各国・地域情報

フィリピン

更新年月日:2009年8月5日

雇用労働関係法令

1.1 雇用労働関係法令一覧

 フィリピン労働法は、フェルナンド・マルコス政権下の1974年5月1日(労働者の日)に制定された、労働と雇用に関する国家の政策を規定する法令・規則及び原則の集合体である。同法においては、雇用に関する労働者並びに雇用者の権利と義務は、規範もしくは法の枠組みのいずれかより良い労働条件が適用される。同法は雇用前、人的資源開発計画、雇用条件、健康安全、社会福祉、労使関係及び雇用後に関する規則を規定している。同法は職場に関するあらゆる法律が組み入れられ、調和して機能するよう策定されている。また、新たな問題が生じた際にはそれも組み入れるよう継続的に修正される。同法には労働者側に有利な規定も含まれ、第282から第284条に規定された正当な理由を除き、民間企業における労働者の解雇を禁止している。労働組合の権利と同様に、組合がクローズドショップ※1を主張する権利も明白に認めている。ストライキも同法の下で、厳格な要件に合致する限り許可されている。ただし、不法ストライキを組織、又は参加した労働者を解雇することはできる。さらにフィリピンの法曹界では、特にこの労働法の解釈に疑念がある場合、労働者側に有利に経営者側に不利な決議がなされるという規則を長く採用している。

※1
特定の労働組合への加入を労働者雇用の条件とし、脱退・除名により組合員の資格を失うと解雇される制度。

1.2 労働基準関係法令

1.2.1 労働契約

 フィリピン憲法は、国家政策によるだけでなく社会的正義と人権に関する規約によって、労働者に同情的でその権利を保護している。したがって、労働契約は高い次元に置かれ、より手厚い保護措置策が取られている。このようsに労働契約(雇用契約、特に雇用者が準備したもの)は雇用者側に厳格に労働者側に寛大になるよう解釈される。フィリピン労働法は通常雇用条件を含む雇用契約を神聖なものとして保護している。また、雇用契約には労働者の正式雇用日、報酬と給付手当、役割と責任も記載されている。雇用日は労働者の試用期間にも影響するため重要である。

  • 労働法第281条 見習雇用
      見習雇用は、6カ月以上にわたる長期の養成訓練契約が適用される場合を除き、就労開始日から6カ月を超えてはならない。見習雇用の労働者は正当な理由があるか、雇用契約時に雇用者側が示した合理的基準に照らし正社員として適任でないと評価されれば契約を打ち切られる。見習雇用終了後も就労を許された労働者は正規労働者と見なされる。
     フィリピンでは、船員は有期契約労働者と見なされる。船員の雇用は、再雇用の契約ごとに決まり、その雇用は契約満了時に終了となる。労働法第280条の例外により、船員は正規労働者とはみなされない。

1.2.2 解雇規則

 フィリピンにおける労働者の雇用契約終了は非常に重大なことと受け取られ、特に見習雇用が終了し正規労働者である場合、複雑な手続きになる可能性がある。フィリピン憲法では、どんな形であれ非自発的労役は有罪と宣言された者がその犯罪に対する罰として強いられる以外は存在しないとしている。非自発的労役禁止に鑑み労働者は労働法第285条で退職する権利が与えられている。同規定では、しかるべき理由がある場合とない場合の2種類の退職を認めている。しかるべき理由がなく退職する場合、雇用者が仕事上の混乱を防止するため交代要員を探せるように労働者は30日以上前に書面で雇用者に通知する必要がある。労働者が書面による通知を怠った場合、損害の責を負う危険性がある。同規定は、正当な理由に該当する退職理由も示している。

  • 労働者の名誉、人格に対する重大な侮辱
  • 非人道的で耐えがたい処遇
  • 労働者本人又はその家族の肉親に対する犯罪行為
  • その他類似の事由

 正当な理由により退職する場合、労働者は書面による通知を必要としない。強制的辞職は許されず推定解雇(みなし解雇)となる。推定解雇とは、(a)降格や賃金減額により勤務の継続が不可能、非合理、又は可能性がない場合、(b)労働者が耐えられないような明らかな差別待遇、冷遇、軽蔑の際に訴える非自主的辞職をいう。差別待遇とは、恩恵を被る者と被らない者との間に合理的な差異がないにもかかわらず、不平等な取り扱いをすることと定義される。この場合、立証責任は告訴人又は労働者にある。フィリピンの法律では、労働者の定年退職は労働法第287条に従って自主的、もしくは強制的のいずれかとなる。

  1. 労働者の解雇
     雇用者と労働者双方に権利は平等に存在し、雇用者は労働者の意思に反し働かせることはできず、一方で雇用者に労働者を継続雇用できない合法的な理由があれば労働者は雇用を無理に迫ることはできない。したがって、雇用者は正当な又は公に認められる理由があれば、法律で規定されている手続きを経て労働者の雇用を打ち切ることができる。ただし、雇用者は適切な公開討論の場で労働者解雇の適法性を立証する責任がある。労働者側に非難に値する行為がある場合は正当な理由による解雇となる。重大な不正行為、意図的な命令違反、常習的な職務怠慢、詐欺的・意図的背任、犯罪行為、以上の項目に類似する他の事由がある場合は解雇することができる(労働法第282条)。公に認められる理由には、業務上の理由と疾病の2種類がある。業務上の理由としては省力化設備の導入、余剰人員、人員削減、工場閉鎖又は停止がある(労働法第283条)。雇用者が疾病を理由に雇用を終了する場合には、労働者の疾病が治療によっても6カ月以内に回復することが不可能な性質、段階であるとの証明書を適格な公共の医療機関から入手しなければならない(労働法第284条、労働法施行規則第4巻)。臨時雇い、すなわち有期契約労働者は正社員ではなく契約労働者である。したがって、契約満了を理由に解雇しても不当解雇とはならない。雇用終了の通告を怠っても、ある一定期間雇用する契約はその期間の末に終了するため影響はない。

  2. 雇用終了の理由
     6カ月以内の業務作業や事業の停止、あるいは軍務、市民としての義務を果たす場合は雇用関係を終了させる理由とは見なされない(労働法第286条)。会社法(80節)の下では、合併・統合により存続・統合される法人は、合併企業すべての権利義務、資産・負債を自動的に引き受けることになる。これには労働契約のような法的に有効な協定の下での義務や負債が含まれる。したがって、存続・統合される法人は合併企業の労働者の在職期間と在任期間を保障しなければならない。合併や統合が実行されても雇用の権利・義務の継承権は生じる。

