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作成年月日:2019年6月

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タイ国情報 2019年5月

1.メーデーに見るタイ労働組合の動き

2.ロボットの技術をモノづくりにどう生かすか?

3.米中戦争とタイ市場の展開

4.タイにおける知的財産の考え方

5.総選挙と国王の戴冠式を終えて、タイ社会を考える



1.メーデーに見るタイ労働組合の動き

5/2のバンコクポスト紙によると、バンコク都内デンデーン地区の日タイ青少年競技場で開催された国際労働日の集まりにおいて、プラユット首相は、失業率が1%未満であることを強調された。この数字は、世界の労働市場でも上位4番目に入る数値である。3,800万人の労働者の内、90万人(0.23%)政府の経済政策が良くて、労働政策も将来の改善を目指している。その一例は、失業者向けの労働省が行っているキャンペーンである。教育省も職業教育に力を入れて、優秀な労働者には関連の学位を与えることもできる。首相は、現在の経済情勢から労働者にたえざる学習をすることを進めた。現在のデジタル化社会では、さらに技能や知識を引き上げることが必要だと説明された。

労働組合の団体からは10項目に`わたる生活の資質向上に関する要求がなされた。その一つは、退職後の年金生活についてである。「すべての退職者は毎月5,000バーツの年金を支払うべきである」。Mr.Tawi Techathirawat・タイ労働組合連合の会長は5,000バーツあれば、退職後の生活はできると述べた。

労働相のAdul Sangsingkeo将軍は既に要求のいくつかは実現している、と説明。例えば、労災事故などによる犠牲者への補償は手当済である。もし、身体の一部に障害が生じた場合は、社会保障基金から援助が与えられる。また、遺族にも援助がされる。社会保障基金のAnanchai Thaiphatthanachip事務局長は、身障者へ十分な手当てをしていると説明をされた。Adul将軍は前のイスラエル大使である

Domdet Bunnag氏や専門家に会って、イスラエルでおきた労働者の不当な扱いについて意見も聞かれた。24,000人のタイ人がイスラエルの農園で働いているが、2012年から2017年に172名の突然死があったことをDomdet前大使が説明をされた。

 

(写真は、労働相当時のAdul Sangsingkeo将軍、Bangkok Post紙のwebsiteから)

 

2.ロボットの技術をモノづくりにどう生かすか?

5/8-5/11にバンコク都内の国際展示場BITECで開催されたUBM社主催インターマック展示会、タイ政府投資委員会BOIとUBMなどが共催したSubcon Thailand会場を覗いてみた。

日本の電装機器業界の最大手であるD社はロボットを使って、コーヒーをサーブする様子を展示していた。確かに、引いた豆にお湯を注ぎ、コップに移す作業がロボットならではの動きであったが、その前後のコーヒー豆の準備、飲み干したコップの片づけと洗浄など、ロボットが働くための周辺作業を人間がやらないと、ロボットの作業効率が上がらないのである。

 

説明された技術者にその点を尋ねると、そもそも開発したロボットは流れ作業で、準備した部品を作業員に補給する作業をするためであった。その技術を、展示会の来場者に理解してもらう手法としてコーヒーの提供となったので、確かに前後の作業までもソフトを開発することができていなかった。

 

言い換えると、工場などの作業現場で困っている課題の解決の手法としてはロボットもあるが、一歩進めて、流れ全体を見直して、ロボットがふさわしい作業と、人間が行った方が良い作業の整理が必要である。 複雑な人間の作業をすべてロボットに置き換えるのはまだ先であると、思われる。


 

(写真は、BITECで開催されていたインターマック展のロボットコーヒー店)

3.米中戦争とタイ市場の影響

タイでは3/24の下院の総選挙の結果がようやく5/9に公表されたものの、新しい内閣の首相指名まで連立工作が遅れ、同時に米中戦争の影響から世界の貿易の伸びが低迷する懸念から、タイの経済成長(GDP)の見通しが下方修正されている。

 

例えば、タイ経済社会開発委員会(NESDC)は2019年の経済見通しを3.5-4.5%から3.3-3.8%に下方修正をした。

 

5/22のバンコクポスト紙によると、米中戦争でタイ経済はどのような影響を受けるか、次のように紹介をしている。

 

タイ-USA 輸出(2018年1-11月)2億32百万ドル(前年同期比7.29%増)

