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シンガポール

作成年月日:2009年9月2日

雇用労働事情

2.1 労働市場の状況

 貿易産業省(Ministry of Trade and Industry:MIT)によると、2009年第2四半期の実質GDP成長率は前年同期比で−3.7%、第1四半期の−9.6%から大幅に上昇した。また、2009年通年のGDP成長率を前年比−6〜4%と予想している。こうした経済状況の中、人材開発省によれば、2009年第1四半期に総労働者数は6,200人減少、さらに引き続き第2四半期には7,700人減少した。製造業においては2009年第3四半期に1万5,900人が解雇された。雇用が増加したのは建設業界とサービス業界で、それぞれ4,700人と3,800人増加した。しかし、いずれも2008年度の雇用増よりは少なかった。サービス業界の中でも外国関連分野、例えば、国際貿易、金融、ホテルやレストランを含む旅行、運輸・倉庫、卸・小売業においては雇用の減少があった。
 2009年第1四半期の労働生産性は、2008年第4四半期の12%から15%まで低下した。この低下は2008年第1四半期の名目賃金が2.4%増であったのに対し、2009年同期ではそれが3.7%減であったことに現れている。この低下は2003年の経済危機以降初めてのことである。結果として、2009年は−5.8%と大幅に実質賃金が減少した。

表2‐1 産業別労働生産性の変化   (単位:%)
  2006年 2007年 2008年 2009年
1〜3月
全業種 1.6 -0.8 -7.8 -15.4
建設業を除く全業種 1.8 -0.8 -7.3 -15.3
製造業 3.9 -3.1 -10.9 -25.9
建設業 -2.6 5.7 -0.6 3.8
サービス業種全体 1.4 0.1 -3.6 -10.5
 卸売・小売業 5.6 1.5 -2.4 -17.9
 運輸・倉庫 2.5 2.5 -4.0 -14.0
 ホテル・レストラン 0.4 -0.6 -0.9 -12.4
 情報・通信 -1.9 3.0 -0.8 -4.4
 金融サービス 3.2 1.1 -6.2 -12.6
 ビジネスサービス -4.6 -3.8 -5.7 -4.0
 その他のサービス -1.2 -2.1 -1.3 0.2
出典:
Department of Statistics, Ministry of Trade & Industry (MTI)

2.1.1 過去3年間の労働力人口、就業者数、失業者数及び失業率

 年央の労働力調査※1では、2008年の総労働力人口は、2007年から8.5%増の293万9,900人、居住者の労働力人口は2.7%増の192万8,300人となっている。居住者労働力は2007年にわずかに減少したものの、2008年は2006年から2.5%に相当する4万7,500人増加した。2006年から2008年にかけて、就業者数は全体で14.1%増加し、250万5,800人から285万8,100人となり、居住者は3.1%増の179万6,700人から185万2,000人になった。2008年の失業者数は2007年より増加しているが、2006年よりは減少し、全体で−7.4%の8万1,800人、居住者で−9.5%の7万6,200人となっている。
 2009年6月の季節調整後の全体失業率は3.3%で安定し、第1四半期と変わらなかった。季節調整後の居住者失業率は、2009年3月の4.8%から2009年6月は4.6%へ低下した。2009年6月の失業者数は約11万6,600人、季節調整後で9万1,800人であった。厳しい就職戦線にあって就職活動を延ばし、技能向上プログラム(Skills Programme for Upgrading and Resilience:SPUR)などに支援されたコースに通う者が増えている。
 2008年第4四半期に人員整理された労働者(居住者)の約50%が2009年3月には再雇用されたが、2008年12月では70%、2008年3月の67%と比べると、低い再雇用率である。職種別に見ると、製造・製造関連労働者は70%から47%に、専門職者・管理職者・幹部職者・技術者(Professionals, Managers, Executives and Technicians:PMETs)は69%から48%へ大きく落ち込んだ。求人数も2008年3月の3万8,200件から、同年12月には2万6,100件と45%減少し、さらに2009年3月には2万1,000件と20%低下した。求人の大半は地域、社会事業、個人サービスと技術職の1万1,500件、次いで事務、販売、サービス職の5,800件、生産・交通作業、清掃業、肉体労働の3,700件であった。求職者の増加もあり、100件の求人に対する求職者数は、2009年3月現在21人と例年よりは厳しいものの、景気下落にあった2003年9月の31人よりは良い水準である。

