各国・地域情報

シンガポール

更新年月日:2009年8月15日

雇用労働関係法令

1.1 雇用労働関係法令一覧

シンガポールの雇用労働関係法令には、以下のものがある。

1.2 労働基準関係法令

 シンガポールの労働基準関係法令は雇用法、児童育成共同救済法、外国人労働者雇用法及び労働安全衛生法である。

1.2.1 労働契約

  1. 雇用法
      雇用法がシンガポールの主たる労働法令である。雇用法はすべての個人を対象として、雇用の基本的な契約条件、雇用者と労働者の権利義務を明確に規定している。同法は雇用契約に関するすべての法令に対応し、雇用者、労働者双方が確実に保護されるための基準を提供する。契約の終了、解雇予告通知、予告なしの解雇、法的効力のある契約年齢、契約違反の法的責任、雇用者の変更、雇用の譲渡にかかわる非合法な雇用契約の条件を規制する。雇用法は、外国人労働者、臨時労働者、請負労働者、日雇い労働者、終身在職の労働者を区別することなくすべての労働者を対象とする。ただし、月額基本給2,500シンガポールドル※1以上の管理職者、経営者、船員、家事労働者、公的機関あるいは政府が雇用する者は適用対象外とする。
      雇用法の改正の1つとして、適用外であった守秘義務を負う労働者に対して雇用法が適用される。特に、高度な機密保持を要する経営幹部の適用除外や、適用除外労働者の3分の2は月額総収入額が中間層以下に含まれることから除外は不当と考えられていた。現在ではこの適用除外は無効とされている。もう1つとして、月収2,500シンガポールドル以下の若手管理職、経営幹部が労働裁判所に給与の不服を訴えられるようになった。これは管理職、経営幹部の増加と、民事訴訟の費用が高く、紛争解決のための効率的な仕組みが欠けていたことを補うためである。
※1
1シンガポールドル=65.0855円(2009年8月17日現在)

1.2.2 解雇規則

 解雇する労働者に対して、雇用者は解雇日もしくは解雇後3日以内に給与を支払う。労働者側からの事前通告による契約の終了の場合も、雇用者は総給与を支払わなくてはならない。事前通告がない場合でも、雇用者は契約解除日から7日以内に労働者に支払わなければならない。

1.2.3 賃金、労働時間、休憩、休日、年次有給休暇、時間外及び休日労働、時間外の割増賃金


  1. 賃金
     全国賃金評議会(National Wage Council:NWC)の2009〜2010年にかけての賃金ガイドラインによると、2009年第1四半期の国民総生産は景気悪化と企業コスト上昇のため、前年比で10.1%も収縮し、2008年第4四半期の−4.2%よりも大きく減少した。景気の急激な落ち込みを反映し、概算予測では、2009年第1四半期の余剰人員数は1万2,600人に増加し、2008年第4四半期の9,410人を上回った。3月の季節調整後の総失業率は3.2%、居住者(シンガポール国籍者、永住権所持者)失業率は4.8%に上昇した。2009年を通して景気低迷が継続する見込みで、人員削減数と失業者数は2008年よりも大幅に高まると予測される。しかしながら、消費者物価指数(CPI)インフレは和らぎ始めた。2009年第1四半期のCPIは年率2.1%上昇したが、前年同期の6.6%、前年第2四半期の7.5%を下回った。2009年のCPIは−1〜0%と予測されている。
     賃金凍結もしくは切り下げ、賃金の柔軟性、及び生産性向上を通じて企業、労働組合、政府がコスト削減、雇用確保、競争力を改善するようNWCは勧告している。つまり、NWCは企業に対して、労働者に報い、かつ総賃金コストを管理し企業の長期的なコスト競争力を損なわない、月次変動給与(Monthly Variable Component:MVC)を含めた柔軟な賃金制度の導入を勧告している。MVCの減額という形で企業が基本給をカットできるようNWCが保障することで、企業はMVCを導入し、賃金に弾力性を持たせることができる。企業はMVCの導入にあたり、労働組合/労働者と協力して、業績回復時には将来の賃金増もしくは調整分からMVCを返還するガイドラインを設定しなければならない。
     政府は景気回復策(Resilience Package)として205億シンガポールドルの支援を発表し、コストを削減、雇用を確保するとしている。この政策には、雇用給付金制度(Jobs Credit Scheme)、低所得労働者を支援する勤労福祉所得援助(Workfare Income Supplement:WIS)の特別支給、各種税金の軽減措置がある。余剰人員の管理に関する三者ガイドライン(MEM guideline)は改訂され、技能向上プロジェクト(Skills Programme for Upgrading and Resilience:SPUR)ではこれまでより多くの専門職、管理者、経営幹部、技術者(PMETS)を支援する。これらの施策は企業、労働組合/労働者に好意的に受け入れられ、不景気に対処してコストの管理、失業の最小化に役立っていると全国賃金評議会は言及している。2009年3月末に、企業、労働組合、政府の三者が集めた企業からのフィードバックによれば、回答を寄せた1,900社のうちの約66%が人員整理をする予定がないとしている。人員整理を計画している残り34%の企業では、5分の4の企業が上述の対策により人員整理の計画を延期あるいは整理対象者数を減らした。さらには5分の1の企業は、これらの不景気対策にもかかわらず人員整理計画を実行済みあるいはこれから実行予定と回答した。失業は増加したものの、経済界は大幅な構造改革により新たな雇用を創出している。これに関して、NWCは政府による継続教育訓練(Continuing Education and Training:CET)の基盤を拡充するよう勧告している。労働者は既存の能力向上、新たな技能を習得する柔軟な対応が求められている。企業側もCET制度やSPURのような種々の援助制度を利用し労働者の能力向上、新たな能力の育成が求められている。SPURには、企業が新規労働者を採用し、訓練するために、SPUR‐JOBS、専門技術プログラム(Professional Skills Programme:PSP)など多くの制度がある。企業はこうした制度を最大限に活用すべきである。
     雇用法第4章では、月額基本給4,000シンガポールドル以下の肉体労働者(ワークマン) ※2、月額基本給2,000シンガポールドル以下の労働者の休日、労働時間、その他の業務条件を規定している。また、給与は最低月に1回、給与の支給は給与期間の最終日から7日以内の就業時間内に支払わなければならないとしている。雇用法改正により、非肉体労働者の給与の上限が賃金上昇を反映して1,600シンガポールドルから2,000シンガポールドルに引き上げられた。現在の中間賃金は2,300シンガポールドルとなっている。もう1つの改正として、賃金競争力に影響を与えることから、高給を理由に肉体労働者の時間外割増賃率や休日労働への支払率の柔軟性が制限されている場合、月額基本給4,500シンガポールドル以下の肉体労働者に雇用法が適用されることになった。

