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マレーシア

作成年月日:2009年8月31日

雇用労働関係法令

1.1 雇用労働関係法令一覧

 マレーシアの雇用労働関連法令は以下のとおり6つのグループに分けることができる。

  1. 基本法
    • 1955年雇用法(Employment Act 1955:EA)
    • 1947年賃金評議会法(Wages Council Act 1947)
    • サバ州労働条例(サバ州条例67号)
    • サラワク州労働条例(サラワク州条例76号)
    • 1966年児童・少年(雇用)法(Children and Young Persons (Employment) Act 1966)
    • 1990年労働者(住宅最低基準)法(Workers Minimum Standards of Housing and Amenities Act 1990)
    • 1950年週休法(Weekly Holidays Act 1950)
    • 1980年年金法(Pensions Act 1980)
  2. 労使関係枠組み
    • 1959年労働組合法(Trade Union Act 1959)
    • 1967年労使関係法(Industrial Relatioins Act 1967)
    • 1977年公共サービス裁判所法(Public Services Tribunal Act 1977)
  3. 社会保障法
    • 1951年従業員積立基金法(Employees Provident Fund Act)
    • 1969年従業員社会保障法(Employees Social Security Act 1969)
    • 1952年労働者災害補償法(Workmen’s Compensation Act 1952)
  4. 安全法
    • 1967年工場・機械法(Factories and Machinery Act 1967)
    • 1994年労働安全衛生法(Occupational Safety and Health Act 1994)
  5. 外国人雇用規制法
    • 1968年雇用規制法(Employment Restriction Act 1968)
    • 1981年民間職業紹介法(Private Employment Agencies Act 1981)
  6. 雇用者訓練関連法
    • 1992年人材資源開発法(Human Resource Development Act 1992)

 前述の中で主要な法律の概要は以下のとおり。

  1. 1955年雇用法
     1981年に大幅に改定されたこの法律は、マレーシアの雇用に関する最も重要な法律である。この法律は、雇用主と従業員双方の権利及び義務とともに、民間部門における雇用契約書で最低限規定すべき基準を示すものであり、月給1,500リンギ※1の以下の従業員と、給与に関係なく単純労働に従事するすべての従業員に適用される。1955年雇用法は従業員とその雇用主に適用され、個人事業者や雇用されていない労働者には適用されない。また、この法律は全国に適用されるものではなく、マレーシア半島とルブアンで施行されているものであり、サバ州とサラワク州では独自の労働条例(サバ州条例67号及びサラワク州条例76号)がある。
  2. 1947年賃金評議会法
     特定産業の労働者の賃金が不当に低い疑いがある場合に、事実関係を調査・裁定する委員会を設立するための法律である。現在この法律に基づいて、小売業、飲食ホテル業、映画産業、ペナンの港湾労働者に適用される最低賃金令がある。
  3. 1966年児童・少年(雇用)法
     児童や年少者を雇用できる職種、期間、産業を規定しているものである。児童とは14歳未満の子供であり、少年とは14〜16歳の者を指す。
  4. 1990年労働者(住宅最低基準)法
     この法律は労働省に、農園や鉱山で働く労働者に適切な施設が供給されるよう監督する権限を付与するものである。適切な環境とは住宅や、水道、電気、保育所、地域の集会場など基本的な施設が含まれる。
  5. 1950年週休法
     商店、食堂、劇場に勤務する労働者の、週ごとの休日を規定する法律である
  6. 1980年年金法
     公的機関の労働者及びその扶養家族の年金、恩給その他の管理のための法律である。公的機関の労働者は国家年金に加入することができる。ただし、国家年金ではなく従業員積立基金法の枠組みに参加することを選択することもできる。
  7. 1959年労働組合法
     労働組合の活動を規定するものであり、組合やその構成員が順守すべき規則・規定を設けることが定められている。この法律はしかるべき機関がマレーシアの労働組合に関する全体的な監督、指導、管理を行うことを規定したものであり、健全で、民主的かつ信頼性のある労働組合の発展を目的としている。
  8. 1967年労使関係法
     雇用主と従業員、労働組合の関係を規定したものであると同時に、労働争議の防止及び解決を支援する規程を定めるものである。
  9. 1951年従業員積立基金法
     労働者に強制的に貯蓄をさせることにより、加入者の退職後も含めた財政面での基盤を強化する目的の法律である。外国人労働者を除くマレーシアのすべての雇用主と従業員は、当該従業員の積立基金口座に積み立てをしなければならない。現在規定されている積立率は、雇用主は従業員の月給の最低12%、従業員は11%となっている。この法律は、1991年に改正されている。
  10. 1969年従業員社会保障法
     この法律に基づき、労働者とその扶養家族の生活を保護する2つの社会保障制度が設けられている。1つは、労災保険制度(Employment Injury Insurance Scheme)であり、もう一つは廃疾年金制度(Invalidity Pension Scheme)である。これらの制度は、労災事故の被害や職業病を発症した労働者が、補償や金銭的な支援を受けられるようにするものである。
  11. 1952年労働災害補償法
     本法に基づいて制定された2005年外国人労働者補償制度(保険)令により、勤務時間内及び勤務時間外にかかわらず発生した事故による傷害に対して、雇用主は保険に加入し、補償金を取得できるようにする義務がある。
  12. 1994年労働安全衛生法
     多様な産業における業務に起因して発生する危険から、労働者やその他の者の安全、衛生、福祉などを担保する法律である。この法律に基づきガイドラインが設定され、産業ごとに安全と衛生に関する責任の所在が明確化されている。
  13. 1967年工場・機械法
     工場労働者の安全、衛生、福祉に関連する工場の管理と、設備の登録と検査について規定する法律である。
  14. 1981年民間職業紹介法
     2004年4月から、1981年2月19日に発効している1981年の民間職業紹介法(法246号)による権限が労働局に移管された。民間で雇用の斡旋業を営む者は人材育成省労働局の許可を取得しなければならない。本法の目的は、民間職業紹介業者が法律に則り適正に登録され、許可を取得することにある。
※1
1マレーシアリンギ=26.406円(2009年8月31日現在)

