各国・地域情報

フィリピン

作成年月日:2009年10月5日

雇用労働事情

2.1 労働市場の状況

 2009年7月1日発表の国連人口統計によると、フィリピンは現在世界で12番目に人口が多い国となっている。フィリピン国家統計局の最近の中間予測では2009年の人口は9,223万人で、人口増加率は2.1%とされている。この着実な人口増加は、労働力人口、就業率、完全失業率や潜在失業率に重要な影響を与えている。

2.1.1 過去3年間の労働力人口、就業者数、失業者数及び失業率

 フィリピンにおける労働力は15歳以上の労働者で構成される。労働力率は、2007年は63.6%、2008年64.3%、2009年には64.6%と過去3年間は増加傾向にある。就業率は、2007年は92.2%、2008年92.6%、2009年には92.4%と小幅な動きにとどまっている。失業率は2007年が7.8%と最も高く、2008年は7.4%、2009年は7.6%であった。不完全就業率は年々減少傾向にあり、2007年の22.5%、2008年の18.9%から2009年は18.2%となっている。

表2‐1 労働力率、就業率、完全失業率及び潜在失業率
  2007年7月 2008年7月 2009年7月
15歳以上の人口(千人) 56,857 58,119 59,512
労働力人口 36,142 37,343 38,432
就業者数 33,318 34,593 35,509
労働力率(%) 63.6 64.3 64.6
就業率(%) 92.2 92.6 92.4
失業率(%) 7.8 7.4 7.6
不完全就業率(%) 22.0 21.0 19.8
注1:
2009年7月は暫定値。
注2:
15歳以上の人口は、2000年の人口調査を基礎とする人口予測による。
※出典:
National Statistics Office, “Labor Force Survey”.

表2‐2 地域別労働力率、就業率、完全失業率及び不完全就業率(2009年7月)
地 域 労働力率
(%)
就業率
(%)
完全失業率
(%)
不完全就業率
(%)
フィリピン全体 64.6 92.4 7.6 19.8
 マニラ首都圏 62.4 87.9 12.1 12.2
 コーディリエラ行政地区 67.9 95.4 4.6 17.6
  I-Ilocos Region 61.7 93.3 6.7 13.8
  II-Cagayan Valley 67.0 97.2 2.8 16.2
  III-Central Luzon 61.3 90.1 9.9 11.4
  IV-A-Calabarzon 63.8 88.9 11.1 18.9
  IV-B-Mimaropa 70.2 95.7 4.3 27.4
  V-Bicol Region 64.5 94.6 5.4 33.1
  VI-Western Visayas 65.3 92.6 7.4 26.1
  VII-Central Visayas 64.8 92.9 7.1 16.0
  VIII-Eastern Visayas 66.3 94.5 5.5 25.4
  IX-Zamboanga Peninsula 68.2 95.9 4.1 22.8
  X-Northern Mindanao 71.2 94.3 5.7 27.0
  XI-Davao Region 66.1 94.4 5.6 21.9
  XII-Soccsksargen 67.7 94.9 5.1 25.7
  XIII-Caraga 64.7 93.2 6.8 27.2
  ミンダナオ イスラム自治区 59.1 96.6 3.4 15.2
※出典:
National Statistics Office, “July 2009 Labor Force Survey”.

表2‐3 労働時間別及び産業別不完全就業者の構成比
  2007年7月 2008年7月 2009年7月
不完全就業者数(千人) 7,327 7,293 7,034
労働時間別割合(%) 100.0 100.0 100.0
 40時間以上 50.9 55.8 54.5
 40時間以下 48.1 42.6 43.9
 0時間 1.0 1.5 1.6
産業別割合(%) 100.0 100.0 100.0
 農業 44.4 46.9 44.1
 工業 15.3 14.9 15.6
 サービス 40.3 38.1 40.3
注1:
2009年7月は暫定値。
注2:
ここでの数値は、2000年人口調査を基礎とした人口予測による推計値。
※出典:
National Statistics Office, “Labor Force Survey”.