表2‐2 労働力人口、就業者数、失業者数、失業率   (単位:千人)
    2006年 2007年 2008年 2009年3月 2009年6月
労働力人口 全 体 2,594.1 2,710.3 2,939.9 - -
居住者 1,880.8 1,878.0 1,928.3 - -
就業者数 全 体 2,505.8 2,631.9 2,858.1 *2,951.4 *2,933.8
居住者 1,796.7 1,803.2 1,852.0 - -
失業者 全 体 88.3 78.4 81.8 - -
居住者 84.2 74.8 76.2 - -
失業率
[季節調整済み](%)
全 体 2.7 2.3 2.2 3.3 3.3
居住者 3.5 3.1 3.1 4.8 4.6
失業率
[季節調整なし](%)
全 体 3.4 2.9 2.8 3.0 4.1
居住者 4.5 4.0 4.0 4.4 5.9
注:
*は暫定値。
出典:
Ministry of Manpower, “Singapore Yearbook of Manpower Statistics, 2009”.
出典:
Ministry of Manpower, “Unemployment”,
http://www.mom.gov.sg/publish/momportal/en/communities/
others/mrsd/statistics/Unemployment.html
※1:
労働力調査は年に4回行われ、6月の調査は2万5,000所帯、3月、9月、12月はシンガポール国民、永住権所持者6,000所帯を対象とする。ただし、建設現場労働者、寮、労働者宿舎居住者や定期的な就業目的での海外旅行者は含まない。各統計データは、シンガポール国民と永住権所持者からなる居住者と全体の2種類がある。

2.1.2 業種別労働者数

表2‐3 産業別労働者数     (単位:千人)
  2006年 2007年 2008年
全業種 2,495.9 2730.8 2,952.4
製造業 517.5 566.8 586.3
建設業 255.5 295.9 360.0
サービス業 1,706.5 1,849.6 1,986.1
 卸、小売業 365.0 384.9 401.3
 運輸・倉庫業 179.0 184.0 197.7
 ホテル・レストラン業 145.8 162.1 179.0
 情報・通信業 73.1 79.4 85.1
 金融業 127.3 149.1 160.6
 不動産・賃貸業 52.9 61.4 68.4
 専門的サービス 128.4 150.5 168.6
 行政・補助サービス 113.2 124.1 135.1
 地域・社会・個人サービス 522.0 554.1 590.2
その他(農業、漁業、採石業、電気、
ガス、上下水道、廃棄物の運営管理を含む)
16.4 18.5 20.1
出典:
Ministry of Manpower, “Singapore Yearbook of Manpower Statistics, 2009”.

2.1.3 新規学卒者の就職状況

表2‐4 高等教育機関卒業者の就職状況 (単位:%)
学 歴 就職率
常 勤 非常勤 合 計
2006年 2007年 2008年 2006年 2007年 2008年 2006年 2007年 2008年

大学卒

86.2 89.8 87.3 7.1 4.7 4.0 93.3 94.5 91.3

専門学校卒

 

 新卒

72.1 75.3 68.5 19.3 17.7 21.3 91.3 93.0 89.8

 兵役後卒

79.9 82.3 76.0 11.2 10.4 11.8 91.1 92.7 87.8

ITE卒

 

 新卒

54.1 71.1 61.9 33.9 21.8 26.3 88.0 92.9 88.3

 兵役後卒

70.0 79.8 76.4 20.2 14.2 14.4 90.3 93.9 90.8
注1:
「新卒」:当該年度に規定の課程を修了し、兵役の義務が免除されるか既に兵役を終了した者。
注2:
「兵役後卒」:約2年前に学校の課程を修了した男子卒業生を指す。
注3:
「大学」:Nangyang工科大学(NTU)、国立シンガポール大学(NUS)、並びにシンガポール経営大学(SMU)
注4:
「専門学校(Polytechnic)」:Nangyang Polytechnic(NYP)、Ngee Ann Polytechnic(NP)、Republic Polytechnic(RP)、Singapore Polytechnic(SP)並びにTamasek Polytechnic(TP)
注5:
2008年のデータは暫定。
出典:
Ministry of Manpower, “Singapore Yearbook of Manpower Statistics, 2009”.

