各国・地域情報

タイ

作成年月日:2019年5月

海外情報プラス

タイ国情報 2019年4月

1.タイで障がい者雇用を拡大するには

2.上場企業と中小企業のアセアン展開について

3.高齢化社会に向けて健康食品関連販売会社の設立準備について

4.タイにおける中国企業の影響、中国企業との付き合い方

5.新年度のOVTA公開講座開催の準備について

6.(参考)タイの下院総選挙(3/24)から1か月も経過して



1.タイで障がい者雇用を拡大するには

4/5に国際交流基金、社会改革基金(SIF)、アジア・フィランソロフィー協会主催で国連が掲げる持続可能なプロジェクト(SDG)と障がい者雇用に関するワークショップが開催された。

そこで、障がい者雇用に関する日本とタイの動き、タイ国内で日系企業とタイ企業の取り組みを報告された。日本の事例として、詳しくは数式会社リタリコのホームページを参照願いたい。

タイの社会改革基金(略称SIF, www.sif.or.th)の活動紹介をすると、以下の通り。

1) タイでは170万人の障がい者がいる。内、90%が小学校レベルの教育しか受けていない。

2) そのため、タイの法律で100人以上の従業員を雇用する企業は、1%の障がい者を雇用する義務がある。もし、それが達成されない場合は、賦課金が課せられる。1名あたり年間、数十万バーツにもなる。

3) SIFは、賦課金を政府に徴収されるのと同じ金額を身障者が住む地域で雇用の場を与え、その給与やインセンテイブを企業が負担すれば、目に見える形で身障者の雇用が拡大するので、その機会を提供するという。基金の運営は、政府が行っているので、企業も身障者も手数料は要らない。

4) タイの企業が400社、中でも日系企業が40社ほど利用している。

5) 雇用者数としては7万人近い。

 

次に、タイの日系企業の例としてM社から報告があった。7,000名近い従業員がいるが、社内で雇用されているのは3名しかいないため、義務づけられた70名との差額は、賦課金として、年間数百万バーツ支払っていた。M社の人事責任者が、スタッフに障がい者雇用の拡大を問いただしたところ、「社員は障がい者が採用できないことはわかっている、負担金を支払えばよいのですよ」、と簡単に答えたという。しかし、担当の人事の責任者は日本国内でも身障者の雇用にも携わったこともあり、賦課金の支払い以外に、何か良い方法がないか、模索してSIFの存在を2年前にバンコク日本人商工会議所(JCC)経由で知った。

 

障がい者雇用の事例として、1人目は両腕のない青年が、企業のアドバイザーとして働く場を提供。2人目は地方の村の管理する森林の防火管理。3人目は歯科医師の助手として働く事例を紹介された。今まで、就労する機会が無かった彼らが、日系企業M社が給与を負担することで、それぞれの地域で働く事例である。

 

地場企業として、セントラルグループ(CG)の場合は、賦課金を支払っていない。7万人近い従業員がいるが、1%の雇用義務を負うことから700人の身障者を雇用している。CGはどうしているのか? まず、障がい者の雇用として、最初に宝くじの販売所をCG内で確保した。また、各店舗に働く従業員の福利厚生の一環として、マッサージ師を採用して、各店に月2回の巡回で、無料でマッサージを受ける機会を作った。また、プーケットにグループのコールセンターを作った際に、最初は40人の枠に、障がい者は10人程度であったが、今では400人の規模になって、半数以上は障がい者が活躍をしているという。しかも、さらに拡大の意向があって、できれば障がい者だけでコールセンターを運営したいという。やればできる。何よりも、オーナーの強い意志が、会社全体に作用したことであろう。

 

企業のどのような経費でも、トップの強い意志が、法律が問いかける意図を理解し、企業として何をなすべきかが、社内に伝わるかどうか、が重要である。

 

(写真は、4/5当日説明された社会改革基金の責任者)

 

2.上場企業と中小企業のアセアン展開について

タイで上場した日系企業でリース会社がある。ちょうど1997年の経済危機をきっかけにタイの金融業界が整備された時期に開業して、行き詰まったタイ企業を買収したり、提携して成長してきた。社内の共通語は英語である。今では、タイだけではなく、カンボジアやラオスでも2輪のリースをして事業を拡大している。これは、金融業界が規模の利益を享受できるからでもある。例えば、金融機関の経営サイドが求める情報システム部門の役割も変わりつつある。コスト削減や業務効率化、システムの安定運用といった従来業務に加え、生産性や売り上げの向上に寄与する戦略部門としてのIT活用が強く求められている。つまり情報システム部門は戦略部門として、AI、IoTなどの最新技術を活用し経営/現場などに新たな気づきを与え、今までより直接的に業務への効果を与える必要がある。それには、組織の拡大により、IT関連の投資ができる企業に有利な時代になっている。

 

