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フィリピン

作成年月日:2009年9月10日

職業能力開発の政策とその実施状況

3.1 職業能力開発の背景

  1. フィリピンの3軸教育制度
     フィリピンの教育は、スペイン植民地時代以前から今日に至るまで数々の発展段階を経てきた。フィリピンが民族国家としての戦いを続けてきた間、それぞれの時期において、教育は社会の必要性に応じるため、国の指導者の最重要課題として焦点となってきた。
     教育制度の大きな変革は1991年に行われ、教育審議会(Congressional Commission on Education:EDCOM)は、その報告書でフィリピンの教育の質的向上を図るために、教育文化スポーツ省(Department of Education Culture and Sports:DECS)を、DECSを含めた3つに分割することを提案した。そして、1994年にフィリピン議会は共和国法7722号と7796号を採択し、高等教育委員会(Commission on Higher Education:CHED)、技術教育技能開発庁(Technical Education and Skills Development Authority:TESDA)をそれぞれ創設した。三焦点教育制度では、DECS改めDEPED(Department of Education:教育省)が、文化・スポーツを含めた初等、中等、及び非公式教育を対象とする基礎教育を担当、TESDAは中等教育以降の、中等レベルの職業訓練と能力開発を管理、そしてCHEDは高等教育の担当となった。

    表3‐1フィリピンの三焦点教育制度
    年齢 教育 所轄機関
    3~6 入学前教育 教育省(DEPED)
    7~12 初等教育 教育省(DEPED)
    13~16 中等教育 教育省(DEPED)
    17~20 中等教育以降の技術職業教育と訓練(TVET) 技術教育技能開発庁(TESDA)
    17~22 4~6 年学士プログラム 高等教育委員会(CHED)
    21~27 修士・博士号プログラム 高等教育委員会(CHED)
    ※出典:
    Isidro Antonio C. Asper (Asst. to the President, FFW, Philippines), “Part I: The Philippine Education System and TVET”, Presented to the ILO/SKILLS-AP/Japan Regional Workshop and Study Programme on Skills Development In the Workplace, OVTA, Chiba, Japan, 27 January – 6 February 2009.

     教育省(DEPED)はフィリピンの教育水準について、フィリピンが2005年の生徒1人当たりの教育予算は、138米ドル※1であり、これはシンガポールの1,582米ドル、日本の3,728米ドル、タイの852米ドルと比べて、かなり少ないと述べた。また、2009年にフィリピン評価団体連合会(Federation of Accrediting Agencies of the Philippines:FAAP)会長は、教育審議会(EDCOM)の調査結果を引合いに出し、フィリピンの教育の質が引き続き低下していることを嘆いている。
     技術教育技能開発庁(TESDA)のデータによると、初等教育に入る生徒100人のうち、66人であり、そのうち中等教育に進むのは58人、卒業できるのは43人だという。その43人のうち、33人だけが、高等教育、又はTVETに進む。この33人のうち、卒業するのは21人のみである。
    ※1
    1米ドル=91.7431円(2009年9月10日現在)

    図3-1 教育レベル別 中退・進学率
    図3-1 教育レベル別 中退・進学率

    ※出典:
    Isidro Antonio C. Asper (Asst. to the President, FFW, Philippines), “Part I: The Philippine Education System and TVET”, Presented to the ILO/SKILLS-AP/Japan Regional Workshop and Study Programme on Skills Development In the Workplace, OVTA, Chiba, Japan, 27 January – 6 February 2009.

  2. 技術教育技能開発庁(TESDA)
     TESDAは、1994年8月25日にフィデル・ラモス大統領の署名により発効した共和国法No.7796(別名:1994年技術教育・技能開発法)制定により設立された。この法令は産業界、労働団体、地方自治体諸機関、及び国の人材の技能開発を担う技術・職業機関の全員参加と結集を促すものである。
     TESDAの創設は、労働雇用省国家人材青年評議会(National Manpower and Youth Council:NMYC)、教育文化スポーツ省の職業技術教育局(Bureau of Technical and Vocational Education:BTVE)、及び労働雇用省地方雇用局(Bureau of Local Employment : BLE)の合併により行われた。
     上記機関の合併は、フィリピンの教育と能力の状況を国家的に見直した教育審議会の1991年の報告の主要な勧告の1つであった。その目的は、各種の民間及び公共機関が始めた技能開発活動の重複部分を削減し、職業教育訓練(Technical Vocational Education and Training:TVET)制度に関する国の方針を策定することにあった。
     TESDAの主目的は、国の技術教育技能開発計画に基づいて中等レベルの人材を総合的に開発する計画を明確にすることである。この計画は、徒弟制度、デュアルシステムによる職業訓練、その他同様の計画を含む産業界ベースの訓練計画を改革するものである。
     TESDAは以下について権限を有する。
    1. 各種能力開発を統合、調整、報告すること
    2. 中等レベルの人材の能力開発・促進を再組織化すること
    3. 技能水準とテストを承認すること
    4. 中等レベルの人材開発に関わる機関に対し、認可制度を開発すること
    5. 技術教育と技能開発の各種計画やプロジェクトに資金提供をすること
    6. トレーナーの訓練計画を支援すること
    また、TESDAは以下のことについて期待されている。
    1. 地方自治体に訓練機能を委譲すること
    2. 徒弟訓練プログラムを改善すること
    3. 技能訓練に産業界/雇用主を巻き込むこと
    4. 技能開発計画を明確化すること
    5. 訓練の動機付けを開発・管理すること
    6. 技能競争を組織化すること
    7. 技能開発資金を管理すること
     TESDAは、民間及び公共部門の職業教育訓練機関(TVET)のために人材開発及び技能計画を明確にし、適切な能力の基準設定・テストを行い、人材開発政策とプログラムを調整・報告し、資源の配分のための政策的な方向付けと指針を与えるものである。
     今日、TESDAは効果的かつ効率的な機関に発展し、さらにその多岐にわたる使命を果たすため、TESDA理事会は、さまざまな分野、業界及び機関において、人材開発面で最高の成果を出すことを目的にした戦略やプログラムを実施している。

