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タイ

作成年月日:2019年12月

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タイ国情報 2019年11月

1.タイ国の景気低迷とその対応(人員削減、コスト削減、周辺国への移転)

2.バンコクの再開発の2020年以降の動き

3.OVTA公開講座、11/19プラチンブリ県304工業団地と共催で開催

4.タイの労働市場、失業と転職、高度人材を募集するには

5.シンガポールとタイの港湾荷役を担うクレーン操作員の人材育成



1.タイ国の景気低迷とその対応(人員削減、コスト削減、周辺国への移転)

11月29日に発表されたタイ中央銀行の経済金融報告によると、10月のタイ経済は9月に続き更に減速をしている。例えば、輸出は前年同期比5.0%減。また、輸入も同じく9.2%減速。車販売、資本財輸入、国内建材売り上げなど民間投資も減速。例えば、自動車販売はマイナス6%、資本財輸入マイナス4.2%、国内の建材売上マイナス4.4%である。政府支出も2019.10-2020.9の予算案が国会でまだ審議中で決まらないため執行が遅れている。民間消費は9月から伸びは加速されたが、これは購買力を刺激する政府の経済刺激策の実施により、非耐久財とサービスの支出が伸びた。唯一、大きな伸びを見せているのは外国人観光客である。前年同期比で12.5%の増加である。中国、インド、台湾からの到着ビザ手数料免除が聞いている。

 

このような、背景から、タイ政府は11月27日に1兆4,400億バーツ(日本円で約5兆1,264億円)の景気刺激策を発表。国家予算か決まらないため政府系の銀行やFUNDなどの資金を活用したもの。例えば、1) 草の根経済を強くするという内容で、国家村落基金から71,742村に対して143億バーツの資金を供与。また、国家農業、農業協同組合銀行を通じて500億バーツの低利融資を用意。2) 2019-2020年のコメの収穫期にあわせた補助金の支給。20ライ以下の農地所有者に対して、作付け補助として1ライ当たり500バーツ。最大1農家に10,000バーツの補助金を支給。3) 住宅購入者に新築1戸当たりう50,000バーツの税金の還付として総額50億バーツの支出を決めた。しかし、国家予算の成立が遅いため、効果がどこまであるか、疑問視する意見もある。

 

日系企業向け支援策として、JETROや東京都の中小企業振興公社などは11月20日-11月23日開催の国際金属機械展METALEXにJAPANブースを設けるなどの取引拡大を支援している。在タイ日系企業向けには、同公社バンコク事務所が実施された「解雇セミナー」に参加者が相当あった。また、同じ公社主催の5周年記念講演会(11/18)で、タイプラス1としてカンボジア、ラオス、ミャンマーへタイから移転、転出する日系企業の特徴についての調査を踏まえた分性が実施した野村総研の報告があった。一方、タイにある台湾企業から、製造業のコスト削減についての売り込みも多い。


 

(写真左は、11/18セミナーから、写真右はMETALEX)

 

2.バンコクの再開発の2020年以降の動き

バンコクでは現政権下で公共交通の整備、拡張をタイ国の交通運輸部門の国際競争力を高める動きが続いている。例えば、2019年12月にはグリーンラインのシエーク・ラプラオ駅から5駅先のカセサート大学まで延伸されて、2020年1月2日までは無料で乗車ができる。

また、2020年1月にブルーラインのタオプーンからトンブリ地区のタープラ―まで延伸されて、初めてバンコクを一周する環状線が完成し、4月までは試験運行(無料)の予定がある。

さて、日本の国際協力機構(JICA)もタイ政府の要請を受けて、各種インフラの整備することによる影響調査などの支援と、JIBICなどはそのようなインフラ整備に低利資金の供給を図っている。11月7日にタイ国鉄SRT、JICAなど主催で今後のタイ国鉄の中央駅が現在のホランポンからバンスー駅に集約することから、駅周辺の整備についての説明会を開催した。