  3. 通知と保護措置手続き
     労働者に起因する行為や不作為が認められる正当な理由に基づく解雇、並びに業務上の理由、疾病を根拠とする公に認められる理由により解雇する場合、雇用者に解雇を認めている。公に認められる理由による解雇は退職金の支払いが義務付けられている。不当解雇の判断が下ると、労働法第279条により復職及び未払い賃金の支払いが義務付けられる。不当解雇であっても復職が不可能な場合は退職金を支給しなければならない。手続きは、(a)解雇が労働法第282条に基づく正当な理由で行われる場合、雇用者は労働者に2通の書面で通告し雇用が終了する前に釈明する機会を与えなくてはならない。(解雇を求める根拠を明確に述べた通告と、釈明する機会を与えた後の解雇決定通告の2通)、(b)解雇が労働法第283、284条に基づく公に認められる理由による場合、雇用者は解雇日の30日前までに労働者、フィリピン労働雇用省(Department of Labor and Employment:DOLE)双方に書面で通告しなければならない。

  4. 解雇に伴う退職金
     公に認められた理由による解雇の場合、雇用者は理由に応じて退職金を労働者に支払わなければならない。省力化設備の導入や余剰人員による解雇の場合、退職金は勤続年数1年当たり1カ月分の給与又は1カ月分の給与のいずれか高い額になる(労働法283条)。深刻な営業損失又は疾病による解雇ではなく、企業の損失、閉鎖、休止を防ぐための解雇であれば、退職金は勤続年数1年当たり2分の1カ月分の給与又は1カ月分の給与のいずれか高い額になる(労働法第283、284条)。ただし、深刻な営業損失による企業閉鎖の場合は退職金を支払う義務はない。

  5. 解雇事情を考慮する適正手続き
     適正手続きとは、労働者が解雇の理由を知る権利のことであり、正当な理由の場合は労働者本人に釈明する機会が与えられる。

  6. 雇用終了における適正手続きの構成要素
     正当な理由による雇用終了の場合、適正手続きは2つの通告規定が必要である。
    • 労働者に対して、雇用終了の理由を明記した通告を文書で行うこと、当該労働者に解雇事由に反論する、自身の証拠を提示する、不利な証拠に反論する釈明もしくは協議の機会を与えること
    • 当該労働者に釈明の機会を与え、すべての状況を十分考慮した上で、労働者の雇用終了を正当化する理由を明記した通告を書面で行うこと
     公に認められる理由による雇用終了の場合、労働者に対して雇用終了の少なくとも30日前に理由を明記した通告を書面で行うことが適正手続きとなる。解雇通告の写しはフィリピン労働雇用省の地方事務所へ提出しなければならない。

  7. 労働者は解雇の合法性を問うことができる
     解雇の合法性については不当解雇の苦情申し立てを通じて全国労使関係委員会(National Labor Relations Commission:NLRC)の労働仲裁人の前で質問することができる。労働協約での取り決めにより、解雇は全国労使関係委員会の下に設立された苦情処理機関を通じ議論される。問題がこの段階で解決に至らなければ任意調停に委ねられる。

  8. 不当解雇された労働者に与えられる権利
     正当な理由もなく解雇された労働者は下記のいずれか、又はすべての権利を有する。
    • 先任権※2を失うことのない復職、又は復職がかなわない場合の退職金
    • 諸手当を含む未払い賃金、その他の利益、又は給与支払いの停止から復職までの期間を算定した相当額
    • 解雇が悪意で行われた場合の損害賠償と弁護士費用
    • 復職
    • 復職とは労働者が不当に解任された元の職場に復帰させることを意味する
     先任権を失うことのない復職とは、年功と雇用の継続性も含めて復職した当該労働者をあたかも解雇がなかったように扱うことである。労働仲裁人が不当な解雇と裁定する場合は、たとえ上訴中であっても復職は直ちに行われる。
    ※2
    先任権(seniority rights)とは、解雇や一時帰休を実施する場合、勤続年数の短い労働者から行い、勤続年数の長い労働者の雇用を優先する権利をいう。

  9. 復職が行われる形態
     復職を実際行うか、職は与えず単に給与支払簿上に載せ給与を支払うだけにするかは雇用者の随意である。

  10. 未払い給与
     未払い給与は、労働者が解雇された日から復職に至るまでの間の手当やその他の給与、労働者が不当解雇により得られなかった金銭相当額を含むすべての補償金に当てはまる。不当解雇の場合、他の職を見つけた労働者は前の雇用者から未払い給与を全額受け取る権利を有する。未払い給与の支払いは、労働者を不法解雇した雇用者に法律上罰金を科す形で行われ、解雇された労働者が既に再雇用され他の職場で賃金を受け取っていても、この罰金が消滅することはない。労働者の元の職場が復職の時点で存在していない場合、労働者には先任権を失うことなく同じ企業内で実質的に同等の環境と、復職まで支払われず保留されていた賃金が与えられなければならない。

  11. 解雇に直面する労働者が雇用者からの問責に答えるための妥当な期間
     すべての問責に期間内で答え、証拠を集め、不利な証人に反論できるよう労働者に妥当な期間が与えられなければならない。その期間には組合幹部あるいは代理人の助けを確保する機会も含まれる。他の問題と比較して、労働者に対する問責の重大さに基づき妥当な期間が与えられなければならない。労働者が雇用者によって提起された問責に答えるべく準備をする間、会社の敷地内に当該労働者がいると、雇用者あるいは同僚の生命や財産に深刻かつ差し迫った脅威が存在する場合は、義務違反に問われた労働者を30日間だけ予防的に停職とすることができる。30日を経過した後は、当該労働者を元の職場、又は実質的に同等の職場に復帰させなければならない。ただし、雇用者は労働者に停職中の賃金や他の利益を支払うことにより停職期間を延長できる。雇用者が調査完了後に労働者の解雇を決定する場合、当該労働者には延長期間に支払われた金額を払い戻す義務はない。雇用者は解雇理由を明記した文書によって解雇決定を労働者に直ちに通告する義務がある。予防的停職は懲戒の手段ではなく、罰として科せられる停職とは区別しなければならない。

1.2.3 賃金、労働時間、休憩、休日、年次有給休暇、時間外及び休日労働、時間外の割増賃金

  1. 一般賃金政策
     労働者に賃金を供するのは雇用者の義務である。賃金は現金、法貨で職場、又はその周辺で支払われる。しかし労働者の過半数、かつ25名以上の労働者から書面による申請があり、銀行が半径1キロ圏内にあれば銀行を通して支払うことができる。賃金は2週間に最低1回、16日を超えない間隔で支払われる。雇用者の事業が倒産あるいは清算される場合、労働者は政府や他の債権者の権利より優先してその賃金や金銭的権利を享受する。