  3. フィリピン国家資格枠組み(Philippine National Qualifications Framework:PNQF)
     PNQFは、フィリピンで授与されるすべての資格に対して国内でも体系化し、国際的にも基準となるようなシステムを構築するために開発された。PNQFは小学校入学前から博士号レベルまでのすべての公式教育をカバーするものである。PNQF掲載のあらゆる資格は、学問的水準と職業的な関連性だけでなく、教育の質、評価及び証明書授与の面でも、その質が保証されている。
     PNQFは2006年に国家教育調整評議会により原則的に採用された。
     PNQFの目的は以下の6点である。
    1. フィリピン教育の3部門を一元管理すること
    2. すべての資格に明確な目的と相互の関係を持たせること
    3. 生涯教育に対するアクセスの改善
    4. 品質基準の改善
    5. 革新性、適切性、対応面での一層の改善
    6. 国際的な水準との比較可能性と国際的な承認

     PNQFは、基礎教育、技術職業教育、高等教育におけるさまざまな資格間での単位の移動や明確な橋渡しのための諸規定を作っている。図3‐2は、個人のキャリアと生活スタイルの変更に応じて、各個人に柔軟なキャリアパスを与えるうる仕組みを示している。PNQFを通して、学校間、職種間、職業及び学問的資格の間でのさまざまな繋がりを形成している。なお、中等教育の資格とTVETの修了証1の資格の間には重複している点がある。これは学習の結果が両方の資格に共通点があることを示している。また、高等教育部門で与えられる学士資格にはTVETの1つの資格を十分に備えているものもあり、こうした資格でのすべての単位を取ることも可能である。

    図3-2 フィリピン国家資格枠組み
    図3-2 フィリピン国家資格枠組み

    ※出典:
    Isidro Antonio C. Asper (Asst. to the President, FFW, Philippines), “Part I: The Philippine Education System and TVET”, Presented to the ILO/SKILLS-AP/Japan Regional Workshop and Study Programme on Skills Development In the Workplace, OVTA, Chiba, Japan, 27 January – 6 February 2009.

     フィリピン国家資格枠組み(PNQF)は、職業教育訓練(TVET)と高等教育(HE)との段階的な橋渡しを制度化したものである。これはTVETの学習経験や実際的な勤労経験で得た知識を承認するという現行のシステムを強化し、合理化するものである。これにより、TVET修了者がTESDAの下で、あるTVETプログラムで既に獲得又は修了した単位を失うことなく、大学で提供される高等教育課程を継続することができる。
     PNQFはまた、学生に対して必ずしも満4~5年を必要とはしない仕事の技能、知識、資格を得ることができるようになっている。例えば、アメリカの看護士資格であるが、いくつかのレベルの訓練・教育があり、見習い看護師資格、認可看護師、登録看護師、看護師学士などで、2~5年というさまざまな期間で修得することになる。この現実的な取り組みで学生はより短い期間で職業に就くことができるようになり、同時に自分の選択した職業でのキャリアを追求するために、より高いレベルの学習を選択することも可能である。
     PNQFのもう1つの重要な役割は、質の保証である。国や国際社会での利害関係者がPNQFに信頼を置く場合に欠かすことができないものである。質の保証で重要なのは、資格、基準の有効性、教育訓練機関の認可及び監査、資格授与に至る評価法である。

3.2 職業能力開発を進めるための国の政策

  1. 共和国法1179号 (職業リハビリ法1954年)
     この法令は、障害者(PWD)が社会の生産的一員になることを求めた初めてのものである。ここでは、視覚障害者とすべての障害者に対する職業訓練を推進することを国家の責任として概説している。この法令によって、国内の選ばれたいくつかの地域に「地域職業リハビリセンター」が設立された。また、社会福祉開発省(Department of Social Welfare and Development:DSWD)の下に職業リハビリテーション局が設けられた。そこでは、国内に保護的なワークショップの設立だけでなく、職業リハビリプログラムとサービスの作成、管理、実行などが職務となっている。

  2. 女性のための職業能力開発
     訓練候補者の男女比率の不均衡を是正するために、TESDAは通常は男性が独占している工業コースに女性が登録することを奨励する政策を導入した。この政策では、TESDAの毎年の卒業生全体の10%以上が女性であることを義務付けている。1997年には、国は女性のための職業訓練開発センター(National Vocational Training and Development Center for Women:NVTDCW)を通じて、女性用の技術教育・訓練プログラムを開始した。別名、TESDA女性センターとして知られるNVTDCWは、これらプログラムによって女性の経済的地位を改善することを目的としている。技術技能訓練、起業家訓練、社会技能訓練、研究、権利擁護、キャリア指導、就業支援、及びカウンセリングサービスなどを通して、全体的に女性の地位を強化する取り組みを行っている。

  3. 徒弟法
     失業問題を解決するための行動計画の作成を主目的として、1958年に開催された労使会議で明らかになったのは、国の慢性的、広範囲にわたる失業にもかかわらず、本当に必要なのは技能労働者であるということであった。これは、未熟練労働者と半熟練労働者の過剰供給と、技能労働者と熟練労働者の不足が原因であった。これを改善するため、1957年6月22日の共和国法No.1826の最初の徒弟法による指針とともに、徒弟制度の推進が勧告された。その後、新しい共和国法No.2628が制定され、1960年6月18日に発効した。これらの法令の下で、徒弟制度は、失業者が職業を学ぶことを支援するプログラムを通じて、技能労働者を育成すること、及び学びながら収入を得ることを意味したのである。
    1. 徒弟の資格と雇用
       徒弟の資格を得るためには、14歳以上であること、適切なテストによって証明された職業適性と能力を有すること、及び口頭及び文書による指示を理解し、従うことができること、の3つの条件を満たす必要がある。
    2. 徒弟の契約
       徒弟賃金も含めた徒弟の契約は随時修正されるが、労働雇用大臣(Secretary of Labor and Employment)が公布する規則に従わなければならない。雇用期間は6カ月を超えてはならない。契約での賃金は法定最低賃金を下回るが、いかなる場合もその最低賃金の75%以上でなければならず、労働雇用大臣が承認した徒弟制度に従って、締結しなければならない。
    3. 徒弟の賃金
       徒弟の賃金は徒弟契約に含まれるが、その法律の下で、労働雇用大臣の公布する規則に従わなければならない(労働法第61条)。現在の規則では、最初の6カ月は最低賃金の75%で始まり、その後は生活費手当全額も含めて最低賃金全額が支払われるものとする。
    4. 徒弟制度
       徒弟制度は、労働雇用大臣が正式に承認した徒弟制度の取り決めに従って実施されなければならない。また労働雇用大臣は徒弟・標準モデルプログラムを開発しなければならない。徒弟制度計画案はSOLEの事前承認が不可欠の条件であって、それにより、初めて有効な徒弟契約が締結できる。