1.2 労働基準関係法令

1.2.1 労働契約

 雇用の形態は個々に異なることから、当然職種や産業によって従業員の労働契約の条項には大きな違いがある。その前提の中で、いくつかの標準的な条項を例示する。

  • 職種
  • 賃金及び手当、ボーナスなどの支払いの細則
  • 通常勤務時間及び残業の有無
  • 休日及び休暇
  • その他の給付金
  • 契約期間
  • 試用期間(規定がある場合)
  • 契約終了の事前通告期間
  • 定年退職年齢(規定がある場合)
  • 秘密保持規定
  • 専業義務規定
  • 転勤、異動
  • 社内規定の順守
  • 違法行為に対する処罰規定

 1955年労働法は、1カ月を超える期間の雇用契約はすべて書面にするべきとしている。また、同法に規定されている条件よりも従業員にとって不利な条項は無効であり、従業員にとって有利な条項は有効になる。さらに、労働組合への加入、参加、組合の設立の権利を規制することは禁じられている。
 雇用契約を締結した労使ともに、随時契約終了の意思を事前通知することができる。通知期間は両当事者に差別なく同じ期間とされ、雇用契約書に記載されるべきとしている。契約書に記載がない場合の通知期間は下記のとおり。

  • 雇用期間が2年未満の労働者の場合は4週間
  • 雇用期間が2年以上の労働者の場合は6週間
  • 雇用期間が5年以上の労働者の場合は8週間

1.2.2 解雇規則

 マレーシアの雇用の終了や解雇に関する基本法は、1955年雇用法(EA)、1967年労使関係法(IRA)、1980年雇用(解雇手当及びレイオフ手当)規則(Employment (Termination and Lay-off Benefits) Regulations 1980)である。加えて、産業・上級裁判所における判例などの慣習法も重要な法的根拠となる。
 有期契約の場合、期限到来による雇用終了に加え、従業員側から通知することによる契約終了も可能である(EA 第12条)。不当な処遇を受けるとか、契約条件に合致しない傷病の危険にさらされている場合、従業員は事前通告なしに契約を終了させることができる(EA 第14項(3))。マレーシアの裁判所は推定解雇(みなし解雇)という概念を有する。従業員の退職が自分の意志ではない、もしくは解雇の脅迫を受けてのものである場合、その退職は解雇とみなされる。正当な事由がない解雇の場合、裁判所は一方的解雇を認めないという原則に基づき、原状復帰させるという法的救済措置を取っている。
 必要な事前通知期間を満たしていれば、営業上の理由による解雇は可能である(改定EA 12項(3))。マレーシアの裁判所は、それが誠意をもって行われ、従業員側が一方的に犠牲にならない限り、従業員の解雇という雇用主の権利を侵害しないことが一般的である。業務遂行上の問題に起因する解雇には、従業員の契約義務違反、傷病の後遺症、雇用関係そのものの問題、雇用継続の可能性がない場合などがある。休暇もしくは納得性のある理由なくして、従業員が連続して2営業日以上休んだ場合、その労働者を解雇することができる(改正EA 15項)。さらに平等の原則に沿って、解雇はその事由が発生してから2週間以内に警告書を発行するという手続きを経なければならない。ただし、裏切り行為や雇用主に対する犯罪行為などの、従業員の行為が改善の余地のないものや、雇用主にとって耐えがたいものである場合は、例外が認められる。一般論として警告書は信頼関係の問題ではなく、従業員の行為そのものについての問題の場合に必要となるものである。
 雇用主が従業員の不法行為を発見した場合には、まず書面でその旨を通知し、その従業員に弁明の機会を与える。従業員の提示する理由が納得できるものでなければ、雇用主は従業員の権利を保護し、公平な判断を行うために「内部調査委員会」を設置する。「内部調査委員会」では、従業員は告発されている事項に反論する機会を十分に与えられる。裁判所は雇用主に解雇に至るはっきりとした根拠がなければ、「疑わしきは罰せず」の姿勢で臨むように指導している。また、解雇にあたっては、解雇一時金制度が定められている。
 IRAでは、従業員の労働組合への加入や組合活動を理由にして、解雇することはできないとされている(IRA5項1、d)。1967年IRAでは、労働組合員が不当に解雇された場合は復職を要求できると規定されている。
 一方的な解雇に関する紛争は増加しており、訴訟件数は2002〜2006年の間に267%増加し、一件あたりの賠償金は50万リンギに達している(Thavalingam Thavarajah 2008)。マレーシアの雇用主は2005年に、元従業員に対し不当解雇の賠償金として2,800万リンギを支払っており、その金額は2006年には3,500万リンギを超えると予想されている。労使関係コンサルタントのリオン・シアーズによると、今年は3,000社以上が不当解雇の申立てを受け、産業裁判所に喚問されると予想されている。その結果、マレーシアでは解雇につながる内部調査手続きについての議論が盛んに行われている。この件に関する情報の入手先には、次のようなものがある。