これからの都市づくり、オフィスの在り方、市民の居住地区など大きく変わって行く一部が紹介された。これ以外にも、バンコクの東西を通るラマ4世通りには大きなプロジェクトが2019年から2025年まで続々と開業する動きがある。 。


  

(写真左は、11/7の説明会の様子、右はバンコクの新しい公共交通延伸予定)


3.OVTA公開講座、11/19プラチンブリ県304工業団地と共催で開催

11月19日(金)当日の公開講座の概要を紹介する。

1)13:30-14.30 「デジタル時代の新しい法律と個人情報管理の注意点」

講師  ベーカー&マッケンジー弁護士事務所

 パートナー NY登録弁護士 阪本法子氏

 

阪本講師から、概要以下の説明があった。

(1)タイ個人情報保護法(PDPA)の概説

@ 個人データ、センシテイブ個人データ、A 域外適用、B プライバシー通知、C 同意、D データ主体の権利(個人の権利)、E 国外転送、F データ漏洩、G 罰則

日本でも個人情報保護法が施行されているが、タイのPDPAは欧州型に近い。従って、日本での導入事例がそのまま参考とならない場合もある点に注意すべきと、助言された。

 

(2)サイバーセキュリテイ法の概要

民間企業としての義務は、2つのシナリオに対しての備えが必要。 @ サイバー脅威が発生した場合 A重要インフラ組織に該当した場合(例えば、国家安全保障、重要公共サービス、銀・金融、情報技 術、情報通信、交通・エネルギー、公共サービス、公衆衛生などに係るサービスは細則が公布される)

 

(3)質疑応答

(質問1)個人の同意が必要な情報と、個人の同意が要らない情報の選別をどうすればよいのか?

(回答1)労働者保護法など人事労務管理に必要な、労働者個人の住所、連絡電話などは予め法律が要求される情報として、区別しておく。ただし、就職時に尋ねたような個人の宗教などは人事管理に必要なのか? 家族の構成などは、扶養家族手当など支給しているのであれば、必要事項となる。

(質問2)本日は、個別企業としての個人情報管理は理解できたが、各社とも100社から数千社の取引先がある。関係各社への情報管理をやらないと、情報が筒抜けになるのではないか?

(回答2)確かに、関連企業にも影響があるが、まずは個別企業として個人情報の管理をしっかりとすべきである。

(質問3)法律には罰則規定もあるが、日本のF社が顧客情報の漏洩で、補償金を支払ったように、企業としてどの程度のリスクがあると考えればよいのか? これは、企業のリスク対策として、または役員の個人賠償責任として、保険の対象になるのでしょうか?

(回答3)まだ罰則について云々することはできない。

(質問4(304工業団地の飯田顧問))質問は講師にというよりも、参加者にお尋ねしたい。かつて、会社からお金を借りた社員がいて、それに返済を求めるために自宅に連絡をしたが、連絡がつかなかった事例がある。現住所をアパート名だけにして、何号室か書いてない事例もある。参加者の皆様は、従業員全員の住所を把握されているのか? 遅刻、無断欠勤など、会社から通知しないと、労働法で3日以内の病気休暇は、医者の診断書もいらないなど、社員の管理体制の不備を指摘されることもありませんか?

(回答(参加者))(困っているという回答なし)

 

2)14.45-15.45「タイランド4.0時代の成功する人事労務管理」

        〜人材募集の課題と育成、評価と解雇まで〜

講師 Mr. Ittichai ,Partner & Lawyer, R & T Asia (THAILAND) LIMITED

 

聞き手として、OVTAアドバイザーの高木正雄が、対談形式で進めた。以下の項目に沿って、人事労務の課題を解説するとともに、法律的な観点は,Mr.Ittichaiから回答をいただいた。

1) 優秀なエンジニアを採用するコツ,

2) タイで新しい技術、構想力を高める人材育成法

3) IoT技術、ロボットの活用と技術革新

4) 日本で研修したエンジニアの転職防止法

5) 国境の壁を超えた労務管理と企業の発展

6) 目標達成に到着しない幹部を解雇するには

 

その後、参加者からもいくつかの質問を受けたので、質疑応答を紹介する。

 

(質問1)タイでは、社員の給与を下げられない、と聞いたが、それは事実でしょうか?