  4. 1994年デュアル訓練制度法(Dual Training System Act of 1994)
     共和国法No.7686又はデュアル訓練制度法は1994年6月23日に発効した。これは、「適切な技能、及び好ましい習慣・態度を身に付けた、教育と技能のある人材を確実に増やしつつ供給できるように、国の人材教育と訓練を強化する」という政策に従って制定された。このデュアル訓練制度は、既に高度に発展した国々での試行は成功しており、国の経済にとって頼りになるオペレーター、職人、技術者達を確保する好ましい手段の1つとして、農業、工業、ビジネスの認定機関の協力を得て、正式に認可された職業、技術学校で採用される。デュアル訓練制度(DTS)は、技術に基づく教育・訓練を行う教育方法であり、その学習は2カ所、すなわち、学校又は訓練センターと、会社との間で、交互に行われる。このシステムは、デュアルテク・トレーニングセンターを設立したフィリピン人会社役員グループが、東南アジア科学財団とドイツのハンス・ザイデル財団の協力を得て、1980年代にフィリピンで導入された。
    1. 目的・利点
       この法令の目的は以下のとおり。
      • 現行の教育制度の中で、公立校及び私立校が技術職業教育においてデュアル訓練制度をさらに活用するよう奨励すること。
      • 特に、農村部において、公共、民間の両部門が職業技術教育にさらに投資を増やすよう奨励すること。
      • 卒業生が以下の能力を身に付けることにより、雇用可能性と生産性を高めること。 すなわち、それらの能力とは、分析的、創造的問題解決能力と職業基準と要件に適合する操作能力、職業倫理、品質志向、規律、正直さ、自立心、愛国心などに重心を置く価値観及び態度などである。
      • 関連地方自治体と密接に連携し、訓練プログラムを企画、導入することにより、農業、工業、及びビジネス諸機関と教育機関との間で訓練協力関係を強化すること。
       会社内にデュアル訓練制度(DTS)を導入することの利点は、労働者が雇用主の必要に従って訓練、能力開発されることである。さらに、雇用主は良い訓練と高度な技能を身に付けた労働者を多数確保でき、その結果、人材採用プロセスを迅速に行うことができる。雇用主にはプログラムの途中で訓練生の能力を評価し、また、その地位に最もふさわしい候補生を選択する機会が与えられる。また、訓練生にとっての利点は、訓練後に雇用される確率が高いことである。また、質の高い訓練を受けられるほか、彼らはビジネスの現場に合った能力と仕事に対する態度を身に付けることができる。
    2. 認可手続き
       DTS導入に興味のある学校又は訓練センター、及びビジネス諸機関はTESDAに対し認可申請をしなければならない。「DTS協力者」としての認可資格を得るためには、会社は認可された学校を通じて申請しなければならない。訓練生を受け入れたい会社は、現場訓練のための必要設備と作業場、資格のあるトレーナー、及び訓練計画を持たなければならない。
    3. 税の優遇制度
       協力者としてDTSを採用する会社は、デュアル訓練制度を行う認可教育機関に対して支払う実費の50%に相当する額を特別控除される権利がある。さらに、DTS運営に対する寄付金は、寄付者の課税収入から控除可能である。

3.3 政府及び関係団体の制度、組織、機能

  1. 社会福祉開発省(Department of Social Welfare and Development:DSWD)
     DSWDは職業リハビリセンター4カ所(ルソン島のマニラとパンガシナンの2カ所、セブ島のヴィサヤス、ミンダナオ島のザンボアンガ)を戦略的に配置している。DSWD職業リハビリセンターは障害者及びその他のグループに対しての訓練を行う。訓練プログラムは賃金労働者用及び自営業者用である。

  2. 労働雇用省(Department of Labor and Employment:DOLE)
     DOLEは、雇用創出、労働者の保護、労使関係の安定、及び技能訓練を通しての人材開発という4つの基本機能を持っている。これらの機能は、その付属の機関により実施される。その1つはTESDAであり、技術教育、技能訓練、テスト、評価を通じて人材開発を強化する責任を負っている。

  3. フィリピン職業訓練センター(Philippine Trade Training Center:PTTC)
     PTTCは貿易産業省(Department of Trade and Industry:DTI)の付属機関であり、生活訓練プログラムを実施している。これはDTIのCLEEPプロジェクトの一部である。CLEEPとは、解雇された労働者及び業者に対し、世界的な金融危機の中で自分の仕事に従事し、異なる技術・技能の学習を奨励することを目的とするプログラムである。

  4. 技術教育技能開発庁(TESDA)
     TESDAは国の技術教育に携わる主な機関(庁)である。共和国法No.7796(1994年技術教育技能開発庁法)でTESDAが創設され、国際競争力を付けるために、技術教育と技能開発を促進・強化すること及び常に変化する、質の高い中等レベルの人材需要に対応することを目的としている。TESDAはDOLEの付属機関であり、それは理事会と事務局から構成されている。主として技術教育・技能開発方針の明確化、調整及び統合、計画及びプログラムに責任を持つ。