1.2.3 賃金、労働時間、休憩、休日、年次有給休暇、時間外及び休日労働、時間外の割増賃金

 1955年雇用法では、契約書に特に記載のない場合は、従業員の給与は月次払いで、対象の給与支払いの該当期間の最終日から7日以内に支払うこととされている。給与は法定の方法、すなわちマレーシアの通貨で、現金で支払われなければならない。他の支払い方法、例えば小切手や指定銀行口座への振り込みなどで支払う場合には、従業員からの書面による同意の取得が義務付けられている。1955年雇用法では、従業員の給与は雇用主の負担するいかなる負債よりも優先すると規定されている。同法第6章第31条には、給与には契約終了やレイオフ手当、年次休暇や病気療養休暇、公的な休日、妊娠・出産休暇などの期間に対する支払いも含まれると明記されている。これらを含む給与支払いは、保証付き債権や債務証書に対しても優先して支払われる。
 すべての従業員は週に1日の休養日取得の権利がある。従業員のこの権利は、業務の性質上2回分以上の連続勤務が必要な場合を除いて、侵害されることはない。休養日に通常勤務の半日分以内の時間働いた従業員は、半日分の給与を支給される。また、休養日に通常勤務日の1日分以内の時間勤務した場合は、1日分の給与を支給される。
 勤務時間に関して、1955年雇用法では下記のように定めている。

  • 従業員に、最低30分の休息を与えずに、5時間以上連続して勤務させてはならない。
  • 従業員の1日の勤務時間は最長8時間で、かつ1週間で48時間を超えてはならない。

 すべての従業員は、1955年雇用により、毎年公示される休日のうち10日間を、通常の給与が支払われる有給の休日とすることができる。ここでいう公示される休日のうち4つは、国民の日、国王の誕生日、従業員が契約上主として勤務する州のスルタンの誕生日、労働者の日である。さらに、従業員は1951年の休日法第8条で規定されている公的な休日を有給の休日とすることができる。休日が従業員の休養日と重なった場合、休養日の次の営業日が公的な有給の休日の代替休日となる。

1.2.4 年少者、女性、民族、外国人労働者、労働安全衛生、アウトソーシング(委託業務や派遣労働)

 1966年児童・少年(雇用)法により、14〜16歳までの年少者は、午前7時から午後8時までの間しか働かせることはできないと同時に、30分以上の休息時間をとらずに連続して3時間以上働かせてはならない。1日の勤務時間は6時間以内とされている。学校に通っている年少者の場合は、学校での学習時間と勤務時間の合計が1日7時間を超えてはならない。年少者は家業や政府で決められている負担の軽い仕事のみ担当させることができる。
 女性労働者について、1955年の雇用法ではいかなる産業や農業でも、雇用主が女性労働者に夜10時から朝5時の間の勤務させることや、直前の勤務時間が終了してから11時間以内に勤務を再開することを、明確に禁止している。女性労働者は地下の労働にも従事できない。ただし、政府の責任者が雇用主からの申請を書面で許可すれば、女性を禁止されている労働に従事させるができる。1955年の雇用法に加え女性の労働者に関連して、1958年雇用(女性の雇用)(女性乗務員)規則と、1970年雇用(女性の雇用)(交替労働者)規則という2つの法律がある。前者は公共交通機関(バス、電車など)の乗務員としての女性の雇用に関するものであり、1955年雇用法第34条の夜10時から朝5時の間の女性の勤務禁止条項を変更し、女性勤務禁止時間は朝1時から5時とし、連続11時間の休養を与えることにしている。後者の法律も1955年雇用法第34条の例外を認めるものであり、1日2回以上の交替制システムの許可を受ければ、夜10時から朝5時までの間にかかるシフトに女性を雇用することができる。
 外国人を雇用する雇用主は、雇用開始から14日以内に管轄の労働監督事務所に外国人労働者の登録をしなければならない。労働監督事務所はマレーシア人の従業員や外国人従業員から雇用契約上の差別が行われていないかの調査を行うことができる。雇用主が労働監督事務所の指導に従わない場合は、違反行為として罰せられる。

1.2.5 就業規則、労働協約

 マレーシアには、統一的な労働に関する規約やガイドラインは存在しない。マレーシア雇用主連合でも、会員に適用される一般的な労働に関する規約は作られていない。しかし、個別の組織において特別な規約や労働契約がある場合もある。それらの規約や契約は、労働組合や個々の従業員と、雇用主もしくは企業側との交渉に基づき作成される。

1.2.6 その他

 セクシャルハラスメント(性的嫌がらせ)に関する規則(職場におけるセクシャハラスメントの防止と撲滅のための規則)があるが、それ以外にも多くの重要な法律が存在する。例えば、1967年工場・機械法に基づき、人的資源省労働安全衛生局(DOSH)では、次の17件の規則を定めている。

