韓国
作成年月日:2009年7月5日

1.1 雇用労働関係法令一覧
韓国の雇用と労働に関連する労働法は、「個別的労働法」、「集団的労使関係法」、そして「雇用対策や行政法」の3つのカテゴリーから成り立っている。
労働者個人の権利の保護を目的とする「個別的労働法」に区分される法律には、勤労基準法、最低賃金法、男女雇用平等及び仕事・家庭両立支援に関する法律、労働安全衛生法、産業災害補償保険法、賃金債権保障法、勤労者福祉基本法、勤労者福祉基金法、勤労者退職給付保障法、派遣勤労者保護等に関連する法律、期間制及び短時間労働者保護等に関する法律がある。
労働組合、労使協議会、示威行為の規制を目的とする「集団的労使関係法」に区分される法律は、労働組合及び労使関係調整法、勤労者参与及び協力増進に関する法律、労働委員会法、教員の労働組合設立及び運営等に関する法律、公務員の労働組合設立及び運営等に関する法律がある。
労働市場の急速な変化に応じた雇用の促進、安定を意図する「雇用対策や行政法」には、雇用政策基本法、雇用安定法、雇用保険法、雇用及び産業災害補償保険の保険料徴収等に関する法律、雇用上年齢差別禁止及び高齢者雇用促進に関する法律、障害者雇用促進及び職業再活法、勤労者職業能力開発法、外国人勤労者の雇用等に関する法律、社会的事業育成法、国家技術資格法、技能奨励法、国民年金法、国民健康保険法がある。
詳細は下記を参照のこと。
- 個別的労働法
- 集団的労使関係法
- 雇用対策および行政法
1.2 労働基準関係法令
労働基準関連法令には、勤労基準法、最低賃金法、賃金債権保障法、派遣勤労者保護等に関する法律、期間制及び短時間労働者保護等に関する法律がある。これらの規制は、雇用契約における労働者の個人の権利、賃金、正規及び非正規職労働者の労働条件を保護するものである。
1.2.1 労働契約
勤労基準法(Labor Standards Act:LSA)の目的は、雇用主及び労働者の間で取り決められた契約の不平等な労働条件を改善し、労働者に相応の生活を保障することにある。この法令の中で、労働条件の最低基準を規定しているため、雇用者はこの基準よりも低い労働条件を出してはならない。雇用者は、性別、国籍、宗教及び社会的地位によって差別をしてはならない。労働契約に法定基準を満たさない規定が明記されている場合、その規定は無効となり、該当する法定基準が優先的に適用される。
勤労基準法は、まず5人以上の労働者がいる企業及び事業所に適用され、その後、1999年1月に4人以下の事業所にも適用範囲が広げられた。しかしながら、今なおこれらの零細企業では、経済状況及び運営上の負担を理由として、解雇の制限、労働時間及び休暇等の規定は免除されている。一方で、労働条件の法定基準が守られ、勤労基準法及び規則が正しく履行されているかを確かめるために、約1,240名の勤労基準監督官が国内を見回っている。勤労基準法第24条により、雇用者は雇用契約書に大統領令により定められた賃金、労働時間、休暇及び労働条件を明記しなければならない。
1.2.2 解雇規則
勤労基準法第30〜35条により、雇用者は労働者を正当な理由なしに解雇してはならない。労働者が不当解雇されたときは、解雇撤回を労働委員会に訴えることができる。もし、委員会が原告は不当解雇されたと判断した場合、委員会は勤労基準法第33条に準じて履行強制金を課すことができる。勤労基準法第33条に準じて、解雇された労働者が再雇用を望まない場合、委員会は雇用者に対し労働者への解雇期間中の未払い補償金の支払いを命ずることができる。
雇用者が経済的理由から労働者を解雇したい場合は、雇用者は厳格な条件及び手順を踏まなければならない。まず、雇用者は経済的理由を速やかに伝えなければならない。加えて、雇用者はあらかじめ、そのような解雇が起きないように最大限の努力をしなければならない。もし、解雇が避けられない場合、雇用者は解雇する労働者を道理にかなった公正な基準で選び、誠意をもって労働組合又は労働者代表と相談するべきである。しかしながら、解雇から3年以内に雇用者が同一業務において新規採用をする際、解雇された労働者が職場復帰を望む場合は、雇用者は勤労基準法第31条に従い解雇した労働者を再雇用しなければならない。正当な理由での解雇であっても、雇用者は勤労基準法第31条に準じて少なくとも50日前に解雇を通知し、30日分以上の正規の賃金を支払わなければならない。
1.2.3 賃金、労働時間、休憩、休日、年次有給休暇、時間外及び休日労働、時間外の割増賃金
- 賃金
勤労基準法第42〜44条により、原則として労働者は毎月特定の日に賃金の全額が支払われる。もし労働者が出産、病気又は事故等で緊急に賃金を要求する場合、給料日前であっても働いた分の賃金は支払われる。
これと同様に1998年1月以降、破産した会社から退職した労働者には、未払い賃金に関してある一定の割合が保障される賃金債権保障法(Wage Claim Guarantee Act)が制定された。政府はこの法律によって未払い賃金問題による労働者の不安を解消し、基本的な生計の安定を促進した。さらに、この法律制定前の未払い賃金請求者に対しては、政府が過去3カ月分の賃金及び諸手当を支払い、退職金に関しても過去3年間分の支払いを行った。
最低賃金法(Minimum Wage Act)は、政府が雇用契約時の賃金決定過程で最低賃金を定め、雇用者に最低賃金以上を払わせて低所得者を保護することを目的としている。最低賃金制度は1988年に賃金の国家基準を制定することにより、労働者の生活基盤を守り、労働者の質の向上を図る目的で導入された。当初、この法律は常時従業員10人以上の製造業のみ適用されたが、1990年にはほかの業種の同規模の会社にも広がり、1999年9月には従業員5人以上の全業種の会社に、2000年11月24日にはすべての会社に適用された。しかし、最低賃金は家族経営の家族従業員及び家政婦、船員といった職業には適用されていない。2007年1月から、就労期間3カ月未満の労働者に対しては“見習い”として、通常の最低賃金の90%が適用される。一方、法定最低賃金を下回る賃金での雇用は無効であり、そのような場合は、雇用者は最低賃金を支払う義務がある。