    図3‐3 TESDA組織図
    図3‐3 TESDA組織図

    ※出典:
    TESDA, “TESDA’s Organizational Structure”,
    http://www.tesda.gov.ph/

     TESDA理事会は、労働雇用長官が理事長、教育長官及び貿易産業長官が副理事長を務める多部門からなる政策立案団体である。TESDA長官だけでなく、農業長官、内務地方行政長官も政府部門の代表を務めている。さらに、大統領は民間部門、雇用者/産業組織、労働部門、民間の技術職業訓練機関の国内連盟からも代表を任命した。一方、TESDA事務局は、その技術・管理スタッフに対して全体的な監督と管理を行う長官がトップを務める。長官室の直接指揮下に以下の4つの局がある。
    • 能力評価認定局(Competency Assessment and Certification:CACO)
    • 業務管理室(Office for Services and Administration:OSCA)
    • 法人業務室(Corporate Affairs Office:CAO)
    • 内部監査局(Internal Audit Division:IAD)
     長官には、2人の副長官がつく。1人の副長官は、TVET部門の担当であり、その下に企画局(PO)、TVETシステム開発局(TSDO)、及び資格・基準局(QSO)がある。もう1人の副長官は現場の運営を担当しており、8つの局、すなわち、地方調整局(RCO)、地方局(ROs)、州担当局(POs)、TESDA技術機関局(OTTI)、TESDA女性センター(TWC)、TVET訓練開発局(NTTDI)、専門センター(SCs)、TESDA技術研究所(TTIs)である。

3.4 予算と財源

 TESDAはDOLEの付属機関であるため、年間予算はDOLEの予算から調達する。2008年は予算管理省(Department of Budget and Management:DBM)がDOLEに対し、62億7,177万6,000ペソ※2を割り当てた。DOLE予算のほぼ50%がTESDAに割り振られ、その額は31億6,321万8,000ペソになった。産業界が必要とする技能と労働力の供給が適合するようにするため、大統領は2009年、労働者の訓練と技能の保持を強化するようTESDAに指示した。2009年のTESDA予算は20億ペソまで増額され、政府は予算が不足した場合には、労働者の訓練のためにさらに追加するとしている。大統領はまた、学生向けに奨学金を提供している。ローランド・ファニーロ氏(TESDAの地方長官)によると、2009年のPGMA(President Gloria Macapagal Arroyo)奨学金は604万4,960ペソが割り当てられたとのことである。国内からの資金のほかに、TESDAは、そのプログラムに対し資金援助をする国内、及び海外の機関と提携している。

※2
1ペソ=1.9034円(2009年9月10日現在)

3.5 外国・国際機関からの援助

 国際機関が支援する多数のプロジェクトやプログラムのいくつかを下記に記す。

  1. TESDA言語能力研究所(Language Skills Institutes:LSI)は援助供与機関から資金援助を受けている。
     LSIは、その使命(国内及び海外での雇用に必要な特定の言語での優れた訓練をすること)に信頼を置く大使館、個人、研究所、企業などから資金協力を得た言語学習設備などがある。資金供与者は、基金を設立して、その利子収入だけを使うか、あるいは、その年に使われる年間ギフトあるいは寄付金を提供する。寄付・基金の額は資金供与者の気持ち次第だが、LSIは年間5,000米ドルを最低の寄付金額の目安としている。

  2. フィリピン技術者の教育支援の4,500万米ドル
     フィリピンにおけるエレクトロニクスや情報通信のような分野での技術教育は、今日ではアジア開発銀行(Asian Development Bank:ADB)が貸付承認した総額4,500万米ドルに上る2つの借入金によって改善する。
     この支援は、公共部門と民間部門が協調する珍しい例である。1つは2,500万米ドルで職業教育の質の向上のために1994年に創設したTESDAに新しい方向付けをするためのものである。このプロジェクトはTESDAに再度焦点を当て技術教育システムをグレードアップし、TESDAから約120校の運営責任を地方自治体及び民間部門に移転しようとするものである。もう1つの借入金、総額約2,000万米ドルは、フィリピン開発銀行(Development Bank of the Philippines:DBP)向けで、そこから技術教育プログラムを改善するために私立の諸機関に資金を貸し出している。

     技術教育・技術開発(Technical Education and Skills Development:TESD)プロジェクトは、政策・基準の開発、カリキュラムの最新化、トレーナーや訓練材料の改良などによりTESD制度を改善することを目的とする。これは、経済成長と貧困の削減に必要な、競争力のある労働力を生み出すという政府の目標を支援するものである。フィリピンの比較優位は低価格のハイテク分野にある。輸出は、労働集約的な製品の減少と複雑な技術品を含む科学を基盤とする製品の劇的な増加を示している。例えば、フィリピンはアジアでインドに次いで第2位のソフトウェア輸出国である。TESD制度は、柔軟な、産業指向の需要に合わせたプログラムを通じて、急速に変化する技術にさらに対応するものになるであろう。教育の質も強化され、品質保証及び認可制度、職業制度、キャリアカウンセリング、そして職場配置プログラム及びサービスも制度化されるであろう。
     このプロジェクトの重要なものは、奨学金の基金と、約2万5,000人の恵まれない学生に対する学生向け奨学金の基金である。このプロジェクト総額は9,000万米ドルである。フィリピン政府は2,000万ドルの資金を出している。ADB以外での提供者は、北欧開発基金(800万米ドル)、OPEC基金(700万米ドル)、国際開発デンマーク庁(1,000万米ドル)である。政府に対するADB借款は通常の資金源から出されており、5年の猶予期間を含む25年が返済期間となっている。金利は米ドルローンに対するADBの共同基金ベースの変動貸付制度に基づいて決定される。TESDAは奨学金の実施機関となる。DBPへの貸付金は5年間の猶予期間を含めて15年間での返済となっている。

  3. 韓国のフィリピン訓練センター
     TESDAは韓国政府からの3種類の支援プロジェクトの実施機関であり、その1つが韓国IT訓練センター(Korea-Philippines Information Technology Training Center:KPITTC)である。これはNovaliches地区にあるケソン市工科大学複合キャンパスにあるが、ここが、国内及び海外からの人材需要に応じる有能なIT技術者を輩出することによって、アジア・太平洋地域における、主要な情報・通信技術トレーニングセンターとなることを望んでいる。ケソン市のKPITTCでは、コンピュータグラフィックスとアニメーションの訓練も提供している。