表2‐5 最終学歴及び性別による労働力人口(単位:千人)
最終学歴 2008年
男性 女性
労働力人口 1,928.3 1,093.2 835.1
初等教育(小学校)以下 262.0 156.1 105.9
前期中等教育(中学校) 205.0 131.1 73.9
中等教育(高等学校) 452.8 236.2 216.6
後期中等教育 273.5 152.0 121.5
技術専門学校 236.5 140.6 95.9
大学 498.4 277.3 221.2
出典:
Ministry of Manpower, “Singapore Yearbook of Manpower Statistics, 2009”.

2.1.4 離職者の現状

 2009年の第1四半期において労働市場は低迷し離職率が低下した。月間平均採用率と離職率は前年同期の2.8%と2.0%から1.9%と1.8%へと減少した。ほとんどの業種で採用率が下がったが、通信、社会・個人サービス、及び教育・行政部門では上昇した。採用率が離職率を下回った業種は、人員整理が行われた製造業、卸売・小売業、ホテル・レストラン業である。

表2‐6 労働者の離職状況 (単位:%)
月間平均採用率 2006年 2007年 2008年 2009年
年間 2.8 2.9 2.8 -
 第1四半期 2.7 2.6 2.8 1.9
 第2四半期 2.9 3.3 3.2 -
 第3四半期 3.1 3.2 3.1 -
 第4四半期 2.6 2.7 2.2 -
月間平均離職率 2006年 2007年 2008年 2009年
年間 2.0 2.0 2.0 -
 第1四半期 2.0 2.0 2.0 1.8
 第2四半期 2.1 2.2 2.3 -
 第3四半期 2.0 2.1 2.0 -
 第4四半期 1.7 1.7 1.6 -
出典:
Ministry of Manpower, “Labour Turnover”,
http://www.mom.gov.sg/publish/momportal/en/communities
/others/mrsd/statistics/Labour_Turnover.html

 余剰労働力は2008年より36%増え、解雇者数1万900人、契約期間満了前の雇い止めが860人で過去最多となった。中でも製造業の解雇が最も多く9,250人、全体の72%に上る。一方、金融、社会サービス関連の人員整理は減少した。職種別では、生産、生産関連労働者が7,000人、専門職者、管理職者、幹部職者、技術者が4,730人で人員整理が加速した。2008年第4四半期から2009年第1四半期にかけて、レイオフと短縮労働者が7,720人から2万6,530人へと3倍に急増し、このうち2万1,170人が短縮労働者であった。レイオフ、短縮労働、無給休暇に関しては、余剰人員の管理に関する三者ガイドライン(Tripartite Guideline on Managing Excess Manpower)で定められている。

表2‐7 学歴と年齢別の余剰人員率と変化率   (単位:%)
最終学歴
(各年3月)
全体余剰人員率 30歳以下 30〜39歳 40歳以上
上昇率 上昇率 上昇率 上昇率
全体 2008 2.6 69.2 4.0 65.0 1.9 94.7 2.4 62.5
2009 4.4 6.6 3.7 3.9
中等教育以下 2008 3.2 50.0 11.2 7.1 3.5 100.0 2.5 64.0
2009 4.8 12.0 7.0 4.1
中等教育 2008 2.6 92.3 4.6 119.6 1.7 135.3 2.3 69.6
2009 5.0 10.1 4.0 3.9
後期中等教育 2008 3.1 83.9 4.3 90.7 1.9 121.1 2.8 82.1
2009 5.7 8.2 4.2 5.1
技術専門学校 2008 2.3 78.3 2.8 100.0 1.7 58.8 1.9 89.5
2009 4.1 5.6 2.7 3.6
大学 2008 1.8 66.7 1.9 68.4 1.5 93.3 2.1 47.6
2009 3.0 3.2 2.9 3.1
出典:
Ministry of Manpower, “Labour Force”,
http://www.mom.gov.sg/publish/momportal/en/
communities/others/mrsd/statistics/labour_force.html