  2. 最低賃金固定制度
     共和国法第6727号の賃金合理化法(Wage Rationalization Act)では、産業部門別に適用する法定最低賃金を定めている。具体的には、非農業、大規模農業、非大規模農業、家内工業/手工芸、小売及びサービス業の部門があり、分野によっては労働者数、資本額、年間売上金額により法定最低賃金が定められる。同法では、地域三者賃金生産性委員会(Regional Tripartite Wage and Productivity Boards:RTWPBs)を創設することによって、定められた基準で国内16地域の賃金率を決定することとし、賃金の政策決定を合理化した。同様に賃金命令(Wage Order)では、法令順守が免除される基準と手続きを規定しており、賃上げの代わりに諸手当の支給を容認する賃金命令もある。賃金命令の下に規定される賃上げは、あらゆる民間部門の労働者、従業員に適用され、地位、称号、身分、賃金支払い方法も問わない。ただし、下記の者は例外である。
    • 家族専属の運転手、個人的サービスを行う労働者を含む、家事手伝い及び家庭内の使用人(こうした労働者の労働条件は共和国法第7665号に規定されている)
    • 地域三者賃金生産性委員会が定めた期間について、法令順守を免除される、常時雇用される労働者が10人以下の小売、サービス業の労働者及び従業員
    • 地域三者賃金生産性委員会から法令順守を免除された企業及び雇用者に雇用される労働者、従業員

  3. 労働時間と適用範囲
     労働時間と適用範囲の規定は営利、非営利目的にかかわらず、すべての組織と企業の労働者に適用されるが、政府公務員、管理職、外勤職員、雇用者の扶養家族、家事手伝い、個人的サービスを行う者、労働雇用大臣が定める出来高払いの労働者には適用されない。ここでの管理職とは、主要な任務が勤務する企業の部門、又はその一部を経営、監督する会社の幹部をいう。外勤職員とは、非農業従事者でその任務が事業の主要営業所や雇用者の支店から離れて行われ、実際の労働時間が確かには定められない者をいう。

  4. 労働時間
     労働者の通常労働時間は1日8時間以内とする。この労働時間には、労働者が勤務、又は指定された職場にいることを要求された時間、並びに労働を許可された全時間が含まれる。勤務時間中の短時間休憩も労働時間と見なされる。
    1. 食事休憩
       労働雇用大臣が定める規定に従い、雇用者は食事のため60分以上の休憩時間を労働者に与えなければならない。
    2. 深夜労働に対する手当
       午後10時から翌朝6時までの深夜労働に従事する労働者には、1時間当たり通常賃金の10%以上の深夜労働手当が支給される。
    3. 時間外労働
       1日8時間以上の労働に対しては、時間外労働手当が支給される。
      • 通常の日の時間外労働手当
        8時間を超えた時間数×(時間当たりの通常賃金×125%)
      • 休業日(週休)、特別休日あるいは祝祭日の時間外労働手当
        8時間を超えた時間数×(時間当たりの休日・祝祭日賃金×130%)
    4. 規定時間未満の労働と時間外労働の相殺禁止
       特定日の規定時間未満の労働を他の日の時間外労働と相殺してはならない。週の他の日に代替休暇を取る許可を労働者に与えても、雇用者は義務付けられた時間外労働手当の支払いを免除されない。
    5. 緊急時の時間外労働
       下記のような場合、労働者は雇用者から時間外労働を要請される。
      • 国が戦争状態にある場合、又は国会、大統領が全国あるいは一部地域において非常事態宣言をした場合
      • 生命、財産の喪失を防ぐ場合、又は重大な事故、火事、洪水、台風、地震、伝染病、その他の災害や惨事により当該地域で非常事態が発生もしくは発生しそうで公共の安全が危険にさらされる場合
      • 雇用者が深刻な損失や損害、同様の事態を回避するため機械、設備、装置を使用し緊急作業をする場合
      • 腐敗しやすい商品の損失、損害を回避するための作業が必要な場合
      • 雇用者の業務や経営に深刻な障害や不利益を回避するため、8時間労働が終了する前に開始した作業を遂行、継続する必要がある場合
    6. 追加手当の計算
       時間外労働と他の追加手当を計算する際、労働者の通常賃金とは現金賃金のみのことであり、雇用者から提供される他の便宜は含まれない。
    7. 週休
       営利目的の有無にかかわらず雇用者は労働者に連続6日の通常勤務ごとに24時間以上連続で休息時間を提供する義務がある。労働協約や労働雇用大臣が定める規則に従い、雇用者は労働者の週休日を確定し日取りを決めなければならない。ただし、労働者が宗教的理由に基づき週休日を選択する場合、雇用者はそれを尊重しなければならない。
       以下の場合、雇用者は労働者に任意の日に労働を要求することができる。
      • 重大な事故、火事、洪水、台風、地震、伝染病、その他の災害や惨事により非常事態が発生もしくは発生しそうで、生命、財産の喪失が予想される場合
      • 雇用者が深刻な損失を回避するため機械、設備、装置を使用し緊急の労働を必要とする場合
      • 雇用者が他に取るべき手段のない特殊な状況で、異常なほど仕事が立て込んでいる場合
      • 腐敗しやすい商品の損失、損害を回避する場合
      • 仕事の性質上、継続した一連の作業を必要とし、作業の中断が雇用者の重大な損害や損失につながる場合
      • 前記の規定と類似の状況下で労働雇用大臣が定める場合
    8. 休日、日曜日、祝日労働の手当
       労働者が予定した休日に労働することを要求又は許可された場合、通常賃金の最低30%が追加手当として支払われる。日曜日については、休日として指定されている場合のみ、労働者は追加手当を受ける権利がある。
      • 休日労働の追加手当
        通常賃金×130%以上
      • 特別休日と予定休日(週休)が重なる日に労働した場合の追加手当
        通常賃金×150%以上
      • 労働協約や他の雇用契約にこの規定より高い割増支給が明記されている場合、雇用者は取り決めに従って手当を支給しなければならない。

  5. 休暇
     1年以上勤務した労働者には、1年に5日の有給休暇を取得する権利が与えられる。ただし、ここで規定されている恩典をすでに享受している者、5日の有給休暇を取得している者、常時従業員が10人以下の企業又は労働雇用大臣が企業の実行可能性及び財務状況を考慮した上でこの恩典が免除された企業の労働者にはこの規定は適用されない。この規定を超える恩典の保障は、仲裁、いかなる裁判、行政行為の対象にならない。特別休暇は病気や休暇旅行にも使用でき、未使用の特別休暇は年次末に同等の金銭に交換できる。交換時の賃金レートを基に計算され、この恩典の使用及び現金化は比例計算で行われる。