  4. TESDA女性センター強化プロジェクト(Gender Responsive Employability (Wage and Self) And Training)
     このプロジェクトは、日本国際協力機構(Japan International Cooperation Agency:JICA)とTESDA女性センター(TESDA Women's Center:TWC)との女性の経済的地位強化の分野における共同プロジェクトである。2004~2007年の3年間にわたるプロジェクトでは、ジェンダーと開発に関する研究、権利擁護活動の拡大、TVET訓練実施の改善などを通して、女性の就業(就職と起業)の拡大を目的としている。
     このプロジェクトでは以下の4つの結果を生み出すことが期待されている。
    • TWCスタッフ及び中心人物のジェンダー問題対応能力の強化
    • TWC訓練コースの高効率
    • 女性向けのワンストップサービスの強化
    • 政策立案、情報発信、及びインターネット活用によるTWC機能の強化

3.6 職業能力開発の政策評価

 国のTVET当局としてのTESDAの役割で極めて重要なことは、その部門に対しての舵取りと指導ができることである。明確な指示と優先順位の決定を視野に入れた上で、時宜を得た適切で正確な情報の入手が不可欠である。研究者の活動と諸研究により集められた情報は、TVETの利害関係者たちが情報に基づく決定ができるように、広く伝えられなければならない。質の高い情報があって初めて、国内でのTVET実施の青写真として役立つようなTVETの政策や方針が決まるのである。これらの情報を元に、TESDAは国の技術教育技能開発計画をまとめる。
 国家技術教育技能開発計画(National Technical Education and Skills Development Plan:NTESDP)の第1次終了に伴い、計画実施後の評価が2005年初めに行われた。その評価における基準は、TVET部門の審査とNTESDP2005~2009年への橋渡しとしての役割である。これには、TVETで行われた諸研究の見直しも含まれ、特に、実際の研究分野と優先研究分野の差について見直しが行われた。
 NTESDP2005~2009年の具体化は2005年の5月に終了した。それはTESDA理事会、及び社会開発委員会(Social Development Committee:SDC)の中枢部に提出され、それぞれ2005年5月19日、2005年6月2日に承認された。第1次計画に合わせて、NTESDPの目標と目的達成を支援する研究の優先度も改めて設定された。

3.7 職業能力開発の実施概況

 増加し続けるTVET対象者に対してTESDプログラムの公平なアクセスと提供をする必要性に鑑みて、TESDAは直接訓練の実施を継続している。現在は、学校、センター、企業、コミュニティー・ベースの4つの訓練形式によるものがある。これらは、TESDA下部機関、TESDA管理の57校、60の訓練センター、デュアル訓練制度/徒弟制度による企業ベースの訓練、及び地方自治体と合わせた地域密着型のものである。
 また、質の確保のため、TESDAはフィリピンTVET資格認定制度(Philippine TVET Qualification and Certification System:PTQCS)を通して、中等レベルの技能労働者の能力の評価と認定を行う。評価プロセスでは、卒業生又は労働者が、規定の能力基準に基づいて、職場で期待されるレベルの仕事を行えるかどうかを決定する。認定書は能力基準を満たしている者に対して与えられる。これにより、中等レベルの労働者の生産性、質、国際競争力を確保することができる。
 TESDAは、職業についての全国認定労働者情報の入った登録簿を管理している。また、認定申請者の能力評価を行う評価者だけでなく、認定評価センターも有している。

3.8 公共職業能力開発実施機関

  1. 学校ベースのプログラム
     これは、TESDA管理校によるTVETプログラムを直接実施のことを指す。全部で57校のうち、農業学校が19校、水産学校が7校、職業学校が31校である。これらの学校のプログラムには、3年を超えないさまざまな期間の第2次プログラムもある。

  2. 訓練センターベースのプログラム
     これは、国内のいろいろな地方、州で特定の職業分野で行われるもので、60カ所に上るTESDAの地方訓練センター(15カ所)、及び州訓練センター(45カ所)で行われる訓練を指す。

  3. 地域密着型のプログラム
     地域密着型のプログラムは、主として公式の訓練には参加できない又は参加しない、主に恵まれない最下層向けのものである。彼らは、技能も低く、管理能力も限られ、経済的な選択肢もほとんどない。また、金銭面でも不自由で、彼らのほとんどは公式な単位修得プログラムを受けるには適していない。このプログラムは単に技能訓練を実施するだけのものではない。それは、訓練終了後直ちに、訓練生が生計を支える仕事ができるようにするための意図もある。同様に、貧しい人々とその共同体を助けて、生産的な仕事ができるようにするという使命を帯びたLGU、NGO、一般団体、その他の組織などの提携する団体を支援する目的もある。

  4. 企業ベースのプログラム
     企業ベースのプログラムは企業内で実施される訓練プログラムである。これらのプログラムは下記のいずれかのものである。
    1. 徒弟制度は、見習いを使うことを承認済の特定職に関して、雇用主と見習いとの間に契約を伴う訓練・雇用プログラムである。それは産業界の要請に基づいて、資格を備えた技能労働者を確保するような仕組みを提供することを目的とするのが一般的である。見習い期間は最低4カ月最大6カ月にわたる。見習いを雇うことができるのは、TESDAによる承認・登録済みの徒弟制度を備えた企業のみである。
    2. 学習者プログラムは、3カ月を超えない期間で、承認された職業の実際的な現場での実地研修を行うものである。学習者を雇うことができるのは、TESDA承認、登録済の「学習者プログラム」を持っている企業だけである。
    3. デュアル訓練制度は、教育訓練が学校又は訓練センターと会社との間の2カ所で交互に行われるもので、技術教育と実地訓練を組み合わせた指導法である。

3.8.1 目的、組織、施設など

【TESDA女性センター】
 TESDA女性センターは、アジア・太平洋地域における女性のための卓越した機関として国際的にも認められており、女性の経済的地位の向上を支援するために、市場指向、最新技術に基づく教育と訓練、政策・実践指向型研究、及び事前の擁護策などを提供する。