  2. 労働時間
      雇用法では、労働者の労働時間は1日当たり8時間以内あるいは週当たり44時間以内と規定されている。また、連続6時間以上勤務する場合は、労働者に休憩時間を与えなければならない。すべての労働者は毎週日曜日もしくは他の合意した日に、無給の休業日が与えられる。

  3. 休暇
     3カ月以上勤務する労働者は、就業開始から12カ月の間に7日の年次有給休暇が与えられる。その後、1年ごとに1日ずつ有給休暇が加算される。ただし、総有給休暇日数は14日を限度とする。有給休暇は労働者が権利を持つ休業日、祝日、病気休暇とは別に与えられる。ただし、労働者が月間又は年間に定められた就業日数の20%以上を欠勤した場合、年次有給休暇の権利を失う。
     雇用法改正により、雇用法が適用されるすべての労働者に有給病気休暇が与えられ、資格取得期間は年次有給休暇の資格取得に必要な雇用期間に合わせて、6カ月から3カ月に短縮された。新規労働者に対する段階的な有給休暇の支給日数を以下の表に示す。

    表1‐1 有給病気休暇支給日数
    勤務月数 有給疾病休暇日数 有給入院休暇日数
    3カ月 5日 15日
    4カ月 8日 30日
    5カ月 11日 45日
    6カ月 14日 60日

  4. 時間外労働
     事故、地域社会、防衛・安全保障、緊急の機械作業、シンガポール経済にとって必須の、あるいは刑法(臨時規定)第3章で定める必須作業にあたり、合意された就業時間を超過して就業が要請された場合、労働者の時間外労働に対して基本時間給の少なくとも1.5倍を支払わねばならない。労働者の時間外労働は1日に12時間以内、1カ月に72時間以内と定められている。

  5. 休日/有給祝日の労働
     雇用者は仕事の性質上交代勤務が継続的に必要でない限り、労働者に休業日あるいは祝祭日に勤務を強制できない。給与は労働者の要請に応じ、就業時間に従って支払われる。就業時間が通常労働時間の半分以下の場合、半日分の給与が支払われ、半分を超過する場合は1日分の給与が支払われる。

  6. 時間外労働の割増賃金
     雇用者は時間外労働に対して、基本時間給の1.5倍を現金で支払わなければならない。労働者は祝祭日に働く場合1日分の割増給与を、休業日の場合は2日分の給与を受け取る。しかし、経済再生委員会(Economic Review Committee:ERC)は現在の経済変動と不況下では企業は労働時間のスケジュール立てが困難で、不況時の時間外賃金支払いに苦慮していると認めている。その結果、雇用法の第41A条は改正され、コミッショナーが企業を時間外、休業日、祝祭日労働の法規定の適用除外を許可することができるようになった。コミッショナーは、また、状況に応じて、時間外、休業日、祝祭日労働に対する企業による現金支払いの免責、あるいは法定割増賃金率と異なる率の使用を許可することができる。フレックスタイム(Flexible Work Schedule:FWS)実施のために適用除外が認可されるには次の基準を満たさなければならない。すなわち、(a)FWCに適していること、(b)労働者の安定した収入、(c)労働安全衛生、(d)従業員のやる気、(e)労働組合と直接影響する労働者の同意、(f)免責の定期的見直しと改定である。FWSの妥当性や、労働コミッショナーが企業に雇用法の適用除外を付与する必要性を評定するための三者作業グループも設置された。現在、三者作業グループは高齢労働者の雇用可能性を高め、より多くの女性の職場復帰を勧めている。ERCの勧告は2009年7月1日から2010年6月30日までを対象としている。これらの勧告は、管理職、経営幹部、一般従業員、組合化、非組合化企業、公共、民間部門などのすべての労働者に適用される。こうした代替手段により、企業は人員整理による失業を最小限にとどめている。
※2
各種技術職人や職人見習いを含む、肉体労働者(船員、家事労働者、事務系労働、各種機械操作・乗り物の保守作業は除く)は、ワークマン(workmen)というカテゴリーに分類され、雇用法では労働者(被雇用者)とは別に規定されている。

1.2.4 年少者、女性、民族、外国人労働者、労働安全衛生、アウトソーシング(委託業務や派遣労働)

  1. 年少者
     雇用法第8章の規定により、15歳以下のいかなる者も雇用してはならない。ただし、家族のみを雇用する非工業の軽作業の場合に限り13歳以上の年少者を雇用してもよい。他の許可された年少者の雇用には教育省、技術教育機関、技術、職業、あるいは工業訓練学校によって承認・監督された労働もしくは徒弟制度プログラムが含まれている。これらの法律に違反した場合、児童・年少者法第48条によって児童への配慮と保護が与えられる。

  2. 女性
     育児休暇は適用法令により、資格要件や有給となる期間等が異なる。児童育成共同救済法では、@結婚している親でAシンガポール国籍者(管理職、経営幹部、守秘義務を負う職位にある者)でB出産以前に90日以上就業した者には育児休暇手当が与えられる。Aの条件が満たされない場合、最初の8週間超過した分の育児手当の支給は雇用者の自由裁量に委ねられるが、雇用者は政府に給付の請求をする権利がない。@とAの基準を満たしていないが、出産1年以内に満たした場合は受給資格がある。
     雇用法の規定に該当する場合、出産する女性はBの条件を満たしていれば12週間の育児休暇が与えられる。この規則は自営で、ある特定の事業、取引、専門的職業に出産前に90日以上継続的に従事し、育児休暇を取得した結果、収入を喪失した女性にも適用される。この規則は、有期契約/臨時/パートタイム/試用期間中の労働者にも適用される。育児休暇は出産4週間前と出産直後の12週間である。雇用者と労働者との合意がある場合、育児休暇を8週間(9週目から16週目)期間を延長し、出産後1年の間に弾力的に取ることができる。労働者は8週間相当の就業日数、すなわち最大48日まで弾力的に取得できる。(a)出産日前に90日以上雇用されており、(b)出産時に子供が2人以下、(c)休暇取得の1週間前に通知が行われた場合、育児休暇の最初の8週間、諸手当を含む通常の給与が支払われる。この条件が満たされない場合、育児休暇手当は半額になる。
     母親労働者を守るため、育児休暇中の母親を企業が解雇することは禁じられている。違反した場合、罰金もしくは懲役刑が科せられる。母親労働者が出産後3カ月以内に解雇された場合、雇用者は解雇されなければ得られるはずの育児休暇手当を支払わなくてはならない。出産直後の4週間以内のいかなる時にも雇用者は労働者を採用してはならない。労働者は育児休暇中に退職できず、退職通知期間として育児休暇手当受給期間を使ってはならない。育児休暇中に女性労働者が退職した場合、育児休暇手当を喪失し、雇用者は当該労働者を解雇することもできる。女性労働者が出産前に複数の雇用者の下で就業していた場合、複数の雇用者に育児手当の支払いを求めることができる。女性労働者が不当に解雇された場合、法的支援を求め、人材開発省(Ministry of Manpower:MOM)に提訴し、地方自治開発省(Ministry of Community Development, Youth and Sports:MCYS)に不服申し立てができる。