USA-タイ 輸入(同期間)2億31百万ドル(前年同期比8.3%増)

貿易収支 1.3百万ドルの赤字

米中戦争によるタイの利益 10億ドル (資料出所、貿易の政策、戦略部門)

タイから中国への輸出(2017年) 233億ドル

中国からタイへの輸入(同年)409億ドル (資料出所、中国にあるタイビジネス情報センター)

タイと中国の貿易額(2018年1-6月)43億ドル(前年同期比14%増)

タイにおける中国のインフラ整備額(同時期)270億ドル (上記の数字は、タイと中国の貿易投資、経済協力合同委員会の資料から、TMO翻訳)。

 

結論を言うと、米中戦争によりアセアンは中期的には利益を受ける。その理由は、中国から米国に輸出する際に高い関税が課税されるならば、アセアンからの輸出に変えるため、製造拠点を中国からアセアンに移す動きもある。例えば、5/21のバンコクポストではCPグループと上海汽車は、今なら中国とタイとの貿易協定で中国製の車は無税で輸入できるが、上海汽車はタイに電気自動車などの製造をタイに移管して、上海とタイで製造する車の棲み分けをする動きを紹介している。

 

物事の判断には、現実の経済の動きを理解して、次の手順として何をすれば合理的な判断になるか、見極めることであろう。


  

(写真は、タイで中国メーカーと合弁会社で製造された車を販売する店)

 

4.タイにおける知的財産の考え方

5/10にJETRO主催で「タイの知的財産について」のセミナーがあった。

内容は、次の通り。日本企業がタイで知財権を取得するために知っておくべきことを簡潔に学べる内容であった。

1) タイの知的財産の種類

2) 知的財産出願件数

3) 特許制度概要

4) 小特許制度概要

5) 意匠制度概要

6) 商標制度概要

7) 知的財産局(DIP)について

8) 知的財産局の政策概要

 

そこで、出された質問とその回答を紹介する。

 

Q1)知的財産の商業化としてIP Martが開設されているが、実際の活用はどの程度、成果を上げているのか? 例えば、日本でも大学などが所有する特許を公開するとして、行政から大きな支援も動きがあったが、あまり成果を上げられなかった。タイで成果を上げているとすれば、どのような特許なのか?

 

Q2)タイの特許申請から許可取得まで平均8.3年と長くかかり、特許となっても残存期間が短いという事例が多い。特に、医薬品の特許取得では18年もかかった事例がある。そこで、知財局は専門家を増員して申請から特許権の付与まで期間を平均13年から11.9年に改善など短縮化を考えることはありがたい。しかし、人数が増えることは質の低下を招いているのではないか?

 

Q3)特許の取得は重要ではあるが、日本企業からすれば、特許侵害で損害を受けている事案の解消が重要である。そのためには、日本のように知財専門の裁判制度も出来た。このように裁判官も知的所有権に関する知識をどのように学んでいるのか? 例えば、タイの知財局と日本の特許庁が交流をして、スタッフの質を高めるようにされているが、裁判官の知財に関する知識向上に日本政府は何か、働きかけを行っているのか?

 

Q4)サービスなどビジネスモデルを特許申請は可能なのか? また、日本語からタイ語、または英訳した場合の著作権が発生するのか?

 

Q5)日本でも問題になっているようにライセンス取得が会社なのか個人なのか?

 

これに関しての、回答は以下の通り。

 

A1)残念ながら、IP Martの成果が上がっているという事例は聞かない。

 

A2)最近の知財局に採用された方に研修をした事があるが、従来から勤務されている専門家よりも優秀な方を採用されている。もちろん、100人とも優秀とは言えないが、質は確実に上がっていると言える。どの企業も同じであるが、採用する場合の選定、勤務後も研修やインセンテイブをもって意欲的に仕事をする仕組みにすることが重要である。ちなみに、現在の知財局の局長は民間企業出身者である。

 

A3)日本の特許庁もタイ人の裁判官を日本に招いて、日本での知財裁判の在り方を学んでいただいている。

 

A4)ビジネスモデルは特許にならないケースが多い。しかし、白黒が決まらない灰色の分野でもあり、特許事務所とよく相談されることをお勧めする。著作権は、捜索した段階で権利が発生すると言われるので、翻訳などの2次的な著作権については研究が必要である。

