導かれた民主主義
 5.全インドネシア国民に対する社会的公正

 

しかし、これに反するような形で、第2期ジョコウィ政権になる直前の9月に、学生を中心とした大規模なデモが、全国各地で実施されました。これらのデモが実施された理由は、あきらかに民主主義を骨抜きにする法案を国会が通過させようとしたためです。その象徴が汚職撲滅委員会(KPK)の弱体化につながる法案です。インドネシアでは、政治家や公務員などによる汚職が蔓延していると言われており、KPKは、これまで多くの巨悪にメスを入れてきたから政治家に嫌われています。それでも、これまでKPKが活躍できたのは、民主改革を止めては駄目だという世論の強い意志があったからに他なりません。国民は蔓延する汚職に対し諦めにも似た感情を持っていますが、国の将来を考える若者を中心とし、与党のエリートに対する怒りをぶつける形でデモが行われました。警察との衝突で、5人が死亡、250人以上が負傷したようです。世論調査でも、学生支持の声が大多数であったようですが、政府は世論の声に耳を傾けていないようにみえます。

 

ジョコウィ政権は2期目となり、最長2選10年までのインドネシアで、大統領の3選はありません。プラウブォ氏を入閣させ、政権を安定させることには成功しましたが、世論はエリートでも軍人出身でもないないジョコウィに世論を反映した政治を期待していると言えます。しかし、現在、一般市民の声を聞くと、以前はジョコウィ支持だった人も、2期目のジョコウィ政権への期待値が少しずつ低下しているような感があります。

 

インドネシアの2020年の実質国内総生産(GDP)成長率は、今年9月に国会で可決された国家予算では5.3%、同9月に発表されたアジア開発銀行(ADB)の見通しは5.2%、同10月に発表された世界銀行(IMF)と国際通貨基金の見通しは何れも5.1%と、2020年も5%を維持するとの予想になっています。ジョコウィ大統領の第1期政権では、7%の経済成長を公約としていましたが、5%台前半に鈍化し公約を達成できず、若年層の失業率も高止まりしています。

 

今後の経済成長率を達成するためには、更に外資企業の誘致が鍵になると考えられています。インドネシアへの国別対内投資額データでは、2017年に、日本は中国(香港を含む)に抜かれて3位に転落しました。2018年は2位に返り咲きましたが、2019年は再び中国に抜かれる可能性が高そうです。しかし、ジャカルタでの地下鉄建設や、インドネシア第2の都市のスラバヤまでの長距離鉄道建設など、日本との協力関係は更に深くなっていくことが予想されます。しかし、ジョコウィ政権は、しばしば中国寄りとも取れる発言を行っており、多数の国家から投資を引き出す戦略だと思われます。日本も、ただお金を出すだけではなく、継続的に事業に関わり、インドネシア国民に日本の貢献度を広く周知をすることを考えるべきだと思います。

 

2020年1月からのジャカルタの最低賃金は、8.5%上昇しました。日本円では、4万円未満ですが、最低賃金の上昇率は高くなっているので、日本からの進出企業数も減少しています。今後は、安価な労働コストを目的として進出するのではなく、人口を背景としてインドネシアの内需を期待するか、インドネシアを東南アジアの製造のハブと考え進出する企業が成功する可能性が高いと思います。また、特に中小企業では日本人の数を減らし、日本留学経験者や日本企業での勤務経験者など、優秀な人材を採用しローカライズに成功することもインドネシアで成功する要因であると考えます。

 

インドネシアの宗教についてですが、インドネシアはイスラム教単一の国家ではありません。インドネシアでは、6つの宗教(イスラム教、プロテスタント、カトリック、ヒンドゥー教、仏教、儒教)が認められており、インドネシア人の身分証明書(KTP)には、何れかの宗教を記載する必要があります。実際のところ、その他の宗教を布教している人がいるため、6つの宗教以外の宗教を信仰している人はいます。

 

また、昨今、政府間協定のプログラムで、介護や看護として働いたり、技能実習生として働くインドネシア人が増えています。筆者も、日本でインドネシア人観光客や留学生に会う機会が増えましたが、個々の宗教を尊重し、特にイスラム教徒に対してはネガティブなイメージにとらわれすぎず、人対人としての関係を構築してほしいと切に願います。

 

日本政府観光局(JNTO)が発表した、訪日外客統計によると、2018年は33万人のインドネシア人が日本を訪れ、2017年比で約4万人も増加しています。インドネシア人観光客が、将来の日本経済を支える一翼になるかもしれません。

一方で、日本人が訪れるインドネシアとなると、ほとんどがバリではないでしょうか?バリがインドネシアのリゾート地であることを知らない日本人もいると思います。

 

インドネシアには、パプア州にあるラジャアンパッドやブロモ山など、綺麗な山・海・森林などの観光資源が多いのですが、日本人へのプロモーション不足や認知度が低く、また、安全面における情報が少ないため、日本人観光客がバリ以外の観光地を訪れないのではないでしょうか。

 

インドネシアは、日本から5,800km離れていますので、インドネシアの正確な情報が日本人の耳へ届きにくいのはやむをえません。

イスラム教徒が多い国であるため、イスラム教に対する先入観から、インドネシアに対してネガティブなイメージを持っている人もいると思います。私の周りのほとんどのインドネシア人は、優しい心を持って接してくれます。窃盗などの軽犯罪に気をつけておけば、安心して就労や旅行ができる国だと思います。

 

現状では、日本と比較すると平均的な教育水準が低いこともあり、マナーが悪いことなどが目につくかもしれません。しかし、日本へ留学した人を中心とし、日本の良い点(例えば、ゴミの分別など)を、インドネシアに取り入れようとする活動も盛んになってきています。日本も数十年前まで、似たような状況があったと思いますので、先輩方が関係性を築いてくれた親日国のインドネシアに対して、少しでも興味を持っていただき、インドネシア人と交流していただけると、本当のインドネシアが分かってくると確信しています。

 

以 上