  3. 外国人労働者
     シンガポールの成長力と競争力※3を維持するため、最も需要のある分野で慎重に外国人労働者を導入する必要がある。小国であるシンガポールは、外国人労働者を適切に取り扱い、経済に積極的に貢献し続けてくれるようにする必要がある。労働者を非合法的に採用し就労パス(Work Pass)※4 制度を回避したり、労働者の福祉を守るために課せられた条件を無視する不正な企業から外国人労働者も守らなければならない。外国人労働者雇用法(Employment of Foreign Manpower Act)により、すべての外国人労働者とその福祉が守られ、彼らが有効な就労パスを保持できるようになっている。同法の改正により、外国人労働者の罰金が外国人雇用税の24カ月から48カ月に、不法雇用と積極的な不法行為に対しては最高1万5,000シンガポールドルの罰金、あるいは1年以下の懲役、又は両方を科すよう強化した。外国あるいは国内を問わずすべての雇用者は、第三者を利用して就労パスを申請する不正行為を見逃さないよう、虚偽の申告に気づいた場合はMOMに報告をしなければならない。

  4. 労働安全衛生
     職場安全衛生法(Workplace Safety and Health Act:WSHA)の目的 ※5は良好な安全習慣を育成し職場における強固な安全文化を形成することである。この法律は、職場の安全衛生の積極的な管理に重点をおき、作業者や、作業の影響を受ける労働者以外の者の安全衛生を守るため、適切で実行可能な手段を講ずるよう利害関係者に求めるものである。この法律に該当する者が引き起こす可能性のある危険を除去又は最小限に抑え、産業界の安全衛生意識をより高め、安全管理の不備には厳罰を科して事故を未然に防ぐことが労働安全衛生(Occupational Safety and Health:OSH)基準の基本原則である。この法律は一般規定、事故報告、救急、危険管理、違反の免責・構成の規定から成り立っている。大幅な法改正が行われ、職場の所有者の代わりに、職場の一定範囲の労働者に対する法的責任を明記し、規則を定める代わりに安全の実績を作るための労働安全衛生の効果的な管理に焦点を合わせている。工場、造船所、建設現場といった危険度の高い産業はこの法律が適用される。傷害の危険がある場合には、安全対策実施コストは考慮外である。調査官はいかなる時も職場の査察が認められ、違反が発見された場合は最高5,000シンガポールドルの罰金が科される。
※3
http://business.gov.sg/EN/BusinessTopic/
HiringNTraining/EmployersResponsibilities/
LawaNRegulations/hiring_laws_foreignact.htm
※4
就労パスには大きく分けて、雇用パス(Employment Pass)、Sパス(S Pass)、労働許可証(Work Permit)の3つがある。
※5
http://www.mom.gov.sg/publish/momportal/en/
legislation/Occupational_Safety_and_Health/
workplace_safety_and.html

1.2.5 就業規則、労働協約

 官僚の職務遂行規則や規定は、変転する経済と労働者の必要に合わせ当該大臣が常時制定、改正する。雇用法、及び刑法の目的に従って、すべての官僚はすべて公僕と見なされる。職場も公共の場と見なされる。雇用法違反は治安判事裁判所もしくは地方裁判所に提起され全面的に懲罰を受ける。不法行為で有罪とされたコミッショナーと幹部職員は裁判所において聴聞の機会が与えられる。雇用契約の違反もしくは不履行を問われた場合、雇用者あるいは労働者は公民権を行使し、救済を申し立てる権利がある。罰金、損害補償、損害賠償の支払い不履行で懲役となる場合は、支払い全額が免除される。

1.2.6 その他

 パートタイム労働者は雇用法が適用され、週当たりの労働時間は35時間以内と規定されている。雇用契約には、パートタイム労働者の合意基本時間給、1日/1週/1カ月の労働時間数を明記しなければならない。1週間に5日就業する場合には1日の休業日が与えられる。合意した1日当たりの労働時間を超過した場合、超過分は時間外労働として計算する。パートタイム労働者も、3カ月以上勤務すると育児手当、有給祝祭日、病気休暇、年次休暇が与えられる。
 現在の経済状況では、高齢労働者が一時解雇され、若く、就職したばかりで、技能の高い労働者が継続雇用となる。公共部門では教師、講師、軍将校、警察官は民間人よりも退職が早い。さらに、一般的に高齢労働者は若年者より訓練しにくく、習得に時間がかかり、肉体的に劣るとされ、定年が65歳に引き上げられたものの、40〜50歳台の中高年労働者は職探しに苦労している。シンガポールの人口高齢化問題への対応は高齢労働者の雇用可能性に関する三者委員会(Tripartite Committee on Employability of Older Workers)が行っている。同委員会は三者実行作業グループ(Tripartite Implementation Workgroup:TIW)を立ち上げ、企業の高齢労働者再雇用戦略の立案、計画に協力している。この作業グループは退職前計画と再雇用契約について企業に助言する。そうする中で、シンガポール雇用訓練庁(Singapore Workforce Development Agency:WDA)は高齢者の雇用に関するアドバンテージ対策(ADVANTAGE! Scheme)を策定し、高齢者の再雇用に関する方針を政策化、柔軟な労働形態の準備、引退カウンセリング(特に中央積立基金(Central Provident Fund:CPF)の引き出し)、生産性や効率の改善をめざした職業再設計プロジェクトを通じて、企業が高齢労働者の再雇用を実施するために必要な資金を援助する。WDAは、また、シンガポール全国雇用者連盟(Singapore National Employers Federation:SNEF)、中小企業協会(Association Small and Medium Enterprises:ASME)、高齢者センター(Centre for Seniors:CFS)と協力して再雇用政策に参加するよう企業を教育する。
 この施策が結実して2012年に再雇用法が施行され、定年退職者が再雇用されることになる。人材コンサルタントの考えでは、異なる年齢グループの労働者に適した給与システムを用いれば再雇用で企業が困ることはないという。これには労働者に報いるボーナスに可変システムを利用することが含まれる。企業はいまだに高齢労働者の雇用に消極的だが、2020年にはシンガポールの人口の5人に1人が65歳以上となる見通しで、特にこの人口層のための職業活動分野を創出することが対策の1つになるであろう。高齢労働者の再雇用を円滑にするには傾斜路を設置するなど、作業場をより安全で、利用しやすくしなければならない。
 定年退職法(Retirement Age Act)の対象はシンガポール国民と永住権を持つ、管理職、専門職、経営幹部を含むすべての労働者である。この法律の適用外となるのは、請負契約労働者、1993年7月1日以前に退職金制度の恩恵を受けた者、62歳以下で有期又は臨時での就業期間が2年以下の者である。最低退職年齢は62歳である。この法律は退職年齢以下の労働者が年齢を理由に解雇されないよう保護する。労働者が不法に解雇された場合、人材開発省に届け出て原職復帰に協力を求めることができる。62歳を超えて就業を希望する者は就業することができる。