表2‐4 性別、年齢別及び学歴別失業者構成比
  2007年7月 2008年7月 2009年7月
失業者数(千人) 2,824 2,749 2,922
性別割合(%) 100.0 100.0 100.0
 男性 62.1 61.8 60.7
 女性 37.9 38.2 39.3
年齢別割合(%) 100.0 100.0 100.0
 15〜24歳 51.1 51.8 52.8
 25〜34歳 28.7 28.5 28.0
 35〜44歳 10.4 9.3 9.3
 45〜54歳 6.0 6.4 6.1
 55〜64歳 3.3 3.2 3.1
 65歳以上 0.6 0.7 0.7
学歴別割合(%) 100.0 100.0 100.0
 学歴なし 0.8 0.6 0.5
 小学校 14.3 13.6 13.4
  中退 6.8 6.3 6.3
  卒業 7.5 7.3 7.2
 高等学校 45.5 45.5 44.9
  中退 14.1 11.4 12.0
  卒業 31.4 34.1 33.0
 大学 39.4 40.3 41.1
  中退 19.9 20.8 21.5
  卒業 19.5 19.5 19.7
注1:
2009年7月は暫定値。
注2:
ここでの数値は、2000年人口調査を基礎とした人口予測による推計値。
※出典:
National Statistics Office, “Labor Force Survey”.

2.1.2 業種別労働者数

 2008年、サービス産業が全労働者の49.6%を占め、2009年には50.3%まで伸びている。詳細は下記の表のとおり。

表2‐5 産業別労働者の割合(単位:%)
  2007年7月 2008年7月 2009年7月
就業者数 33,318 34,593 35,509
農業 34.5 35.0 33.6
 農業、狩猟、林業 30.3 30.9 29.5
 漁業 4.2 4.1 4.1
工業 15.6 14.8 14.8
 鉱業、採石 0.4 0.4 0.5
 製造業 9.2 8.6 8.3
 電気、ガス、水道 0.4 0.4 0.4
 建設業 5.5 5.4 5.6
サービス 50.0 50.2 51.5
 卸売、小売、自動車、オートバイ、個人家財類修理 19.1 19.1 18.9
 ホテル、レストラン 2.7 2.8 3.0
 運輸、倉庫、通信 7.9 7.3 7.6
 金融仲介業 1.1 1.1 1.1
 不動産、賃貸業、商業 2.5 2.8 3.1
 公共行政、防衛、強制社会保障 4.6 5.0 5.0
 教育 3.2 3.1 3.3
 保健、社会福祉 1.1 1.1 1.2
 その他 地域・社会・個人サービス活動 2.5 2.4 2.5
 個人の使用人 5.3 5.4 6.0
注1:
2009年7月は暫定値。
注2:
ここでの数値は、2000年人口調査を基礎とした人口予測による推計値。
※出典:
National Statistics Office, “Labor Force Survey”.

2.1.3 新規学卒者の就職状況

表2‐6 性別、年齢別、及び学歴別労働者数(単位:千人)
労働者数 2007年 2008年 2009年
合 計 33,560 34,089 34,993
男女別 男性 20,542 20,959 21,439
女性 13,018 13,130 13,554
年齢別 15〜24歳 6,627 6,580 6,823
25〜34歳 8,895 9,012 9,237
35〜44歳 7,850 7,994 8,082
45〜54歳 5,770 5,956 6,122
55〜64歳 3,011 3,130 3,276
65歳以上 1,407 1,416 1,453
年齢不明 2 1  
学歴別 学歴なし 665 646 -
小学校 11,024 11,045 -
 中退 5,531 5,398 -
 卒業 5,493 5,647 -
高等学校 12,878 13,220 -
 中退 4,633 4,590 -
 卒業 8,245 8,630 -
大学 8,994 9,178 -
 中退 4,288 4,312 -
 卒業、大学院 4,705 4,866 -
学歴不明 - - -
注:
細目は端数切捨てによりそれぞれの合計は必ずしも一致しない。
※出典:
National Statistics Office, “Labor Force Survey”.

2.1.4 離職者の現状

  1. 入職率
     2009年第1四半期の入職率は9.3%であった。産業別では建設業が23.2%と最も高く、次に鉱業・採石業が17.0%、卸・小売及びその関連サービス業が16.7% 地域的社会的個人サービス活動が12.2%と続いている。ちなみに入職率が最も低かったのは金融仲介業と個人教育サービスで、それぞれ2.9%と1.0%であった。採用理由別では離職者が出たことによる人員補充が6.3%で、事業活動拡大のための新規採用3.0%を上回っている。

  2. 離職率
     2009年第1半期の離職率は9.0%に達した。業種別では卸・小売業及びその関連サービス業が最も高く16.4%、続いて鉱業・採石業で14.6%であった。その他、地域・社会・個人サービス活動や製造業、不動産賃貸業と商業部門でも10%前後の高い離職率を記録している。他方、漁業や個人教育サービス業では、1.1%から1.3%と最も低い離職率であった。理由別では従業員の自発離職が4.6%、雇用者側からの働きかけに同意した場合が4.4%であった。