  1. 目的
     ここは女性の社会的・経済的地位の改善に寄与することを目的としており、この目的をアジア・太平洋地域の民間及び公共の諸機関・研究所と提携して、研究と女性擁護に支えられた、訓練、起業家能力学習、ジェンダー関連の政策、プログラム及びプロジェクトなどを提供する。
  2. 目標とする受益者
    • 都市部の貧しい女性
    • 農村部出身の女性
    • 若い女性
    • 帰国女性移民労働者
    • 海外労働者・船員の妻
    • 女性の専門職・従業員
    • 解雇された女性労働者
  3. 施設
     情報源センターは女性、ジェンダー問題、教育及び訓練、人材開発、労働及び雇用、などに関する約4,000冊の書籍、参考文献を所蔵する。ビデオの閲覧、編集、コピー、録画などのブースもあり、ビデオ形式での300余りの訓練用資料もある。また、コンピュータ化した電子文献とあわせ、研究目的でのインターネット・アクセスもできる。
     その他の施設には、講堂、セミナールーム、レクチャールーム、寮と食堂、デイケアセンター、TWC展示センター、TVETゾーンなどがある。

3.8.2 主要教材、予算と財源、訓練コース、訓練方法

表3‐2自動車関連の例
TVET資格 訓練所要
時間数
訓練所要
日数
1人当たりの奨学金
(フィリピンペソ)
鋳造法、パターン作製、NC II 158 20 6,700.00
鋳造法、パターン作製、NC II 112 14 11,340.00
鋳造法- 鋳型 NC II 158 20 11,700.00
鋳造法- 鋳型 NC III 112 14 11,340.00
鋳造法- 溶解/型取り NC II 128 16 11,460.00
鋳造法- 溶解/型取り NC III 108 14 11,340.00
ブリキ加工(自動車製造) NC II 143 18 11,460.00
プラスティック機械運転 NC II 143 18 11,580.00
プラスティック機械運転NC III 145 18 13,580.00
自動車機械アセンブリーNC II 143 18 6,580.00
自動車機械アセンブリー NC III 145 18 11,100.00
自動車電気系センブリー NC II 143 18 6,580.00
自動車電気系アセンブリーNC III 480 60 9,300.00
塗装機械運転MC II 178 23 8,380.00
実習及び測定NC II 94 12 4,720.00
工程検査NC II 98 13 4,780.00
自動車サービス NC I 288 36 6,660.00
自動車サービスNC II 524 66 9,460.00
自動車サービスNC III 440 55 8,300.00
自動車サービスNC III w/LPG 540 68 9,080.00
自動車サービスNC IV 476 60 11,100.00
自動車車体修理 NC II 118 15 6,400.00
自動車エンジン再構成 NC II 158 20 6,700.00
自動車車体塗装/仕上げ NC I 120 15 6,400.00
自動車車体塗装/仕上げ NC II 158 20 6,700.00
自動車車体塗装/仕上げ NC III 183 23 8,880.00
熱処理 NC II 86 11 11,160.00
※出典:
Pangulong Gloria Scholarships per TESDA Order No. 59 Series of 2009.

3.8.3 代表的なカリキュラムとその開発方法、教材とその開発方法、指導員、訓練生の募集、訓練生に対する優遇措置

  1. カリキュラムの開発 - 能力基準の開発
     TESDAは中等レベルの技能労働者向けの能力基準を開発している。これらは要求される職務内容の記述を含む能力単位の形式になっている。これらは優先産業部門の重要な仕事や職業に対応した資格とパッケージになっている。資格はフィリピンTVET資格枠組み(Philippines TVET Qualifications Framework:PTQF)の特定のレベルに対応するものである。その能力基準と資格は、訓練基準と評価方法とともに、TESDA理事会が公表した国家訓練規則(National Training Regulations:NTR)を構成している。NTRは、特定の資格に対するTVETプログラム、能力評価と認定、カリキュラム開発の登録と実施の基礎となるものである。

    <例1>
    • コース名:重機の運転(クレーン車)NCレベルII
    • 通常訓練時間数:18時間(基礎)+ 18時間(共通)
    • コース説明:建設部門、特に、重機の運転(クレーン車)の基礎、共通、及び 専門能力を習得すること
    • 必須単位:以下の表すべて
      能力の単位 学習の成果 方法 評価方法
      1. 職場での意思伝達参加 1.1 職場情報の入手と伝達
      1.2 仕事関連書類の完成
      1.3 職場ミーティングと討論参加
      グループ討論
      相互のやり取り
      デモンストレーション
      観察
      インタビュー/質問
      2. チーム環境での仕事 2.1 チームの役割の説明・確認
      2.2 チームメンバーとしての
      仕事の説明
      グループ討論
      相互のやり取り
      デモンストレーション
      観察
      インタビュー/質問
      3. キャリア職業訓練 3.1個人目標と組織目標との統合
      3.2仕事の優先度設定と実行
      3.3 職業面の成長と発展の維持
      グループ討論
      相互のやり取り
      デモンストレーション
      観察
      インタビュー/質問
      4. 職場での健康・
      安全の実施
      4.1 危険評価
      4.2 危険管理
      4.3 職場での健康と安全意識の
      維持
      討論
      工場ツアー
      シンポジウム
      観察
      インタビュー
      能力の単位 学習の成果 方法 評価方法
      1. 建設資料及び材料の準備 1.1材料確認
      1.2材料の手配
      1.3材料の入手と検査
      オーディオ・ビジュアル・シミュレーション
      討論
      実地訓練
      デモンストレーション
      • 直接観察
      • 質問又はインタビュー
      • 一覧表(資格証明)
      • 筆記・面接テスト
      • デモンストレーション
      2. 手順、仕様、マニュアル
      の遵守
      2.1 仕様とマニュアルの理解 オーディオ・ビジュアル・シミュレーション
      討論
      実地ラボ
      デモンストレーション
      • 直接観察
      • 口頭質問
      • 筆記テスト又は試験
      • 第三者レポート
      • デモンストレーション
        (知識・技能の伝達可能性)
      3. 技術図面の理解 3.1 標識・記号・データの分析
      3.2技術図面・計画の理解
      3.3 フリーハンドスケッチ
      オーディオ・ビジュアル・シミュレーション
      討論
      実地ラボ
      デモンストレーション
      • 直接観察
      • 口頭質問
      • 筆記テスト又は試験
      • 第三者レポート
      • デモンストレーション
        (知識・技能の伝達可能性)
      4. 測定・計算実行 4.1 測定機器の選定
      4.2 測定と計算の実行
      オーディオ・ビジュアル・シミュレーション
      討論
      実地ラボ
      デモンストレーション
      • 直接観察
      • 口頭質問
      • 筆記テスト又は試験
      • 第三者レポート
      • デモンストレーション
        (知識・技能の伝達可能性)
      5.道具・機器の整備 5.1道具・機器の状態のチェック
      5.2 基礎的な予防的メンテナンスの実施
      5.3 切削道具の刃の研磨
      5.4 道具・機器の保管
      オーディオ・ビジュアル・シミュレーション
      討論
      実地ラボ
      デモンストレーション
      • 直接観察
      • 口頭質問
      • 筆記テスト又は試験
      • 第三者レポート
      • デモンストレーション

