各国・地域情報

タイ

作成年月日:2018年5月

海外情報プラス

タイ国情報 2018年4月

1. 2018年4月からの最低賃金引上げと中小工場の対応策

2. 外国人労働者が支える日本の自動車部品工場

3. 中小企業の海外展開で課題となる幹部育成

4. グループ企業を分離独立か、検討する前に

5. (質疑応答)日本から短期就労する場合の許可をどうとるか?



1.2018年4月からの最低賃金引上げと中小工場の対応策(事例)

4/1からタイの最低賃金が全国一律300バーツから引き上げられた。(2018年1月号でも報告済)

1) 330バーツ、Chonburi、Phuket,Rayon(3県)

2) 325バーツ、Bangkok、Chachaensao、Nakorn Pathom、Nontaburi、Phatum Thani、    Samut Prakan、Samut Sakhon(7県)

3) 320バーツ、KRABI、KHON KAEN、CHAING mai、Ayuttayaなど14県

4) 318バーツ、Karasinなど7県 5) 315バーツ、Kanchanaburiなど21県

6) 310バーツ、Kamphen phetなど22県

7) 308バーツ、Narathiwat、Pattani、Yalaの3県

そこで、バンコク市内で50名の従業員を擁するT宝石加工工場を尋ねて、最低賃金引上げへの対応策を伺った。T 社は、30年前にドンムアン周辺で行っていた同業者の工場(宝石の加工工場)の事業の一部を引き継いだ。以後、独立して工場を運営してきた。当初は、元の工場の幹部がT 社の立ち上げに協力してくれて、高齢化して順次、若い人材を採用してきた。宝石の加工は、技術習得に数年かかることと、材料が金、銀、錫など高額な金属を使うことから、信頼できる従業員がいないと、在庫管理に落ち度があると、それだけで収益が飛ぶことになる。そこで、同社では工程を分離して、経験年数により取り扱う金属の種類も変えている。高額な金属は経験年数の長い従業員が扱うことになる。すでに、タイに宝石の研磨技術、加工技術は移転しており、日本の技術者をタイに招くことはない。

 

従い、今回の最低賃金の引上げは、同社にとっては新規採用者があった段階では影響があるが、すでに経験者が多数勤務している関係で最低賃金の影響は少ない。一時、地方移転も検討したが、地方から出稼ぎに出てきた今の従業員が、出身県以外には勤務したくない、との意向から、バンコクでの事業を継続している。しかも、2012年の最賃引き上げから、地方とバンコク都の格差がなくなり、地方に移転する意味がなくなった。 では、最賃引上げの対策としては、何をしているかというと、日本製、ドイツ製など、加工機械の高性能なものを導入して、より品質の高い受注を目指しているのである。

 

 

(写真は、宝石工場のオーナーと海外から来た技術者)

 

2.タイの医療分野に参入するには

4/4に神奈川県秦野商工会議所から紹介されてH自動車部品加工工場を訪問する機会があった。同社は、タイやフィリピンにも工場を持つ精密な自動車部品工場である。同社の独自の技術のおかげで、国内の3工場および海外の2か所とも、環境が厳しい中、受注が継続している。

 

同社はタイにも関連会社があるので、人材不足はタイの関連会社から派遣されてはどうか、と尋ねたが、タイの会社も受注が増えて、不足する分は業務委託で対応しているため、無理とのこと。また、日本語の理解力や能力と賃金格差を考え、日本研修が有効かどうか検討した。当初はタイ人を選抜して日本で研修させることも考えたが、精密金型の技術を覚えるには長年の経験が必要であること、タイには新規製品の開発を担う機能が持たない、言い換えると、知的所有権は本社で管理することも背景にある。タイ人には転職が多い、という理由ではない。

 

また、過去のリーマンショックの経験もあり、正規従業員とともに、労働者の半分は業務委託による労働者の派遣を受け入れている。派遣労働者の中で、優秀な労働者があれば、タイ、中国、ベトナムなど国籍に関わらず、正社員として採用をしている。

 

現場で取材したところ、ベトナム人はベトナム戦争時代、大人に連れられて戦火を逃れてきた方で、今では日本の在留資格もあり、日本語も問題がない。タイ人のワーカーも日本滞在が長く、日本語も問題なく、しかもある部門の責任を任されいるほどである。オーナーも信頼をしている。

 

日本も127万人と言われる外国人労働者(2018年1月、厚生労働省発表)がいなければ成り立たない国となっている。(参考:http://diamond.jp/articles/-/163140?page=4