最低賃金法は勤労基準法で示される“通常賃金”との境界線を示し、最低賃金の算出基準を規定している。次の支払いの場合は、最低賃金算出の適用対象ではない。
- 不規則な基準で支払われる賃金(ボーナス、健康手当等)
- 規定された労働時間、労働日以外に対して支払われる賃金(未使用の月又は年ごとの有給休暇に対する手当、残業手当、夜勤手当等)
- 福利給付金又は諸手当(家族関連給付金、交通費、食費等)
最低賃金は、労働者、経営者の代表及び民間の有識者からなる最低賃金審議会(Minimum Wage Council)によって毎年決定される。2009年1月1日から適用される時間給最低賃金は、4,000ウォンで2008年の3,770ウォンより6.1%引き上げられた。1日8時間、週40時間労働の場合、日額3万2,000ウォン※1、月額83万6,000ウォンの換算となる。
法定労働時間が週40時間に短縮された事業所であっても、最低賃金を下回ってはならないと法律で規定されている。そのため、最低賃金で働く労働者が、法定労働時間の短縮によりさらなる減給に苦しむことはない。改定法では、直接の請負会社の理由により下請け会社の労働者に最低賃金が支払われなかった場合、直接の請負会社は共同で責任を負う。
最低賃金法施行令改正により、2007年からマンション警備員等の監視及び管理労働者、個人付運転手等の断続的労働者も、最低賃金法の恩恵を得られるようになった。しかし、労働条件及び仕事の難易度を考慮して2007年には70%、2008年には80%の最低賃金が適用された。
- ※1:
- 1韓国ウォン=0.0777円(2009年7月6日現在)
- 労働時間
・週40時間労働の導入
韓国は1953年に勤労基準法を制定し、1日8時間、週48時間労働を採用した。1989年の勤労基準法改正後、法定労働時間は、仕事の種類を問わず、1日8時間、週44時間(休憩時間を含まず)となった。2003年の勤労基準法改正に伴い、2004年7月以降、従業員数等に応じて段階的に法定労働時間が週44時間から40時間(週5日勤務制)に短縮されることになった。従業員が20人以上の事業所については、すでに週40時間労働が適用され、従業員20人未満の事業所は2011年までに施行される予定である。その他の主な修正内容は、次のとおりである。
- 休暇制度は国際水準に準拠するよう調整し、月次休暇及び有給の生理休暇を廃止する。年次休暇は、15〜25日に調整する(2年ごとに1日が追加される制度)。勤続1年未満の者は、勤続期間1カ月ごとに1日ずつ休暇が与えられる。さらに、雇用者の積極的な休暇の取得促進にもかかわらず労働者が休暇を取得しない場合には、雇用者の休暇に対する金銭補償の義務が免除されるなどの休暇取得促進制度を導入する。
- フレックスタイム制の単位期間を3カ月に拡大し、労働時間を効果的に活用して作業工程の改善と生産性の向上を図る。さらに、時間外労働の制限を16時間まで延長し、時間外労働の最初の4時間分の割増率25%に引き下げる。
- 法改正に伴う労働者の生活水準の低下を避けるため、現行の賃金レベル及び通常賃金を維持する。
- 改正法の趣旨に沿って労働協約及び雇用規則を修正する。
1990年代の半ばより作業効率及び職務遂行能力向上のため労働時間制度の改善が行なわれた結果、1997年3月に労働時間の柔軟化制度として、変形労働時間制、フレックスタイム制及び裁量労働時間制等が導入された。
- 変形労働時間制
変形労働時間制とは、一定期間を基準として法定労働時間内で労働することを前提に業務量の増減に応じて日、週、月単位で法定労働時間数以上、あるいは以下で弾力的に運用する制度である。単位期間の週当たり平均労働時間が法定制限内であれば、特定の日又は週に法定労働時間を越える労働が認められる。特定の日又は週の超過労働分は時間外労働として扱われないため、時間外労働手当を支給する必要はない。
- 週44時間労働の事業所
- 週当たりの平均労働時間が44時間以内であれば、1日当たり8時間以上、週当たり44時間以上の労働が認められる。1日当たりの労働時間に制限はないが、週当たりの労働時間は48時間を超えてはならない。
- 労使間が書面で合意すれば、1カ月単位の変形労働時間制が採用できる。その際、週当たりの平均労働時間は44時間以内とし、週当たりの労働時間は56時間以内、1日当たりの労働時間は12時間以内でなければならない。
- 週40時間労働の事業所
- 週当たりの平均労働時間が40時間以内であれば、1日当たり8時間以上、週当たり40時間以上の労働が認められる。1日当たりの労働時間に制限はないが、週当たりの労働時間は48時間以内でなければならない。
- 労使間が書面で合意すれば、3カ月以内を単位とする変形労働時間制が採用できる。週当たりの平均労働時間が40時間以内であれば、週当たり40時間以上、1日当たり8時間以上の労働が認められる。ただし、週当たりの労働時間は52時間以内、1日当たりの労働時間は12時間以内でなければならない。
- フレックスタイム制
フレックスタイム制は、労使間が書面で合意すれば労働者が始業及び終業時刻を含めた毎日の労働時間を選択できる制度である。1カ月単位の総労働時間を定め、日ごと、週ごとの労働時間は労働者の自由裁量に任せられる。変形労働時間制とフレックスタイム制との違いは、労働時間が雇用者の都合ではなく労働者の都合に合わせて決められることである。フレックスタイム制を導入する週44時間労働の事業所は、1カ月を単位とする週当たりの平均労働時間が44時間以内であれば、週当たり44時間以上、1日当たり8時間以上の労働が認められる。現在、週40時間労働の事業所は、週当たりの労働時間が40時間を超えない限りこの制度を採用することができる。
フレックスタイム制を導入する際は、雇用者及び労働者の代表は以下のことについて同意書を作成しなければならない。
- 労働者の範囲
- 単位期間
- 単位期間の総労働時間
- コアタイムが設けられた場合の始業及び終業時刻
- 労働者が労働時間を定めた場合の始業及び終業時刻
- 基準となる労働時間