 

A5)特にタイではライセンスは知財局に登録しないと権利が発生しない。また、特許による貢献度についても、使用者(会社側)帰属が原則(特許法11条)であるが、相当の対価を個人に与えているのかどうか、判断される。不服の場合は、個人が知財局に訴えて、知財局長が判断できる(特許法12条)となっている。

 

日系企業としては、まず、国内で特許を取る。その特許を所有していることをタイで説明して特許を取得するケースが多い。今後は、タイを舞台にアセアンで日系企業が活用する場合、知的財産をどのように有効に活用するか、日系企業は中国など他国との競争にどうすれば生き延びるか、考える時が来たと思われる。

 

(写真は、タサポーン知財局長 出展 https://www.ipthailand.go.th/en/executive.html


5.総選挙と国王の戴冠式を終えて、タイ社会を考える

タイでは1950年以来、69年ぶりに国王の戴冠式が行われた。チャクリ王朝10代目のワチラロンコン国王の戴冠式は5月4日から3日間にわたり、日本でも新聞やテレビ、ネットで報道されたため詳細は省くが、タイの文化を理解してもらう意味で、今回はタイ王室について紹介したい。

 

まず、アユタヤ王朝がビルマの攻撃で壊滅した後を受けて、復興に紛争したのが中華系のタークシン王です。タークシン王は、1767年から1782年までの短期の政権に終わります。在位15年間にラオスやカンボジアを回復した戦いの王でした。1782年王位についたのがチャオプラヤー・チャクリ将軍です。チャクリ王朝の初代、ラマ1世と呼ばれます。

 

ラマ5世であるチュラロンコン王時代(1868年から1910年)に、タイの近代化を推し進めますが、日本では明治天皇時代と重なるのです。その後のラマ7世時代に立憲革命がおこり、今の政治体制に近い制度になりました。その後も、前のプミポン国王が憲法の枠内で君主として治世を納め、国王の権威を高められたといってもいいでしょう。おくり名で大王という名称が送られるほどです。王位継承権は、ラマ9世の長男のワチラロンコーン皇太子と次女であるシリントーン王妃にありましたが、皇太子が継承されました。

 

タイには王室を批判する発言や報道などへの「不敬罪」があり、こうした点に気を付けなければなりません。

 

さて、ワチラロンコーン国王は、父親のプミポン前国王の崩御を受け、2016年12月に王位を継承されましたが、前国王の喪に服すとして戴冠式を遅らせていました。サプライズは4日の戴冠式に先立つ1日、タイ陸軍大将の肩書を持つスティダーさんと正式に結婚し、王妃とされたこと。4度目の結婚相手となったスティダー王妃はタイ国際航空の元客室乗務員でした。

 

 

国王にとって最大の課題は国内の統一でしょう。戴冠式では「常に人々の利益のために、公正さをもって統治をしていく」と宣言されました。

 

宗教的に少数派のイスラム教徒との関係や、かつて併合したタイ南部の治安、総選挙で示された国内の対立などの問題を踏まえ、ワチラロンコーン国王は政治への関与を強める姿勢が見受けられます。国民から絶大な敬愛を集めた前国王とは、何かと比較されることでしょう。

 

戴冠式を記念して全国の病院に資金を援助されたように、貧しい者、身分の低い者、ハンディキャップを持った者に、前国王のような精神的・財政的支援が行われると思われます。ワチラロンコーン国王の趣味のサイクリングは、高齢化社会に向かうタイで健康維持に役立つとして推奨されています。

 

最後に、2000年来のタイの政治的な混乱や対立の要因は何でしょうか? タイでは富めるものと、貧しいものの階層社会が政治的混乱の大きな要因だと言われますが、これを解決する方法があるのでしょうか。この問題はタイだけではありません。相続税がほとんどなく、富める者の子供はその富を受け継ぎます。富の分配に関しては様々な分析がありますが、解決のスタートは教育でしょう。バンコク都心と地方の教育の質の問題、進学率の差、職業別の所得格差など様々な課題が挙げられます。国王を中心とする民主主義を保持する中で、この格差解消は避けて通れない課題の一つだと思われます。

 

(写真は、ワチラロンコーン国王の戴冠式の様子。タイ政府広報局提供)

 

以 上


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