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タイ

作成年月日:2019年4月

海外情報プラス

タイ国情報 2019年3月

1.タイの下院総選挙、終了

2.タイでの研修生の受け入れと日本に研修生を送り出すには

3.最低賃金の引き上げと、企業の国外への移転について

4.健康診断とタイの駐在員の健康保険

5.学生時代の海外研修で学ぶこと



1.タイの下院総選挙、終了

2019年3月24日の下院議員選挙の95%開票状況での結果は次の通り。

1) プアタイ党(タクシン系列)およびその関連

1. プアタイ党  137議席(スダラット選挙戦略委員長)

2. 新未来党    81議席(タナトーン党首)

3. タイリベラル党   10議席

4. プラチャラット党  6議席

5. 新経済党      6議席

6. プアチャット党   6議席 

 

2) パランプラチャラット党(国家の力党、軍事政権支持)

パランプラチャラット党 116議席(ウッタマ党首、プラユット首相を、首相候補とする)

タイのための行動党  5議席

民主党        52議席

タイ地方の力党    2議席

タイ森林保護党    1議席

 

3) 中間政党

ブムチャイタイ党   51議席

チャートタイパタナ党  10議席

タイ人民の力党  1議席

タイ国家党    1議席

 

4) 問題は、今回の総選挙の勝者が決まらないことである。タクシン系列は議員の250席を確保しているというが、パランプラチャラット党は、投票数で一番有権者の票を集めたので政権確保の信頼が高いという。現在の憲法では上院の250名が軍事政権により指名された議員であり、下院500議席および上院250議席の合計750議席の過半数である375議席を確保できないと首相を指名できない。しかも、今回は首相が国会議員以外からでも選ぶことが可能になったことである。4月のソンクラン(4/12-4/16タイの正月)や国王の戴冠式5/4前後の人が集まり機会に多数派工作が続くのであろうが、中間政党は主要政党からの有利な条件を引き出すための動きが続くのであろう。

 

5/9-5/23 選挙結果発表(本投票日から60日以内)

7月上旬 新内閣、発足

 

(写真は、建設中の国会議事堂)

 

2.タイの研修生の受け入れと日本に研修生を送り出すには

先月の日本での研修生受け入れについての記事の続報として、タイで日本人の研修生を受けれる場合について事例を紹介する。

日系のI社では、40年前にタイ進出当初は日本国内でタイ人の研修生を受け入れてきたが、今では日本の工場よりも施設が新しいタイの工場で日本人の研修を行うほどになってきた。

タイ工場に赴任するとすぐに、現場に新人を入れるのではなく、2週間程度の座学がある。内容は安全研修、素材の扱い方の学習を行った後に現場に派遣する。

正社員だけではなく、派遣労働者の受け入れも行っているため、交代要員として新しく受け入れる労働者も同様に安全研修や素材の扱い方についても一から指導するという。

工場の現場では、効率よりも安全が最優先の会社である。

一方、日本でベトナム人の研修生を受け入れるK社から、タイの研修生受け入れの相談もあった。日本国内の現場ではまだベトナム人の受け入れに戸惑いがあって、タイ人の受けれまで考えが及ばない、との報告があった。

業界にもよるが、日本の中小企業ではマニュアルを作り、一から業務の知識を教えるというISOのルールが適用されていない事例も多く、逆にタイでISOなどのマニュアルによる経営を行っている企業の受け入れに学ぶ点が多い。


 

(写真は、ISOのマニュアルを順守するJ社)

3.最低賃金の引き上げと、企業の国外への移転について

タイの最低賃金は2011年以降上昇を続けています。選挙の結果で、最低賃金が変わるとは思えませんでしたが、現政権は、2017年1月と2018年4月の2回実施されています。2月15日の報道では、労働省のチャリン・チャカパーク労働事務次官(中央賃金委員会会長)は4月1日付で最低賃金が改訂される見通しだと説明をしていましたが、4月初めの委員会で、延期の方向をしめしました。新しい政権発足後に改定される見込みです。

 

2018年4月に改訂された現行の最低賃金はプーケットとチョンブリ県で330バーツ、バンコクを含む首都圏で325バーツです。それ以外では、都市化の進むコンケン、ウボン・ラチャタニなど地方の14県が320バーツ、その次22県が310バーツで、最も低い南部国境件3県など7県が308バーツとなっています。

 

さて、タイの下院総選挙で3月の半ばに話題になったのは最低賃金引き上げの公約でした。主要な政党は1日400バーツへの引き上げを公約としてきた。これに対して、タイ工業連盟(FTI)やレストランなどの業界団体は、中小企業の経営に影響が大きいと、反対の声明を出しています。現在、ラーメンが1杯40バーツ前後で売られているのが、100バーツになるといわれます。