1.3 労使関係法令

 労使関係に関する法令には、労働組合法(Trade Union Act)、労働争議法(Trade Dispute Act)、労使関係法(Industrial Relations Act)がある。

1.3.1 労働組合

 全国労働組合会議(National Trade Union Congress:NTUC)は63の労働組合からなり、良好な労働条件、訓練の機会、高品質の製品・サービス、レクリエーション施設を確保することによってシンガポールの労働者がより良く有意義な生活を送れるよう活動する。2009年5月、NTUCはユー・ケア即時援助(U Care Immediate Assistance)、奨学金支援制度(Bursary / Scholarship Top-Up Scheme)等のための援助資金として1,560万シンガポールドルを集めた。ユー・ケア即時援助は解雇された労働者、労働日数を短縮された労働者、一時解雇の労働者で困窮に直面している者に迅速な救済を提供する。これら資金の50%が低所得で就業中の組合員にわたる。現在の景気減速に苦しむ公務員をサポートするため年央支払金も提供された。2009年の後半には、NTUCはさらに続けて会員に70万シンガポールドルを提供した。
 労働組合法は労働者と企業の関係を調整し、良好な労使関係を推進し、労働者の労働条件を改善し、労働者の社会経済的立場を高め、職場の生産性とシンガポール経済の上昇に寄与する。同法は組合の登録を確保し、組合の権利と義務を明確にすることにより組合業務の適正管理、資金の安全管理、組合役員の自由選挙を含む労働組合の活動を規制する。同法により、これらは民事訴訟から免責される。ただし、個人の行為の結果、雇用契約の破棄、他者の取引、事業、及び雇用、他者が自らの意思に基づき自らの資本もしくは労働を処分する権利を侵害する場合は除く。同法の下、個人は不法行為の申し立てあるいは非合法に所有する取引が制限される物件に対して責任を負わない。登録労働組合は、無記名投票による同意がなければ、いかなるストライキの開始、推進、組織化あるいは資金提供は認められない。労働組合員の最低年齢は16歳である。組合役員は承認なしに組合に法的義務を負わせることができる。同法の規定により、すべての労働組合は変更改正のない、少なくとも英語と中国語、英語とマレー語、又は英語とタミール語の登録労働組合の写しを持たなければならない。団体の登録又は記録に関する成文法は労働組合には当てはまらない。

1.3.2 労働争議解決システムに関する法令

  1. 労働争議法
     労働争議法は労働争議行為、ストライキ、ロックアウトを規制する。同法は、労働争議やストライキが基準に従って実施されることで、争議やストライキが政府に強要したり、社会に困難を引き起こすことなく、また、争議が拡大しないようにする。このような問題を引き起こさなければ、非合法な労働争議の結果でも非合法とは見なされない。非合法の労働争議を起こした場合、最高2,000シンガポールドルの罰金、もしくは6カ月の懲役に科せられる。非合法のロックアウトは、最高5,000シンガポールドルの罰金、もしくは6カ月の懲役、又は両方が科せられる。上記の違法行為を扇動又は教唆、及び資金援助をすると最高5,000シンガポールドルの罰金、もしくは最長1年の懲役、又は両方が科される。また、同法は非合法争議の参加を拒絶した者、及び恫喝、脅迫、あるいは追い回された者を保護する。しかし、情報収集や就業させたりさせなかったりするために、平和的にピケを張るのは合法である。他者に危害を加える目的で、意図的に雇用契約を破棄する場合は有罪である。

  2. 労働組合法
     労働組合法は組合内の犯罪や罰金も規定している。例えば、登録労働組合の金銭や財産の悪用、だます意図を持って組合に関する誤情報による嘆願、通知書、声明、書類等の提出不履行に関する規定があり、一般的な罰金は最高2,000シンガポールドルとなっている。

  3. 労使関係法
     労使関係法の下、労働争議が雇用の移動、幹部社員へ支払われるべき人員削減給付金、雇用契約違反に関する場合、労働争議は仲裁裁判所へ提訴される。争議が政府の雇用に関連する場合、仲裁裁判所へ提訴する前に大統領に通知される。

  4. その他の重要法令の概要
     シンガポール労働者基金法(Singapore Labor Foundation Act)は、労働組合員と家族の福祉を向上し、シンガポールの組合活動を一層発展させるために制定された。同法は基金、運営委員会、及び労働者の管理経営と、収入、資産の用途、株式の発行、経理の開示、善意の行動から発した不利益からの保護を規制する。