一方、日本から進出したT印刷の事例を紹介する。タイでは20数年の事業経験をもっているため、顧客の要請で、ベトナムとフィリピンに印刷事業を展開してきた。IT化に対応できない部分が多い。工場の許可、機械の設置、従業員の育成など日本の経験者が実地指導しながら育ててきたが、タイでは転職が当たり前。各自の職務を理解して現場を任せるには数年かかる。

 

しかも、ようやく育った従業員も仕事の繁閑で、残業が無い時期が続くと、自然と退職してしまう。同社が展開するベトナムとフィリピンではタイとは違う国民性で、現場の責任者が苦労をしている。特にベトナム人は優秀であるが、日本人が現地語で指示しようとすると5音もあって意味が異なる指示をしたこともある。コミュニケーションで苦労をしている。またベトナム人はタイ人以上に呑み込みが早いが、同時に自分たち独自の方法を導入しようとする。

 

そこで現地を任されたT氏は自社工場という考えを捨てて、現地企業と提携する、という方式に変えた。具体的には、機械を貸与して、必要な時は依頼された仕事を優先するが、空いた時間は現地の需要に応じて使用してもよい、という形式に変えた。従業員の管理は、現地企業が責任を持つ形式にしたところ、日系企業としては、営業に専念できて、業績が安定してきた。 フィリピンでも、現地のスタッフに100%工場を任せるという。中小企業のネックは、各国の工場を見る適任者がいない。海外に駐在するスタッフが時には周辺国の工場を応援するという。同じ業界の仕事であるので、繁閑に応じて、応援できる体制が、同社の特色だという。

 

日本本社の経営者は70歳を超えて元気であるが、現地はT氏など責任者に任せてグループとしての運営体制に徐々に変えている。各国が自立して、連邦帯として運営できる仕組みにしたいという。


 

(写真は、ベトナムの現場も見るT日本人)

3.高齢社会に向けて健康食品関連販売会社の設立準備について

日本に本社を持つ食品関連の素材メーカーであるN社は、すでにカナダ、アメリカ、インドにも子会社を持っている。2年前の2017年にアセアン域内でベトナムに事務所を開設。本社では、今年中に、インドとタイに健康食品、サプリメントの販売会社を設立準備中である。

 

既に2018年11月から、タイには出張ベースで市場調査を行っていたが、現地の責任者がいよいよタイに拠点を持ち、最終的な細かな市場の調査を開始するという。食品の輸入にはタイ保健省FDAの許可取得も準備中で、日本から製品輸入が良いのか、原料を輸入し、タイ国内でパッケージも準備して日本企画のタイ現地生産が良いのか、も検討をしている。

 

同社は既に20年前から原料はタイなどから輸入しており、当初は、現地企業と提携して会社設立をしてはどうか、との意見もあったが、原料のタイからの輸出と、製品を日本及び関連会社から輸入し、もしくは将来はタイでの生産も視野に入れての法人では事業内容や事業の性格が異なるため、自社独自の法人を設立する方針となったもの。

 

タイの責任者は、20年前の現地からの調達先の選定で1年余りの駐在、その後、海外勤務としては中国に4年など経験をしていることから、タイ法人設立の責任者に任命をされた。

 

では、なぜ、タイとインドでの販売会社を設立する動きになったのか、伺うと、タイは日本と同じく少子高齢化が進展していることと、原料輸入で、タイでの販売が少ないことから、輸出入をバランスさせたい、為替リスクを少なくしたい、という意味もある。インドについても同じく、原料の現地からの輸入と、製品をインド国内で拡大するための直販会社の設立を検討したもの。もちろん人口6700万人のタイでのターゲットは限定している。また、人口14億人のインドでのターゲットはタイよりも比率は低くとも高齢者の増加、高額所得者の総数を考えると、これから伸びる市場に拠点を持つ、というのは自然な流れであろうか。

 

課題は、業界知識もあり、マネジメントできる人材が大手といえども少ないため、できるだけアウトソースで対応したい、という。現地での雇用を拡大すべきか、現地の大学との共同研究も含めて、新しいマーケチング方法を模索中である。

 


  

(写真は、タイ法人設立準備のため打ち合わせ中)

 

4.タイにおける中国企業の影響、中国企業との付き合い方

4月2日にJETRO主催の日中泰共同事業を探るワークショップが開催された。その後、これに関するであろう企業との接点もあった。月末の4月26日にバンコク日本人商工会議所の総会記念講演の講師として日本総合研究所会長で多摩大学の学長を務める寺島実郎氏の講演があって、世界経済に占める中国のプレゼンスの高さについて言及をされていた。

 

たとえば、日本との貿易国のシェアを見ても、1990年代は米国が27.4%であったが、中国単独では6.4%。それが2018年には、米国のシェアが14.9%に低下する一方、中国自体は3兆円、(23.9%)に上がった。シンガポール、台湾を入れて大中華圏でみれば3.9兆円(30.8%)、アジア全体との貿易は6.4兆円(51.1%)である。

 