  6. 育児休暇
     育児休暇手当(共和国法第1161号、共和国法第8282号で改正)は既婚、未婚にかかわらずすべての女性に適用される。民間部門の妊婦労働者には、平均日給の全額が育児休暇手当として支給される。ただし、育児休暇手当は最初の4回の出産に対してのみ支給される。通常分娩、流産の場合60日の休暇、帝王切開の場合78日の休暇が与えられる。これらの恩典を受けるためには、下記の条件を満たさなければならない。
    • 社会保障制度(Social Security Service:SSS)に加入し、女性労働者が出産あるいは流産の時点で雇用状態であること
    • 雇用者を通じ社会保障制度に必要な届け出をしていること
    • 出産日の直前12カ月間に社会保険料を3回以上納付していること

  7. 父親育児休暇法
     職を持つ父親も父親育児休暇を受ける資格がある。共和国法第8187号の1996年父親育児休暇法(Paternity Leave Act of 1996)は、民間部門のすべての既婚男性労働者に適用され、法律上の配偶者による最初の4回の出産に対し、基本給、諸手当及び他の金銭的恩典を含む7日間の有給休暇が与えられる。父親育児休暇が利用できない場合、休暇の現金化はできない。既婚の男性労働者は次のような条件の下で父親恩典の権利がある。
    • 子供が生まれる際に労働者であること
    • 労働者が配偶者の出産あるいは流産時にその配偶者と同居していること
    • 会社の規則に沿って父親育児休暇を申請し、届け出をしていること
    • 妻が出産あるいは流産したこと
     この規定に違反した場合には罰則があり、規定を濫用する者には2万5,000ペソ※3以下の罰金、又は30日以上6カ月以下の禁固が科される。
    ※3
    1フィリピン・ペソ=1.9857円(2009年8月5日現在)

  8. 一人親の育児休暇
     共和国法第8972号の一人親福祉法(Solo Parent Welfare Act)では、子供のそばに居て務めや責任を果たす必要がある場合、一人親には育児休暇が与えられることを保障している。この恩典は法律で規定された10の境遇にある、親の責任を一人で果たさねばならない一人親、又は個人に与えられる。現行法の下で定められた休暇の権利に加え、この育児休暇は基本給と義務手当を含めて毎年7日の有給休暇が与えられる。ただし、下記の条件に当てはまらなければならない。
    • 本人が連続、又は非連続で1年以上仕事をしていること
    • 本人が有効期限内に休暇を利用すると雇用者に通知していること
    • 本人が居住する都市、又は地方自治体の社会福祉開発省(Department of Social Welfare and Development:DSWD)が発行する一人親身分証明書を雇用者に提示していること
     育児休暇を当該年に利用しない場合、事前に明確な取り決めがない限り、休暇の現金化はできない。会社の方針あるいは労働協約の下で類似の恩典がある場合、類似の恩典に従う。例えば、現行の休暇がこの法令に規定された7日より長い場合、その長い日数が適用される。

  9. 女性とその子供に対する暴力被害者のための休暇(VAWC)
     共和国法第9262号の2004年女性とその子供に対する暴力防止法(Anti-Violence Against Women and their Children Act of 2004)に定義されるように、女性とその子供に対する暴力とは、妻、前妻、異性関係にある又は持っていた女性、共通の子供を持つ女性に対して、また、嫡出、非嫡出子に関係なく子供に対して、家族の住居内・外を問わず、脅迫、殴打、暴行、抑圧、嫌がらせ、独断的な自由の剥奪を含む肉体的、性的、心理的に危害、苦しみ、経済的虐待を与える行為のことである。共和国法第9262号で定義された被害者に該当する民間部門の女性労働者は、労働法の下で他の有給休暇に加え10日以下の有給休暇が取得できる。保護命令で規定されたような必要性が生じた場合は、有給休暇の延長も可能である。この休暇は、女性労働者の治療日、法的手続きを行う日等を対象としなければならない。この恩典を利用する場合、訴訟が係争中であるなどの事情によっては、女性労働者はバランガイ※4長(Punong Barangay)/ カガワド※5(Kagawad)、又は検察官、裁判所の書記官から証明書を入手しなければならない。休暇が利用できない場合、現金化も日数を累積することもできない。
    ※4
    バランガイ(Barangay)は、市及び町を構成する地方自治体の最小単位。
    ※5
    バランガイ長の下に属する役員。

  10. フレックス労働協定
     フレックス労働協定は、現在のような経済的苦境時、国家的緊急時に対処するための仕組みと救済策の一つとして、フレックス労働協定を遂行する雇用者と労働者を支援、指導するため、2009年1月29日に発布された。フレックス労働協定の採択は、労働者の突然の解雇、企業の完全休業の代案と受け止められている。フレックス労働協定は自由意志に基づき、その条件は雇用者・労働者双方に容認されなければならない。また、フレックス労働協定は経費削減の見地から有益であると認められ、業界内での競争力、生産性を維持しながら仕事の確保にも役立つ。労働雇用省(DOLE)は、企業の業績、財務内容悪化の可能性を考慮に入れて、雇用者が労働者と協議した上で締結されたフレックス労働協定が望ましくかつ実用的であると認めている。このフレックス労働協定では、従来の標準労働時間、労働日数、1週当たりの労働時間を除く、代替協定もしくは代替計画であり、その有効性と履行については本来、一時的なものでなければならない。雇用者が考えるフレックス労働協定は以下のようなものである。
    1. 週労働時間の圧縮
      週48時間労働は据え置き、週の労働日数を6日以内にする。1日当たりの労働時間を8時間以上12時間以内とし時間外割増金は支払わない。労働雇用省勧告No.2、2004年12月2日付2004シリーズ規定条項に準じ、会社の通常労働時間を調整できる。
    2. 就業時間の減少
      週当たりの労働日数を減らす。ただし、期間は6カ月以内とする。
    3. 労働者のローテーション制
      週当たりの労働時間内で労働者に輪番で仕事を与える。
    4. 強制休暇
      労働者に数日あるいは数週間の休暇を義務付ける。
    5. 断続的予定
      仕事は連続的には与えられない。ただし日・週当たりの労働時間は変わらず。
    6. フレックス休日
      労働者の同意を得て、現行の恩典を保障する条件で休日を他の日に振り替える。
     このようなフレックス労働協定の下、雇用者と労働者はいかなる合意、会社方針、慣行があっても、労働者の収入の損失を緩和する代替案を模索している。フレックス労働計画の当事者は、その運営に一義的な責任を持つ。解釈に相違点がある場合、下記の指針を守らねばならない。
    1. 相違点は、会社の適切な苦情処理機構で苦情として扱わなければならない。
    2. 苦情処理機構がない場合、あるいは機構自体が不適切な場合は、苦情は調停のため職場に関する司法権を持つ地方局に委託される。
    3. 苦情の解決を容易にするため、雇用者は記録の保持、保存が義務付けられている。フレックス労働協約の自主的締結には、文書による合意が必要条件である。
     雇用者はフレックス労働協約を導入する前に、職場の監督司法権を持つ地方局を通じて労働雇用省に通知しなければならない。この通知は、注意書に添付された通知様式で行わなければならない。地方局は、導入されたフレックス労働協約の内容が発行内容に一致しているかを確認するため、現地を訪問し査察を行う。