 

外国人労働者に支えられている実情はタイでも同様である。2017年から軍事政権は200-300万人と言われる外国人労働者を、正規に登録させて、社会保険にも加入をさせるという動きがあった。軍政当初は、手続きが厳しくなり、不法な就労をさせていた場合は高額な罰金や国外退去もあるとして、カンボジア国境に多数のカンボジア人が集まり、タイから脱出する動きがあった。その後は、タイ政府は、カンボジア、ラオス、ミャンマーの政府と協力して、本人確認のIDカードの発行と、タイでの就労許可、社会保険の加入手続きなど行うとして、バンコク市内で数か所、地方では各県に1か所の登録事務所を設置して、2018年3月までに130万人ともいわれる登録があった。それでも、まだ手続きが終えてない外国人労働者がいることから、再度、受付の締め切りを延長している。政府関係者の一部には160万人程度まで登録がされるとみられる。

 

最後に、中国やタイでも高齢化が進み、各国の賃金格差が縮小すれば、いずれ自国民を海外に送り出す余裕がなくなる恐れはないか、考える時期が来るのではないか。

 

(写真は、秦野商工会議所)

3.中小企業の海外展開で課題となる幹部育成

タイの製造現場では、日本人1人に対して、多くのタイ人と一緒に働くことも一般的である。タイの東部、Chonburi 県に工場を持つK社もその一つである。社長と工場の現場責任者が日本人で、あとはタイ人が働く精密部品メーカーである。

 

本社は、急拡大を引っ張った2代目の急逝で、3代目(2代目社長の弟)の社長に代わった。海外事業は2001年の進出当時の幹部に任せることが多い。本社の幹部に取材をする機会があった。タイ工場は、進出当時の顧客自身の事業拡大とともに、現地社長の営業努力で顧客数が拡大し、工場を拡張し、従業員数も当初の80名が今では168名になる。日本では営業しても確保できない大手顧客も現地では取り込んで、逆に本社の営業拡大にも貢献をしている。

 

2代目社長時代は、タイや中国に子会社を設立して海外市場にも展開するなど積極的であった。また、日本本社を上場させようと無理な拡大をして、内部的にも大きな問題を生じた。しかし、リーマンショックと前社長の急逝を機に、3代目の社長は、無理な拡大を避け、内部の充実を図る方針へと変更になった。

 

進出して十数年を超えてくると、次の現地責任者をどうするか、本社では議論となるが、社長が3代目に代わったこともあり、本社の経営体制を確立することが喫緊の課題として、現地の幹部をどのように育成するかまでは核とした方針にはなっていない。今すぐ、現地の代表を交代させることは問題を大きくするだけであり得策ではないが、現場レベルでの軋轢は本社にも聞こえてくる。 そのため、外部から招くのか、内部の人材を育てるのか、2つの方法があるが、社内での人材候補がいないため、社長が子会社の代表を兼ねるとしても、常駐できる現場の工場長クラスをどのように見つけるのかが課題となっている。

 

(写真は、K社のタイ工場)

 

4.グループ企業を分離独立か、検討する前に

T社は、創業者が物故したため、30歳代の第2世代に経営が譲渡されて、創業者の起こした消耗品の製造という本業以外にも、輸入自動車の販売会社もあり、第2世代はそれぞれ得意の分野を担当するが、資本面では統括会社の下に各事業分野を置き、経営面では、兄弟間の意思疎通を良くして得意分野をそれぞれが日常の経営管理をする体制に変更。また、新しく、エネルギー分野への進出には、外部から優秀な人材を招いて、ゆくゆくは資本と経営を分離する方針である。

 

本業は、顧客の大半が海外ということもあり、日本でも販売会社を持っている。欧州はアイルランドにスタートアップ企業に投資をする投資会社を設立。

 

T社のI社長に、兄弟間の考えの違いからグループを分離する考えもあるが、その点はどうか、と質問をしてみると、企業は体力が必要な時もあり、創業者が一人の時代から第2世代に代わっても統括会社を作ることによって、対外的にも大きな仕事ができる。意見の相違は話せばわかる。常時、各事業分野での問題点を意見交換することで、お互いに秘密を作らないようにしている、とのことである。この点が、従業員の定着とも関係する。

 

創業者の時代から勤務する幹部もいて、第2世代が事業を拡張しているやり方にも協力的である。中でも、日系企業との取引は、担当者が変わらずいるため、相手からの信頼も厚く、業界では世界No.2の位置を維持している。

