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タイ

作成年月日:2017年2月

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タイ国情報 2017年1月

今月は2017年1月早々から労働法改正の動きがありました。これ以外に、日系企業内でのタイ人と日本人の役割分担の考え方、これから高度化が求められる研究開発について、観光産業について紹介します。同時に、年末年始のラオスの出張もあったため、タイの事情を周辺国との比較をしながらご紹介します。

1. タイの労働法改正の動き

2. 日系企業におけるタイ人と日本人の役割分担について

3. タイの研究開発、機器校正作業について

4. タイの投資政策、最低賃金政策について

5. (補足)ラオスの古都で活躍する日系レストランの人材育成法について



1.タイの労働法改正の動き

新聞報道によると、1/4の閣議で、労働者保護法の改正の基本案が了承された。@中央賃金委員会(委員長、労働事務次官)に各種勤務形態の異なる労働者の最低賃金の決定権を付与する。A使用者が、就労規則を当局に提出するとした規定を廃止する(当局に届け出する必要が無くなった)。B118/1条として定年の取り決めがない場合、60歳定年制の導入と、解雇補償金と同額(退職金)の支給が義務付けられる。C118/1条の罰則規定を定める。の4点。

新聞報道後も、タイ政府労働省の法律改正部局に取材を申し入れているが、2月の初めまで、取材に応じていただけず、スタッフの電話での取材状況も交えて報告します。

 

改正案は従前から検討されている労働者保護法の改正案がやっと閣議を通ったという。

 

@ 中央賃金委員会の役割:@について補足すると、アルバイト学生、障害者、高齢者が勤務する場合、4時間勤務しても最低賃金を支払うべきとしていたが、これからは時間給としての考えが入る可能性もある。

 

B 60歳定年制:これまでも定年の場合は解雇とみなして解雇補償金を支払うべしという解釈が出ていた(10年勤続以上は給与の10ヵ月相当を支払う)ので、これを法文化するという改正である。これは現実として実務への影響はない。これから高齢化社会を迎える中で、高齢者の雇用に関しては、定年があるのが良いのか、ないのが良いのか微妙なところである。今まで、タイ企業では定年を定めないことで定年退職金の支払いを渋ったり、自主退職になるまで待ったりすることがあったが、定年の定めがない場合は60歳になる、と明確に線引きがなされた。

 

(写真は、タイの憲法には王政と仏教の精神が流れている。各官庁には国王の写真とともに仏像がおかれていることもある。タイ労働省の中庭にも仏像が安置。)

2.日系企業におけるタイ人と日本人の役割分担について

日系のエンジニアリング会社を2社訪問した。1社目のK社は、進出当初からタイ人の研修を重視して、研修施設も持ち、タイ人を育成して自社社員として採用をしている。今では1,000名近いスタッフもかかえ、ゼネコンからの下請けという状態を脱して、逆にゼネコンに受注した仕事の建築や土木部門を逆発注する。K社は、すでにミャンマーにも進出して、ミャンマー政府と共同で職業訓練学校を設立して、優秀な社員は自社が採用して、いまではミャンマー人が30名も働く会社になっている。

2社目のM社も、同じくエンジニアリング会社であるが、日系企業向けの営業を担当する社長や日本人幹部は数年で交代するが、採用したタイ人は長く勤務して、協力業者の管理はタイ人が担当をする。そのため、徐々に日本人の駐在者の人数が少なくても仕事が回る、状態までになってきた。

日系のゼネコン0社ではすでにタイ人が社長となり、政府関係者との折衝など日本人では難しい大きな案件も受注をできるまでになってきた。これ以外にも、エンジニアリング会社では、タイ人に技術移転が進み定着が高まるとみられる。

D社コンサルタントによると、定着性を高める要因は2点。

(ア) 従業員の評価が正確にできるのか

(イ) 昇進のステップがだれにも見えているのか、が日系企業の課題であると思われる。

日系のM自動車販売会社では、すでに社長にタイ人が重用されている。今後、現地進出が長いエンジニアリング企業では現調化が進みタイ人が社長になる時代に変わるのだろうか。

 

(写真は、タイ人の活躍が期待されているM社)

 

3.タイの研究開発、機器校正作業について

日系大手自動車会社や、大手の電気業界では、タイに試験研究機関を置いて、現地なりの製品開発を行う企業が増えてきた。

その中の1社では、試験研究で行う材料の評価がアウトソースをされる受け皿として設立された。研究施設は2か所。1か所は重量物の検査のため、試験設備の大型の受け皿として工業地帯の中にある工場の一角で試験をしている。2か所目は、日本人の居住する住宅地からあまり遠くない、また高架鉄道の最寄駅から徒歩15分程度という比較的市街地に近い箇所に設置した。