    <例2>
    • コース名:重機運転(クレーン車)レベルNC II
    • 通常訓練時間数:120時間
    • コース説明:本コースは、産業標準に基づき、クレーン車運転についての知識、正しい態度、及び技能を修得し、高めることを目的とする。ここでは、クレーン車に関する、運転前および運転後の手順、効率的な運転、基本的な予防メンテナンスについての専門能力を扱う。
    • 必要単位:以下の表すべて
      能力の単位 学習の成果 方法 評価方法
      1. クレーン車の運転前及び運転後の手順習得 1.1 クレーン車の種類/部品知識
      1.2 機械の目視点検
      1.3 BLOWAF点検
      1.3.1バッテリー(B)
      1.3.2ライト(L)
      1.3.3オイル(O)
      1.3.4水(W)
      1.3.5空気(A)
      1.3.6燃料(F)
      1.4 システム運転点検
      1.5 安全装置・付属品点検
      1.6 運転後の点検
      講義
      実地訓練/
      デモンストレーション
      観察/デモンストレーション及びインタビュー
      筆記テスト
      2. クレーン車の効率的な運転技術の習得 2.1クレーン車のトレーラーへの据付と取り外し(低床)
      2.2 クレーン車運転
      講義
      実地訓練/デモンストレーション
      観察/デモンストレーション及びインタビュー
      筆記テスト
      3. クレーン車の基本的予防
      メンテナンスの習得
      3.1安全対策及び点検
      3.2 予防メンテナンス及び整備
      講義
      実地訓練/デモンストレーション
      観察/デモンストレーション及びインタビュー
      筆記テスト
    ※出典:
    TESDA, “Competency-Based Curriculum”,
    http://www.tesda.gov.ph/

  2. 訓練の実施
     訓練はカリキュラムの設計に沿って実施されなければならない。実施については、TVETの能力ベースの以下10項目の基本原則に従うものとする。
    • 訓練は、能力基準により開発されたカリキュラムに基づいている。
    • 学習内容の構造はモジュール形式とする。
    • 訓練の実施は個人のペースに合わせたものである。
    • 訓練は実際の仕事に基づいている。
    • 訓練の材料は能力標準とカリキュラムのモジュールに直接関係がある。
    • 評価は産業界で要求される作業標準の実施内容に関する根拠に基づいている。
    • 訓練は実地訓練、及び講義に基づいている。
    • これまでの学習、又は現在の能力を考慮している。
    • 訓練には多数の入り口及び出口がある。
    • 承認を受けた訓練プログラムは国家的に認定される。
     能力ベースのTVETシステムでは、学習が産業界で規定する能力基準に従って行われる限り、実地と講義に基づくさまざまなタイプの訓練方法を承認している。以下の訓練方法がプログラムの作成に当たり、採用されている。
    • 訓練はデュアル方式が望ましく推奨される。これにより、学校内と企業内又は実地要素が入ることになる。詳細はデュアル研修制度(DTS)導入規則を参照のこと。
    • モジュールで個人のペースに合わせた学習は、訓練生が自分のペースで進むことができる能力に基づく訓練である。トレーナーが訓練実施を手伝う。仲間同士の指導・助言は速い学習者が遅い学習者を助けることができる訓練方法である。
    • 監督の下での産業界での訓練、又はOJT訓練は、訓練規則に盛り込まれた特定の能力を習得するために職場での実務経験を通して、訓練生の知識及び技能を高めるために行われる訓練方法である。
    • 遠隔学習は、大半の授業で学生とインストラクターが同じ場所にいないときに行われる正式な教育課程である。遠隔学習では通信教育、オーディオ、ビデオあるいはコンピュータを採用する。

  3. 訓練参加の条件
     ここでは訓練生になるための資格と教育経験を規定する。健康及び体力条件も含まれる。筆記試験も必要な場合には含まれることがある。
    • 口頭及び筆記での意思疎通ができること
    • 体力的、及び精神的にも適していること
    • 品行方正であること
    • 基礎的な数学計算ができること

  4. 道具、機器、材料リスト
    表3‐3 25人の訓練生に対するクレーン車訓練用に推奨する道具、機器、材料のリスト
    道具・機器・消耗品等 数量
    レンチ一式 1組
    ハンマーボールピイーン
    (3-4ポンド)
    1組
    ペンチ(10“) 1組
    アジャスタブル・レンチ(18“) 1個
    グリース銃 1個
    ドライバー(10“フラット&フィッリプス) 1組
    パテナイフ 1個
    プライバー(堅固なもの) 1個
    タイヤゲイジ(0-150 psi) 1個
    防塵マスク 10個
    道具・機器・消耗品等 数量
    自動トランスミッションオイル(ATF) 10 L
    手動トランスミッションオイル(GP90/140) 10 L
    冷却水 4 L
    ディーゼル燃料 200 L
    バッテリー蒸留水 5 L
    1次2次エアフィルター 1組
    作業着 1組
    安全靴 10組
    手袋 10組
    ゴーグル 10個
    道具・機器・消耗品等 数量
    クレーン車(MOA/レンタル) 1式
    掃除機 1式
    携帯式電気エアコンプレッサー 1式
    多目的グリース 5Kg
    エンジンオイル(SAE15w40) 4L
    油圧式/ステアリングフルイド(TELLUS68/10W) 20L
    安全帽 10個
    テスト用ウエイト3トン・10トン 2組
    クレーン車ミニチュア 1個
    運転マニュアル(ロードチャート付) 1冊
    PTO/ディファレンシャル・トランスファーケースドライブ (ギアオイルGP90/ 140) 10L
    ※出典:
    TESDA, “Competency-Based Curriculum”,
    http://www.tesda.gov.ph/