 

第3世代の育成について聞いてみた。長男、長女、次男という3兄弟がいるが、いずれも英国の寮のある私立学校に留学させて、欧米流の教育をしている。T社のアイルランドや得意先の営業で、年に一度は現地を訪問して子供たちの成長ぶりを見ている、という。

 

タイのIオーナー企業の視点は、現在の業継続とともに次世代の事業分野にいつの時点で進出するか、考えている。現在の事業は、環境問題や健康問題から、いずれ縮小をせざるを得ないと覚悟しており、子会社の投資会社を通じて、可能性のある分野に進出することを考えているのである。そのためには、持ち株会社など資金的な余裕のある会社がバックにいないと、オーナー企業の発展はない、という。日系のオーナーでも新しい分野進出までにらんだ、会社組織、投資会社まで持っている企業オーナーは多くはないであろう。タイでは、相続税がほとんどかからない、という点から、事業継承が考えられるのであろうか?

 

(写真は、製品を国別、顧客向けに並んで展示しているT社の本社)


5.(質疑応答)日本から短期就労する場合の許可をどうとるか?

(質問)今まで、タイでの会合では、短期就労許可など、手続き面で云々されたことはないが、今回、システム設置では、就労許可が必要だと言われている。その理由は何か? どうすればよいのか?

 

(回答) タイでは15日以内の業務でも届出が必要です。

 

タイの労働法をはじめ各種法律は、外国人には理解できない部分も多々あります。

タイは、欧米流の契約社会に慣れていると同時に、自国の権利を守りたいという観点での法律、具体的には外国人事業法、外国人職業規制法などあります。

タイの労働法も、正式には労働者保護法で、外資にとっては、不要に解雇できない、解雇する場合に解雇手当を支払わねばならない、など日本の働き方改革の流れからすると一定のルールに従わざるを得ないという、不自由さはあります。

短期就労手続きは外資の自由化への要望とタイ労働省の「労働法」執行との妥協の産物です。

この規定が生まれた時期からタイに滞在している関係で、成立の背景を理解しています。 その後、何度か改定の動きがあって、会合参加者などは申告不要など例外事項が増えてきたのですが、制度そのものは残っています。

 

以下の必要な書類を来訪前にFAX送信して手続きをすればよいので、許可など不要です。

1. 様式10(WP10)(下記のwebsiteからダウンロードできます) 申請者氏名及び署名、旅券番号、業務期間、会社所在地等を記入し、申請者写真(3×4cm)を貼付。氏名、署名等を別紙として添付すれば、複数分を1つの様式で届け出ることができる。

2. 旅券の写し 写真のあるページと、入国時スタンプ又はビザのページ(ホチキス止めされた出国カードも含む)とが必要です。

3. 業務を行う会社の登記簿写し(6ヶ月以内のもの)及び会社のVAT登録の写し(又は業種特定のために記入された様式1(WP1)) 申請者を雇用する者(業務を行う会社を指します)がタイ人ではないときは、その者の労働許可の写し。その者がタイ国内にいない場合又は労働許可を所持していない場合は、委任状(在日本タイ大使館又は公証人役場の認証が必要)。申請者を雇用する者がタイ人であるときは、IDカードの写し。

4. 申請者本人以外の申請である場合、委任状(10バーツ印紙貼付)と受任者のIDカードの写し

5. 労働省雇用局の問い合わせ先は、タイ(+66)、タイ国内からは0-2245-2745、0-2245-2533、 0-2245-2306又は0-2248-7202です。

 

なお、日本大使館の説明にもあるように展示会、会合などの参加者は、不要です。

(参考) http://www.th.emb-japan.go.jp/itpr_ja/mamechishiki_wp.html

 

しかし、以下の項目では、ご注意いただきたく。

1. 現場での操作システムの設置作業は明らかに、必要です。 現場には協力業者の作業の一環として、協力業者が責任を持つ形です。

2. 商談とミーチングで届け出は必要な事例としては、次のような事例があります。例えば、契約を解除するなどタイ側に不利な条件交渉をする商談に、タイ側が外資から不利な交渉を強いられると考えた。タイ側は外資側が、労働許可を所持していないことを理由に、警察に通告して逮捕された事例です。不要なラブルを避けるためです。

(展示会を視察する海外からの出張者(出展者は労働許可が必要だが、一般参加者は不要))

 

以 上