  11. 国民の祝祭日
     フィリピンには共和国法第9492号が定める一般祝祭日と、大統領令第292号(1987年共和国行政法第7章、第26条)で定める特別祝祭日がある。
    1. 一般祝祭日
      • 元日(New Year’s Day)(1月1日)
      • バターン記念日(Bataan Day / Araw ng Kagitingan)(4月9日)
      • 聖木曜日(Maundy Thursday)(移動祝日)
      • 聖金曜日(Good Friday)(移動祝日)
      • メーデー(Labor Day)(5月1日)
      • 独立記念日(Independence Day)(6月12日)
      • 英雄の日(National Heroes Day)(8月の最終日曜日)
      • ラマダン明け祝日(Eid-ul-Fitr)(移動祝日)
      • ボニファシオ記念日(Bonifacio Day)(11月30日)
      • クリスマス(Christmas Day)(12月25日)
      • リサール記念日(Rizal Day)(12月30日)
      • 法律で定められた総選挙実施日
    2. 特別祝祭日
      • ニノイ・アキノ記念日(Ninoy Aquino Day)(8月21日)
      • 万聖節(All Saints’ Day)(11月1日)
      • 大晦日(New Year's Eve)(12月31日)
    3. 一般祝祭日の賃金
      1. 労働者の通常労働日
        労働しない場合:通常賃金×100%
        労働した場合:最初の8時間は通常賃金×200%
               8時間以降は通常賃金×200%×130%
      2. 労働者の週休日と一般祝祭日が重なる日
        労働しない場合:通常賃金×100%
        労働した場合:最初の8時間は通常賃金×200%×130%
               8時間以降は通常賃金×200%×130%×130%
    4. 特別祝祭日の賃金
      1. 労働しない場合
        特別祝祭日に給与支払いを認める善意の会社方針、習慣、又は労働協約がない限り無給
      2. 労働した場合
        最初の8時間:通常賃金×130%
        8時間以降:通常賃金×130%×130%
      3. 労働者の週休日と特別休日が重なる日に労働した場合
        最初の8時間:通常賃金×150%
        8時間以降:通常賃金×150%×130%
    5. 特別労働休日
       通常労働日と考えられ割増賃金は必要とせず、労働者は基本給に対する権利のみが認められる。
    6. 一般祝祭日の有給の権利
      • 常時10人以下の労働者を雇用する小売業、サービス業を除き、一般祝祭日には労働者に対して通常の日給が支払われる。
      • 雇用者が一般祝祭日に労働者を働かせる場合、当該労働者には通常賃金の2倍に相当する報酬が支払われる。
    7. サービス料
       ホテル、飲食店、これに類似する店舗で徴収するすべてのサービス料は労働者に85%、経営側に15%の比率で分配される。労働者に対する分配金は、労働者の間で平等に分配しなければならない。サービス料が撤廃される場合は、労働者への分配金は給与にまとめられたと解釈される。

  12. フィリピンでの13カ月目の給与
     フィリピンでの13カ月目の給与は、労働者が当該年に受け取った基本給の1カ月分である。雇用終了の理由を問わずフィリピン人労働者の雇用期間が1年以内であった場合、給与の総合計を当該労働者の雇用月数で割って金額を確定する。この給与は、労働者の通常給与の一部とは見なされず、合算されない。この計算から除外される項目は、未消化の休暇相当額、病気休暇手当、時間外労働手当、割増賃金、深夜労働手当、休日手当、物価手当である。ただし、会社の習慣、方針によってこれら恩典が基本給の一部として取り扱われる場合は、13カ月目の給与の計算に含めなければならない。法律により雇用者はこの給与を12月24日以前に支払うよう義務付けられているが、通常の学校年度開始日前に半分を、残り半分を12月24日に支給することができる。
    1. 13カ月目の給与の範囲
       フィリピンの法律では支給義務のないボーナスと、義務のある13カ月目の給与を混同してはならない。雇用者が支払い義務のある13カ月目の給与に加え、ボーナスを労働者に支給するのは任意である。12月の早い時期にフィリピン人労働者に13カ月目の給与を支給すれば歓迎される。12月24日までに支給しない場合は法律により処罰され、労働者の不満を大いに買うことになる。13カ月目の給与の法令がフィリピンで制定された際、既に雇用者からクリスマスボーナスを受け取っていた労働者は、会社給付に加え政府が臨時給与を政令で命じたと考えたが、この政令では既に13カ月目の給与に相当する金額を受け取っている労働者は適用を除外されている。義務的な13カ月目の給与に加え、クリスマスボーナスの維持を選択した会社も中にはある。
    2. 13カ月目の給与の納税義務
       13カ月目の給与受給者は、単にクリスマス関連の恩恵を受けるだけでなく、現行の税法では追加所得については最高3万ペソまで給与所得者の所得税が免除されている。この金額を超えた場合、該当する納税年度の労働者の総所得計算に算入しなければならない。通常労働者の所得に対する税金は雇用者が源泉徴収し、労働者が給与を受け取る前に国税庁に送金される。

1.2.4 年少者、女性、民族、外国人労働者、労働安全衛生、アウトソーシング(委託業務や派遣労働)

  1. 女性の雇用
     女性は年齢を問わず、下記の労働が禁止されている。
    • 工業関係での午後10時から翌朝午前6時までの労働
    • 商業、非工業関係での午前0時から翌朝午前6時までの労働
    • 農業関係での夜間労働。ただし、連続9時間の休息時間が与えられる場合を除く
     女性労働者の安全衛生を確保するため、雇用者は職場に座席、男女別のトイレ、洗面所、更衣室などの福祉設備を備えなければならない。改正労働法第135条の雇用条件に関する女性差別禁止の強化(Strengthening the Prohibition on Dsicrimination Against Women with respect to Terms and Conditions)(共和国法第6275号)は、1989年5月12日施行された。この法律によって、等価値の仕事には同一賃金、昇進、訓練の機会、研究、奨学金等の雇用条件において、雇用者が性別だけを理由に女性労働者を差別するのは違法とされる。共和国法第7192号の開発と国家形成における女性法(Women in Development and Nation Building Act)は1992年2月12日に施行された。同法では、国家形成における女性の役割を認め、女性と男性には平等の権利と機会を与えなければならないとして、女性と男性の法の下での基本的な平等を保障している。労働法では、雇用者が採用及び雇用継続の条件として、女性労働者の結婚禁止、結婚による退職及び解雇を規定すること、実際に解雇、免職、差別など、結婚を理由に女性労働者に損害を与えることを禁じている。同法では、さらに次のことを禁じている。
    • 労働法の下で付与されている女性労働者への恩典を拒否すること、あるいは恩典の享受を妨げる目的で女性労働者を解雇すること
    • 女性労働者の妊娠を理由に解雇する、あるいは妊娠・出産休暇中に解雇すること
    • 職場復帰した女性労働者を再妊娠の可能性を理由に解雇すること、あるいは職場復帰を拒否すること