2.2 賃金

 全国賃金評議会(National Wages Council:NWC)は、賃金関連のガイドラインを作成している。注意すべきは、職種ごとの労働者の割合を含め、賃金統計は時間の経過とともに変化する可能性があるということである。また、賃金統計は職業資格や役職を伴う職業のみを調査対象にしているため、十分に全体を反映した結果にはなっていない可能性がある。さらに、賞与や利益分配金は含まれていないため、ブローカーや上級経営幹部といった職業の従事者の所得はデータ上では大幅に低くなっている。賃金額は範囲、責任、労働条件、生産性、資格、熟練度、経験、能力といった要素によって決まる。また、労働市場における需要と供給のバランスも、賃金額に影響を与える。
 景気の悪化と事業費用の増加で2008年の賃金引き上げは例年以上に制限を受けた。2008年の名目賃金上昇は4.2%となり、2007年の5.0%より低かった。これは、2008年は前年比で基本給が4.4%増、賞与支払いが2.31カ月分に相当する2.1%減となった結果である。2008年の高インフレ調整後の実質総賃金と基本賃金はそれぞれ2.3%と2.1%減少した。

2.2.1 法定最低賃金の最近の動向

 2007年は企業の67%、2008年は企業の63%が基本賃金を引き上げたと報告している。2009年は政府の指示により、月額賃金の10%にあたる月次変動給与(Monthly Variable Component:MVC)、基本給で賃金の引き下げが行われた。基本賃金は過去3年間の安定的な動きから一転、2009年に入ると経済危機の影響により業種によって大きく変動している。

表2‐8 産業別基本賃金の変動   (単位:%)
産 業 前年度からの変化
2006年 2007年 2008年 2009年
全業種 3.6 6.2 5.4 -3.7
製造業 3.2 4.0 5.1 1.2
建設業 2.5 5.1 8.1 2.6
サービス業 3.9 6.8 5.4 -5.1
 卸、小売業 3.6 5.2 5.5 -0.6
 運輸・倉庫業 3.5 7.7 5.1 4.3
 ホテル・レストラン業 3.1 4.4 4.3 -4.1
 情報・通信業 5.4 5.8 5.7 -1.2
 金融業 4.9 7.6 5.7 -8.5
 不動産・賃貸業 2.5 9.9 4.7 -9.1
 専門的サービス 5.4 5.7 8.0 -0.4
 行政・補助サービス 2.9 5.8 2.1 -2.8
 地域・社会・個人サービス 3.4 6.3 2.3 -12.2
出典:
Central Provident Fund Board

2.2.2 賃金もしくは給与の実態調査結果

 経済停滞と事業コスト増加のため2008年の昇給は小幅であった。全国賃金評議会による柔軟な賃金制度の導入は2008年12月に始まった。これにより大半の大企業、小企業が固定給の割合を狭め、重要業績評価指標(Key Performance Indicators:KPI)と賞与額を連動させ、月次変動給与(MVC)を適用してコストの削減を行った。そして、KPIと連動した賞与の増加とともに給与に占める固定部分は割合が縮小し、変動部分が増加している。情報通信、金融、卸・小売、と運輸・倉庫業界がKPI賞与システムを是認支持した。景気悪化のためGDPが4.2%縮小する中、こうした取り組みが、製造業、建設業などの実質賃金の上昇につながっている。
 経済危機により企業収益が減少した結果、業績と結びつく賃金システム再構築のため、賃金上昇はさらに少なくなった。2008年において、情報通信産業を除く全業種で総賃金の増加は低かった。一方で増加したのは、出版・映画、マスコミ業界で、支払われた年間変動給与部分が2008年に前年よりも高かったからである。

