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作成年月日:2018年2月

海外情報プラス

タイ国情報 2018年1月

1. タイ人の最低賃金の導入経過と企業の対応

2. タイの日系企業が求める営業人材とは

3. タイ人の所得構造と住宅事情

4. (日系企業の社会貢献事例)自社の製品を社会貢献に活用

5. (参考)タイの治安、安全確保について

 



1.タイ人の最低賃金の導入経過と企業の対応

2018年1月30日のプラユット内閣は閣議で中央賃金委員会が決定した内容で、4/1から新しい最低賃金の適用することを決定した。これは、2017年12月の労働省の中央賃金委員会(委員長は労働省の事務次官)の場でも決定せず、年明けの1月17日の委員会で7時間の議論をかけて決定したもの。その後、労働大臣の承認を得て、閣議にかけられたものである。

プラユット首相は2017年末に2018年から労働者に新しい年のプレゼントの一つとして言明していたものである。2012年のインラック首相が選挙の公約とした全国一斉300バーツへの最低賃金引き上げを経て、2016年1月から各県別の最低賃金に変更し2年ぶりに見直したもの。

労働側が引き上げの根拠としたのは、1. 労働者は毎日の生活費が上がり困っている。2. 賃金の引き上げは技能の引き上げとは別である。3. 全国同じ家計費の負担がある、である。

一方、反対した経営者側の根拠としては、1. 経済回復はまだ全国にいきわたっていない。2. 高いコスト上昇は中小企業を犠牲にする。3. 賃金上昇は、地域別の生活コストと技能評価によるべきである。4. 賃金状況はタイの国際競争力を阻害する、など。

今回の決定した賃金は全国を地域別に7ランクに分けた。最高は1日330バーツ(約1,138円)、最低は308バーツ(約1,062円)となる。(1/30現在1THBが3.45円。県別最低賃金)

 

1) 330バーツ、Chonburi、Phuket、Rayon(3県)

2) 325バーツ、Bangkok、Chachaensao、Nakorn Pathom、Nontaburi、Phatum Thani、 Samut Prakan、Samut Sakhon(7県)

3) 320バーツ、KRABI、KHON KAEN、CHAING mai、Ayuttayaなど14県。

4) 318バーツ、Karasinなど7県

5) 315バーツ、Kanchanaburiなど21県

6) 310バーツ、Kamphen phetなど22県

7) 308バーツ、Narathiwat、Pattani、Yalaの3県。

 

 

(写真は、各県別の賃金水準と周辺国のGDPと最低賃金の違い。バンコクポストから)

 

2.タイの日系企業が求める営業人材とは

最近の日系企業の景気動向については、バンコク日本人商工会議所が年2回実施する景気動向調査がある(2018.2.2公表)。おおむねの意見では、自動車の国内販売に代表されるように2017年後半は景気が回復基調にあった。また、タイ経済全体を見ると消費者心理の回復と輸出に代表されるように対前年比の輸出増加もあって、2017年の経済成長は4%近くになったと推計されている。

昨年から、弊社に照会がある日系企業M社からは、次のような営業人材募集の要請がある。 企業の方針については、次の通り。

「2020年までに売り上げ倍増。高収益体質の確立です。そのために新事業へ注力しようとしております。夢という大げさですが、どんな会社にしたいかはホームぺージの挨拶文が全てです」 別途、日系のS社の社長からは、「日本人の役割が顧客である日系企業のニーズをつかむことと、社内のタイ人にその要望を伝え、社内のすべての部門が顧客要望にこたえる体制を作ることである。肩書にとらわれず、やってほしい。そのような人材が必要である」との声をいただいた。

S車載整備工場のO社長に、事業が拡大する中で人材の需要があるのか、と尋ねると、「今は増員すべき時期ではない。一部の業務は機械化によって省力化ができる。例えば、溶接部門では、今まで2名が4日かかっていたが、昨年、ロボットを導入することで同じ作業は4時間に短縮された」 1.にも紹介したように、タイの賃金は周辺国と比べて必ずしも高いのではないが、タイの高度化にはまだまだ技能の高い技術者、営業であっても技術のわかる営業が求められているのである。

 

(写真は、S整備工場の現場)

3.タイの所得構造と住宅事情

日本では、建材や家電がインターネットにつながるIoT技術を使って子供の見守りや家事負担の軽減といった分野で新しいサービスが登場している。IoT技術でより良い住宅や住生活をどのように実現していくのか、といった観点が話題になる。

2018年1月に、日本の住宅機器メーカーの一行を迎えて、タイの住宅開発事情を一緒に見て回った。タイの住宅を見た場合、タイでは所得格差、資産格差の大小から、戸建て住宅の需要は、中産階級以上が主役になる。

また、バンコクでは、高速鉄道(都市交通)の普及により、従来の幹線道路沿いの住宅地開発から、鉄道駅の周辺の高層住宅がここ10年間に増加してきた。

例えば、バンコク北部のPhatomtahni県やNonntaburi県を例に挙げると、高速道路や鉄道延伸がカギとなる。県内を通る高速道路は、周辺の業団地および主要な商業地域への通勤に便宜性ある。

所得と住宅価格の相関関係を日本の事例でみると、年収の5倍程度が大きなめどである。 タイの住宅価格を見ると、50万バーツ以下の低価格物件は小さいサイズのコンドミニアムでしかない。100万バーツ、200万バーツ、300万バーツと順次上がってゆき、高級なものは、1,000万バーツまでとなる。中には、超高級物件として2,000万バーツを超えるものもある。