  3. 入職超過率(入職率−離職率)
     労働統計局によるこの調査は、大企業を対象に行っているが、今回対象となった企業での入職率は9.3%であり、離職率の9.0%をわずかに上回った結果、2009年第1四半期の入職超過率は0.3%であった。入職超過率が1%を下回ったのは2007年以降2回目である。この数字の意味するところは、これら大企業が雇用する労働者1,000人のうちわずか3人しか雇用が増えていないということである。世界的な経済の混乱で2009年第1四半期のGDPが年率わずか0.4%しか伸びなかったことから分かるように、入職超過率の低さは国内経済の不振を大きく反映している。雇用増加は6部門で見られるが、建設業が15.0%と最も高く、次点のホテル・レストランになると3.3%とあまり大きくはない。一方、雇用減少も、不動産賃貸、商業活動分野運輸・倉庫、通信、製造業電気・ガス・水道、金融仲介業、個人教育サービスの6分野で見られた。※1
    ※1
    ここでの資料はマニラ首都圏にあるトップ3,064社の中から無作為に選んだ722社のうち96.2%に当たる681社の回答に基づく集団推定である。この調査の目的は労働者の入職と離職に関する資料を四半期ごとに集計し大企業の雇用拡大と収縮を監視することにある。

    表2‐7 マニラ首都圏の理由別入職率と離職率(2009年第1四半期)
    理 由 割合(%)
    入職率 9.29
     事業拡大のため 3.00
     補充のため 6.28
    離職率 9.02
     労働者側理由 4.59
     雇用者側理由 4.43
    ※出典:
    Bureau of Labor and Employment Statistics, http://www.bles.dole.gov.ph/

    表2‐8 マニラ首都圏の産業別入職率、離職率及び入職超過率(2009年第1四半期)
    産 業 企業数 入職率
    (%)
    離職率
    (%)
    入職超過率
    (%)
    全体 2,845 9.29 9.02 0.27
    農業・漁業・林業 18 3.64 1.57 2.07
     農業・狩猟・林業 10 3.22 2.09 1.13
     漁業 8 4.04 1.07 2.97
    工業 773 13.41 10.02 3.39
     鉱業・採石業 19 17.00 14.63 2.37
     製造業 578 9.82 11.20 -1.38
     電気・ガス・水道 26 3.05 3.57 -0.53
     建設業 150 23.16 8.19 14.98
    サービス業 2,054 8.13 8.80 -0.67
     卸・小売及び関連サービス業 1,057 16.69 16.38 0.31
     ホテル・レストラン 74 9.09 5.76 3.33
     運輸・倉庫・通信 193 3.26 4.88 -1.63
     金融仲介業 170 2.90 3.25 -0.36
     不動産・賃貸し・商業活動 467 7.82 9.61 -1.79
     個人教育サービス 8 1.00 1.28 -0.28
     保健・社会福祉(個人) 19 4.95 3.74 1.21
     その他 地域・社会・個人活動 66 12.25 11.61 0.64
    注:
    細目は端数切捨てによりそれぞれの合計は必ずしも一致しない。
    ※出典:
    National Statistics Office, “Labor Force Survey”.

2.1.5 職種別技能労働者数

 コンピュータ化した技能に関する全国人材登録台帳(Computerized National Manpower Registry of Skills:CNMRS)には求職者と彼らの技能に関する情報が登録されている。CNMRSは、求人求職者検索、賃金労働者や家内労働・企業家・起業家などの無給労働者のための職業紹介、さらに海外フィリピン人労働者(Overseas Filipino Workers:OFWs)の再雇用プログラムといった目的のために、労働雇用省(Department of Labor and Employment:DOLE)が管理している。この中の情報は、海外から帰国したフィリピン人労働者の国内復帰のための政策決定や、生涯雇用能力開発、フィリピン人労働者の競争力強化に必要な政策決定のための情報源としても大いに利用される。CNMRSは、下記のDOLE関係機関のデータを一元管理する。

  1. フィリピン海外雇用庁(Philippine Overseas Employment Agency:POEA)
    海外・海上労働者情報の提供
  2. 技術教育技能開発庁(TESDA)
    職業・技能訓練修了者情報の提供
  3. 国立海運専門学校(National Maritime Polytechnic)
    海上訓練修了者情報の提供
  4. 全国の公共職業安定機関
    各地方登録者情報の提供

 また、既存のインターネットをベースとした求人・求職情報マッチングシステム(Phil-Jobnet)使用者の情報については自動的にCNMRSに移行登録される。実際CNMRSの構想は、Phil-Jobnetにならって作られたものであり、近い将来、Phil-Jobnet同様、インターネットを通してアクセスできるようになり、これら各関連機関の最新情報へのアクセスが常に可能になるであろう。