表2‐9 産業別労働者1人当たり平均月額実質賃金 (単位:シンガポールドル※2
産 業 2006年 2007年 2008年 2009年
全業種 3,505 3,645 3,606 3,753
製造業 3,568 3,637 3,586 3,904
建設業 2,482 2,557 2,594 2,900
サービス業 3,565 3,731 3,689 3,790
 卸、小売業 3,058 3,152 3,120 3,243
 運輸・倉庫業 3,476 3,669 3,617 3,829
 ホテル・レストラン業 1,362 1,393 1,364 1,433
 情報・通信業 3,679 4,848 4,809 4,755
 金融業 6,204 6,539 6,485 7,406
 不動産・賃貸業 3,011 3,242 3,185 3,416
 専門的サービス 4,322 4,476 4,537 4,544
 行政・補助サービス 2,207 2,288 2,192 2,210
 地域・社会・個人サービス 3,778 3,936 3,779 3,575
出典:
Central Provident Fund Board
※2:
1シンガポールドル=63.8681円(2009年9月2日現在)

2.2.3 役職別給与体系のサンプル

表2‐10 職種別月額基本賃金及び総賃金   (単位:シンガポールドル)
職 種 調査対象者数
(人)
基本賃金 総賃金
管理職 38,896 7,998 8,628
専門職 36,862 5,006 5,387
准専門職及び技能職 61,106 3,122 3,617
事務労働者 33,643 1,58 2,067
サービス労働、店舗及び
市場販売労働者
24,517 1,474 2,154
農、漁業労働者 141 1,493 1,628
生産職人及び関連労働者 9,602 1,819 2,260
工場、機械操作及び 組立労働者 15,539 1,575 2,179
清掃、肉体労働及び 関連労働者 18,246 965 1,153
出典:
Ministry of Manpower, “Report on Wages in Singapore”,
http://www.mom.gov.sg/publish/momportal/en/communities/
others/mrsd/Publications/ReportonWages_2008/Statistical_Table.html

2.3 労働時間の現状

 シンガポールの法定労働時間は1日8時間以内、週当たり44時間以内となっている。労働者の平均労働時間は、以下のとおりである。

表2‐11 労働者1人当たりの有給労働時間 (単位:時間)
  週当たりの有給労働時間数
2006年 2007年 2008年 2009年
年間平均 46.2 46.3 46.3 -
 3月現在 46.1 46.2 46.3 45.6
 6月現在 46.2 46.2 46.4 -
 9月現在 46.2 46.3 46.6 -
 12月現在 46.2 46.4 46.0 -
  週当たりの有給時間外労働時間数
2006年 2007年 2008年 2009年
年間平均 3.8 3.9 3.8 -
 3月現在 3.7 3.8 3.9 3.1
 6月現在 3.8 3.8 3.9 -
 9月現在 3.9 3.9 4.0 -
 12月現在 3.8 4.0 3.5 -
出典:
Ministry of Manpower, “Labour Market, First Quarter 2009”, http://www.mom.gov.sg/publish/momportal/en/press_room
/press_releases/2009/20090615-LMQ1.html