  • 1970年資格証明と審査
  • 1970年乗客及び物品用電動リフト規則
  • 1970年機械の囲い及び安全規則
  • 1970年適合性及び検査の通知規則
  • 1970年担当者規則
  • 1970年安全衛生及び福祉規則
  • 1970年蒸気ボイラー及び非加熱圧力容器規則
  • 1970年資格証明と審査規則 細則(1967年工場・機械法に関連)
  • 1970年管理規則
  • 1978年違反の和議規則
  • 1978年和議可能な違反規則
  • 1984年鉛規則
  • 1986年アスベストス加工規則
  • 1986年建物工事及び土木工事(安全)規則
  • 1989年鉱物粉塵規則
  • 1989年騒音公害規則
  • 2004年適合性及び検査の通知(改訂)規則

1.3 労使関係法令

 マレーシアの労働者の管理に関しては、1959年労働組合法と1967年労使関係法(IRA)という2つの法律が基礎となっている。1959年労働組合法は、労働組合と労働組合連合会に関するものであり、組合の権利、構成、組織、幹部の選任、財務などについて定めている。1967年IRAは雇用主と労働組合の関係を定めており、労働争議の防止と解決を目的としたものである。労働組合法で労働組合は労働組合連合会に登録することが義務付けられている。1967年IRAは、組合が労働者の代表となるためには、雇用主側から認知されることを必要としており、同法は組合が雇用主に自動的に認知される、もしくは強制的に認知させる権利を認めてはいない。

1.3.1 労働組合

 マレーシアの労働者関係の全国組織で主要なものは、マレーシア労働組合会議(Malaysian Trade Union Congress:MTUC)、官公労連会議(Congress of Unions of Employees in the Public and Civil Services:CUEPACS)、マレーシア雇用者連盟(Malaysian Employers Federation:MEF)の3つである。MTUCは民間企業に所属する労働者の多くが加入し、最大の労働組合である。官公庁の労働者はCUEPACSに加入することになっており、130の公的機関・団体の労働組合の連合体である。一方、民間企業の雇用主側の全国組織としてMEFがある。
 2009年6月現在、MTUCには240の支部がある。最大のグループは製造業部門で73組合から構成されており、輸送・通信産業部門がそれに次ぐ規模で51組合が所属している。CUEPACSは公的部門の100支部からなるが、組合構成員の人数は近年の民営化の影響を受けて減少傾向にある。
 1959年労働組合法は、労働組合の総裁(Director General of Trade Unions:DGTU)に大きな権限を与えており、労働者側からみると規制色の強いものとなっている。特に、1980年に改正されて以降、その傾向が強くなっている。同法は、あらゆる労働者が参加できる一般組合(ゼネラル・ユニオン)を作ることを禁じている。現行法では、マレーシアの労働者は自分の属する職業や産業別の組合しか結成できない。DGTUは同法12(3)項により、組合設立希望者が次のような疑いがある場合、労働組合としての登録を拒否できる。

  • 組合が非合法活動に利用される
  • 組合の目的の一部もしくは全部が非合法である
  • 組合の組織が労働組合法に違反する場合

 また、同種の労働者を組織している組合がすでに存在する場合、DGTUは新規の労働組合の登録を却下できる。
 1967年労使関係法(IRA)は、1980年に労働組合法に対応して改正された。この改正は労使間の関係について、大きな変化をもたらすものであった。IRAに基づき、産業界での健全性を維持するため労使双方の管理者として、労使関係局が設置された。同法は、労使双方及び労働組合の法的権利を守るために設けられているものである。また、昇進、異動、採用、人員削減、解雇、再雇用、職責に関する集団交渉の場における、労働組合代表者の認知及び権限にかかわる問題についても規定している。前記の諸問題に関してのストライキやロックアウトは禁止されている。