表2‐9 職種別労働者構成比(単位:%)
  2007年7月 2008年7月 2009年7月
就業者数(千人) 33,318 34,593 35,509
 政府及び特別利益団体職員、企業幹部、管理職、経営及び監督職 12.0 13.1 13.8
 専門職 4.3 4.4 4.5
 技術者及び会社所属の専門職 2.7 2.6 2.6
 事務職 5.0 4.9 5.1
 サービス、商店、販売員 9.8 10.0 10.5
 農業、林業及び漁業労働者 18.0 17.5 16.2
 商業関連 8.7 8.0 7.8
 工場、機械操作及び組立工 7.5 6.5 6.1
 一般労働者及び非技能労働者 31.5 32.5 33.0
 特殊な職業 0.4 0.5 0.4
合 計 100.0 100.0 100.0
注1:
2009年7月は暫定値。
注2:
ここでの数値は、2000年人口調査を基礎とした人口予測による推計値。
※出典:
National Statistics Office, “Labor Force Survey”.

2.2 賃金

 2001年から2004年10月までの統計によると、就業者に対して、約48〜53%が賃金労働者であった。2003年7月は53.2%と最多で、305万人の労働者のうち1,620万人が賃金労働者であった。一方、最少は2003年の第1及び第2四半期で48.1%であった。賃金労働者の約60%は高等学校以上を卒業している。また、5人に1人が大学卒である。1日当たりの平均基本給は220〜240ペソ※2である。2004年10月は237.98ペソと、2004年までで最高額であった。

※2
1ペソ=1.9175円(2009年10月5日現在)

図2‐1 就業者数、賃金労働者数及びその割合
図2‐1 就業者数、賃金労働者数及びその割合

※出典:
National Statistics Office, “Labor Force Survey”.

 男女別に見ると、全賃金労働者の5分の3が男性であり、大学卒の割合は女性がおよそ30%であるのに対し男性は13%のみである。女性の賃金労働者の方が男性に比べ学歴が高い者が多く、賃金も高い者が多い。2001年から2004年までの統計によると、1日当たりの平均基本給は、女性が225.59〜243.28ペソの間、男性は216.14〜234.79ペソの間であった。なお、平均労働時間は、男性が週43.3時間女性は43.6時間と、ほぼ同一である。

図2‐2 男女別賃金労働者の1日当たりの平均基本給
図2‐2 男女別賃金労働者の1日当たりの平均基本給

※出典:
National Statistics Office, “Labor Force Survey”.

 業種別に見ると、サービス部門に従事する賃金労働者が全体の半分以上を占め、そのほとんどが卸・小売、個人的使用人、公共行政、運輸、倉庫、通信分野である。工業部門には全体の約4分の1が従事しており、そのほとんどが製造分野となっている。肉体労働者と非熟練労働者が最低所得者のほとんどを占め、1日当たりの基本給は最低所得レベルの100ペソ以下から199ペソであり、全賃金労働者の3分の1に相当する。

図2‐3 主要職業別賃金与労働者数(2004年10月)
図2‐3 主要職業別賃金与労働者数(2004年10月)

※出典:
National Statistics Office, “Labor Force Survey”.

 商取引とその関連労働者は賃金労働者全体の約13〜15%である。1日当たり200〜249ペソを受け取る労働者の20%以上がこの商取引分野に属している。賃金労働者全体の10%以下である知的専門職者は、1日当たり250ペソ以上を稼ぐ労働者の最も大きな部分を占める。男女別では女性労働者の最大分野は知的専門職で事務職である。これに対し男性は、商取引及びその関連職、工場と機械工及び組み立て工として働いている。

2.2.1 法定最低賃金の最近の動向

 1989年7月1日に共和国法第6727号の賃金合理化法(Wage Rationalization Act)が発布されるまで、最低賃金についての取り決めは国会での法案と大統領令を通し、全国統一で行われていた。1989年以降は、16の地域に分け、それぞれに賃金決定機関として地域委員会を設立した。現在はこれら16の地域委員会が民間部門での労働者の最低賃金を決定している。

表2‐10 地域別1日当たりの最低賃金(2009年5月現在)(単位:ペソ)
地 域 非農業 農 業
大規模農業 非大規模農業
マニラ首都圏 345〜382 345 345
Cordillera行政地区 243〜260 226〜242 226〜242
I 220〜240 220 195
II 227〜235 215〜223 215〜223
III 251〜302 236〜272 216〜256
IV-A 236〜320 216〜295 196〜275
IV-B 240〜252 198〜207 178〜187
V 196〜239 207〜217 187〜197
VI 240〜250 218 208
VII 222〜267 202〜249 202〜249
VIII 238 219 219
IX 240 215 195
X 241〜256 229〜244 229〜244
XI 265 255 255
XII 245 225 220
XIII 233 223 203
ミンダナオ イスラム自治区 210 210 210
※出典:
National Wage Productivity Commission, http://www.nwpc.dole.gov.ph/