表2‐12 産業別労働者1人当たりの平均週間有給労働時間 (単位:時間)
業 種 2006年 2007年 2008年 2009年
(3月)
全体 46.2 46.3 46.3 45.6
製造 50.5 50.6 50.2 48.3
 食品、飲料及びタバコ 47.4 47.4 47.1 46.4
 紙製品及び印刷 51.5 51.1 50.9 47.9
 石油、化成、医薬品 45.4 45.5 45.4 45.1
 ゴム及びプラスチック製品 50.5 50.2 50.0 46.4
 組立金属製品 52.3 52.1 51.6 48.5
 機械及び設備 52.7 52.9 52.2 50.5
 電気製品 49.8 49.8 49.7 46.3
 電子製品 48.0 48.0 47.0 43.2
 医用及び精密機器 48.1 47.6 47.5 45.6
 輸送用機器 53.4 53.4 53.1 52.5
 その他製造業種 50.9 50.8 50.8 50.0
建設 51.9 52.2 52.4 52.1
サービス 43.3 43.3 43.5 43.2
 卸・小売 43.2 43.5 43.8 43.6
  卸売 43.4 43.7 43.8 43.5
  小売 42.6 43.0 43.7 43.8
 運輸及び倉庫 45.9 45.6 46.0 45.1
  地上輸送及び補助 48.2 47.6 48.0 47.8
  水上輸送及び補助 45.3 44.8 45.2 44.4
  航空輸送及び補助 43.3 43.5 43.9 43.3
  その他運輸及び倉庫 47.0 47.0 47.1 45.2
ホテル及びレストラン 38.9 39.8 41.2 40.9
 ホテル 45.7 45.7 45.3 44.7
 レストラン 36.1 37.5 39.8 39.6
情報及び通信 41.9 41.9 41.8 41.7
 放送及び出版 41.6 41.4 41.6 41.4
 電気通信 42.7 42.8 42.6 42.5
 IT及びその他情報サービス 41.6 41.5 41.5 41.5
金融 42.3 42.0 41.7 41.5
 金融機関 42.6 42.1 41.8 41.7
 保健 40.1 40.3 40.3 39.9
不動産及び賃貸 44.2 44.4 44.3 44.2
専門的サービス 44.0 44.0 44.1 43.6
 法務、会計及び経営 42.1 42.3 42.1 41.4
 建築及びエンジニアリング 47.9 46.8 46.9 46.2
 その他専門的サービス 42.4 42.5 42.5 42.2
行政及び補助サービス 50.8 49.5 48.8 48.2
地域、社会及び個人サービス 41.9 41.8 41.8 41.8
 教育及び公共行政 41.4 41.5 41.4 41.5
 医療及び社会サービス 42.1 42.1 41.9 41.8
 その他地域、社会及び個人 43.0 42.7 43.0 42.6
その他 45.3 45.2 45.3 45.2
出典:
Ministry of Manpower, “Hours Worked”,
http://www.mom.gov.sg/publish/momportal/en/communities/
others/mrsd/statistics/Hours_Worked.html

2.4 労使関係の現状

 労働者は賃金その他の問題に関して組織を作り雇用者と団体交渉を行う権利を有するが、労使関係法と政府の規定に従わなければならない。現在のところ、労働仲裁裁判所(Industrial Arbitration Court:IAC)は国民の利益に照らして労働協約を否認したことはない。2001年には主として民間企業と10の公営企業に属する5万4,830人の労働者を対象とする407の労働協約が認可された。

2.4.1 労働組合の現状

 「シンガポールにおける労働者の権利報告書」によれば、69の登録労働組合が全国労働組合会議(National Trades Union Congress:NTUC)の傘下にあり、他に独立した3組合(シンガポール航空会社パイロット組合、シンガポール輸送船舶労働者組合、シンガポール映画産業従業員組合)がある。NTUCの指導者層のほとんどが与党である人民行動党の活発なメンバーであるが、NTUCと政府は互いに独立を保っている。

表2‐13 全国レベル労働組合数と会員数
  2006年 2007年 2008年
組合数 69 68 66
組合員数 463,384 495,046 517,197
出典:
Ministry of Manpower, “Singapore Yearbook of Manpower Statistics, 2009”.

2.4.2 労働争議の現状

 人材開発省労使関係・職場環境局(Labour Relations and Workplaces Division)は労使関係の状態を監視し、労使紛争を解決するためのあっせん又は調停を行う。意見の不一致は人材開発省の労働コミッショナーの仲裁により打開する。仲裁で解決しない場合は労働仲裁裁判所(IAC)へ提訴される。IACが設立されたのは労働協約の登録、認可、労使紛争の聴聞、判定、判定書の交付、判定書と労働協約条件の解釈と執行をするためである。シンガポールにおける労働争議は、年間200件以下で年々低下傾向にある。労働争議のほとんどは製造、商業、運輸、倉庫と通信産業分野において発生した。紛争の争点は賃金引き上げ、サービス条件、解雇補償金、賞与あるいは謝礼金、インセンティブ、シフト勤務手当といった事項であった。ほとんどの労働争議は製造業で発生し、次いで金融、保険、不動産業界である。1986年以来シンガポールではストライキは発生していない。平穏な労使関係は経済の維持成長、その結果として定期賃金増と職業の流動性を可能にした。