- 裁量労働時間制
裁量労働時間制は、労働者に時間配分や業務遂行の方法を決める権利が与えられる制度である。この制度は労働時間の管理が難しい業種に適用され、労働者の実働時間にかかわらず、あらかじめ労使間で定めた労働時間で計算される。雇用者は時間外労働、深夜労働及び休日労働に対しては支払いをしなければならない。
- 休暇
労働者が特定の週に所定労働時間を皆勤した場合、有給休暇が与えられる。労働者が特定の年の所定労働時間の80%以上を勤務した場合、15日の年次有給休暇が与えられ、勤続年数2年ごとに1日を加算して最大25日まで与えられる。
休暇取得率を上げるため、雇用者が強く勧告しても労働者が休暇を取得しない場合、雇用者は未使用の休暇に対する金銭補償の義務が免除される。乱用を避けるため、雇用者が満たさなければならない必要条件は法律で明確に規定されている。例えば、雇用者は3カ月の休暇取得可能期間の最初の10日以内に、労働者に休暇時期を決めるよう文書で要求する必要がある。そのほか、労働者が時間外労働の対価として代償休暇を選ぶことが認められている。選択代償休暇制度では、雇用者が労働者の代表と文書で合意した場合、雇用者は時間外労働、深夜労働、休日労働に対する賃金支給の代わりに休暇を与えることができる。
- 時間外労働、休日労働、割増金
時間外労働は週当たり12時間以内と定められているが、雇用者と労働者が合意すれば法定労働時間を越える時間外労働が認められる。雇用者は、時間外労働、深夜労働(22〜6時)、休日労働に対して通常賃金に50%以上の割増金を加算しなければならない。週40時間への移行後3年間については、時間外労働は週当たり16時間以内、時間外労働の最初の4時間分(41〜44時間)の割増率は25%となっている。
1.2.4 年少者、女性、民族、外国人労働者、労働安全衛生、アウトソーシング(委託業務や派遣労働)
- 年少者
15歳未満の未成年者(初等中等教育法に規定された中等学校に通う18歳未満の未成年者を含む)はいかなる仕事への就業も認められていない。ただし、大統領令で定められた条件に該当し、労働部長官発行の雇用許可証明書を持つ者には適用されない。親権者又は保護者であっても、未成年者に代わって労働契約を結ぶことはできない。未成年者と労働契約を結ぶ雇用者は、雇用契約書に賃金、労働時間及び休暇を明示し、未成年者に伝えなければならない。
労働契約が未成年者に不利だと判断した場合、親権者、保護者あるいは労働部長官は労働契約を終了させることができる。未成年者は、自己の権利として賃金を要求することができる。15歳以上18歳未満の未成年者の労働時間は1日7時間、週40時間を超えてはならない。ただし、当事者間の同意があれば、1日1時間、週6時間まで労働時間を延長することができる。
- 女性
雇用者は妊婦又は出産後1年を経過していない女性、18歳以上の妊娠していない女性、育児中の女性に、健康に害を及ぼす、あるいは危険な職場において妊娠出産機能に悪影響のある危険な仕事をさせてはならない。
雇用者が18歳以上の女性に深夜労働(22時〜6時)及び休日労働をさせる場合は、労働者の同意を得なければならない。また、休日労働は例外として、雇用者は妊婦、育児中の母親及び18歳未満の女性に深夜労働をさせてはならない。
1987年12月4日に施行された男女雇用平等法は、2007年12月に男女雇用平等及び仕事・家庭両立支援に関する法律(Act on Equal Employment and Support for Work-Family Reconciliation)と改名し、雇用における性差別を減らし、女性労働者の労働条件を改善する役割を果たしている。2001年8月14日の4度目の改正で、育児休暇の適用範囲はすべての職業に広がり、男女を問わず、すべての労働者に休暇取得の権利が与えられた。改正法では、育児休暇からの職場復帰を保障し、育児休暇中の労働者を支えている。
改正後の新しい条項は次のようなものがある。
- 差別
雇用者が労働者に対して異なった雇用又は労働条件を適用すること、及び雇用者が性別、婚姻、社会的地位、妊娠又は出産等の理由で、正当な理由なしに労働者に対して不利な待遇を禁止する。
- 職場でのセクシャルハラスメント
雇用者、上司又は職場の労働者がほかの労働者に対して職場での地位を利用し、性的言動によって性的侮辱感又は嫌悪を感じさせること、並びに、性的言動又はその他の要求等に応じないという理由から雇用において不利益を与えることを禁止する。
- 積極的雇用改善策
男女の雇用格差を改善するため、また雇用機会平等を促進するため、一時的に特定の性別を優遇する。配偶者である労働者は要望に応じて3日間の有給休暇を取得できる。
少子高齢化社会では女性の労働力の重要性が増しているにもかかわらず、性差別的な物の考え方や習慣が蔓延し女性の社会参画は依然として低いため、法的な差別是正措置が取られている。
- 労働安全衛生
韓国では経済活動が増し産業が発展するにつれて、職場での安全衛生が重要な社会問題となっている。1960年代は産業発展の第1段階で、労働災害件数は低かった。しかし1970年代になると、重金属、石油化学工業の成長による急激な経済発展や生産施設及び設備の老朽化のため、労働災害及び職業病の発生件数が徐々に増加した。1980年代には、GNP(Gross National Product:国民総生産)の急成長に伴う生活の質の向上に対する懸念から、労働災害及び職業病は深刻な社会問題となった。そして労働運動が最高潮に達した1990年代は、労働条件の改善が労働争議における主要な論争の原因となった。
1981年の労働安全衛生法(Occupational Safety and Health Act:OSHA)制定により、労働災害防止のための公的部門が設立され、政府は、先進国の水準まで労働災害の発生率を抑制する抜本的対策を講じた。労働安全衛生法は労働安全衛生の基準を定め、責任の所在を明らかにし、快適な労働環境を作ることで労働災害を防ぎ、労働者の安全衛生の維持と促進を目的としている。