1.3.2 労働争議解決システムに関する法令

 1967年労使関係法(IRA)は、1955年雇用法がマレーシアの半島部、すなわち西マレーシアのみに適用されるのとは異なり、全マレーシアに適用される雇用主と労働者もしくは従業員、労働組合の間の関係を規定し、労働争議を防止し解決するための法律である。1967年IRAは労使双方に、問題を雇用主側と労働者もしくは従業員、労働組合が直接協議し、双方が合意できる手続きで意見の相違を解消し、政府の関与を最小限にとどめ、労使間の関係を正常化させることを求めている。政府の関与が必要になった場合でも、その役割は主として双方が検討するための法的な枠組みを供与することに限定される。また、IRAは組合の認知問題や権限、代表権及び団体交渉に関する異議を提出する手続きについても規定している。
 同法により、昇進、採用、解雇、異動、人員削減、再雇用、職責に関する事項、及びそれらの問題に起因するストライキ及びロックアウトを団体交渉の際の条件とすることは禁止されている。労使の直接交渉で解決しない場合、同法は調停もしくは仲裁による迅速かつ公正な解決に至るよう促している。
 労働組合が組織されていない場合、従業員は雇用主からの補償を求めるのが一般的である。また、労働者個人が人的資源省に訴えて、調査してもらうこともできる。労働組合がある場合には、労使間の関係は1967年IRAによって定められている。公務員の場合には、給与委員会と給与協議会、人事院、全国合同協議会(National Joint Council)と部局合同協議会(Department Joint Council)、人事裁判所が労使間の問題を取り扱う。
 労働者は違法で一方的な解雇、人員削減、異動、昇進、一方的な労働条件の変更、組合活動による被害などのような、労働争議、不公正な慣行、また労働組合の活動などについて、労使関係局に訴えることができる。このような違反行為の改善要求は、労使関係局長に書面で提出される。調停手続きでは多数の会議が開催される。調停によっても解決できない場合は、問題は人的資源省に上げられる。人的資源省では、この紛争を産業裁判所に提起するかどうかを決定する。1967年IRAは産業裁判所の権限について規定しており、産業裁判所の主な目的は、争議の平和的かつ公平な仲裁案を提示して、労使間の紛争を仲裁することである。
 産業活動は雇用主と労働者双方により行われるものである。従業員によるストライキやロックアウトは、法的に認められている行為である。ストライキには全職場が参加する全面ストライキと、一部のみ参加する部分ストライキがある。ストライキの指令は労働組合のみが行うことができる。しかし、ストライキは最後の手段として行使されるべきであり、調停手続きなどあらゆる紛争解決手段が行き詰った場合にのみ実行されるべきものである(最後の砦原則)。ストライキの実行には組合員の3分の2の賛成が必要であり、組合員の同意が取れると労働組合総裁に提出され、提出日から7日間以内のストライキが認められる。大半の場合は、労働組合と雇用主側はそのような強硬手段をとる前に、自主的に仲裁手続きに入ることに同意する。仲裁手続きでは第三者が指名され、紛争の仲裁にあたる。1967年IRAでは労使紛争が産業裁判所の仲裁に付されているような場合などの、特別な状況でのストライキやロックアウトは禁止されている。生活基盤にかかわる産業のストライキやロックアウトも許されない。違法なストライキやロックアウトに参加、先導、支持した者は罰せられる。

1.4 労働保険関係法令

1.4.1 労働者災害補償保険

 多くの国々と同様に、マレーシア人の労働者の労働災害に備える包括的な法的枠組みがあり、主なものとしては従業員社会保障法(SOCSO)が挙げられる。同法には労災保険制度(Employment Injury Insurance Scheme)と廃疾年金制度(Invalidity Pension Scheme)という2つの制度がある。給付金は1人以上の従業員を雇用する雇用主が支払い、月給が2,000リンギを超えないすべての労働者に適用される。
 労災保険制度で、SOCSOは従業員が勤務中もしくは勤務に至るまでの過程で発生した傷病に対し、多数の救済措置を講じている。

  • 勤務に関連して傷害を負った労働者の、通院・入院治療費
  • 一時的な身体機能障害に対する日払い補償金
  • 治癒不能な障害に対する救済(一時金もしくは年金)
  • 葬儀費用(定額)
  • 扶養家族補償(妻には再婚するまで、子供は21歳になるまでの年金)
  • 重度の障害を受けた労働者で介護が必要な場合の継続的な介護手当

 職業病については、個々の状況によって判断される。 廃疾年金制度は、疾病などの理由で病弱になった労働者に対して、資金的に救済するものである。
 一方、外国人労働者は1952年労働者災害補償法の対象であり、この法律に基づき2005年外国人労働者災害補償制度(保険)規則が発せられている。1952年労働者災害補償法では、外国人労働者は全員、指定された定形フォームの外国人労働者災害補償保険に加入することが義務付けられている。保険の定形フォームは外国人労働者災害補償制度の政府の指定保険会社によって構成される委員会で入手可能である。同法は民間企業の従業員に、同法に沿った保険条項の保険に加入することを義務付けている。同法は勤務中に負傷した、もしくは職業病を発症した外国人労働者が補償を受けられるようにするものである。また、死亡事故の場合には扶養家族にも、補償金が支払われる。外国人労働者の雇用主は、1人当たり年額50〜86リンギの保険料を支払う義務がある。雇用主は事故が発生した場合、10日以内に労働局に届け出なければならない。

1.4.2 雇用保険

 マレーシアでは現在のところ、失業保険やその他の失業に対する補償制度は国家レベルでは存在しない。これは1970年代後半以降マレーシアでは、完全雇用の状態が続いてきたことによるのだろう。しかし、経済循環や、今日のような世界的経済危機の影響によりマレーシア経済が悪化した場合、失業や人員削減問題は非常に厳しい財政的、経済的問題を生み出している。整理もしくは解雇された労働者に対する補償や救済策は、現在の世界的経済危機による人員削減問題に対処するために2008年10月に発表された政府経済刺激関連政策にも見られるように、現在は一時的かつ受動的なものである。