1.4 労働保険関係法令

 労働保険を規制するのは、労働災害補償法(Work Injury Compensation Act)である。

1.4.1 労働者災害補償保険

  1. 労働災害補償法
     労働災害補償法の目的は労働者を不良雇用者から守り、補償制度の悪用を防ぐことである。同法は慣習法による損害賠償請求の代わりに雇用者、労働者がともに利する、簡易で低コストの無過失制度を提供する。負傷、職業病の発症、労災事故で死亡した場合、すべての労働者は、過失を証明することなく補償金を速やかに受領できる。雇用者の法的責任には上限を定めることができる。補償金には、医療費、病気休暇賃金、永久障害による就労不能あるいは死亡への補償も含む。事故から1年以内に発生した医療費の補償は上限が2万5,000シンガポールドルで、医療費の95%をカバーするのに十分な金額である。雇用者はシンガポール認可・登録の開業医もしくは病院での治療費用に法的責任を負う。これらの費用がシンガポール国外で就業中に発生し、医療が必要な場合も、同法第14条の規定により労働者は補償される。現行法は軽微な事故の報告を義務付けていないが、死亡、連続3日以上の就労不能、24時間以上の入院、あるいは職業病の発症報告の不履行は違法である。
     労災補償制度は有効かつ効率的であり、多くの雇用者がこの制度の恩恵を受けてきた。1,600シンガポールドル以上の収入を得るすべての労働者は、手仕事であるなしに関係なく、同法の下で補償が受けられる。しかし、職場での危険、負傷の可能性が低いため、雇用者は手仕事をしない労働者に対する保険の適用を義務付けられていない。補償金は死亡の場合、4万7,000〜14万シンガポールドルまで、完全就業不能の場合、6万〜18万シンガポールドルまでである。雇用者は、部分的過失であっても第三者に対して負傷の責任を追及し、民事裁判所に損害賠償の訴えを起こすこともできる。第33条は、また、労働者は事故後28日以内に補償請求を続行するか、それとも補償請求を取り下げるか決定することが認められると明記している。労災補償制度は柔軟で、補償金は18歳以上のすべての労働者、雇用者又は扶養家族、精神障害及び治療法に従って任命された委員会と労働者の遺産口座に支払われる。通常、労災補償金の請求に法手続きは不要である。MOMが補償金請求を関係者と取り計らう。補償金の不払いは違法であり、最高1万シンガポールドル、もしくは最長1年の懲役、又は両方が科せられる。

1.4.2 雇用保険

 シンガポールには雇用保険は存在せず、社会保障制度に代わり強制積立貯蓄制度として雇用者、労働者双方が拠出する中央積立基金(Central Provident Fund:CPF)がある。拠出金は、普通口座(Ordinary)、メディセイブ(Medisave)※6口座、特別口座(Special)の3種類に分けて積み立てられ、口座ごとに定められた目的に応じて引き出すことができる。

※6
労働者やその扶養家族の入院医療費及び一定の外来医療費として積み立てられる。一般の軽医療に使うことはできない。

1.4.3 健康保険

 中央積立基金(個人医療保険制度)では、メディセイブ口座からメディシールド(Medishield) ※7や民間医療保険の保険料を支払うことが認められている。メディシールドあるいは民間医療保険により雇用者が入院治療費を負担する場合、労働者の総報酬の最大2%までが税控除が受けられる。保険料はメディセイブによって最大年800シンガポールドルまで支払うことができる。現在、CPF委員会が管理する追加メディセイブ拠出制度の下で、企業は労働者のメディセイブに労働者1人につき年間1,500シンガポールドルを上限として追加拠出できる。
 メディセイブの適用範囲は、糖尿病、高血圧、脂質障害、脳梗塞、ぜんそく、慢性閉塞性肺疾患、精神疾患(統合失調症、重度のうつ病)、腎臓透析、化学療法、エイズ投薬治療、放射線治療といった一連の通院治療である。メディセイブは、病室の部屋代、診察料、手術費、入院諸費用の補助もする。年齢別の拠出金率は以下のとおりである。

※7
高額な医療費に備えるための任意保険。

表1-2 CPFへの拠出率
年 齢 拠出率(対賃金%)
35歳及び以下
6.5%
35歳以上45歳まで
7.5%
45歳以上60歳まで
8.5%
60歳以上
9%
  CPF法の下、メディセイブ加入者が死亡前後に承認能力を有さない場合、加入者の家族は加入者の口座から医療費用支払いのための引き出しが許される。



1.4.4 年金

  1. 年金法
     年金法はシンガポールの公務員の年金、賜金、他の諸手当供与を管理するために制定された。1948年マレー機関年金規則に該当するすべての公務員は年金法に組み入れられた。年金は各公務員の年金基金への拠出期間に応じて支払われる。年金は、(a)男性退職公務員の場合、1956年7月1日現在公務員の職にあり、現在50又は55歳以上の者、(b)女性退職公務員の場合、1962年3月1日以前に職務にあり現在45歳以上の者、(c)45歳以上の退職男性警察官で職務廃止、強制退職した者、(d)シンガポール警察隊のグルカ人分遣隊員として15年勤務したグルカ人、(e)肉体的、精神的に定年年齢前に無能力化もしくは死亡した公務員に対して支払われる。公務員の年金最高額は、公務員として服務中の最高年金該当報酬の3分の2以下とする。
     支給開始前の年金は、政府からの借入金返済か、裁判所の命令による妻、前妻、嫡出か非嫡出いずれの子供の扶養のために引き出すことができる。公務員が職務怠慢、不正行為、職権濫用の場合、年金当局は年金、賜金、手当を差し止めることができる。公務員が試用・見習い期間、奉仕活動中、生活給付金はあるが無給の訓練生である場合年金は支払われない。シンガポールあるいはその他の場所で裁判所により破産を宣告されるか、死刑又は懲役を言い渡された場合も年金は支払われない。シンガポールあるいはマレーシア内で利得のための他社の雇用が判明した場合、当該公務員は年金請求権利を失う。

  2. 年金基金法
     年金基金法は管轄大臣の認可の下、公務員の年金基金の積み立てと引き出しを監視し、保護する。毎年3月1日から3月31日まで年金基金の財務諸表の検査が定期的に行われる。基金不足の場合、整理公債基金から補填される。年金基金の余剰金には、シンガポール軍人セイバー・プレミアム基金(SAVER-Premium Fund)、汚職防止法の定める職業退職金年金制度に加入する公務員のための投資資金が含まれる。