政府は、労働災害を防ぎ、事故から被害者を守るために、2000年7月から従業員4人以下の事業所にも労働安全衛生法及び労働災害補償保険法(Industrial Accident Compensation Insurance Act:IACIA)の適用を拡大した。現在、労働安全衛生法は、有害性、危険度、事業の規模や人数を考慮して大統領令で適用外と定められた事業を除く、すべての事業あるいは事業所に適用される。
労働災害の予防を強化する取り組みで、政府は労働災害対策の弱い事業所を選び、包括的な安全衛生の改善案作成を監督、指導した。特に従業員50人以下の零細企業の労働環境改善に対する財政支援を強化した。この目的のため政府は、「きれいな職場」づくりの支援企業数を2005年には9,000社にまで大きく引き上げた。また、化学や建設、造船業のような大災害の危険度が高い事業所へは特別に監督を行い、MSD(Musculoskeletal Disorders:筋骨格系障害)及びほかの職業病の予防強化のためにさまざまな行政措置を行った。さらに、職場における労働安全衛生委員会の活動を支援し、労使双方による事故防止活動に働きかけている。事故被害者の保護を強化するため、政府は労働災害保険制度の適用範囲を広げ、保険の加入率を高め、保険料徴収システムを合理化し、労働災害にあった労働者の医療を改善するよう働きかけている。
2009年2月、労働安全衛生法に雇用主が職場の害や危険性を分析、評価し、必要な改善を実施するための規定が加えられ、労働部長官による雇用主の行動指針に関する指導や勧告も盛り込まれた。
また、同法のアスベスト検査要件には、建物を壊す前に労働部長官指定のアスベスト検査適格機関によって検査を行うことが含まれている。一定水準より多くのアスベストが検出された場合、アスベストは労働部長官指定の専門有資格業者によって取り除かなければならない。
- アウトソーシング
金融危機以来、膨大な数の会社が労働管理の柔軟性を高め、コストを抑える目的で非正規職労働者を活用したことから、原則なしの乱用、労働条件の差別及び非合法的活用等、多くの問題を社会に生み出した。2006年11月、国会は非正規職労働者の権利及び利益を守るため、「期間制及び短時間労働者保護等に関する法律(新)」、「派遣勤労者の保護等に関する法令(改正)」及び「労働委員会法(改正)」を可決し、非正規職労働者保護の制度的基盤を築いた。
期間制及び短時間労働者保護等に関する法律(Act on the Protection, Etc. of Fixed-term and Part-time Employees)は、期間制労働者(有期契約労働者)及び短時間労働者に対する不当な差別をなくし、労働条件の点から彼らの保護を強化することで労働市場の健全な発展に貢献する。派遣勤労者保護等に関する法律(Act on the Protection, Etc., of Dispatched Workers)は、労働者の派遣を適切に管理し、派遣労働者に労働条件のような基準を設けることにより、労働力の需要と供給の弾力性を強化した。その結果、派遣労働者の雇用の安定性及び福祉の強化に貢献した。2009年5月、政府は雇用主が派遣労働者に対して文書による労働条件の通知を怠った場合の罰金を引き下げる法改正を行った。
労働委員会法(Labor Relations Commission Act)は、労働委員会を設置し、同委員会が迅速かつ公正な方法で労使関係の裁定及び調整の機能を果たすよう活動を監理することで労使関係の保障と発展に貢献している。
同法の主な内容は次のとおりである。
- 差別的処遇の禁止及び是正
非正規職労働者(期間制労働者、短時間労働者及び派遣労働者)に対する不適切な差別を禁止し、労働委員会で差別是正の手続きを確立する。さらに、差別的処遇があった場合には、雇用者側に立証責任が課され、差別が認められても是正命令に従わない事業主は最高1億ウォンの罰金が科される。
- 期間制労働者及び短時間労働者の使用期間の制限
期間制労働者の雇用期間を合計2年以内とし、2年を超えた場合は無期契約の正規職労働者に転換しなければならない。短時間労働者の時間外労働は12時間以内とする。
- 不法派遣の規制及び派遣労働者保護の強化
派遣労働者を必要とする仕事は、現在のポジティブ方式※2を継続するが、必要要件は実際の環境に基づき職種の拡大や調整を行い、部分的に修正し補っていく。派遣労働者の雇用が認められる仕事は、業務の性質に基づき大統領令で規定されている。具体的には、専門知識、技術、経験が必要とされるような仕事とされている。
さらに、事業主は派遣が2年以上となる労働者を直接雇用するよう義務付けられた。また、派遣労働の対象となる職業以外の派遣、無許可派遣を含むすべての不法派遣が規定された。
- 違反は3,000万ウォン以下の罰金
事業主が直接雇用の義務に違反して派遣期間が2年を超える労働者を雇用した場合、3,000万ウォン以下の罰金が科される。また、不法派遣労働者の使用事業主に対する罰則も強化され、3年以下の懲役、又は2,000万ウォン以下の罰金となった。
派遣勤労者保護等に関する法律では、弁護士、医者、特許弁理士、パイロット及び 漢方薬製作者のような期間制労働者から除外された専門職を含む26種が派遣可能な業種とされ、こうした業種では2年の雇用期間終了後も期間制労働者としての地位を継続できることとなった。さらに、派遣労働が認められる業務は、労働市場の状態、派遣労働者の需要及び業務の性質を考慮して138から197に拡大した。
- ※2
- 派遣可能な業種を限定して明記する方式。これに対して、禁止される業種のみを明記するネガティブ方式がある。
1.2.5 就業規則、労働協約
勤労基準法第96〜100条により、常時10人以上の従業員を雇用する事業主は、就業規則を作成し、労働部長官に提出しなければならない。就業規則の準備及び変更については、事業主は同業者及び労働者の意見を聞かなければならない。
1.2.6 その他
- 雇用政策基本法(Basic Employment Policy Act)