2.2.2 賃金もしくは給与の実態調査結果

 賃金レートに関する統計は有効な経済指標であり賃金、生産性と価格政策、賃金取り決め及び団体交渉に活用され、特に職業別賃金率は賃金格差、代表的な低賃金・高賃金職業における不平等及び国際比較を計算する際において利用される。基本給と手当に関する情報は投資決定や産業間の最低賃金調整の際に用いられる。

 【職業賃金調査(Occupational Wage Service:OWS)】
 職業賃金調査では、フィリピン標準職業分類(Philippine Standard Occupational Classification:PSOC)で分けられた180ある職業のうち、主要7職種46産業の中から、毎回最大11種の職業における賃金動向を監視している。7つの主要職種とは管理監督、知的専門職、技師、事務職、サービス、商取引と機械技士及び肉体作業員・非熟練工である。多くの職業はあらかじめ定められた産業の中での職業の重要性に基づき、特定主要職業群に分類される。例えば鉱業や採石業、製造業、建設業では取引技術と機械運転に分類される職業が多い。貿易、郵便と電信、商業サービスでは事務職が選択される。保健と社会福祉、個人教育サービスでは大部分を専門職とする。ホテル・レストラン従業員の場合サービス職に分類する。
 1989年以降、労働雇用統計局(Bureau of Labor and Employment Statistics:BLES)はOWSを全国で定期的に実施している。数年にわたり調査周期・範囲・計画を改正し、賃金と給与管理や団体交渉における賃金決定の目的でこの統計を使用する人の要求に応えてきた。1996年には、職業別平均値の統計は国際通貨基金(IMF)による特別データ公表基準(SDDS)に選ばれた。SDDSとは、IMF加盟国が経済・金融データを共有するための世界基準である。2008年のOWSは、65産業分野において20人以上を雇用する非農業企業を対象としている。
 賃金率が適用される職業の平均月額賃金は1万2,525ペソであった。最高額は航空操縦士、航海長、飛行機技師などの7万9,187ペソであった。以下は主な職業の平均賃金である。

表2‐11 2008年職業賃金調査(抜粋)(単位:ペソ)
職 種 月平均
専門職 専門看護師 9,867
医師 20,135
建築士 14,178
システム分析、設計士 22,667
コンピュータプログラマー 11,583〜28,599
工学技師 12,432〜31,618
教育専門家 12,211〜35,728
会計士、会計検査官 16,091〜31,368
技術者・準専門職 甲板部士官、航海士 23,956
航空機操縦士、航空士、航空機関士 79,187
事務職 顧客サービス員、その関連
(コールセンター)
9,443〜18,295
医学記録転写士 10,669
サービス及び販売員 旅行ガイド(旅行代理店) 14,450
サービス係
(レストラン・ファストフード)
8,567
料理人 9,646
技能士及び関連労働者 溶接工、ガス切断工 8,891〜9,055
重機整備士 8,918
工場作業員、機械運転者、
組立工
甲板乗組員、その関連労働者 9,987
電子機器組立工 9,144
※出典:
Bureau of Labor and Employment Statistics, http://www.bles.dole.gov.ph/

2.2.3 役職別給与体系のサンプル

 フィリピン労働法の下での労働者賃金とは、連続・非連続にかかわらず、1日8時間の労働に対して合法的に雇用された労働者が受け取る金額のことである。1日とは労働者が仕事を始める時点からその後24時間のことである。労使協定によると、従業員の賃金はあらかじめ決められた期間(時間給、日給、あるいは月給)で支払われる。8時間労働に対する最低報酬は、地域三者賃金生産性委員会(Regional Tripartite Wage and Productivity Boards:RTWPBs)が定めたその地域に適用される最低日給以上となる。雇用者は労働者の同意がなければその賃金を調整することは許されない。ただし保険料、源泉課税、社会保障及び他の法律で定められた控除、例えば組合費などこれに類するものは例外として認められる。
 労働者賃金は時間外労働、休日、祭日、夜間労働割増金、13カ月目の給与といった恩典を含んでいる。さらに、雇用者が習慣的に提供する施設、労働者の福祉のためのみに使用する費用、健康保険、生命保険、その他の保険、市場より有利な貸付金利、他の商品やサービスや割引などに「賃金恩典」という言葉が幅広く使われ始めている。
 共和国法第6758号の報酬と地位の分類に関する法律では、基本的に同一労働に対する同一賃金支給、義務と責任の大きさの違いによる基本給の差異、各地位の賃金率に十分な配慮をするよう定められている。そのため予算行政管理省(Department of Budget and Managements:DBM)は大統領令985号に規定された統一報酬と地位の格付け制度を設定、管理することが憲法によっても定められている。同法により、すべての職に1から33の給与等級が定められた。