タイ政府は、タクシン政権時代から、低所得者向けの住宅を用意してきた。代表はバアン・ウアトーンと呼ばれ、最近の販売価格は70万バーツから100万バーツで戸建て(2寝室)がある。世帯主の月収を2万バーツ、家計全員の収入が3万バーツの場合、年収は36万バーツ。このうち、20%を借入金の返済に充てると想定すると、住宅価格は180万バーツになる。

しかし、家計調査でみると、バイクや家電製品の多くはローンや分割払いで購入する給与所得者が多い中で、住宅購入は最優先目標ではない。また、タイでは、所得を稼ぐのは男性だけではなく、女性の就業率も高く、家計を支えるのが何名かを考えねばならない。そして、現地の生活スタイルを考えねばならない。

例えば、タイ人の一般庶民の住宅を訪ねると、家庭内で調理することよりも外食文化の伝統が長いため、周辺の商業地域、幹線道路沿いのマーケットや屋台などが利用されている。

タイ人の所得が上昇しているのは、各統計で判明しているが、資産格差は大きい。相続税、不動産税の負担が軽微なことから、資産所有については、表面に現れている以上の格差があると想定される。例えば、有名大学の入学が決まった地方の資産家は、子女のため、大学などの近辺に立つコンドミニアムを借りるという発想ではなく、子女のため買い与えるという行動をとっている。

このあたりの考え方を推測して、バンコクなどの不動産事情を考えるべきであろう。たまたま、ここ数年は日系の不動産開発業者がタイの企業と提携してこの分野に参入をしているが、日本的な発想にとらわれずタイ人の生活の研究が今一層進むことが期待される。

(写真、ノンタブリ県で建設中の新規分譲住宅)

 

4.(日系企業の社会貢献事例)自社の製品をタイでの社会貢献に活用

(発端)

1月3日にタイの友人から年賀を兼ねたメイルをみると、ある日系エアコンメーカーF社が、輸出向けのエアコンを、タイの社会福祉施設、教育施設、宗教施設に寄付をしたい。ついては、知り合いで、希望者があれば紹介してほしいというもの。年初で、社会貢献であればと協力することになった。ただし、設置費用や輸出向けを国内に振り向けるので、通関費用および物品税の支払いが受け取り側に負担できることが条件となっている。

 

(経緯)

商工会議所、JICAおよびチェンマイの領事館、プーケットの日本人会などに照会。

1) JICAを通じた照会では、ある社会福祉法人では上記の設置費用の負担とともに、エアコンを設置することで施設の電気代などの負担が上昇することを懸念されて辞退。

2) 地方の日本人会では、会としての施設は所有せず、公共の施設を借りての会合をするので、会自体の資産はない。

3) 知り合いの子女が通うタイの学校が、上級生から下級生の教室にエアコンを設置する動きがあり、それに合わせて、この申し出を検討したい、という動きがあった。

 

(効果)

F社としては、今まで中近東など、タイを輸出拠点として位置付けていたが、タイ国内市場にも目を向けた場合、寄付行為を通じて、タイ社会で同社の製品が受け入れられるか、市場開拓のヒントを得る機会ともなる。F社の事例を出すまでもなく、タイで訪問する多くの工場で周辺にある学校や寺院などに寄付をされている事例も多い。しかも、たまたま該当する会社を訪ねて初めて紹介される事例が多い、日系企業にはまだまだ陰徳の考えが多いように感じるのである。

(写真は、少額の寄付を受けてくれた学校)

5.(参考)タイの治安、安全確保について

1月29日に日本大使館にて、在外安全対策(セキュリテイ)セミナーが開催された。現在の政治、治安情勢を踏まえた個人、および組織レベルの一般犯罪およびテロ・誘拐対策が紹介された。有事における初動対応手順など、日ごろ経験できない、想定できない内容での指導を受けて、タイ以外の治安情勢の厳しい国での対応も想定できた。事例も混ぜた内容で参加者は100名を優に超えた模様。現地の大使館との意思疎通が重要であると理解された。

上記の内容を踏まえて、最後の質疑応答のみ紹介すると、以下の通り。

 

質問1)有事の初動対応はどうあるべき?

回答1)有事の初動対応は重要で、それを間違うと後々、問題を生じる恐れがある。情報開示の遅れ、責任の明確化、内容の一貫性など、あらかじめ準備、訓練しないと、いざという場合の対応が問題になる恐れがある。家族への連絡も担当者を決めておくこと。

 

質問2)有事対応ではどういう手順が必要か?

回答2)次の3点で対応。1) 判明していることと考えられることの整理、2) 最悪のシナリオと対応策があるのか、3) 電話対応など小さなことも記録をしておくこと(担当の明確化)

 

質問3)誘拐の場合の、対策はどうあるべきか?

回答3)焦って、ちぐはぐな対応をしがちであるが、冷静な対応が求められる。犯人らしき人物からの対応では、被害者の生存確認が第一。

情報公開に際しては、

1) 被害者家族への思い、

2) 関係者の対応と謝意と事件発生のお詫び、

3) 人命を最優先として全力で事件対応をしているという姿勢が重要である。

 

質問4)危機管理の基本として、例えば誘拐時の外部から電話の質問には何が求められるか?

回答4)いつ、だれが、どのような内容の電話だったか、記録する。対応の一本化が重要。最高責任者がその場で軽々しく回答しないことも重要。電話の対応者が、最終権限者でないことを明確にして、責任者と相談の上、回答するという姿勢が重要。

(写真は、在タイ日本大使館)

以 上


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