表2‐14 労働争議件数
  2006年 2007年 2008年
労働争議数 163 133 118
 賃金及び労働条件 74 82 53
 剰員整理手当 14 6 14
 賞与又は謝礼 30 15 12
 その他 45 30 39
IACへの回付件数 16 16 11
 IACの裁定 15 14 10
 産業活動の停止 - - -
出典:
Ministry of Manpower, “Singapore Yearbook of Manpower Statistics, 2009”.

2.5  募集、採用、雇用、解雇の現状

 景気先行き見通しが不透明、予算制限、人員確保、能力のある応募者の不足、圧倒的人数の採用試験、離職率の増加、応募者の増加にもかかわらず専門職者の採用が困難である点など、現在、企業はあらゆる難題に直面している。大半の企業は上級職に海外からの応募者を受け入れる一方、国内での外国人採用は経費削減が目的である。例えば銀行、金融業界は商工業界よりもアメリカ、オーストラリア、欧州からの応募者採用に積極的である。
 余剰人員整理も最終局面を迎え、企業が労働者の能力あるいは資格レベルを上げようと、優秀な人材と入れ替えを行うことから失業者が増加している。経済予測では、約半年後に企業が労働者の新規採用を開始するとみている。
 暫定推計によると、2009年の第2四半期における人員削減された労働者の数は5,170人、契約労働者の700人が期間満了前に契約終了となり合計5,980人が職を失った。これは2009年第1四半期の失職者1万2,760人より少なかった。

表2‐15 余剰人員整理による解雇者数
  2008年 2009年
1〜3月 4〜6月 7〜9月 10〜12月 1〜3月 4〜6月
剰員整理解雇者数 2,420 1,880 3,180 9,410 12,760 5,980
人員削減 2,270 1,800 2,350 7,500 10,900 5,170
契約労働者の契約中途解除 140 90 830 1,910 1,860 810
出典:
Ministry of Manpower, “Retrenchment and Redundancy”,
http://www.mom.gov.sg/publish/momportal/en/communities/
others/mrsd/statistics/Retrenchment_and_Redundancy.html

2.6 転職の現状

 シンガポールでは職の安定を優先する傾向にあるため、大多数の人々にとって転職は不本意である。

2.7 その他の雇用慣行

 人材開発省(MOM)は、週間労働時間の形態、年次休暇、病気休暇、柔軟な労働形態、家庭に適した福利厚生といった一般的な雇用条件をもとに雇用慣行の調査を実施した。大多数の企業は標準の週5日労働を維持しているが、金融、情報・通信、専門職といった高給業界の経営幹部には長時間労働者が増えている。他方、レストラン、建設業では週6日労働がもっと一般的である。業界、職務により多少の違いはあるが、有資格者には年次休暇が15日以上与えられることになった。そのほか、忌引き、結婚休暇、出産休暇等があり、資金力に余裕のある大企業は小企業よりも恵まれている。また、損失を減らすため、固定経費にする必要のないスタッフ業務は外部委託が普及している。