(回答1)弁護士;労働条件を引き下げる場合は、従業員の同意があれば、可能です。 (アドバイザー)2008年のリーマンショックの事例があります。ある日系企業で、受注が半減したので、社員全員を集めて、今から社員を半分にするか、社員はそのままでも給与を半分にしないと、会社は倒産する。社員を減らすのか、給与を半分にするのか、と当時の社長が聞かれた。社員は、数を減らさないで、給与を半分にしてでも頑張るといって、約半年間、給与を半分にした事例もあります。当時の社長にその後のことも聞きした。「当時、半年程度は受注が低迷したが、ようやく受注が回復して、1年後は給与を元に戻した。しかも、ボーナスも出せるほどになって、半減した給与分はすべて補填をしたよ」とのことであった。社員全員に、会社の現状の情報開示をされていたこと、日常の経営幹部と社員とのコミュニケーションが良かったことが、給与を半減できた事例でしょう。

 

(質問2)イエローカード、警告書を出す、タイミングをどう考えればよいのか?

(回答2(弁護士))従業員の遅刻が多い、など出来事があった都度、通告を出すべきです。

 

(質問3)解雇相当の社員は、警告書または解雇を通知したとしても、その書面に署名しようとしない。その場合は、どのような手続きが必要か?

(回答3(弁護士))本人が署名を拒否したとしても、本人の前で、人事と該当者の上司が同席して、解雇した、という事実を記載した文書を読み上げ、人事と上司のサインがあれば、本人がサインをしなくても、裁判の記録にはなる。

 

  

 (写真は、11/19の当日の様子)

 

4.タイの労働市場、失業と転職、高度人材を募集するには

タイ経済の2019年11月現在の主な経済指標を紹介する。

タイの労働市場では、失業率は0.9%である。また、平均家庭あたりの収入は26,371バーツである。経済成長率は第2四半期で2.3%、平均の家計支出は21,236バーツで、家計としては収支のバランスが取れている。しかし、家計債務は1件当たり167,913バーツあって、政府の消費刺激策、住宅購入の刺激策をとっても、銀行融資の審査段階では、すべて融資可能となるわけではない。

 

また、就労者の構成、労働人口を少し、見ておくと失業者の実態が見えてくる。 2015年の数字であるが、総人口は6,619万人。(参照:JCC所報2019年3月号、「2017年のタイでの外国人労働者の実態」) 15歳以上の人口は5,596万人(84.5%)、15歳未満は1,023万人(15.5%) その内、労働人口としては3,810万人(68.1%)あって、非労働人口は1,786万人(31.9%)この内訳は家事労働533万人、学生435万人。 労働人口も、2019年現在の労働力は3,763万人、季節労働者が12万人。 一般就業者が3,720万人、失業者が42万人。 失業率=失業者/労働力人口x100で計算される。 失業率は、2016年は1.0%、2017年は1.20%で、2019年10月現在は0.9%となっている。

 

ここからが本題である。労働省の労働市場実態調査によると、全労働者の需要は40万人を超えて、基礎労働の需要が13万人を超える。失業中の42万人でも事業者が必要とする労働者を確保できず、政府は近隣3か国から320万人(労働力の8.4%)を超えている。タイは、東南アジアの一部の国からの外国人労働者に対する依存度が高いのである。

 

雇用者数3,763万人の内、高齢労働者は約400万人(11%)、農産物価格が低迷しているため、10年間で100万人が農業部門からサービス部門に移動をした。現在、農業労働者1,100万人の内、200万人が自営農業に雇われている。農業用地は1億2,000万ライを超えているが、数十年にわたり変化がない。農業従事者の平均年齢は55歳を超えて、作業が集中する時期には代替の労働者が必要になっている。一部の作業は機械化ができても、タイ人に代わって外国人が91万人、農業分野で雇用せざるを得ない。