1.5 職業能力開発法令

1.5.1 職業能力開発制度

  1. シンガポール雇用訓練庁法(Singapore Workforce Department Agency Act)
     シンガポール雇用訓練庁(WDA)の機能は、国家機関として同法第11条に定められているとおり、成人継続教育訓練、雇用・再雇用の促進、各産業・経済部局との協力による産業別の技能向上、職業訓練政策と基準の設定及びプログラムの管理、社会認識の増進、労働者訓練の財政支援をし、貢献することである。WDAは、訓練開発プログラムの管理運営、技能向上に関する情報の提供及び収集、これら情報の国民に対する公開、開発目的の調査、コースやワークショップの実施、同じ目的を持つ他の海外組織と協力する権限を持つ。当該法の下、WDAは担当大臣に財政収入支出の報告を行う。
     職業技術教育(Vocational Technical Education:VTE)制度はグローバル経済に応じた社会のニーズを構築、充足するものである。シンガポールは21世紀の経済成長のためにはサービス部門の育成が必須と認識している。サービス部門の主だったものは、生体医科学、情報通信、創造的技術、総合リゾート、高価値エンジニアリングである。このことが、高等教育を受ける学生の学習機会を増やし、多くの外国人学生を誘引する結果にもなっている。

  2. 技術教育高等専門学校(Institute of Technical Education:ITE)
     技術教育高等専門学校は中等教育後の職業、技術訓練を提供する機関の1つである。シンガポールは天然資源が限られ、経済は労働力の貢献に頼らざるを得ないので、技術教育が特に重視されている。したがって、ITEの主な目的は中等教育後の技術訓練、労働者の技能向上、産業別技能教育訓練の推進、技術基準の規制・整備である。ITEの主要な4つのプログラムは、(1)学生を対象とする全日制のエンジニアリングと経営コース、及び労働者を対象とする英語と数学の基礎教育(Basic Education for Skills Training:BEST)などを行う定時制継続教育訓練(Continuing Education Training:CET)コース、(2)中等教育による労働者の能力向上(Worker Improvement through Secondary Education:WISE)、(3)徒弟訓練制度、実地訓練センターでのOJT及びOff-JTを活用した産業訓練、(4)国家技術資格(National Technical Certification:NTC)である。
     ITEの管理には2つの特徴があり、1つは「1ITE、3専門学校」制度で、ITE本部が方針の作成、運営、カリキュラム開発、学生管理をすべて監督し、1人の学長がトップを務める。もう1つの特徴は「手をかけ、知恵をかけ、心をかける」基本方針である。「手をかける」技能訓練がカリキュラムの70%を占めているが、「心をかける」情熱と信頼の育成、社会への配慮、「知恵をかける」自主、自立思考と結びついている。これにより、学生はコミュニケーション、チームワーク、問題解決、スポーツ、健康、顧客サービスの能力を磨くのである。
     情報時代になり情報技術(IT)が著しく発達した。ITEはE学生・E教師を導入し、学生と教師を結びつけ、共同学習への簡単で双方向のアクセスを可能にした。また、学生にインターネットに関する運営、財務、学問的事項の取り扱いを任せた。ITEは2005年度のシンガポール品質賞を教育機関として初めて受賞し、大学への進学が良いのだという従来の発想を打ち破った。現在の課題は、経済界と労働界のニーズに制度を適合させることである。

1.5.2 職業能力評価制度

  1. シンガポール労働者技能資格制度
     シンガポール労働者技能資格(Workforce Skills Qualifications:WSQ)は、労働者が雇用の維持に必要な能力を訓練、育成、評価、認定するための国の資格付与制度である。現在、産業界においては熟練労働者が求められ、同一産業内での熟練労働者の移動が必要とされていることを考慮して、WSQの主な目的は、特に資格保有者が不足し、雇用前教育訓練制度のない産業を専門化して、労働市場の柔軟性と技能の移動性を高め、労働者の技能基準を設定することである。
     WSQ制度は、一定の基準、標準に従った訓練と能力開発を保証する品質保証制度である。WSQの品質保証は能力開発と継続的な改善を原則としている。品質保証はガイドラインに従って2段階ある。第1段階は、指導員がコースや機関の内容から見て認定基準を満たすという訓練前の承認である。第2段階は、訓練実施後に監視を行い訓練と利用者の満足度を検証することである。
     シンガポール労働力関発局(WDA)と産業界の定めた基準に基づき、WSQは労働者が資格証から卒業証書に至る雇用者の必要とする職場の技能を習得できるようにする。キャリア進展の道筋が明確になるため、労働者は技能向上やキャリア・プランを立てることにWSQを利用できる。訓練と評価は、理論ではなく技能に基づいて行われるため、労働者は証明書を取得する前に適切な実地能力を実証しなくてはならない。しかし、経験と能力のある労働者は訓練を免除され、公式の資格証ではないが初心者レベルの証明書を取得できる。WSQはすべての労働者が利用できる。開発する技能は主として、雇用可能性のある技能、業種別技能、職業別技能の3つである。

  2. シンガポール雇用可能性技能制度(Employability Skills System:ESS)
     シンガポール雇用可能性技能制度は、労働者の能力を向上させ、労働環境の難題と変化への対応を助ける10種の全般的な雇用可能性向上技術から成り立つ。これら10種の技術は、(1)職場における識字力と計算力、(2)情報通信技術、(3)問題解決と決定能力、(4)積極性と進取性、(5)コミュニケーションと人間関係管理、(6)生涯学習、(7)グローバルな思考態度、(8)自己管理、(9)職場関連の生活技能、(10)健康と職場の安全である。WSQは、また、(1)職場における技能の資格と確証に由来する権威、(2)この制度がもたらす労働者が労働者として自己向上する訓練、改善、機会の得やすさ、(3)労働者が価値を高め、キャリアを進展できるよう労働者市場のニーズへのマッチなどの基本方針から成り立つ。
     産業別に技能が習得できるのは、航空宇宙、地域・社会奉仕、金融、下請け組み立て、食品・飲料、造園、情報技術関連、精密工学、小売、警備、旅行、訓練の業界である。現在、成長産業向けには創造産業、花屋、医療、人材開発、指導力と人間管理、装置産業、温泉、水産業における労働安全衛生のWSQがある。各業界ごとに技能及び訓練委員会が設立され、職務に必要な技能、知識、態度の指針として能力基準を用い、訓練計画と共同カリキュラムを開発、評価している。

1.6 その他の雇用労働関係法令

 雇用と労働を規制する他の法令として、外国人労働者雇用法がある。

1.6.1 職業紹介制度

【職業紹介プログラム】
現在のところ職業紹介制度に関する法令はない。しかしながら、シンガポール雇用訓練庁(WDA)は、非熟練労働者の異なる分野における能力開発を援助するプログラムを提供している。約15のプログラムがあり、2種類から成り立っている。