  5. 訓練施設
    クレーン車の運転の作業場は具体的な構造になっていなければならない。25人の学生/訓練生のクラスサイズに基づいて、指導/学習及び移動のためのスペースの要件は以下のとおりである。

    表3‐4 25人の学生のための訓練施設スペースの要件
    スペースの要件 サイズ(m) 面積(m2 総面積(m2
    学生/訓練生の1人当たり作業スペース 2.0×2.0 4.0 100.0
    講義室 8.0×6.0 48.0 48.0
    学習センター 4.0×6.0 24.0 24.0
    以上合計   172.0
    施設/機具/必要面積 - - 52.0
    作業場総面積 - - 224.0
    クレーン稼動場面積 0.25ヘクタール(契約/レンタル)
    ※出典:
    TESDA, “Competency-Based Curriculum”,
    http://www.tesda.gov.ph/

  6. トレーナーの資格(重機運転(クレーン車)の場合)
    【トレーナー資格(TQ II)】
    • 重機運転(クレーン車)NC-II又は同等資格の所有者
    • 訓練/実地で訓練方法論II(TM II)又は同等の訓練を受けた者
    • コンピュータの知識を有する者
    • 体力的、精神的に適した者
    • 5年以上の実務経験を有する者(雇用する団体が必要とする場合のみ)
    • 公務員資格を有する者、又は職業規制委員会が発行する(政府の地位の)適切な職業免許の保有者
    ※参考:
    TESDA Board Resolution No. 2004-03.

  7. 国家による評価と認定
     重機運転(クレーン車)NC IIの国家資格を取るためには、その候補者は第1部のすべての能力単位における能力を実際に示さなければならない。合格者にはTESDA長官署名入りの国家認定書が授与される。
     評価は専門能力単位に重点を置く。基礎、及び共通能力単位は、専門能力単位に統合されるか、あるいは、専門能力と同時に評価される。
     以下の者は評価と認定の申請をする資格がある。
    • 公式、又は非公式、あるいは、企業ベースの訓練プログラムを含む非公式訓練を修了した者
    • 実務経験者(被雇用者又は自営業者)
     評価と認定についてのガイドラインの詳細は、評価と認定に関する手続きマニュアル及びフィリピンTVET格認定制度(Philippine TVET Qualification and Certification System:PTQCS)の導入ガイドラインに書かれている。

3.8.4 修了生の取得資格、修了生へのアフターケア、修了生の就職状況

 「青年用キャリア紹介」は、学生が大学で学ぶべき課程を賢く選択することを支援する、多角的なキャリアガイダンスプログラムである。これは、適性、職業関心度評価、労働市場情報、教育及び訓練情報、キャリア紹介とガイダンス、及びカウンセリングなどを提供する。このプログラムは、主な対象である高校生のほかに、中途退学の青年、失業者、キャリアの変更を望む働く青年などにも使用することもできる。キャリアガイダンスの教材は、TESDA理事会が認めた優先部門における雇用機会の促進を目的としており、基礎能力、教育、訓練要件を含む各分野のキャリア課程に重点を置く。
 TESDAは、国内及び海外の市場情報から職業に必要な条件を具体的に把握することで就職口を探し、また、NGO、社会福祉機関/研究所、学校及びコミュニティー組織と連携して、職業にふさわしい訓練を受けた、適切な人材に就職先を見つけなければならない。TESDAはさまざまな産業分野との相談により開発したTVETの品質基準を使って人々を訓練しなければならない。このマッチング事前対策は職業能力最適化に貢献するものである。TESDAはまた、起業家育成訓練で零細企業、中小企業に入ることを望む個人やグループを支援することにより、導入したプログラムの生産性を上げることに重点を置いている。

3.9 民間企業が行う職業訓練への支援体制

 TESDA訓練センターTaguigキャンパス事業(TTCTCE)は、産業界の訓練要請に対応した共同運営計画のもとで、産業界の諸機関と提携してUTPRAS に登録した高度技術訓練プログラムを実施している。これらのプログラムはTESDA開発基金(TESDA Development Fund:TDF)を支援するための収入を生み出す。
 TESDA 理事会は訓練料を取ることを承認しており、契約で合意した分担方法により、産業界は徴収した訓練料から訓練経費を払い、センターの訓練施設を修理・維持に充てている。また、TESDAの訓練システム効率化のための設備類にも充てられる。


参考文献

  1. Asper, Isidro Antonio C. (2009). Part I: The Philippine education system and TVET. Presented to the ILO/SKILLS-AP/Japan regional workshop and study programme on skills development in the workplace, OVTA, Chiba, Japan, 27 January - 6 February 2009.
  2. Asian Development Bank (ADB).
    http://www.adb.org/Philippines/
  3. Commission on Higher Education (CHED).
    http://www.ched.gov.ph/
  4. Development Bank of the Philippines (DBP).
    http://www.devbankphil.com.ph/
  5. Department of Budget and Management (DBM).
    http://www.dbm.gov.ph/
  6. Department of Education (DepED).
    http://www.deped.gov.ph/
  7. Department of Labor and Employment (DOLE).
    http://www.dole.gov.ph/
  8. Department of Social Welfare and Development.
    http://www.dswd.gov.ph/
  9. Office of the President.
    http://www.op.gov.ph/
  10. Philippine Trade Training Center (PTTC).
    http://www.pttc.gov.ph/home.php
  11. Technical Education and Skills Development Authority (TESDA).
    http://www.tesda.gov.ph/
  12. TESDA Women’s Center.
    http://twc.tesda.gov.ph/

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