 

特に、労働集約的な産業の代表であるテキスタイル業界のY社では、従来、東北にあった工場を2年前からラオスのビエンチャンに移転させました。タイ東北部とラオスは言葉も文化面でも共通性があって、タイ人の管理者がラオス人を指導しています。

 

しかし、タイでは2012年の全国一律300バーツ政策が実施されてきたことから、地方に工場を立地する理由がなくなったのです。そこで、最低賃金がタイの1/3程度のラオスに移転したことで、物流費のアップはあるが、まだメリットがあると言われます。

 


  

(写真は、ラオスの工業団地に立地する工場)

 

4.日系企業がタイやベトナムの新卒者を新入社員として受け入れる動き

2019年の年初からバンコクの空気の状態が悪く、PM2.5も通常の50マイクログラムμg/?が、チェンマイでは4/3現在100μg/立方メートルまでに上がり、世界でも最悪の空気汚染の町と言われます。一部の市民は空気清浄機を設置して、マスクを話せない状態と言われます。バンコクでも、季節風が東から、南風になってから多少はましになりましたが、それでもマスクが必要な状態です。

 

そのせいか、筆者は1月から風邪をこじらせて、バンコクの私立B病院を訪問して、診察と健康診断を受けることにしました。数年前に同じ病院で健康診断を受けたため、前回のデータも残っていることも受診した理由です。

 

さて、日本のP労働組合から、タイの保険制度、共済制度についての質問をいただきました。

 

各都道府県単位にある共済組合が生命保険、火災保険、自動車保険を運営していますが、これに類似した制度がないのか、との質問です。

 

そこで、タイの労働組合の実情に詳しいMr.Supachaiに聞くと、日本のように労働組合の財政面が豊かではなく、保険制度はすべて会社に負担をしている。社会保険制度も併用している程度で、参考になる組合主体の保険はない、との報告をいただきました。

 

また、駐在員が加入する海外旅行傷害保険に、疾病特約がついて、無料で有名な病院でも受診できる方は別ですが、それ以外はタイの保険制度を利用することになります。いわゆる社会保険でも受信できますが、朝、病院に行っても、終日、病院で待機しても数分の受診で終わるため、富裕層は私立病院を利用することになります。今回の総選挙でも、タクシン政権時代からスタートしている国民皆保険の流れが現在の軍事政権でも継続せざるを得ない、大きな国民的な課題になっています。

 

日本人駐在員というよりも、タイ人従業員の健康管理も企業の労務管理の一環として欠かせない福利厚生ではあります。給与が安くてもタイでは公務員に人気があるのは、家族全員が1名の公務員がいることで、保険制度が利用できるという一面も忘れてはならない点でしょう。

 

(参考)

タイで医療保険を使うときの留意事項

・ 提携医療施設でのキャシュレスサービスについて

・ 保険会社発行のメディカルカードと身分証明書を提示しないとサービスは提供されません

・ 治療費が補償上限額を超えた場合の差額は自己負担となります

・ 一部の保険会社で事前連絡をしない場合は補償対象外となります

 

(写真は、私立のB病院)


5.学生時代の海外研修で学ぶこと

日本の大学生や高校生が期末の試験が済んで、新学期までも春休みに海外を旅行することも多く、タイのバンコクでも日本人学生のグループにも出会うことがあります。

今回は私立のある学校の海外研修を紹介します。

同校では、課題探求教育といって、生徒に自らの課題を見つけて、それを探すための教育を重視してきました。今回の海外研修でも、その延長としてバンコクの学校や企業を訪問して、そこを観光するのではなく、自分たちの生活や学習面で生かせる課題を探すことに重点を置いていました。

日系の住宅産業の経営幹部から、タイ進出の背景と、同社ならではの新しい住宅提案がされている事例を学びました。

特にバンコクの大気汚染との関係で、同社の住宅では気密性が高く、室内の空気の清浄化も重要な要素だと説明を受けていました。

また、実際の住宅を見学した際に、日本の住宅との違いなどを見て回りました。仏間、台所の間取り、クローゼット、各部屋に隣接しているシャワールーム、風呂などタイの富裕層が購入するであろう、住宅の現物を見て、日本との違いを質問していました。

海外研修では、衣食住などどの分野においても、日本では当たり前のことが、海外では様々な理由で同一ではない、社会階層の広がり、富の分布なども実地に体験することで、自分たちの置かれている位置、今後の課題を見つけたのではないか、と推察しました。

 

(写真は、日系のモデルハウスなど入居するCDC)

 

以 上