職業訓練を実施することで労働者の能力開発を行い、その結果、労働者の地位向上と国家経済の発展に貢献することを目的とする。また、職業訓練基本計画は、長期にわたる経済、労働市場等を反映し、産業及び職業による労働力の需要と供給、雇用状況及び労働生産性を考慮に入れて立案される。
1.3 労使関係法令
韓国の憲法は、民間企業、公的機関のどちらで働いているかを問わず、すべての労働者に対して組合を組織する権利を与えている。したがって、2人以上のメンバーから成るいかなる組合も、合法組合として認められる。組合の組織化を妨害する雇用者は、不当労働行為として罰せられる。
1.3.1 労働組合
労働組合及び労働関係調整法(Trade Union and Labor Relations Adjustment Act)は、憲法に従って組合の権利、団体交渉、団体活動を保障することで、労働条件を維持及び改善し、労働者の経済及び社会的地位を向上させる。また、労使関係の公正な調整による労働争議の防止及び解決が、産業平和の維持及び国家経済の発展に貢献している。同法では、主として団体交渉、労働争議とその解決、及び不当労働行為の原則を取り扱う。
教員の労働組合設立及び運営等に関する法律(Act on the Establishment, Operation, Etc., of Trade Unions for Teachers)の下で、幼稚園、小学校及び中学校の教師は、組合を組織する権利が与えられている。公務員の労働組合設立及び運営等に関する法律(Act on the Establishment, Operation, Etc., of Public Officials Trade Unions)の下で、2006年1月より6等級以下の公務員も組合を組織することが認められている。例外として、大学教授、兵士、警官、消防士、看守、一般管理部門及び人事部門に従事する公務員は組合の結成及び参加が禁止されている。最近、大学教授が組合を組織する権利獲得のための働きかけをしている。
国内には複数の組合が設立されているのとは対照的に、社内に既に1つの組合が組織されている場合、労働者は既存組合と同じ組合員を対象とする別の組合を作ることはできない(重複の禁止)。労働者が組合を組織したら、組合組織許可証を発行する所轄官庁に対して届け出なければならない。組合は独立した民主的な方法で運営し、雇用者は組合活動に介入してはならない。組合活動に介入した雇用者は、不当労働行為を犯したとして罰せられる。
1.3.2 労働争議解決システムに関する法令
韓国では、労働組合は労働者の経済及び的社会的地位の向上を目的として、経営者又は経営者組織に団体で交渉する権利が憲法で認められている。団体交渉は、組合と経営者が意見の相違を解決し、労使協定を結ぶためのプロセスである。言い換えると、交渉当事者はストライキ及びシャットダウンのような抗議行動に訴える可能性とともに、交渉、和解、協定締結を体験する。組合が団体交渉を求めたら、経営者は要求を受け入れて交渉を始める義務がある。この義務に対するいかなる違反も罰せられるべき不当労働行為とみなされる。法律で定められた団体交渉の原則は次のとおりである。
- 交渉当事者は、常に誠意をもって交渉を行い、協定を結ばなければならない
- 交渉、労使協定締結について、組合、経営者双方とも正当な理由なしに拒否する、あるいは怠ってはならない
- 経営者の不当労働行為
- 正当な理由なしに、組合代表者又は組合から権限を与えられた者との労使協定の交渉を拒否する、あるいは怠る行為
- 正当であるにも関わらず、労働者が特定の組合活動に参加したという理由で解雇又は不当に扱う行為
一般に労使協定の有効期間は最長2年であるが、賃金協定の有効期間は1年である。実際には労使協定の約半分が2年間有効で、残りの半分が1年間有効である。労使協定は組合活動を保障し、賃金、労働条件(雇用保障、労働時間、休日、休暇、労働環境、福利厚生等)、団体交渉手続き、平和条項及び有効期限を明確に規定する。団体交渉は、組合の形態によってさまざまな種類がある。韓国では企業組合の代表と経営者間で行われる企業ベースの交渉が団体交渉の多数を占める方法であるが、産業別組合に向けた最近の動きと一致して産業レベルでの交渉も増えている。
1.4 労働保険関係法令
韓国は、1995年7月に4大社会保険制度(雇用保険、国民年金、国民健康保険、産業災害補償保険)を確立した。同制度は、目的、対象者、適用法及び監督官庁が異なるため、保健福祉部、労働部等の多くの部処(省庁)が社会保険制度の監督に関わっている。これらの社会保険は、健康保険を国民健康保険公団(National Health Insurance Corporation:NHIC)、国民年金を国民年金公団(National Pension Corporation:NPC)、雇用保険及び産業災害補償保険を韓国勤労福祉公団(Korea Labor Welfare Corporation:KLWC)が運営している。
1.4.1 労働者災害補償保険
韓国では職業上の災害は、社会補償の対象となり、勤労基準法及び産業災害補償保険法で明記されている。これら2つの法令では、職業上の労働者の負傷及び疾病は、労働者の不注意であるか否かにかかわらず、それに対する雇用者の直接又は間接的な補償が産業補償制度に規定されている。この目的のため、すべての雇用者は、毎年政府が決定する保険料率に従って保険基金に保険料を納めることが義務付けられている。勤労基準法は、雇用者に対する職業上の負傷及び疾病に対する補償の義務、多岐にわたる補償の種類及び補償の範囲について明記している。3日以内の治療で済む負傷及び疾病を除いて、勤労基準法に明記されたさまざまな補償は、産業災害補償保険法で規定された給付金に切り替えられる。職業上の負傷及び疾病が雇用者の原因による場合、労働者は補償の請求に加えて雇用者に対する損害賠償訴訟を起こすことができる。
1964年に導入された産業災害補償保険は、比較的安定した最初の社会保険制度として定着しており、被保険者である労働者に必要な給付金を支給し、負傷、疾病、障害又は死亡に対して迅速で適切な保護を与えるよう策定されている。同制度は、労災で健康を害した労働者の療養及びリハビリを支援することで、経済成長が進行する中、社会的なセーフティネットとして機能している。産業災害補償保険は、労働者、雇用者、政府の3者間で合意し、施行から40年ぶりに制度が改善された。