1.4.3 健康保険

 マレーシアの医療制度は従来公的部門が担ってきているが、同時に民間医療部門も急速に成長している。公的医療制度は、初期から第二次、高度レベルまでの健康増進広報、予防、治療、リハビリテーションのあらゆる分野を包含している。政府は多額の助成金を支出しており、患者は無料もしくは最低限の費用負担でサービスを受けられる。公的医療サービスの資金は、従来、主に税金で賄われてきた。公務員には無料の政府医療制度がある。一方、民間医療部門は治療とリハビリテーションを中心としている。民間の場合、費用は雇用主の医療給付、患者の個人負担、住民の保険料などから支払われる。大手の企業ではほとんどが、自社の従業員や家族のための医療補償制度に加入している。
 マレーシアの第7次5カ年計画(1996〜2000年)で、政府は国民健康保険体系を作るために、国民健康保障基金(National Health Security Fund:NHSF)を設立すると発表した。NHSFは基本的に、マレーシアの医療制度を税金で賄うシステムから、社会保険システムに移行させることを目指している。新国民健康保険は強制加入の健康保険であり、雇用主側、従業員および個人事業主が資金を負担することになる。一定額の負担金が基金に積み立てられ、その大部分は公的部門と民間部門の医療費に充てられる。
 この制度は、貧困層などに対する社会安全網としても活用される。この資金管理のために全国保健財務局(National Health Financing Authority:NHFA)を設立する計画もある。NHFAは非営利組織であり、運営資金は自己調達し、市民の医療情報サービスを行うものとなる(2002年10月24日付スター紙)。しかし、この計画はあまり進んでいないようである。1997年から1998年のアジア金融危機や2008年から2009年にかけての世界経済危機にもかかわらず、この国家医療事業について、ほとんど話題にならなくなっている。

1.4.4 年金

 マレーシアの労働者の退職後に備えるための制度には2種類がある。1つは定額の分担金(保険料)を支払うものであり、この場合加入者は在職中に一定額の分担金を基金に払い続ける。加入者である従業員は分担金を支払うが、同時に雇用主もほぼ同額の分担金を負担する。この制度は民間企業の従業員のための、従業員積立基金(EPF)によって運営されている。もう1つの制度は、加入者が特に基金に分担金を納めることなく、退職後に一定の給付を受け取れるものである。この制度は、政府職員のためのものであり、マレーシア政府年金局が扱っている。
 1951年に設立されたEPFは世界で一番古い従業員向けの積立基金制度の1つであり、強制的な預金制度である。EPFの目的は、民間企業の従業員にその収入の一部分を預金させることにより、将来の生活の安定化や老後の安心を確保できるよう支援することである。現在、550万人以上の加入者があり、雇用主側からも50万人近くが参加している。加入者と雇用主はそれぞれ月次で分担金を支払うが、現在の分担比率は労働者が(月給の)11%、雇用主が12%である。加入者は55歳になるとEPFから引き出すことが可能になり、退職時に資金を得ることができる。その他の追加的な恩恵として、加入者は必要であれば住宅購入資金や医療費などへの支出のために、EPFを一部引き出すことができる。法律によって、EPFは加入者に対して毎年2.5%の配当を行うこととされている。配当支払いの実績は1983年以降で平均6.98%、1997年以降でも5.57%であり、法定の比率を大きく上回る配当を行っている。
 他方、政府職員のための年金制度は、3種類の支給がある。

  • 毎月支給される退職年金
  • 退職時に支給される退職金
  • 退職時に現金支給される取得しなかった年次休暇相当額

 政府は最近、民間企業従業員に対する年金制度の実現可能性について検討中といわれており、人的資源省副大臣も「公的部門の職員と同様の年金制度を導入することにより、民間企業従業員の退職後の生活をより豊かなものにすることができる」と発言している(2009年7月9日付マレーシア・トゥデイ紙)。
 マレーシアの政府年金制度のより詳しい情報は、下記からも得られる。
 http://www.malaysia.gov.my/EN/
Relevant%20Topics/Employment%20and%20Training/
GovernmentEmployees/Retirement/PensionScheme/
Pages/PensionScheme.aspx

1.5 職業能力開発法令

1.5.1 職業能力開発制度

 1957年の独立以来、マレーシア政府は一貫して職業訓練を含む教育に注力してきた。能力開発の重要な柱の1つは、職業訓練施設の充実である。マレーシアでは多くの公立の職業訓練施設が設立されてきた。人的資源省、高等教育省、教育省、青少年スポーツ省などが施設を設立している。
 人的資源省では現在21の産業訓練専門学校(Industrial Training Institutes:ITIs)を運営している。ITIsでは修了者に、就業前や新しい職に就く者のための、初級、中級、上級などのレベルの異なる技能証明書を発行している。これらの資格証明書には、医療、電気、建築、印刷技術などの実地訓練証明も含まれる。同省では有能な技術指導員を育成するための国営指導者育成プログラム(National Training Instructor Programme:NITP)を実行する指導者及び高度技術訓練センター(Centre for Industrial Advanced Skills Training:CIAST)も運営している。日本・マレーシア技術専門学校(Japan-Malaysia Technical Institute:JMTI)では、ジョホール、クダ、マッラカ、セランゴールの4州にある上級技術センター(Advanced Technology Centres:ADTEC)で訓練プログラムを実施し、修了証明書及び上級修了証明書を付与している。
 高等教育省では技能労働者を社会に送り出すために、20の技術専門学校と34の地方専門学校を監督している。これらの技術専門学校と地方専門学校では、中等教育修了者を対象に、自動車産業、ファッション産業、アパレル産業、ホテル・飲食産業などに技術系、商業系、サービス系の比較的高いレベルの技術を持った技能労働者を供給している。
 教育省は、技能労働者育成のために技術職業訓練校を90校経営している。また青少年スポーツ省は、7つの青少年技能訓練センターと青少年上級技能訓練センターで、基礎、中級、上級に分けて技術教育を行っている。
 上記の各省に加え、重要な職業訓練を実施している機関が2つある。MARA(Majulis Amanat Rakyat)は国内各地で、12校の技能訓練校を運営している。これらの施設では、マレー系国民に初級から上級までの幅広い教育を行っている。クアラルンプール大学では、ドイツ‐マレーシア専門学校(GMI)、英国‐マレーシア専門学校(BMI)、フランス‐マレーシア専門学校(FMI)の3つの上級技能訓練校の運営の調整を行っている。
 上記のような訓練施設を設立する政策と戦略と同時に、マレーシア政府は民間の企業や教育施設からの職業能力開発への投資を促進するために、さまざまな制度や条例を作ってきた。こうした制度の主たるものは、優遇税制と強制徴収である。優遇税制には税額控除、輸入免税、売上税・物品税の優遇、その他の減税措置など、いくつかの種類がある。職業技能開発推進のために作られた優遇税制には下記のようなものがある。