表2‐12 職別給与等級一覧
給与等級
33 大統領
32 副大統領、上・下院議長、最高裁判所長官
31 上・下院議員、最高裁判所判事、憲法委員会議長
30 憲法委員会議員
 
20 地方保健医師
19 准教授
18 森林監督官
17 郵便局長
16 歯科医
15 行政官
14 法務官
13 獣医
12 技術者
11 社会福祉士、農学士、科学者、主計官
10 教員、出納係、看護士
9 教育研究助手
8 行政助手、簿記係
7 秘書
6 電気工
5 大工
4 速記者、職工
3 運転手、事務員
2 配達係
1 肉体労働者
※出典:
President Decree No.985.

2.3 労働時間の現状

表2‐13 週間労働時間別労働者数、構成比及び平均労働時間
  労働者数 労働時間 週当たり
平均労働時間
構成比
(%)
週40時間
未満
週40時間
以上
0時間
2007年7月 33,318 100.0 33.2 66.1 0.7 42.6
2008年7月 34,593 100.0 33.8 65.2 1.0 42.5
2009年7月 35,509 100.0 34.1 64.9 1.0 42.5
注1:
2009年7月は暫定値。
注2:
ここでの数値は、2000年人口調査を基礎とした人口予測による推計値。
※出典:
National Statistics Office, “Labor Force Survey”.

2.4 労使関係の現状

 労使協調とは、目標を達成するためお互いに歩み寄り、協力して前進することである。労働者問題の解決過程では、労働者参加の下での情報共有、討論、協議、交渉及び計画立案を行うことで、お互いの信頼と尊敬を向上させることができる。
 フィリピン労働法は世界基準に合わせ、労働者の重要な権利である団結権と、団体交渉権を認めている。労働協約(Collective Bargaining Agreement:CBA)とは雇用者と組合間での契約であり、組合はある企業内での労働者グループ代表として正当に認められている。労働協約の目的は、政府が規定した最低雇用基準を改善することにある。その特質は雇用条件を明文化する際に、また労働協約から生じる苦情や問題を解決する際に、労働者が委任した組合の代表者を通じて実際に参加することにある。しかしながら、現在民間部門で労働協約の対象となるのは労働者の10%以下にすぎず、依然として組合の組織化と団体交渉が労使関係の重要な問題となっている。
 組合を組織する権利と団体交渉の権利を含む結社の自由は、8つある基本権利の中の2つである。さらにフィリピン憲法と労働法は、組合の組織化と団体交渉を民主的な制度として奨励している。組合組織化と団体交渉の過程を体系化することで、国家は雇用条件を明文化する際に成果をより効果的で平等に分け合えるよう、労働者の参加を促している。

表2‐14 労働協約数
  2007年 2008年 2009年
新規労働協約申込数 318 307 124
適用労働者数(人) 44,375 55,290 15,624
協約満了 446 393 109
既存労働協約数 1,542 1,456 1,485
適用労働者数(人) 218,000 227,000 230,000
注:
いずれも暫定値、季節調整済み。
※出典:
Bureau of Labor Relations, Bureau of Labor and Employment Statistics.

2.4.1 労働組合の現状

 労働組織には単位労働組合と連合組織がある。労働組合の全体又は一部は、雇用条件について団体交渉権を用い雇用者と交渉することを目的としている。その組織は雇用労働省(DOLE)に登録された時点で合法な労働組織となる。組合はその構成員の利益のために合法的な活動を行う。組合はその活動レベルによって2種類に分類される。1つは企業内で活動し、企業内労働者が構成員の企業又は工場レベルの組合である。もう1は特定の企業ではなく、いくつかの企業又は工場レベルで構成される組合である。
 同一企業又は工場レベルの組合は、雇用労働省が発行する登録証明を独自に持ち独立組合と呼ばれる。他方、登録証明のない同一企業又は工場レベルの組合は、連合組織が直接設立し、公認組合又は地方組合と呼ばれる。企業又は工場レベル以外の組合は、連合組織(全国組合)、又は労働組合センターに加盟する。連合組織は10以上の独立した組合又は地方支部からなる。加盟団体は団体交渉協定を有するか、あるいは操業企業内で団体交渉の委託が証明又は認識されなけらばならない。労働組合センターは2つ以上の連合組織で構成される。
 フィリピンの労働組合主義と団体交渉には下記のような特徴がある。