  2. 年少者(児童)の雇用
     共和国法第9231号の虐待、搾取及び差別に関する児童特別保護法(Special Protection of Children Against Child Abuse, Exploitation and Discrimination Act)では、いかなる公共、民間施設においても15歳以下の年少者の雇用、労働を禁じている。ただし、以下の場合は例外とする。
    1. 両親、又は当該年少者の家族の一員である保護者の監督下で働く場合
    2. 年少者が果たす役割の程度にかかわらず、年少者の雇用、芸能活動、知識が不可欠な場合
     さらに、18歳以下の年少者が次の活動に従事することを禁じている。
    1. あらゆる形態による奴隷
    2. 児童売春
    3. 危険な麻薬類の生産、売買を含む不法・不正な活動
    4. 本質的に、もしくは状況によって危険が伴い、年少者の健康、安全、道徳に害を及ぼす恐れのある仕事
     同時に18歳以下の年少者を直接、間接にかかわらずアルコール飲料、タバコ、ギャンブル、暴力、ポルノの販売を促進する宣伝モデルとして雇用することを禁じている。15歳以下の年少者を雇う雇用者は、仕事、雇用の開始以前に労働許可書を入手し、必要条件に従い適正な書類を労働雇用省(DOLE)に提出しなければならない。
    1. 年少者の労働時間
      15歳以下:1日当たり4時間以内、週20時間を超えてはならない。午後8時から翌朝午前6時の間は働くことができない。
      15〜18歳:1日当たり8時間以内、週40時間を超えてはならない。午後10時から翌朝午前6時の間は働くことができない。
    2. 違反の罰則
      以下の場合は、企業は即時に永久閉鎖される。
      1. 共和国法第9231号の規定に違反した結果、当該企業が雇用する年少者が死亡、精神異常、深刻な身体上の障害を被った場合
      2. 当該企業、及び事業所が売春、わいせつ、又はみだらな見世物の目的で年少者を雇用している場合

  3. 外国人雇用
     労働法第40条ではフィリピンで職を求める非居住外国人は、フィリピン国内での就業前に必要な許可を得ることを義務付けている。外国人雇用許可証(Alien Employment Permit:AEP)は、外国人の就労予定地の司法権を持ち、フィリピンでの就労を認定するDOLE地方局長を通じて労働雇用大臣が発行する。この件に関しては、2006年7月1日に施行された労働雇用省令第75-06号の規則が適用される。労働雇用省は、外国人が希望する職務を遂行できる適任者が国内に不在であることを確定してから、外国人にフィリピンでの就労を許可する。いったん認可されると、雇用契約にもよるがAEPの有効期間は1年以上5年以下となる。DOLE地方局長は、有効なAEPを所持せず就労する外国人を発見した場合、1年当たり1万ペソの罰金命令を科す権限を有する。

  4. 障害者雇用
     障害者の全体的福祉とフィリピン社会への完全融合を確保するため、共和国法第7277号の障害者大憲章(Magna Carta for Disabled Persons)は雇用機会均等の権利を含む権利と特典を規定している。障害者は会社の他の労働者と同様の特典を受ける権利もある。共和国法第7277号に定義された障害者への差別行為及び法律条項違反は、その性格上刑罰に相当する。会社で直接係る責任ある地位の役員がその責を負う。違反者が外国人である場合、刑務所での服役後、更なる手続きなしに直ちに国外追放となる。一方、当該法律を忠実に遵守する雇用者には税制優遇措置がある。雇用者はその企業の納税総所得金額から障害者に支払われた給与、賃金総額の25%まで差し引くことができる。さらに、障害者に応分の便宜を提供することによって、障害者の技能を向上、改善させた民間企業はその向上、改善にかかる直接経費の50%を課税所得から追加で差し引く権利もある。

  5. 安全な労働環境
     雇用者は安全かつ衛生的な労働環境を与えて、労働者の勤務中における傷害、疾病、死亡に対してあらゆる予防策を講じなければならない。予防策としては、以下の設備がある。
    • 適切な座席、照明、換気
    • 適切な通路、出口、火災設備
    • 男女別の施設
    • 防護服、マスク、ヘルメット、安全靴、長靴、上着、制服等の安全装具
    • 薬、医療物資、救急用品一式
    • 労働者数や仕事の性質に応じて、無料で診療する医師、歯科医、及び診療所
     労働雇用大臣は、地方局長もしくは権限を付与された機関を通じ、視察の実施や執行権限の行使によって労働安全衛生(OSH)基準を遵守させている。
     企業は、以下の安全策を遵守しなければならない。
    • 建物構内には火災、非常時、危険標識及び安全指示を掲示する。常時見てわかる色と大きさの安全指示を備える。標識は安全基準に従った色、大きさとし、常時見えるようにする。
    • 自動車運転手が目で確認できるように「一旦停止」、「譲れ」、「立ち入り禁止」の標識を企業構内に適切に設置して安全性を向上させ、特に夜間の安全を確保する。
    • 身体障害者の労働は指定された職場に制限し、可能な限り企業内で安全と移動に都合のよい施設を提供しなければならない。
    • 建物、庭、機械、設備、通常のごみ処理機を清掃し、工程作業、倉庫、保管書類を整頓して職場を適切に維持管理しなければならない。
    • 化粧室、ロッカールーム、便所、手洗い、は男女別に提供する。
     2002年危険薬物法(Dangerous Drugs Act of 2002)(共和国法第9165号第48、49節)に準ずる労働雇用省令第53-03号の民間部門の麻薬追放職場運動の実施ガイドラインでは、10名以上の労働者を雇用する企業は安全な労働環境を確保するため麻薬追放職場運動の厳密な実行と、労働者の健康、安全、福祉の促進及び保護が義務付けられている。雇用者は麻薬を使用する労働者に更正を約束させ、事情次第では懲戒処分にすることができる。懲戒処分をする場合は、重大な違法行為、薬物検査を拒否する不服従などの根拠があり、法に基づく適正手続きを守らねばならない。薬物検査はスクリーニング(ふるい分け)検査と確認検査の2つから成り、保健省が正式に認定した薬物検査センターで随時実施される。

