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タイ

作成年月日:2017年1月

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タイ国情報 2016年12月

タイでは毎年11-12月の年末に翌年度の賃金改定、ボーナス交渉がされることから一部では労働争議が発生していると報道されていますが、その実態をご紹介します。

日本の工場管理で注目されている「工場管理の見える化」のタイでの動きとともに、エンジニア関連企業との面談が多かったことから、人材確保、人材育成に関して紹介します。 タイ人と現場で付き合う日本人が体験や経験を意見交換する勉強会の動きも紹介します。

最後は、海外での病気やけがに際しての、現地の医療サービスを体験したことも紹介し ます。

1. タイの年末の労使交渉と労働争議について

2. タイ人と日本人の思考方法を理解するには

3. 工場管理の見える化(IoT(Internet of Things)導入、Thailand4.0導入)の動き

4. エンジニアリング会社の人材募集と育成(タイとミャンマーの比較)

5. タイの大手民間病院のサービスについて



1.タイの年末の労使交渉と労使争議について

2016年は自動車業界の生産台数、国内販売台数が厳しい状況であった。そのため、業界では、年末の労使交渉で苦労をされた事例もあった。

そのため、自動車部品業界2社に取材したところ、次のような報告を受けた。

S社:「昨年は開業して間もないため、ボーナスを2か月支給したが、今年度は受注も厳しくボーナルの支給月数の削減の提案を行った。ところが、削減するとの情報を受けた従業員が騒ぎ出して、突然、出社拒否にあった。労働法では、3日間連絡もなく出勤しない場合は解雇できるとあったので、代替要員を確保する準備を始めたが、3日目には出勤をした。 本社とも相談の上、当初、削減する予定のボーナス月数には多少、上乗せをして支給した。

また、今年は国王の崩御に伴い新年パーテイ(実際は12月に開催)を中止したこともあってそれを支給の財源とした。」

T 社:「ボーナスについては、本社から今年の業績に見合った支給月数にするようにとの指示もあり、従来の支給月数を削減したい、との提案を従業員側に説明をした。これまでも管理職を通じて、会社の業績が思わしくないと説明をしてきたつもりであるが、十分、従業員には伝わっていなかったようだ。そのため、従業員から残業拒否、休日出勤拒否をくらったが、幸いにも外注先が減少分をカバーしてくれた。労使交渉は、暗礁に乗り上げ、地元の労働局にある労働委員会の調停に頼ることになった。このような事態を本社に報告したところ、ボーナスの支給月数を上げても良いから、通常の勤務体制に戻すように指示をうけた。結局、数回の調停を経て、ボーナス支給月数は当初よりも若干引き上げたが、従来水準にはしなかった。当社は、創業開始20年もなって単年度は赤字であるが、内部留保もあり、創業20周年記念として従業員に何らかの報酬を出す考えもあったので、その点を説明して、ボーナスを支給した。なお、社内の労使交渉にはタイ人の労務管理責任者が当たってくれたが、調停の段階ではタイ人の労務管理責任者とともに現地法人の代表である自分が労働局に出向いて対応した。」

一方、現地の日系情報誌のウエブサイトで労使争議発生というニュースが数件あった。

(11/4) タイ東部の日系工場で労働争議 地元警察「服喪中に不謹慎」

(11/24) S工業団地の日系企業でまた労働争議 タイ東部

(12/2) タイS工業団地でまた労働争議、日系企業で連鎖反応

 

そこで、事実かどうか、当該のS工業団地の関係者に面談を申し入れ取材をした。

 

I氏:「団地内の各社では、毎年、年末に来年度の賃金や年末ボーナスに関して労使交渉が行われているのは事実である。しかし、情報誌にでた「労働争議」という見出しは事実ではない。一部の労働者が、会社の外に出てパフォーマンスをしたのも事実であるが、争議権を確立して行った労働争議ではない。そもそも現在の軍事政権では、集団示威行動が禁止されており、公道で5名以上の集会が行われている場合は、警察当局が取り締まりに当たるべきである。現場の責任者が、労務管理に不都合があるかのように新聞報道されて、大変お気の毒である。各社とも、日本の本社から問い合わせを受けて、説明に苦労をしたと聞いている。」

 

一方、労使協調路線で、2016年の自動車販売台数が厳しい中、安定的な労使関係を構築している日系のT自動車もあるのである。ニュースになれば、注目するが、ニュースにならない企業はどこか、考えると自ずから見えてくる事実もある。

 

(写真は、T 社工場)