2.7.1 企業の慣行

 大多数の企業は2009年に昇給はなく、2008年も賞与は支給したものの通常の20〜50%低かったことが調査の結果判明した。昇給があった者の昇給率も約3〜5%であった。新規採用者の昇給率は5〜15%であった。その他の経費節減方法は人員削減、昇給停止、強制もしくは自主的無給休暇であった。
 シンガポール憲法は女性と子供の同権を明記していないが、すべての者が法の前に平等で法の下で保護されることを規定している。全労働人口のうち42%が女性であるにもかかわらず、大多数の女性は事務員、秘書といった低賃金の職に従事し、民間で指導者の地位にある者はわずかである。
 シンガポール内の労働者の約30%が外国人で、合法的に雇用されている全労働者のうちの60万人にあたる。出身地別に見るとマレーシア、フィリピン、インドネシア、バングラデシュ、タイ、中国、スリランカが主である。女性外国人労働者のほとんどが家内労働者であるのに対して、男性外国人労働者は建設業に従事している者が多い。シンガポール人労働者の平均賃金が3,134シンガポールドルであるのに対して、外国人労働者の平均賃金はその14%に相当する439シンガポールドルとなっている。外国人家事労働者は雇用法の適用外であるため、人材開発省のプログラムによって保護されている。しかし、時間外労働に対して賃金が払われないこと、休祭日、年次休暇、病気休暇、労働時間制限の権利がなく、週6日労働という制限がある。この保護の欠落は事前通告なしでの解雇、定期給料日の権利又は給与不服申し立て権利のないこと、労働者権利の侵害、酷使、性的、肉体的、口頭上の虐待につながる。また、刑法では家庭内暴力に対し厳しい罰金もしくは刑罰を科している。さらに最初の数カ月の給与は職業紹介業者への支払いに使用される。シンガポール国民との結婚あるいは永住権取得という特別な場合には、労働許可書は不要になるため取り消しとなる。
 国務省人権報告書によると、これまでシンガポールでは15歳以下の児童が常時雇用の仕事を強制される労働者虐待の事例はない。雇用法では12歳の児童が軽労働に就くことを認めている。


参考文献

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    http://www.ambition.com.sg/
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    http://mycpf.cpf.gov.sg/
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  4. Enterprise One. (2009). Singapore’s flexible wage system.
    http://www.business.gov.sg/EN/BusinessTopic/HiringNTraining/
    EmployersResponsibilities/WagesNBenefits/hiring_benefits_wagesystem.htm
  5. Ministry of Manpower. (2009). Employment.
    http://www.mom.gov.sg/publish/momportal/en/
    communities/others/mrsd/statistics/Employment.html
  6. Ministry of Manpower/ (2009). Employment situation in second quarter 2009.
    http://www.mom.gov.sg/publish/momportal/en/press_room/
    press_releases/2009/20090731-ES_Q2.html
  7. Ministry of Manpower. (2009). Hours worked.
    http://www.mom.gov.sg/publish/momportal/en/communities/
    others/mrsd/statistics/Hours_Worked.html
  8. Ministry of Manpower. (2009). Labour force.
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  9. Ministry of Manpower. (2009). Labour market, first quarter 2009.
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  10. Ministry of Manpower. (2009). Labour market first quarter 2009.
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  11. Ministry of Manpower. (2009). Labour turnover.
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    communities/others/mrsd/statistics/Labour_Turnover.html/
  12. Ministry of Manpower. (2009). National Wage Council guidelines 2009/2010.
    http://www.mom.gov.sg/publish/momportal/en/
    press_room/press_releases/2009/20090603-national.html
  13. Ministry of Manpower. (2009). Report on wages in Singapore 2008.
    http://www.mom.gov.sg/publish/momportal/en/communities/
    others/mrsd/Publications/ReportonWages_2008.html
  14. Ministry of Manpower. (2009). Singapore yearbook of manpower statistics, 2009.
    http://www.mom.gov.sg/publish/etc/medialib/mom_library/
    mrsd/yb_2009.Par.32940.File.tmp/mrsd_2009Yearbook.pdf
  15. Ministry of Manpower. (2009). Unemployment.
    http://www.mom.gov.sg/publish/momportal/en/
    communities/others/mrsd/statistics/Unemployment.html
  16. Statistics Singapore. (2009). Statistics: Latest data.
    http://www.singstat.gov.sg/stats/latestdata.html
  17. Straits Times. (2009, July 31). Job losses double in Q2.
    http://www.straitstimes.com/Breaking%2BNews/
    Singapore/Story/STIStory_410550.html

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