 

日系企業が多い、産業分野では600万人のタイ人が働いているが、過去10年間の増加はわずか。労働集約産業で外国人労働者の採用を必要とする工場や事業所は31%を超える。

 

今まで紹介したように、タイ政府のインフラ整備は続く中で、建設業では、タイ人は220万人が働いているが、これ以上のタイ人を建設業に回すには難しく、過去20年間で技能を要する外国人労働者が240万人雇用されており、今では53万人(タイ人労働者の24%)が外国人労働者である。

 

さらに、一番雇用数が多く、雇用者も増えているサービス部門では、1,700万人が雇用されている(全就業者の45%)。貨物輸送車や旅客輸送車の運転手など一部の職種では、(タイ国人の雇用を守るという趣旨から)外国人の就労ができない。このため、運輸サービス業界では10万人規模の労働者が不足している、と言われる。

 

ここで、むやみに外国人労働者を増やし続けるのか、タイの産業構造を変化させて、タイランド4.0時代にふさわしい、産業に生まれ変わるのかである。

 

たまたま、物流業界の機械化、省力化をすすめるマテリアル・ハンドリング業界から日系市場の攻め方、日本人幹部の募集について相談を受けた。有能な人材が必要な業界でもあるが、 募集に当たっては質と量をどう確保するかが、重要である。

 

我々は、タイ国の労働市場の大きな変化、動きを踏まえて、どのような人材が必要か、検討する時期に来たのではないのであろうか? 現在、技能実習制度で働くタイ人が、高度人材として、さらに長期に日本に滞在できる道が開かれたが、タイ政府からすれば、そのような人材こそ、早くタイに帰ってきてほしいという、ところであろうか。

 

   

 (写真は、タイのマテリアル・ハンドリング業界の1社)


5.シンガポールとタイの港湾荷役を担うクレーン操作員の人材教育

11/19-11/20とシンガポールの物流、運輸業界を訪問する機会があった。

 

その中で、シンガポールをはじめ世界の主要港で港湾管理を担うPSAコーポレーションを訪問した。貨物船からトラックに積み下ろし作業のクレーンを扱う技能者の現場での働きと後継者育成を紹介する。同時に、現地でも熟練作業員の作業能率を考えると、全自動ではなく、半自動もあり得る、という。しかし、熟練作業員の経験を引き継ぐことが容易ではないため徐々に全自動式の機械化導入も進めていると、説明があった。クレーン操作の熟練作業者の効率的な作業がまだ全自動をしたクレーンに負けない、という。機械化が即、効率化ではないシンガポールの港湾企業の人材育成は単純ではなく、クレーンの設置場所や搬送するコンテナの内容、仕向け地など柔軟な対応ができる熟練者の経験も十分活かしているのである。

 

翻って、タイでもバンコクの港も大きな改修計画を持っている。タイランド4.0時代を迎えて、現場の作業は全自動化なのか、と質問をすると、必ずしも全自動化によって効率が上がるのでもない。港に来る船舶の便数や、貨物船のサイズもあって、クレーンの設置は全自動と半自動の検討中と説明があった。

 

先日も、日系自動車部品で電動化を担うD社の現地責任者の意見を伺う機会があった。同社もロボットを製造して、自動車部品メーカーにも納入しているが、ロボット導入が即、効率化ではなく、現状の作業の流れを分析、判断して、それに相応しいロボットなどの導入の提案をされている。一人当たりGDPが6万ドルを超えるほど人件費が高いシンガポールでも、熟練技能者の経験が生きている現場があると改めて、認識をしたのである。

 

   

 (写真は、11/20に視察したシンガポールの港で貨物船からコンテナを積み下ろすクレーン作業)

 

以 上