2.タイ人と日本人の思考方法を理解するには

タイ人と日本人は共通する点が多いとして、タイに進出する企業が多いが、現場でタイ人と働く日本人にはタイ人の思考方法がわからないと悩む人もある。

5年前から、バンコクで日本人経営者、管理者が集まり自主的な勉強会を行っているグループがある。「経営人間学」勉強会で、毎月1回、開催をされている。

講師の水本道春氏(日系縫製会社の名誉会長)が使う教材は、中国の古典、仏教の教理、有名な経営学の本である。参加者は、自動車部品業界、繊維業界、NGO団体など多方面から参加されている。

タイ人と付き合う方法に関しては、様々な本が出版されており、いずれも著者の経験がもとにある。

水本講師は、タイ進出当初から現在まで日系企業を25年経営管理されてきたため、タイ人との付き合い方、労務管理で苦労をされた経験がある。

水本講師は「我々、日本人が戦前から戦後にかけて忘れたものが宗教である。政治と宗教、宗教と教育の分離など行ってきたため、日本人が長年培ってきた文化、思考方法で薄れてきたものが多い。それに引き換え、タイ人の思考には小乗仏教の影響が大きい。日常生活に仏教が重要な位置を占めている。タイ人は戒律を守ることを重視しており、それが守られたら自分がいずれ仏の世界に入れると思っている。個の重視が基本にあることを理解すべきだ」と言われる。

同時に、日本人の思考方法も、何が基本になっているのか、と問われる。

言葉としては、中国の古典から引用された言葉も多くあるが、東洋的な思考から、西洋的な思考、発想法が良いとしてきた面がある。

バンコクでは、マネジメント分野でのセミナーや講習会が多いが、人間そのものを取り上げて、見つめる機会が少ないだけに、貴重な勉強会だと言える。

 

(写真は、水本講師)

 

3.工場管理の見える化(IoT(Internet of Things)導入、Thailand 4.0導入)の動き

ここ数年、IoTという言葉が日本の経営管理面では使われています。IoTは、「現実世界の出来事をデジタルデータに変換する仕組み」という狭義のIoTと、「デジタルデータで現実世界を捉え、アナログな現実世界を動かす仕組み」という広義のIoTに定義できます。(参考:[斎藤昌義氏,IT media])

前者は、手段に重点を置いた解釈で、後者はデータの使われ方やデータを使って価値を生み出す全体の仕組みに重点を置いた解釈です。

一方、タイではIndustrial 4.0が使われて、タイ政府が中進国の罠から抜け出るにはThailand 4.0を進めるべきだとよく言われます。水・蒸気を動力源とした機械を使った生産の第1次産業革命から、電気を使い機械を動かして分業の仕組みを取り入れたことにより、マス・プロダクションが可能となった第2次産業革命、そして、コンピューターエレクトロニクスを使ったオートメーション第3次産業革命が実現された。Industrial 4.0はそれに続く「第4次産業革命」という意味合いで名づけられたものです。

そこで、タイでIoT導入に熱心な、日系ITベンダーのM社にタイでの導入事例を伺った。「日本では2年前から関連セミナーを開催すると多数の参加があった。しかし、実際に導入する企業は限られるほどである」との説明であった。

また、タイ国内の日系企業について尋ねると、日本の本社が子会社も含めて導入する企業はある。 また、IoTが求める「工場の見える化」について設備機器導入を進めるタイのK社に伺うと、「日系企業の引き合いは多数ある」とのことであった。

工場全体のIT化を進めるには大規模な予算が必要な場合が多く、タイの子会社独自では判断できない日系企業が多いこと。しかし、タイの地場企業では、生産性向上に必要だとして、経営者の判断で導入している企業もある。

このような経営革新に取り組み、タイ政府が進めるThailand 4.0には、日系企業の今後のアセアン戦略とも関係すると考えられる。

1月になってタイ政府投資委員会ではプラユット首相、ソムキット副首相も講師となったセミナーを2月中旬に開催する計画を発表した。

今後の日系企業がタイをどのような位置づけをするのか、大きな関心を呼ぶこととみられる。

(写真は、Thailand 4.0を人材開発面で支援するタイ労働省の技能開発局、職業紹介部門)

4.エンジニアリング会社の人材募集と育成(タイとミャンマーの比較)