協定によれば、労災で負傷した労働者は、事故原因と医師の診断が有効である限り、雇用者の承認なしに治療を受けるための休暇を申請できる。産業災害補償保険の給付には次のものが含まれる。
- 医療給付
負傷又は疾病が完治するまでの治療に関わるすべての費用を保険で保証する。
- 病気休暇給付
労働者が傷病等で休業中の場合、基本給の70%が支払われる。
- 障害給付
最高1,474日まで障害給付を受給でき、受給者は傷病補償年金を請求することができる。
- 遺族給付
1,300日の遺族給付があり、遺族は遺族補償給付もしくは遺族補償年金のどちらかを選択して受給することができる。
- 看護給付
看護給付は最高120日まで受給できる。
- 葬儀費用
葬儀にかかる費用が負担される。
負傷した労働者は、リハビリ訓練あるいは子供の教育費等の社会復帰にかかる費用について、貸付を受けることができる。
さらに、長年激しく議論されている労災認定の問題については、産業災害審査委員会(Judgment Panel on Work Related Injuries)が公正な審査を保障する活動をしている。推薦を受けた公益及び労務管理の専門家が産業災害審査委員会に参加しているが、労務管理の専門家は全委員の3分の1にすぎない。労働者の休暇認定に先立ち、医療費の負担を軽くするために最初に健康保険から医療費が支給される。休業補償給付は、労働者が治療のために就業できない期間、平均賃金の70%に当たる給付金が支払われる。
1.4.2 雇用保険
1995年に導入された雇用保険制度は、従来の失業手当を支給するだけでなく、失業を防ぎ、再雇用を促進し、隠れた人材の雇用を促し、職業能力開発を支援する人材活性化政策に関与している。雇用保険法(Employment Insurance Act)では、すべての雇用者に雇用保険への加入義務があり、その基金は失業保険金、雇用安定プログラム及び職業能力開発プログラムに使われる。この目的を達成するために雇用保険制度では3つの事業から成り立っている。
- 雇用安定事業
- 失業予防支援、失業者再就職支援等
- 雇用関連情報の収集及び発信
- 職業相談を含む、広範囲な雇用サービスの提供、カウンセリング、就職斡旋及び技術訓練の提供
- 職業能力開発事業
- 失業給付
失業給付は失業者を守る消極的な方法であるが、一方で雇用安定プログラム及び能力開発は、積極的な労働市場政策の一部を担っている。失業給付の保険料は事業主及び労働者がそれぞれ2分の1ずつ分担し、雇用安定、職業能力開発事業は事業主が全額負担する。失業給付は、失業保険適用事業所で過去18カ月間に180日以上勤務した離職者が受給できる。求職給付金は、過去12カ月の平均賃金の50%が支給され、支給日数は年齢や被保険者であった期間に応じて90〜240日までとなっている。
2008年末、雇用保険法の主要な計画を評価するため、雇用者と労働者が同数の委員からなる雇用保険審査委員会が創設された。また、系統的評価システムが加わることで、評価結果が雇用保険の計画や基金の改正に反映されることとなった。同法は、失業給付金の不正受給者、もしくは不正に受給しようとする者に対する刑罰を重くした。また、職業訓練中の失業者は生活費の融資が受けられる制度が新たに盛り込まれた。
1.4.3 健康保険
国民健康保険(旧医療保険)は、1977年に強制保険として制定された。国民健康保険は、第1次統合として、1998年に地域医療保険、公務員及び私立学校教職員医療保険を、第2次統合として、2000年7月に職場医療保険を含む全保険制度を統合し、国民健康保険公団(NHIC)が整理統合された組織を運営している。健康保険の保険料率は標準報酬月額の5.08%を雇用者と労働者が折半する。
1.4.4 年金
国民年金制度は、高齢者の貧困対策として1988年に導入された。少子高齢化が進み人口に占める高齢者の割合が高くなったため、同制度は年金を必要とするすべての国民を対象としている。さらに、年金制度が導入されたもう1つの要因は、若者の間で“子供の義務として高齢になった親を支える”という意識が薄れてきたことである。国民年金法(National Pension Act)は、国民が老後に十分な生活ができるよう保障している。雇用者も労働者もこの制度のために保険料を払わなければならない。年金の給付水準は、平均所得月額の60%から40%に引き下げられた。基礎老齢年金法の一部改正により、65歳以上の全高齢者のうち低所得層の70%に平均所得月額の5%が老齢基礎年金として支給される。年金受給額は、受給者の保険料負担額によって決まる。公務員、兵士及び私立学校教職員は、個別の年金制度がある。
国民年金と基礎老齢年金は法律が異なるため、管理運営が非効率的との指摘があり、基礎老齢年金を国民年金と統合運営する計画もある。
1.4.5 その他、独自の保険や基金に関する法令
- 勤労者福祉基金法(Employee Welfare Fund Act)
1980年代までの労働政策では、雇用者が労働者の福利厚生に配慮するものとみなされていた。例えば会社は、食事代、労働者又はその子供たちの教育費、交通費、住居費の支給のような手当を労働者に支給していた。1992年に導入された社内勤労者福祉基金制度は一種の利益分配制度であり、労働者の福利厚生充実のため雇用者が企業収益の一部を基金に負担して福利厚生改善の役割を果たした。勤労者福祉基金法は、雇用主が事業利益の一部から資金援助する勤労者福祉基金を効率的に管理運営し、労働者の生活安定及び福利厚生の促進に貢献している。
基金の規模は年ごとに成長し、2006年上半期で902の会社の合計で、5兆5,386億ウォン、平均基金:61億4000万ウォンにのぼる。)そして、従業員持ち株制度(Employee Stock Ownership Plan:ESOP)を採用する企業数が増えている。なぜなら、従業員持ち株プランは企業側からすると労働者の福利厚生を強化し、労使間協力を促進すると考えられるからである。2007年2月末の時点でESOPを採用する従業員組合数は2,527団体である。中小企業向けの労働者福祉の法律制定では、1993年の勤労福祉促進基金の創出及び1995年の韓国勤労福祉公団の設立があり、政府は労働者の公共福祉制度の促進を開始した。