  • 組織が分散している。組合の形成、組織化は企業内の労働者が企業レベルで始める。団体交渉も企業レベルである。
  • 労働組合と団体交渉への組合員の参加は任意であり、民主的、自主的である。労働者が組織に加わるかどうかは自由であり、組合は最終的に雇用条件に合意するという観点から、独自決議の規則を自由に定めることができる。
  • 国は労働組合と団体交渉問題については、極力立ち入らない方針である。国の役割は団体交渉過程を体系化して交渉をしやすくし、争議が生じた場合に争議解決の適切な仕組みを提供することである。

表2‐15 労働者組織
  2008年 2009年1〜3月
組合数 17,305 17,409
組合員数 1,942,000 19,48,000
労働協約数 1,456 1,485
適用労働者数 227,000 230,000
労働者連合(WAs) 15,758 16,523
会員数 576,000 615,000
団体交渉協定(CNAs) 129 125
適用労働者数 29,000 28,000
注:
いずれも暫定値。
※出典:
Bureau of Labor Relations, Civil Service Commission.

2.4.2 労働争議の現状

 労働争議の間、労働雇用省(DOLE)の付属機関が争議の円満解決を図る責任を持つ。

  1. 中央労使関係委員会(National Labor Relations Commission:NLRC)
     NLRCは準司法団体であり、斡旋、調停、強制仲裁を通じ労働争議を迅速に解決するために政府、労働側、経営者側が組織した同様の機関の象徴である。NLRCは計画と政策調整のために労働雇用省の付属機関となっている。NLRCは労働裁判を迅速に処理し労働争議を解決する機関として効果的に発展することにより、政府が計画する産業平和の発展、維持において極めて重要な役割を果たす。

  2. 中央斡旋調停委員会(National Conciliation and Mediation Board:NCMB)
     NCMBは大統領令第126号の下で雇用労働省を再編成して作られ、予防的な斡旋、調停、自主的仲裁を通して労働争議の斡旋と調停の促進に関連する政策を明確にし、計画と手順を作成して基準と手続きを定める。NCBMは、情報の共有、効果的な対話と相談及びグループ問題解決のための共同の仕組みを通じて労使協調を促進する。

 労働雇用省は解決手続きが遅いことを懸念して現在「SPeED計画」を推進している。「SPeED計画」とは、国の労使関係と産業平和を守るため、労働雇用省が係争中の労働事件の処置を迅速かつ効果的にすることを目的としている。この計画の推進により、労働者、経営者、政府の社会的パートナーが協力し、ストライキの発生率が徐々に下降した。労働雇用省によると、全国のストライキ件数は2008年1〜8月の5件から、2009年1〜8月では4件に減少し、過去最少となった。
 中央斡旋調停委員会は、127の苦情処理機関を新たに立ち上げ、既存の企業での苦情処理機関を強化した。同時に2009年1月1日から8月15日までの間に109の苦情処理機関を制度化し、未組織の企業での130の苦情処理機関を強化したと発表している。その結果、未組織企業での510の苦情処理機関を合わせると、全国はで1,163の苦情処理機関が活動している。

表2‐16 予防的調停と任意仲裁事例
  2007年 2008年 2009年3月
予防的
調停
係争中 41 33 50
新規申立件数 505 536 132
ストライキ通知件数 2 4 -
合計取扱件数 548 573 182
処理件数 515 523 102
解決 495 492 98
裁判突入 - 1 -
ストライキ/ロックアウトの通知・発生 13 25 3
その他の決定 7 5 1
関係労働者数(千人) 127 120 43
処理率(%) 94.0 91.3 56.0
和解率(%) 90.3 85.9 53.8
任意
仲裁
係争中 109 113 123
新規申立件数 149 139 27
合計申立件数 258 252 150
処理件数 145 129 28
解決 131 106 24
円満解決 4 10 1
取り下げ 10 13 3
処理率(%) 56.2 51.2 18.7
注:
細目は端数切捨てによりそれぞれの合計とは必ずしも一致しない。
※出典:
National Conciliation and Mediation Board.

表2‐17 ストライキ/ロックアウト件数
  2008年 2009年1〜6月
ストライキ通告 新規ストライキ通告 362 139
参加労働者数 74,797 24,263
処理件数 365 127
ストライキ実施 新規ストライキ/ロックアウト 5 2
参加労働者数 1,115 1,200
処理件数 5 2
労働損失人数 39,000 4,000
注:
数値はいずれも暫定値。
※出典:
National Conciliation and Mediation Board.