日系のK電気工事会社は、国内では職業訓練校を経営するが、海外でもエンジニア育成のための学校を設立して、現地の人材育成に貢献をしている。

タイ法人の副社長でミャンマーでもプロジェクトの総責任者をされたN氏に取材をした。

「タイに進出して20年以上経過して、従業員も20年選手も多くいる。これらは本社の研修を経験した者もいる。タイに駐在されて現在、日本本社の研修責任者であるU氏などはご苦労をされたのであろう。ミャンマーとタイとの比較をすると、ミャンマーでは工事の経験する機会が少ない。そのため、現地政府と協力して、当社が持つカリキュラムなどすべて提供して、現地人の電気工事のできる人材を育成している。2013年に準備して2016年まで3年間、多くの実績を積んで、優秀な社員が当社に入社してくれている。3年間で20名程度、研修を受けた社員が育ったことは、今後の現地で仕事をするうえで、大きな力となっている。ミャンマー人とタイ人のどちらが優秀かどうか、比較するのは難しい。しかし、ミャンマー人は今までこのような仕事をする機会が少なかったため、まじめに学ぼうとしている。タイでは、様々な仕事の機会があるため、必ずしも電気工事だから、といって入社してくれるわけでは無い。給与も含め、労働条件など他社との比較をされたうえで、わが社に来てくれるように努力をしている。」

エネルギー関連のエンジニアリング会社であるTエンジニア会社を訪問した。タイ人のマネジャーに意見を伺った。同社では、社員が永続して勤務してくれると考えていない。「即戦力の社員を採用して、受注した仕事をこなしているのが現状である。ただし、部門ごとに日本人の責任者はいるが、現場はほとんどタイ人のマネジャークラスに任されており、その点は、やりがいがある。」と説明された。

日本流の長期間、同一の企業に勤務する事例が少ないだけに、業務の明確化、責任の明確化が日本以上に重要である。

コールドチェーン業界を主な顧客とするS社を訪問すると、経理や営業はタイ人が担当するが、エンジニアリング分野では、タイ人の経験者が少なく、メンテナンスを経験した人材を採用して、現在OJTで教育をされている。コールドチェーン業界の経験者が少ないため、外部から採用するのは難しい。タイで新人を採用して、日本に送り教育することは次の段階だと、考えている。

 

K社流が良いのか、T社のように即戦力の社員を外部からも採用して活用するのが良いのか、一概には言えないが、K社の今まで育てられた社員が将来のK社を担うのであろう。 建設業界でも、大手O社は社長が現地人で、現地の公共工事など、現地人ならでわのネットワークを生かしている事例をみると、現地化には、人材育成とともに現地人への権限移譲がどこまでできるのか、が重要である。

 

(写真は、T エンジニアリング社)

5.タイの大手民間病院のサービスについて

11/26(土)から12/5(月)の間、ニュージーランドに滞在した。長時間の飛行と直前の多忙のため、左の足が腫れて痛む。数日様子を見ても良くならないことからエコノミークラス症候群(静脈血栓症)の疑いで、11/29-11/30にローカルのR公立病院に検査入院をした。12/6(火)にバンコクに戻れるようになったが、帰国後も左足が腫れたままで、帰国後1週間経過後に数日、バンコクのB民間病院に通った。今回の経験を踏まえて、病院の設備、医者の治療、看護婦の対応など、比較しながら、報告します。

 

 

B民間大手病院(TH)

R公立病院(NZ)

病院の設備、検査機械

世界的に高い検査器具装備

欧米の監査器具を装備

受付対応

日本語も含め多言語対応

基本は英語とマオリ語

検査体制

医師の指導により、専門の検査医師と技術者が個別項目について検査。血液検査は、採血が看護婦で、検査は院内対応

医師の指導により検査技術者が対応。血液検査など採血は看護婦で、検査は院内対応。

医師の対応

専門分野ごとに複数の医師が常駐。一部は、公立病院、大学の医師も民間で勤務(タイでは、複数の病院掛け持ち可能)

外科、内科、産婦人科など主な科目ごとに専門医がいるが、時間外、または緊急対応では、外科医が主役になって対処してくれた。

医師の診断後の看護体制

病室は、集中治療室ICU (Intensive Care Unit)からVIP、個室、複数の患者が入る病室まで。

病室は、個室と複数の患者が入る病室まで。ICUは緊急治療部門に併設。

治療費

日本で言う、自由診療体制。個室1泊で1万バーツ以上(約3万円以上)

NZの社会保険制度加入者(国負担)、一般人との違い。
一般で個室入院8万円程度。

保険の利用

全ての保険制度、利用可能。従い、提携保険会社なら、患者負担なしで、治療も可能。

基本は、いったん支払って、事後に保険からカバーしてもらう。

個人としての感想を付け加えると、経済的な制約がないと、タイの大手民間病院は中東を始め、世界各国から治療を受けにくるほどサービス体制が整っている。

一方、NZの今回は地方の公立病院ということもあって、社会保険制度での対応が基本で、一般の、しかも海外からの入院治療は少なかった。また、経済的には先進国ということから、治療費も日本で受診するよりは高いと感じた。

結論として、海外に暮らす場合は、旅行傷害保険などないと、いざというときには大きな負担になる、おそれがある。

 

(写真:タイのB民間病院の様子)

 

以 上