それだけに日本自体がアジアの成長を取り組む必要がある。言い換えると、中国経済を無視して欧米との取引だけでは日本経済が成り立っていない。その意味から、タイにおける中国企業のプレゼンス、タイ企業と中国企業との経済交流を理解した上で、日本との取引、日系企業との取引を考える必要がある。

 

例えば、中国企業といっても革命後の中国大陸から進出している企業だけではなく、いわゆるタイ企業といってもオーナーのルーツが中国大陸の場合もある。すでに、タイでは出生地主義で、タイで生まれた子供はタイ人となる。第2次大戦後の共産化への道を避けたいタイ政府はタイ文化を提唱する中で、中国語の排除、中国語の教育の場での制限をした時代があったが、文化革命後のタイと中国との国交正常化以後は、中国との交流で大きな制約はない。むしろ、中国との貿易自由化以後、多くの中国の産物がタイに入り、中国企業の進出も多い。中国国内に17,613店舗、資産総額20兆3,037億人民元を保有する4大銀行の一つでもある中国工商銀行(ICBC)は既にタイ国内でバンコク、地方の主要都市合計で15本支店もある。タイ法人の専務に尋ねると、中国企業で構成する商工会議所は既に3,000社のメンバーがあるという。今後は、タイを舞台に中国と日本がどのような活動ができるのか、考える時に来たと思われる。

 

(写真は、4/2の日中泰共同ワークショップの写真)


5.新年度のOVTA公開講座開催準備について

OVTAの公開講座については、昨年の講師とは2019年2月から、今年度の進め方について協議をしてきた。

タイ国内で当面の労働問題としては「最低賃金の引き上げ」がいつになるか、関心が高いが、長期的には労務管理、労使関係などタイ独自の労働法を学ぶ必要がある。

 

一方で、タイに進出する企業の業態が、2000年までのと、製造業を中心とする進出が、2010年以降は非製造業、製造業の周辺で、製造業の効率化、能力アップを狙う企業向けサービス業と、一般消費者対象の飲食、サービス業の比率が高くなっている。例えば、JCCの会員数も製造業が43.8%となり、非製造業の比率が高い。そのため、労務管理をとっても製造業を中心に考えるテーマが良いのか、非製造業を対象に考えるべきか、考える時期になっている。

 

また、公開講座の開催が2019年度で最後となると、今後の企業にも参考になる基本的なタイの労働法をまとめる機会にできないのか、と考えている。

 

(写真は、バンコク日本人商工会議所JCCの新入会員の状況)

6.(参考)タイの下院総選挙(3/24)から1か月も経過して

3月24日の下院総選挙の結果が5月9日にあった。すでに小選挙区で選ばれた349議席は確定したが、政党別に比例区に配分される議席の決めかたが、変わった。従来の最低投票数(およそ71,000票)を下回る場合は、小さな政党に配分されることがなく大政党に回っていたが、選挙委員会(EC)は今回実施された選挙法の改定の趣旨は、小さな政党への支持者も国会の議席で生かせることであるとして、従来方法では大政党に行くところ、小さな政党に回ったのである。これにより、軍事政権支持の小政党に11議席が与えられた。

 

上位14政党の議席の結果は以下の通り。

1.プアタイ党Pheu Thai 選挙区136 比例区は無し、合計 136議席

2.パランプラチャラート党Palam Pracharath 選挙区97、比例区18、合計115議席

3.新未来党Future Forward 選挙区30、比例区50、合計80議席

4.民主党Democrat 選挙区33、比例区19、 合計52議席

5.プームチャイタイ党Bhumjathai 選挙区39、比例区12、合計51議席

6.合同自由党Serene Riuam Thai 、選挙区0、比例区10、合計10議席

7.タイ国開発党ChartThai Pattana 、選挙区6、比例区4、合計10議席

8.新経済党New Economic党、選挙区0、比例区6、合計6議席

9.プラチャチャット党Prachachat 、選挙区6、比例区1、合計7議席

10.プアチャート党Puea Chat 、選挙区0、比例区5、合計5議席

11.民衆連合党Action Coalition for Thailand 選挙区1、比例区4、合計5議席

12.チャートパタナ党Chrat Pattana 選挙区1、比例区2、合計3議席

13.パラントンテーン党Palang Thongtin Thai 、選挙区0、比例区2、合計2議席

14.森林保護党Rak Puen Pa 選挙区0、比例区2、合計2議席

 

15から27の順位の政党はそれぞれ比例区の1議席が与えられた。

これによりプアタイ党、新未来党、同自由党、プラチャチャット党、経済党、プアチャート党の民政支持政党は245議席、軍事政権支持の連合軍は253議席をまとめたことになる。

また、5月10日にはプラユット首相が推薦した上院候補の250議席、国王の裁可を経て官報に公示された。(以後は、内閣発足まで想定されるスケジュール)

 

5月末までに下院と上院の議長が選任。

6月上旬には、上下両院の過半数を得た首相が選任(プラユット暫定政権が、民政後も継続)

6月下旬までに内閣が発足。(以上はバンコクポストによる)

 

以 上