- 勤労者退職給付金保障法(Employee Retirement Benefit Security Act)
同法の目的は、労働者の退職給付金制度の設立運営に必要な事柄を規定し、安定した老後の生活を労働者に保障することである。
- 勤労者福祉基本法(Basic Workers Welfare Act)
同法の目的は、福祉政策の立案、福祉計画実施に必要な事項を定め、労働者の生活の質の向上と、国民経済の均衡のとれた発展に貢献することである。特に、2001年の勤労者福祉基本法の制定は、労働者の生活の質の向上を目的とする系統的な労働者福祉政策の確立及び施行の基礎を築いた。
- 雇用及び産業災害補償保険の保険料徴収に関する法律(Act on the Collection, Etc., of Premiums for Employment Insurance and Industrial Accident Compensation Insurance)
同法律の目的は、雇用保険及び産業災害補償保険との関わりの開始と終了、保険の支払い、保険料徴収などの必要事項を規定し、保険業務の効率を高めることである。
1.5 職業能力開発法令
1.5.1 職業能力開発制度
1967年の職業訓練法の制定で、韓国の職業訓練政策が正式に導入された。職業訓練政策の枠組みは、雇用者に労働者への職業訓練を義務付ける1976年の職業訓練基本法の制定と施行で確立された。強制的な職業訓練の主要目的は、産業界に技能労働者を供給することであった。高等教育へ進学しなかった若者を主要産業の専門技術者に育成することで、職業訓練制度は韓国の経済発展に大きく貢献した。
1995年の雇用保険制度の導入に伴い、産業構造の急激な変化に対応する必要性が増し、より高度な訓練及び在職者の配置転換のための訓練が重要になってきた。こうして職業訓練の中心は、“技術者育成”から“生涯職業能力開発”へと転換する必要に迫られた。ついに、政府は職業訓練基本法に替えて、1999年1月に勤労者職業訓練促進法を施行した。同法の導入により、強制的な職業訓練制度は廃止され、雇用保険制度の下で統一された職業能力開発制度が実施された。
知識集約型経済及び生涯学習社会への転換に対応して、労働者は生涯を通じて仕事の技能を高めなければならない。生涯職業能力開発の必要性を認めて、政府は勤労者職業訓練促進法を2004年12月31日に改正し、勤労者職業能力開発法(Workers’ Vocational Competency Development Act)を制定した。改正の目的にちなみ名づけられた同法の下で、2005年4月に職業能力開発改革イニシアチブ及び2006年4月に生涯職業能力開発改革イニシアチブが積極的に実施された。
2007年の注目点は、生涯職業能力開発制度が確立したことである。第1に、政府が、「中小企業への教育支援を提供する会社」の数の増加を決定し、その数は2006年の112社から2007年には150社になった。そして、中小企業の労働者の職業能力開発を促進するために、支援の範囲を拡大した。さらに、中小企業向けに中心となる技能及び専門コースを改善するために、訓練領域が広げられ、実際の支援制度は簡略化された。政府はまた、成長する自動車産業の技能労働者育成を決め、業務達成能力のある労働者を育てるために、専門学校及び技術学校を活用することにした。その上、労働者自らの自己啓発を促進するため、在職者向けの教育ローン及び中小企業労働者向けの無料教育支援が利用できるようになる。
第2に、非正規職労働者には能力向上により、よりよい職への異動が可能になるよう職業訓練が実施される。そうした目的のため、職業能力開発カード制度によって、契約労働者、短時間労働者及び派遣労働者に対して1年で100万ウォン、5年間で最高300万ウォンが事前に資金援助される。民間訓練機関及びポリテク大学では、非正規職労働者を対象にeラーニングを活用した訓練が実施される。職業センターでは、非正規職労働者から正規職労働者への転換を支援するため、零細企業向けに訓練案内及び相談が行われる。
第3に、職業能力開発デリバリー制度及び新たな基盤整備が完了し、公共職業訓練機関は中小企業及び非正規職労働者のための訓練及び資格の基盤整備に重点を置き、一方、民間職業訓練機関は、競争的な雰囲気が落ち着くよう職務遂行能力の評価を通して公共職業訓練機関とは異なる支援を行っている。
また2008年末、勤労者職業能力開発法の一部が改正され、職業能力向上を促進するために個人の職業訓練費用と訓練履歴を包括的に管理する職業能力開発記録制度が新たに導入された。
- 技能奨励法(Skills Promotion Act)
同法の目的は、自らの領域に誇りを持って専念する技能労働者に対して技術の習得及び向上を促すことにより、技能労働者の経済的及び社会的地位の向上に貢献することである。
1.5.2 職業能力評価制度
国家技術資格法(National Technical Qualification Act)は、国家技術資格制度を産業界の要望に応じて効果的で適切なものとすることで、技能労働者の職業能力を高め、社会的地位を向上させるとともに、国の経済成長に貢献する。現在、582種類の国家技術資格があり、専門技術者及び技術者、産業技術者、熟練工の師匠、技能労働者並びにビジネスに従事する人々等、カテゴリー別に分けられる。国家職業資格の種類は2006年に582であったが、2007年に斜陽産業の資格が統一され556種類となった。現在の教育ベースの資格制度及び適用条件は、需要志向の制度となるよう産業界の実際の需要を反映している。適用条件は資格により千差万別で、例えば、産業技師(industrial engineer)の適用条件は技能士(craftsman)資格取得後1年の実務経験、技師(engineer)の適用条件は産業技師資格取得後1年の実務経験となる。※3