その背景を取材すると、日本側は、日本人が済めない遠隔地だと、仕事の往復で時間がかかり、夜遅くまで働けない。住宅に近いことから、多少仕事が多くなって深夜になっても働けるという。同時に、優秀なタイ人は中心市街地に近いと、優秀な人材が比較的採用しやすいという。

他方、オンヌット駅に近いところに立地する会社もある。タイで独立開業して校正作業を目的に新会社を設立されたK社である。当初は日系企業の試験設備を販売する会社であったが、同業他社に吸収されて、重複する校正作業部門が廃止になると聞かされて独立されたのである。

その後、大手IT企業のN校正会社が進出して、一時は、大手企業の顧客はN社に引き抜かれて受注の減少や従業員の退職があったが、その後、N社の事業が集約されて、収益向上に貢献できないと見られた校正部門が廃止。K社の仕事は復活。しかし、従業員が経験を積むと、独立開業して、同業者間で価格競争を引き起こした。これで、K社は方針転換。価格競争はやらない、他社が嫌がる遠隔地の受注も受けるという経営方針を変更して、生き残りをかけている。

従い、研究開発部門そのものは製造業の一部門であれば十分貢献するが、独立してこれだけの事業会社として継続するのは難しい。

タイの産業の高度化に、これらの企業の活躍が期待されている。

(写真はBTSプラカノン駅からオンヌットに向かう方面)

4.タイの投資政策、最低賃金政策について

2017年1月24日の官報で、タイの投資政策が改正された。

主な改正点は、法人所得税の免除期間が最長8年から13年になったこと。高度技術、技術革新を使用する事業、研究開発事業は法人税が13年間免除される。

タイ政府投資委員会では2月15日に大規模な投資セミナーを準備しており、プラユット首相以下、政府の要人による講演や、将来のタイの目指すべき産業の在り方へのセミナーも開催されるため、詳細は来月に紹介する。

ただし、2015年から、従来の地域別の投資優遇策が廃止されたが、国民所得の低い地域に投資をする場合の優遇措置は残されている。

世界経済の先行き不透明な中で、民間投資を呼び込むために税制の優遇が必要と考えて、民間投資優遇措置を2016年末までとしていたが、2017年1月1日から12月31日までが新しい対象期間となった。国内の投資費用の1.5倍は所得控除となる。10座席化の乗用車を除く自動車や、建物も対象となる。

一方、2016年10月の中央最低賃金委員会(委員長、労働事務次官)の決定で、従来の全国一律300バーツの最低賃金が2017年1月から地域別になり、バンコク周辺が310バーツ、次いで、307バーツ、305バーツとなり、300バーツに据え置きの地域もあった。(以下の図表参照)

同時に注目すべき点は、労働省が認定する技能検定を受けた職種は既に職能別最低賃金が370バーツから600バーツに最低賃金が定められている。タイ政府は、アセアン域内での投資誘致策の一つとして、タイは賃金が比較的安いと訴えているのである。

 

(図表は2017.2.3のバンコクポストから)

5.(補足)ラオスの古都で活躍する日系レストランの人材育成法について

ラオスの古都ルアンプラバンで、ハイシーズン中は予約でほぼ満席というSレストランがある。夕食時にラオスの伝統的な踊りを見ながら食事ができる店で、経営者は日本人である。

経営者のI氏に取材すると、9年間経営をして失敗もしてきた。また、他のレストランでも、ラオスの伝統芸能を見せながら食事を楽しめる店はあったが、芸能人の管理が難しく、いずれも途中で伝統芸能を演ずるのをやめたり、店自体が閉店した場合もある。我が店だけが生き延びたのは、きままな芸能人と意思疎通がきちんとできたこと。

また、タイ人よりものんびりとしているラオス人を訓練して、優秀なスタッフだけ残せたことが、満席を続ける理由だと説明があった。

採用時にされる、テストは、性格、識字力、簡単な数学が中心で、間違っても素直に反省できるラオス人を採用するという。協調性も、テストの中で見分けるのである。

このようにラオスからタイに出稼ぎをする労働者が数十万人いるといわれるが、国内でも雇用の機会があれば、出稼ぎをする必要がないのである。

 

(写真は、シーズン中、予約で満席が続く古都ルアンプラバンのSレストラン)

 

以 上