  6. エイズと結核予防
     共和国法第8504号の1998年フィリピン・エイズ予防管理法(Philippine Aids Prevention and Control Act of 1998)によれば、雇用の前提条件として強制的にHIVテストを実施することは非合法と考えられている。また、雇用前から雇用後を通じて、いかなる形においても雇用、昇進、任命を含む差別待遇を厳しく禁止している。企業は職場での機密保持に関する討議や、感染している労働者に対する態度を含めてHIV・エイズに関する基礎的知識と教育の提供が義務付けられている。労働雇用省令第73-05号の下では、すべての民間企業は結核予防管理方針及び計画を明文化し履行するよう義務付けられており、事業体の労働安全衛生計画に欠くことのできない部分でもある。

1.2.5 就業規則、労働協約

 労使間の労働協約は雇用者と組合間の契約であり、組合は企業内の労働者グループを代表するものと認定されている。労働協約の目的は国が定めた雇用の最低基準を改善することにある。その本質的特長は、不満や労働協約で発生する諸問題の解決であり、同時に雇用条件の明文化に当たり認定組合の代表を通じて労働者が実際に関与することにある。しかし、現在、労働協約が適用される民間部門の組合員は給与所得労働者の10%以下にすぎない。

1.3 労働関係法令

 フィリピン労働法は世界標準に合わせており、結社の自由、労働組合が組織された場合は団体交渉の自由など労働者の核となる諸権利を承認している。

1.3.1 労働組合

 労働団体は団体交渉を目的として、雇用者と雇用条件に関する交渉を行うため全体又は一部に存在する労働者の連合、組合である。労働団体は労働雇用省(DOLE)に登録された時点で合法的な労働組織となる。組合は組合員の恩典のため合法的活動に携わる。

1.3.2 労働争議解決システムに関する法令

 当事者間交渉では合意に至らずその相違点が労働争議になる場合は、当事者の一方、又は双方が合意を促すため中央調停斡旋委員会(National Conciliation and Mediation Board:NCMB)に願い出ることができる。NCMBでの調停手続きの期間中、双方は争議の早期解決を妨げるいかなる行為も禁じられている。解決に至らない場合、NCMBは双方に対し任意の仲裁人に事例の付託を勧めることになる。調停や仲裁が失敗し交渉が行き詰まった場合、当事者双方は相手方との合意を強く求める強制的方法に移行できる。交渉の行き詰まりを理由に雇用者がロックアウトを行う場合、あるいは労働組合がストライキを決行する場合は、それぞれNCMBに届け出なければならない。双方が係争中の間、NCMBは問題解決を促すため調停と仲裁協議を引き続き行う。

1.4 労働保険関係法令

1.4.1 労働者災害補償保険

  • 労災事故に対する労災補償プログラム(Employees’ Compensation Program:EC)給付金

 労災補償委員会(Employees’ Compensation Commission:ECC)は、労働雇用省の一部門として政策の調整と指導を行う、ECP実施のために設立された法人組織である。ECCは、労災補償プログラムの履行者として労災補償委員会は意味のある適切な保障を供するよう法律で義務付けされている。その主な役割は、(a)労災補償プログラムの改善政策と指針を明文化する、(b)制度上では不認可となるすべての労災補償請求を再審理し決定する、(c)職業上の健康、安全及び労働現場での事故防止に向け適切な政策と計画を考え出すことである。ECは1975年3月に施行された大統領令第626号の下に創設され、疾病、負傷、身体障害、死亡などの労災事故に際して、公共部門、民間部門の労働者及びその扶養家族に下記の給付金を支給している。

  • 疾病、負傷に対する医療給付金
  • 障害者給付金
  • リハビリ給付金
  • 死亡、葬儀給付金
  • 年金手当

1.4.2 雇用保険

 労働法には、失業保険に関する規定はなく、労働雇用省が国内外の失業者のために支援策を実施する。世界金融危機への対策として、政府は包括的生計緊急雇用プログラム(Comprehensive Livlihood and Emergency Employment Project:CLEEP)に着手している。高まる世界経済危機により雇用者が人員削減する時期には、国内外で一時解雇された失業者にとっても雇用、再雇用が重要であるため、CLEEPは国内外の失業者に対する緊急な雇用確保を目的としている。

1.4.3 健康保険

 フィリピンの社会保険制度は、一般国民を対象とする社会保障制度(Social Security System:SSS)、公務員を対象とする公務員社会保険制度(Government Service Insurance System:GSIS)、フィリピン健康保険公社(Philippine Health Insurance Corporation:PHIC、フィルヘルス)が実施する公的医療保険制度の3つの制度からなる。

  1. 労働者への支給が義務付けられている給付
     労働者への支給が義務付けられている給付は、以下のとおりである。
    • 社会保障制度(SSS):退職年金、障害年金、遺族年金、出産休暇手当等の社会保障プログラム(Social Security Program:SS)と、労働に関連する負傷、疾病、障害、死亡の際に労働者やその扶養家族に手当を給付する労災補償プログラム(EC)からなる。
    • 公務員社会保険制度(GSIS):公務員を対象としてSSSと同様の事業を実施する。
    • 持家促進相互基金(Home Development Mutual Fund:HDMF):民間の労働者、公務員及び基金に加入する自営業者に対して、住宅取得資金の貸付を行う。
    • フィリピン健康保険公社(PhilHealth):入院治療、外来治療等の効果のある適切な医療サービスが、健康保険の給付によって労働者とその扶養家族に行われる。

  2. 適用範囲
     月額1,000ペソ以上の収入がある60歳以下のすべての者は、SSSに保険料を負担しなければならない。公務員はGSISの保険料を負担する必要がある。SSSへの加入義務がある労働者はHDMFとPhilHealthにも保険料を負担しなければならない。外国人労働者もSSSへの加入義務があり、フィリピン国際社会保障制度協定での限定的な場合を除いて、適用除外は受けられない。しかし、見込める積立金は不十分で適用除外を求めて努力しても免除される可能性は低い。

  3. 保険料
     労働者の社会保険料は、雇用者が毎月の給与から源泉徴収する。雇用者も保険料の負担が義務付けれ、雇用者の保険料は労働者の負担額のおおよそ180%、月額で最高1,090ペソである。雇用者が負担するHDMF及びPhilHealthへの社会保険料は、2008年の設定額と同程度の、月額でHDMFに最高100ペソ、PhilHealthに最高500ペソである。

1.4.4 年金

 社会保障制度(SSS)は、退職給付を加入者に支給する主要機関として役立っている。年齢により退職を余儀なくされた加入者は、毎月の退職年金、又は退職一時金が支給される。これら給付の受給格者は、以下のとおりである。