2.5 募集、採用、雇用、解雇の現状

 公共職業安定機関(Public Employment Service Office:PESO)は、すべての人に完全雇用と平等な雇用機会を実現するために設立された無料の雇用促進サービス組織である。PESOは政府の現存する雇用サービス機構を強化、拡大する目的で、特に地方レベルでは各州都、主な都市、その他戦略上重要な地域に設立され、地域社会に根ざした地方政府単位、非政府組織、市民団体や国立大学が維持している。PESOは、協調と技術的な管理を目的として労働雇用省地方事務所と結びつき、労働雇用省中央事務所の国家雇用サービスネットワークを構成している。
 PESOの目的は、雇用に関するさまざまな情報を収集・提供し、またその情報網を維持・活用することである。PESOは雇用者に各企業における求人リストを定期的に提出するよう促し、労働市場情報の交換を容易にし、国内外での社員補充に援助を行う。
 PESOは同時に職業選択、職業訓練、職業相談のための検査評価手順を開発し管理している。こうした業務を州及び市区町村の政府・非政府組織に委託し、暮らしや自営に必要な企業家精神、能力開発の場を提供する。また、転職や職業能力向上を希望する者にセミナーも提供する。これらの業務は現在、技術教育技能開発庁(TESDA)が管理し、他の教育機関で実施されている。TESDAは雇用職業相談、職業指導、集団意欲刺激策、就業前相談や国内外での就業予定者へのアドバイスも含めた、さまざまな活動を提供している。また、海外から帰国した労働者に対する国内復帰援助サービスも行う。

2.6 転職の現状

 労働雇用統計局(Bureau of Labor and Employment Statistics:BLES)の求人サンプル調査によると、2009年の上半期を通じて不動産・賃貸業、金融仲介業、ホテル・レストランでの求人が上位を占めている。需要の高い職種としては、サービス作業員、顧客対応スタッフなどであり、企業が提供する多様なサービスに従事する人材が不足している。

表2‐18 産業別求人数(サンプル調査)(単位:人)
産 業 求人数
2009年1〜3月 2009年4〜6月
漁業 38 37
鉱業、採石業 202 538
製造業 279 174
電気、ガス、水道業 81 38
建設業 575 272
卸売、小売業 458 410
ホテル、レストラン 1,618 382
運輸、倉庫、通信業 110 111
金融仲介業 1,250 771
不動産業、賃貸業 4,038 527
教育 49 40
医療、社会福祉 107 96
その他の地域・社会・個人サービス活動 222 334
※出典:
Bureau of Labor and Employment Statistics.

表2‐19 需要の高い職種上位10位
  2009年1〜3月 2009年4〜6月
  職種 求人数 職種 求人数
1 健康管理業の顧客対応スタッフ 2,000 サービス作業員 169
2 サービス作業員 1,193 掘削作業員 162
3 技術サポート/サービス作業員 696 レジ係 158
4 顧客対応オペレータ 586 顧客対応オペレータ 153
5 出納係 377 トラック運転手 138
6 管理職見習い 281 マーケティング・マネージャー 105
7 コンピュータ専門家 190 事務員 94
8 事務管理部門での販売支援 151 会計係/出納係 93
9 マーケティング担当役員 124 重機操縦者 76
10 大工 122 IT担当役員 74
医薬情報担当者 74
  合計 5,720 合計 1,296
※出典:
Bureau of Labor and Employment Statistics.

2.7 その他の雇用慣行

2.7.1 企業の慣行

 法律上の義務付けはないが、一般的に正規雇用の労働者には雇用者から次のような恩典が与えられる。

  • 住宅と住宅制度
  • 交際費
  • 社用車
  • 有給休日・休暇
  • 被雇用者本人とその扶養家族に対する教育援助制度

参考文献

  1. Bureau of Labor and Employment Statistics.
    http://www.bles.dole.gov.ph/
  2. Bureau of Labor Relations.
    http://www.blr.dole.gov.ph/
  3. Bureau of Local Employment.
    http://www.ble.dole.gov.ph/
  4. Bureau of Working Condition.
    http://www.bwc.dole.gov.ph/
  5. Civil Service Commission.
    http://www.csc.gov.ph/
  6. Department of Labor and Employment.
    http://www.dole.gov.ph/
  7. Department of Budget and Management.
    http://www.dbm.gov.ph/
  8. Labor Market Information.
    http://www.phil-lmi.dole.gov.ph/
  9. National Conciliation and Mediation Board.
    http://www.ncmb.ph/
  10. National Labor Relations Commission.
    http://www.nlrc.dole.gov.ph/
  11. National Statistics Office.
    http://www.census.gov.ph/
  12. National Wages and Productivity Commission.
    http://www.nwpc.dole.gov.ph/
  13. Technical Education and Skills Development Authority.
    http://www.tesda.gov.ph/

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