  1. 訓練して就職支援する制度
    • ASMI Vプログラム:造船所内で月額基本給1,300シンガポールドルの見習い海事監督を育成する
    • ASMI SUPER V2プログラム:海事技術資格を持たない海事監督者を実地訓練する
    • ビルの管理人:労働者に住宅商業オフィスの清掃作業、維持、安全管理の訓練をする
    • 小売店運営資格:就業中、失業中の小売業の労働者の能力を高める
    • 4種運転手:製造業、物流業、建設業に就業中の運転手を訓練する
    • 登録看護師:認定看護師をITEで訓練し技術を高める
    • 水産業:水産業従事者の就職支援のための再教育プログラム
  2. 就職させて訓練する制度
    • 保健助手(ステップダウンケア)
    • 不動産助手プログラム:不動産管理保守業界(Real Estate Management and Maintenance Industry:REMMI)で労働者が就業して管理、点検、建物技術作業できるよう訓練する
    • 不動産管理職プログラム:建築技術、管理原則、不動産法令の基礎、通信と倫理、ITの訓練をする
    • 小売業見習いプログラム:小売業界での雇用可能性を向上させる
    • 警備保障監督者転換プログラム:警備保障業界の監督者を訓練する
    • 旅行サービス
    • WSQ地域・社会サービス(高齢者サ−ビス)資格プログラム:地域・社会サービス(Community and Social Services:CSS)において高齢者サービス管理者を訓練する

1.6.2 外国投資法により進出した企業で、海外から招聘され就労する者の労働許可条件

  1. 労働許可書(Rパスと外国人労働者のための労働許可証)
     外国人の労働許可証は月額基本給1,800シンガポールドル以下の外国人熟練・非熟練労働者のためのR Passと、6カ月以下の研修を受ける外国人研修生のための労働許可証(Work Permit)である。両者ともに妻子のための扶養家族用パス(Dependent Pass)は取得できない。両者ともに労働者数を管理するために毎月の外国人雇用税(Foreign Worker Levy)、技能開発課徴金(Skill Development Levy)とすべての外国人労働者に対し保証金5,000シンガポールドルの支払いが義務付けられている。ただしマレーシア国籍の者は除外される。また、雇用者は外国人労働者の雇用制限(Dependency Ceiling:DC)を守らなくてはならない。DCは職場と業界における地場従業員の人数を基にした外国人労働許可数の割り当てのことである。建設と装置産業の場合、1地場常勤労働者に対し7外国人労働者、サービス産業の場合外国人労働者の割合は50%、製造業の場合65%、水産業の場合は1地場常勤労働者に対し5外国人労働者である。
     そのほか、外国人労働者の労働許可を得るため規則として、シンガポール登録の開業医による健康診断が必須であること、労働者災害補償、福利、住居、労働許可書保有者の帰国の責任、月次給与が1,600シンガポールドル以下の場合の時間外手当の支払いがある。

  2. 外国人労働者雇用法
     外国人労働者雇用法により、雇用者が、必要書類、情報、就労希望労働者から託された申請費を添えて就労パスの申請をしなくてはならない。また、雇用者は検査官の査察に備えて就労パスを持つ外国人労働者の記録を保持しなくてはならない。有効な就労パスには、外国人労働者の名前、許可番号、パスポート番号、識別番号(Foreign Identification Number:FIN)、具体的な職務、職種、雇用タイプ、雇用期間、と雇用者の名前と住所が記載されていなくてはならない。雇用者は有効な就労パスを持つ外国人労働者を、同一企業名で、同じ中央積立基金(CPF)に加入し、同種の事業を行う他の職場や支所支店へ異動できる。
     同法は有効な就労パスを持たない外国人労働者の就労を禁じている。この違法行為が明るみに出た場合、雇用者、労働者ともに説明責任を有する。ただし、雇用者が労働者の国籍を知らなかったと証明できる場合はその限りではない。違反した場合は、最高1万5,000シンガポールドルの罰金、もしくは最長12カ月の懲役、又は両方が科される。この罰金には、外国人労働者が雇用されていた期間の外国人雇用税も含む。
     公共の職場にいる外国人もその職場で雇用されているものと見なされる。したがって、この外国人が有効な就労パスを持っているからその場にいると認めることである。外国人労働者が就労パスを紛失又は損傷した場合、新しい就労パスを発行してもらうため7日以内に検査官に報告する必要がある。同法は検査官にいかなる時にも就労パスを一時停止、取り消し、あるいは条件の変更をする権限を与えている。就労パスが停止され次第、外国人労働者の雇用は終了する。