  • 投資減税
  • 産業用建物特別減税
  • 教育用機材の減税
  • ロイヤルティ支払いに対する免税
  • 指定された訓練に対する二重減税
  • 大学卒業生の失業者教育プログラムに対する優遇税制
  • 就業前教育減税
  • 失業者教育減税
  • 寄付金に対する減税

 前述したような優遇策の他に、マレーシア政府は職業能力開発推進のために行う徴税など強制的な手段も活用している。

【人的資源開発基金(Human Resource Development Fund:HRDF)】
 HRDFは零細企業を除くすべての製造業とサービス産業の企業から、人的資源開発税として従業員への月給支払額の1%を徴収するものである。HRDFは1992年人的資源開発法(Human Resources Development Act 1992)により設立されたものであり、人的資源開発評議会(Human Resources Development Council:HRDC)によって管理されている。HRDCは2001年にPembanngunan Sember Manusia Berhad(人材開発公社)法が制定されてからは、Pembanngunan Sember Manusia Berhad(PSMB)と呼ばれている。

1.5.2 職業能力評価制度

 国家レベルでの技能評価の枠組みは1993年から始まっている。この制度は5段階の評価を採用しており、国家職業訓練評議会(National Vocational Training Council:NVTC)が管理運営している。NVTCは国家職業能力基準(National Occupational Skills Standards:NOSS)を設定することにより、教育プログラムが実際の職場のニーズに合致する水準になるようにしている。NVTCは、現在の技能試験制度から、新しく認定制度の導入も進めている。NOSSの基準に適合することが証明できる、経験と技能を有する労働者は、マレーシア技能認定書(Malaysian Skills Certifications:SKM)を申請することができる。
 主として次の2つのグループの技術者が、NVTCのSKMを申請できる。

  • NVTCが認定した教育プログラムを修了した者
  • NOSSの基準に適合する技能を有することが証明できる者

 認定センターにおいて厳正な資格審査を行うために、NVTCは査定人、内部審査官、外部審査官という3段階の審査手続きを行っている。
 技能労働者不足を解消するために、2002年に外国人労働者雇用に関する政策が変更された。マレーシア国内で5年間の就労経験を有する外国人労働者は、外国人労働者技能証明書(Foreign Worker Skill Certifications:PKPA)に基づき、NTVCもしくは建設業開発委員会(Construction Industry Development Board:CIDB)による技能労働者の証明書を取得することが可能となった。この証明書を取得することにより、雇用期間が5年間延長され、最長で10年間の雇用ができるようになった。
 最新の変化は、国家認定委員会がマレーシア資格認定局へと改組になり、5段階の技能資格証明が、マレーシア資格認定制度のもとに、より広くかつ専門的な資格認定制度と統合されたことである。これにより職業能力を持つ受講生は資格認定制度に沿って、さらに高いレベルの専門的教育を受けることが可能となったのである。

1.6 その他の雇用労働関係法令

 ここでは、マレーシアの職業紹介制度と、招聘されてくる外国人労働者(一般的な単純労働者とは区別される)の採用認可条件について述べる。

1.6.1 職業紹介制度

 マレーシアには国内各地に設けられた労働局の事務所(労働監督事務所)を活用する、政府管轄の職業紹介制度がある。労働監督事務所とは、人的資源省労働局の国民との直接の接点となる場所である。求職者と募集者の双方ともに労働事務所に登録する。求職者と募集者が同じ情報に基づいて交渉できる、労働市場情報を一括して提供する電子労働情報交換システム(Electronic Labour Exchange:ELX)がある。

1.6.2 外国投資法により進出した企業で、海外から招聘され就労する者の労働許可条件

 マレーシア半島では、非熟練、中級労働者、熟練労働者ともに外国人の雇用は、内務省の認可が必要である。一方、サバ州、サラワク州とラブアン直轄地では、外国人を雇用するためには、許可証と外国人雇用枠を労働局と外国人労働者管理委員会からそれぞれ取得しなければならない。外国人を招聘して雇用する手続きに民間の斡旋業者を利用する企業は、民間の斡旋業者は1981年民間職業紹介法で規制されており、労働局の免許取得が義務付けられていることに留意しておくべきである。
 マレーシアの出入国は、1959年及び1963年入国管理法によって管理されている。同法は、マレーシアへの出入国認可、入境許可、到着時の手続き、マレーシアからの退去、違反行為、またサバ州、サラワク州、ラブアン直轄地の特別条項などを規定している。
 外国企業は業務上の技能を有するマレーシア人が存在しない地域に、必要な職員を連れてくることが許されている。同時に政府はそのような外国人の技能を活用することを認める一方で、企業にマレーシア人を教育し、技能を習得させ、その会社の各階層の人種構成がマレーシアの人種構成と同様になるようにするよう努力することを要求している。
 入国管理局その他の認可機関は、外国人雇用申請の審査過程で、次のような点を考慮して審査する。