  1. 60歳以上の退職者、自営業を廃業した者で、退職6カ月前までに最低120カ月以上の保険料を支払った者
  2. 65歳以上で最低120カ月以上の保険料を支払った者
  3. 退職6カ月前までに55歳に達し、連続又は通算で最低5年以上の地下鉱夫(自営業者の場合は自営業を廃業した鉱夫)で、最低120カ月以上の保険料を支払った者

1.4.5 その他、独自の保険や基金に関する法令

なし

1.5 職業能力開発法令

1.5.1 職業能力開発制度

  1. デュアル訓練制度法(Dual Training System Act)
     共和国法第7686号のデュアル訓練制度法は、適切な技能と望ましい習性及び態度を身につけた技能者の増員が確保できるよう、職業教育訓練を強化する国の方針に従って1994年6月23日に施行された。デュアル訓練制度(DTS)は、教育機関/研修センターと会社の2カ所で交互に実施する教育訓練に基づき技術を伝達する教育方法である。DTSに協力する会社は、認定デュアル訓練制度教育施設に支払う訓練費用の50%相当額の特別控除を受ける権利がある。さらにDTS運営に寄付すれば、当該企業の課税所得からの控除も可能である。

  2. 技術教育技能開発庁(Technical Education and Skills Development Authority:TESDA)
     共和国法第7796号により設立されたTESDAは、経済、社会的な成長を加速するため中級レベルの職業能力を有する人材の開発、効率良い配置、活用を促進し、国際水準の需要に対応できる技能労働者、技術者、技術企業家を育成することにより、フィリピン国民の生活の質の向上を目指している。さらに、TESDA女性センターはアジア太平洋地域で国際的に認定された女性対象のセンター・オブ・エクセレンス(卓越した中核拠点)であり、女性が経済的に不利な状況を変える力をつけるため、市場指向型の近代技術に基づく教育訓練、政策、行動指向型調査、積極的な支援を行っている。同センターは、アジア太平洋地域の政府及び民間組織、団体と共同で無償訓練、企業家精神の育成、調査と擁護に裏付けられた女性のための政策、計画、企画を提供し、女性の社会経済的地位の改善に寄与することを目的としている。その目標とする受益者は、以下のとおりである。
    • 都市の貧困女性
    • 地方出身の女性
    • 若年の女性
    • 海外労働から帰国した女性
    • 海外労働者及び船員の妻
    • 専門職の女性労働者
    • 女性難民労働者
     1996年のTESDA行動政策において、伝統的に男性が優位を占めてきた産業分野において女性の職業訓練が保障されており、年間の訓練卒業生のうち最低1割は女性であることが義務付けられている。当初は、女性のための国家職業訓練開発センターという名称であったが、後に現在のTESDA女性センターに変更された。

1.6 その他の雇用労働関係法令

1.6.1 職業紹介制度

  • フィリピン労働雇用省(DOLE)の職業安定政策
  1. ジョブフェア
      求職者の職探しと雇用者の人材探しが迅速にできるよう、定期的に全国規模で1つの会場で開催される。
  2. 生活と自営(起業)支援
      利用可能な生活関連プログラムの情報、特に地方の情報を利用者に提供する。
  3. 海外労働者への特別信用援助
      海外雇用の申請資格がある貧困者を支援する。
  4. 学生及び学校を中退した若年者雇用のための特別プログラム(Special Program for Employment of Students and Out-of-School Youth:SPESOS)
     共和国法第7323号と施行規則により、夏休みやクリスマス休暇中に貧困家庭出身の優秀な学生、及び学校を中退した若年者に雇用の機会を与え、学業が継続できるよう支援する。
  5. 勤労理解プログラム(Work Appreciation Program:WAP)
      労働の実情に触れることにより、若年者に労働の価値と労働倫理を養う。
  6. インフラ事業を対象とする労働者雇用プロジェクト(Workers Hiring for Infrastructure Projects:WHIP)
      共和国法第6685号により、建設会社、公共事業道路省(Department of Public Works and Highways:DPWH)及び政府資金による請負事業者は、当該事業を実施する地域から30%の熟練労働者と50%の非熟練労働者を雇用するよう義務付けられている。

 DOLEが展開するその他の計画、活動として、公共職業安定機関(Public Employment Service Office:PESO)の利用者、身体障害者(persons with disabilities:PWDs)や難民労働者のような立場の弱い者に対する雇用支援の強化がある。

1.6.2 外国投資法により進出した企業で、海外から招聘され就労する者の労働許可条件

1.2.4(3)外国人雇用を参照

1.6.3 海外から招聘され就労する者の加入義務のある制度

1.2.4(3)外国人雇用を参照

1.6.4 その他雇用労働に関する法令

なし


参考文献

  1. Arellano Law Foundation. (n.d.).
    http://www.lawphil.net/statutes/presdecs/
    pd1975/pd_851_1975.html
  2. Chan Robles Law Firm (2009).
    http://www.chanrobles.com
  3. ECOP. (n.d.). Guidebook for effective employers. Research and Adovocacy Publication.
  4. Department of Labor and Employment, Republic of Philippines (2009).
    http://www.dole.gov.ph
  5. Leogardo, Vincent Jr. (2009, June 19). Termination of employment: The Law and Jurisprudence. ECOP Seminar Handouts.
  6. National Wage Productivity Commission, Department of Labor and Employment. (2009). Summary of current regional daily minimum wage rate non-agriculture, agriculture.
    http://www.nwpc.dole.gov.ph/pages/statistics/
    stat_current_regional.html
  7. Office of the Press Secretary. (2009). Republic act no. 9492.
    http://www.ops.gov.ph/records/ra_no9492.htm
  8. Philippine Health Insurance Corporation. (2008). Republic Act no. 7875.
    http://www.philhealth.gov.ph/about_us/others/
    ra7875.pdf
  9. Philippine Social Security System. (n.d.). SSS guide book.
    http://www.sss.gov.ph/sss/index2.jsp?secid=152&cat=6
  10. Technical Education and Skills Development Authority. (n.d.).
    http://www.tesda.gov.ph/
  11. The Labor Code of the Philippines (2009).
    http://www.bcphilippineslawyers.com/
    the-labor-code-of-the-philippines-book-1/

印刷用PDFページ

このページの内容をプリントアウトしたい方は、以下のPDFファイルをクリックしてください。

フィリピン−雇用労働関係法令のPDFファイル(390KB)

掲載されている内容をご利用になる際は、こちらを一読いただきますようお願いいたします。
各国の情報はPDFファイルでも作成されています。PDFファイルを見るためには、Adobe Readerというソフトが必要です。
Adobe Readerは無料で配布されています。ダウンロード・インストールする場合には、下のアイコンをクリックしてください。
Get Reader

▲ ページトップへ