1.6.3 海外から招聘され就労する者の加入義務のある制度

なし

1.6.4 その他雇用労働に関する法令

なし


参考文献

  1. Central Provident Fund Act. (2000).
    http://statutes.agc.gov.sg/non_version/cgi-bin/cgi_retrieve.pl?
    actno=REVED-36&doctitle=CENTRAL%20PROVIDENT%20FUND
    %20ACT%0a&date=latest&method=part&sl=1
  2. Children Development Co-Savings Act. (2002).
    http://statutes.agc.gov.sg/non_version/cgi-bin/cgi_retrieve.pl?
    actno=REVED-38A&doctitle=CHILDREN%20DEVELOP`MENT
    %20%CO-SAVINGS%20ACT%OA&date=latest&method=part&sl=1
  3. Employment Act. (1996).
    http://statutes.agc.gov.sg/non_version/cgi-bin/cgi_retrieve.pl?
    actno=REVED-91&doctitle=EMPLOYMENT%20ACT%OA&date
    =latest&method=part
  4. Employment of Foreign Manpower Act. (2009).
    http://statutes.agc.gov.sg/non_version/cgi-bin/cgi_retrieve.pl?
    actno=REVED-91A&doctitle=EMPLOYMENT%20OF%20FOREIGN
    %20MANPOWER%20ACT%0a&date=latest&method=part
  5. Enterprise One. (2009). Employment of foreign manpower act.
    http://www.business.gov.sg/EN/BusinessTopic/
    HiringNTraining/EmployersResponsibilities/
    LawsNRegulations/hiring_laws_foreignact.htm
  6. Enterprise One. (2009). Overview of passes.
    http://www.business.gov.sg/EN/BusinessTopic/
    HiringNTraining/EmployersResponsibilities/
    WorkPassesforForeigners/
    hiring_passes_overview.htm
  7. Industrial Relations Act. (1999).
    http://statutes.agc.gov.sg/non_version/cgi-bin/cgi_retrieve.pl?
    actno=REVED-136&doctitle=INDUSTRIAL%20RELATIONS
    %20ACT%0a&date=latest&method=part&sl=1
  8. Law, Song Seng. (1996). Dynamics and challenges of a vocational training system: The Singapore experience. ITE conference paper no.2. Institute of Technical Education.
    http://www.ite.edu.sg/about_ite/
    ITE_Conference_Papers/Dynamics%20and%20
    Challenges%20of%20a%20Vocational%20Training
    %20System%20-%20The%20Singapore%20Experience.pdf
  9. Law, Song Seng. (2007). Vocational technical education and economic development: The Singapore experience. ITE conference
    paper no. 9. Institute of Technical Education.
    http://www.ite.edu.sg/about_ite/
    ITE_Conference_Papers/Vocational%20Technical
    %20Education%20and%20Economic%20Development
    %20-%20The%20Singapore%20Experience.pdf
  10. Ministry of Manpower. (2008). Purpose of workmen's compensation.
    http://www.mom.gov.sg/publish/momportal/en/
    press_room/mom_speeches/2008/
    20080122-WICA.html
  11. Ministry of Manpower. (2008). Work injury compensation act.
    http://www.mom.gov.sg/publish/momportal/en/
    legislation/Occupational_Safety_and_Health/
    Work_Injury_Compensation_Act.html
  12. Ministry of Manpower. (2008). Workplace safety and health act.
    http://www.mom.gov.sg/publish/momportal/en/
    legislation/Occupational_Safety_and_Health/
    workplace_safety_and.html
  13. Ministry of Manpower. (2009). Employment standards.
    http://www.mom.gov.sg/publish/momportal/en/
    communities/workplace_standards/
    employment_standards0.html
  14. Ministry of Manpower. (2009). National wage council wage
    guideline 2009/1010.
    http://www.mom.gov.sg/publish/momportal/en/
    press_room/press_releases/2009/20090603-national.html
  15. Ministry of Manpower. (2009). Trade unions.
    http://www.mom.gov.sg/publish/momportal/en/
    communities/workplace_standards/
    trade_unions.html
  16. Ministry of Manpower, & Workplace Safety and Health Council. (2008). Work injury compensation act: A guide to the work injury compensation benefits and claim process.
    http://www.mom.gov.sg/publish/etc/medialib/
    mom_library/Workplace_Safety/
    workmen_injury_compensation.Par.2802.File.tmp
    /WICA%20Guide%20(English).pdf
  17. National Trade Union Congress. (2009).
    http://www.ntuc.org.sg/ntucunions/abt_ntuc.asp
  18. Pension Act. (2004).
    http://statutes.agc.gov.sg/non_version/cgi-bin/cgi_retrieve.pl?
    actno=REVED-225&doctitle=PENSIONS%20ACT%0a&date=latest
    &method=part&sl=1
  19. Pension Fund Act. (1996).
    http://statutes.agc.gov.sg/non_version/cgi-bin/cgi_retrieve.pl?
    actno=REVED-224A&doctitle=PENSION%20FUND%20ACT%0a
    &date=latest&method=part&sl=1
  20. Retirement Age Act. (2000).
    http://statutes.agc.gov.sg/non_version/cgi-bin/
    cgi_retrieve.pl?actno=REVED-274A&
    doctitle=RETIREMENT%20AGE%20ACT%0a&
    date=latest&method=part&sl=1
  21. Singapore Labour Foundation Act. (1985).
    http://statutes.agc.gov.sg/non_version/cgi-bin/cgi_retrieve.pl?
    actno=REVED-302&doctitle=SINGAPORE%20LABOUR
    %20FOUNDATION%20ACT%0a&date=latest&method=part&sl=1
  22. Singapore Workforce Development Agency. (2007). Singapore
    workforce skills qualification system: An introduction.
  23. Singapore Workforce Development Agency. (2009). Advantage!
    http://app2.wda.gov.sg/web/contents/
    Contents.aspx?Id=72
  24. Singapore Workforce Development Agency Act. (2004).
    http://statutes.agc.gov.sg/non_version/cgi-bin/cgi_retrieve.pl?
    actno=REVED-305D&doctitle=SINGAPORE%20WORKFORCE
    %20DEVELOPMENT%20AGENCY%20ACT%0a&date=latest
    &method=part&sl=1
  25. Singapore Workforce Skills Qualification. (2005).
    http://wsq.wda.gov.sg/
  26. Today. (August 17, 2009). Jobseeker woes: Older folks have it worse.
    http://www.todayonline.com/
  27. Trade Disputes Act. (1985).
    http://statutes.agc.gov.sg/non_version/cgi-bin/
    cgi_retrieve.pl?actno=REVED-331&
    doctitle=TRADE%20DISPUTES%20ACT%0a&
    date=latest&method=part&sl=1
  28. Trade Unions Act. (1985).
    http://statutes.agc.gov.sg/non_version/cgi-bin/
    cgi_retrieve.pl?actno=REVED-333&
    doctitle=TRADE%20UNIONS%20ACT%0a&
    date=latest&method=part&sl=1
  29. Wong, Jeana. (August 27, 2007). Firms facing re-employment act can stay cost-competitive. Channelnews Asia.
    http://www.channelnewsasia.com/stories/
    singaporebusinessnews/view/295651/1/.html
  30. Work Injury Compensation Act. (2009).
    http://statutes.agc.gov.sg/non_version/cgi-bin/cgi_retrieve.pl?
    actno=REVED-354&doctitle=WORK%20INJURY%20COMPENSATION
    %20ACT%0a&date=latest&method=part&sl=1
  31. Workplace Safety and Health Act. (2009).
    http://statutes.agc.gov.sg/non_version/cgi-bin/cgi_retrieve.pl?
    actno=REVED-354A&doctitle=WORKPLACE%20SAFETY%20AND
    %20HEALTH%20ACT%OA&date=latest&method=part&sl=1

印刷用PDFページ

このページの内容をプリントアウトしたい方は、以下のPDFファイルをクリックしてください。

シンガポール−雇用労働関係法令のPDFファイル(77KB)

掲載されている内容をご利用になる際は、こちらを一読いただきますようお願いいたします。
各国の情報はPDFファイルでも作成されています。PDFファイルを見るためには、Adobe Readerというソフトが必要です。
Adobe Readerは無料で配布されています。ダウンロード・インストールする場合には、下のアイコンをクリックしてください。
Get Reader

▲ ページトップへ