  • 外国人の地位の適格性
  • 会社の払込資本金
  • 会社の資本構成

 組織の幹部の地位に外国人をつける場合の条件として、次のようなガイドラインがある。

  • 外資からの払込資本金が200万ドル以上ある会社は、自動的に幹部も含めて5人の外国人を雇用することが認められる。それ以上については、申請に基づき審査する。
  • 外資からの払込資本金が200万ドル未満の会社の外国人雇用については、以下の基準で考える。
    • 幹部職に外国人が就けるのは、外資の払込資本金が50万リンギ以上の場合
    • 管理職に就くには、専門分野の資格と実務経験が必要となる。外国人の雇用期間は、マレーシア人が訓練を受けてその職を代替できるための条件にもよるが、最大で10年間である
    • 外国人の一般職雇用については技術と経験があることが条件であり、雇用期間は、マレーシア人が訓練を受けてその職を代替できるための条件にもよるが、最大で5年間である

 外国人の雇用申請をするにあたり、出資者は労働同許可申請手続きを担当するマレーシア出入国管理局とよく協議をする必要がある。外国人の労働許可には、2年間有効の雇用許可と、1年間有効の専門家派遣許可がある。
 2003年6月17日より、マレーシア政府は外国人雇用規制を、より緩和している。そのガイドラインは、次のとおりである。

  1. 外資の払込資本金が200万ドル以上の製造業者
    • 自動的に5人の幹部社員を含む、10人の外国人を雇用できる
    • 外国人期間雇用は、管理職は10年間、一般職は5年間の雇用を認める
  2. 外資の払込資本金が20万ドル以上で、200万ドル未満の製造業者
    • 自動的な外国人雇用許可は、最低1名の幹部を含む5名まで
    • 外国人期間雇用は、管理職は10年間、一般職は5年間の雇用を認める
  3. 外資の払込資本金が20万ドル未満の製造業者は、幹部についても機関雇用についても、現行のガイドラインを基本とする

 幹部社員については、50万リンギ以上の外資の払込資本金がある場合に、考慮される。しかし、この数字はあくまでガイドラインであり、外国人幹部社員の人数については、マレーシア人への訓練実施等の貢献により認められる。
 外国人の期間雇用については、専門的技能や実務経験などを有する管理職については10年まで、技能・経験を有する一般職については5年までの雇用を認める。しかしこれらの雇用については、マレーシア人が代替できるように教育を行うことが条件となる。幹部社員及び期間雇用外国人の人数については、すべてその必要性によるものである。
 マレーシア人が保有する製造業でも、外国人のR&Dを含む技術職員の雇用は、申請が行われれば認められる。情報通信技術以外の製造における外国人技術者の雇用は、当該技術者が27歳以上であることが条件である。情報通信関係の場合は21歳以上が条件となる。
 同じ企業の中で外国人職員の地位に異動が起きた場合は、新しい雇用許可の取得が必要である。この場合は、元の雇用許可証に変更事項が記載されることになる。外国人職員が新しい外国人と交代する場合は、新しい雇用許可証が必要となる。
 雇用許可証の有効期限は、通常その地位の許可期間と同じである。しかしながら幹部社員の許可証は、下記の場合を除き、更新可能ベースで5年間である。

  • パスポートの有効期間が5年以内の場合
  • 雇用契約の期間が5年以内の場合
  • 雇用主が当該外国人の雇用期間を5年以内としている場合

 雇用許可証を保有している外国人は、その有効期間に対応する期間有効なマルチプルビザ(ビザの有効期間中は何度でも出入国が可能)を取得できる。

1.6.3 海外から招聘され就労する者の加入義務のある制度

 前述したように、マレーシア半島では、非熟練、中級労働者、熟練労働者ともに外国人の雇用は、内務省の認可が必要である。一方、サバ州、サラワク州とラブアン直轄地では、外国人を雇用するためには、許可証と外国人雇用枠を労働局と外国人労働者管理委員会から個別に取得しなければならない。 必要に応じて設定される条件にもよるが、外国人の雇用許可は基本的に個々の必要性を考慮して決定される。
 雇用許可が発行された後、雇用主は出入国管理局に入国許可(一時雇用)の申請をする。出入国管理局は申請を受け付けた後、労働者の母国にある大使館に連絡し、照会ビザ(VDR)が発行される。労働者はマレーシア入国後1〜2カ月以内に出入国管理局指定の様式に沿って、Fomema※2で健康診断を受診しなければならない。その後、出入国管理局が当該労働者の入国許可(一時雇用)を発行する。
 本当に必要な外国人のみの雇用であることを担保するために、外国人労働者には賦課金が科される。農業及び家庭内の使用人の場合、年間540リンギが賦課され、他の職業の場合はさらに高い金額が科される。
 外国人雇用手続きのさらに詳しい情報は、下記ウェブサイトなどを参照のこと。
 http://www.registercompany.com.my/
index.php?mid=1103

※2
政府の委託で、年次健康調査プログラムに基づき、外国人労働者の健康診断の監督をしている会社。

参考文献

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