- ※3:
- 技能・技術分野のレベルは、上から技術士、技能長、技師、産業技師、技能士の5段階となっている。
1.6 その他の雇用労働関係法令
1.6.1 職業紹介制度
- 雇用安定法(Employment Security Act)
同法の目的は、労働者に能力を発揮できる雇用機会を与え、産業の要求に適した労働力を支えることにより、労働者の雇用の安定を図り、調和の取れた国家経済の発展に貢献することである。また、同法では雇用の安定及び促進における政府の役割と雇用サービス機関の役割を定めている。
- 障害者雇用促進及び職業再活法(Act on Employment Promotion and Vocational Rehabilitation for Disabled Persons)
1980年代の終わりに、障害者の雇用促進が社会政策の問題として浮上した。多くの障害者が、効果的なリハビリ及び社会参加を確保するには、政府からの補助金に頼る生活よりも働くことを希望した。社会の障害者への関心を反映して、1991年に障害者雇用促進法が施行され、2000年に大幅な改正が行われ、職業再活に関する内容が追加された。同法では、常時50人以上の労働者を雇用する事業所は2%、公共機関は3%に相当する数の障害者を雇用することが義務付けられている。常時100人以上を雇用する民間企業及び公共機関が雇用義務を履行しない場合は負担金を納付しなければならない。労働部の発表によると、2008年の民間企業と公共機関の障害者労働者数は8万9,664人、雇用率は1.72%であった。障害者雇用が義務付けられている民間企業2万1,774社で働く障害者は8万3,765人、公共機関253機関で働く障害者は5,899人となっている。
- 雇用上年齢差別禁止及び高齢者雇用促進に関する法律(Act on Age Discrimination Prohibition in Employment and Aged Employment Promotion)
同法は、1991年に都会及び産業地域での高齢者雇用を促進するために制定された。高齢者の適切な雇用を創出し、企業に一定比率以上の高齢者を雇用することを推奨している。常時300人以上雇用する事業所は、製造業では常時2%、運輸業、不動産及び賃貸業では6%、その他の産業では3%など産業別に高齢者を雇用する比率が定められている。また同法では、これまで以上に高齢者のための訓練施設の拡充及び雇用情報の提供が求められているとしている。
2009年3月から、労働者の募集及び採用における年齢差別が全面的に禁止された。差別を受けた労働者が救済を望む場合は、国家人権委員会に陳情する。差別行為に対する同委員会からの是正命令を正当な理由なく履行しない場合は、3,000万ウォン以下の罰金が科される。募集や採用時に不合理な年齢差別をした場合は500万ウォン以下、また、陳情、訴訟、申告などを行った労働者に対し解雇などの不利な処遇をとった場合には、2年以下の懲役又は1,000万ウォン以下の罰金が科される。これに加えて、2010年からは賃金、賃金以外の金品支給、福利厚生、教育・訓練、配置、異動、昇進、退職、解雇等で年齢を理由とする差別が禁止される。
- 社会的事業育成法
同法の目的は、社会的企業を支援することにより、社会サービスを拡充し新たな雇用を創出することにより、社会統合及び国民生活の質の向上に寄与することを目的とする。
1.6.2 外国投資法により進出した企業で、海外から招聘され就労する者の労働許可条件
- 外国人労働者の雇用等に関する法令
同法の目的は、外国人労働者を体系的に導入、管理することで、労働力の円滑な供給及び需要を実現させ、均衡の取れた経済発展を達成することにある。
2008年末に、政府は雇用者に資格のある外国人労働者の雇用を許可し、国内の外国人労働者の権利を保護するために、外国人労働者の雇用における規制を緩和した。
この改定により、事業団体は外国人労働者の雇用を求める企業の人材需要に基づいて、必要とする技能レベルを満たす外国人労働者を提供するために、基本的な能力テストを実施することが義務づけられた。また、契約期間が3年以内であれば、雇用主の利便性と労働者の職業安定促進の観点から、契約期間は両者の間で決定できることとなった。さらに、雇用契約終了後1カ月以内に就労しない労働者への帰還制度を廃止し、企業は雇用後3年が経過した労働者を、最長2年、再雇用(合計で5年間)できるようになった。また、外国人労働者本人の過失でない疾病、職業上の負傷、妊娠、又は出産により、就労できない場合は出国日の延期が可能になった。
1.6.3 海外から招聘され就労する者の加入義務のある制度
外国人労働者は次のサービスを提供する制度に加入すべきである。
- 労働者災害補償保険
- 対象:常時1人以上の労働者を雇用する事業所
ただし、農業、林業(製材業を除く)、漁業などの業種については5人未満の事業所は適用を除外される。正規職労働者、日雇労働者、一時雇用など、就労の名称や形態に関係なく適用
- 総工事費2,000万ウォン以上の事業(契約変更により2,000万ウォン未満となった工事費の案件を含む)
- 国民健康保険
- 国民健康保険法に基づき、外国人労働者の雇用者と労働者に適用
- 雇用保険
- 対象:常時1人以上の労働者を雇用する事業所
ただし、農業、林業(製材業を除く)、漁業などの業種については5人未満の事業所は適用を除外される
- 国民年金(相互主義の原則)
国民年金は、相互主義の原則に従い、国民年金を外国人労働者に適用する諸国からの労働者に対して適用される。したがって、EPS下の国からの外国人労働者は国民年金に加入しなければならず、ベトナムからの労働者には年金は適用されない。また、相互主義の原則に基づき、スリランカ、インドネシア、及びタイからの外国人労働者には、出国の際に一括払いで支給される。
1.6.4 その他雇用労働に関する法令
なし
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