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タイ

作成年月日:2020年1月

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タイ国情報 2019年12月

1.タイ経済を下支えするインフラ整備にも

2.先進国入りをする条件(最低賃金引き上げの背景)

3.倒産と雇用調整、解雇について

4.環境問題と省エネ、技術革新

5.自動車産業の展望と人材教育

6.(参考)タイ人が海外で働く国



1.タイ経済を下支えするインフラ整備にも

現政権は憲法本文にも入れたように長期の経済成長をはかるため新しい産業の育成とともに、各種インフラの整備を進めている。中でも、周辺国との接続性を考えたうえで、周辺国との陸上交通の便宜性を向上させるため周辺国の道路整備のためにタイから資金援助をしている。国内では、深海港の整備、空港のインフラ整備を重点に掲げている。また、バンコクをはじめ、主要都市でもトラムやモノレールなど公共交通の整備を図ってきた。12/17には、現在のスワンナプン空港、ドンムアン空港も2030年には収容能力を超える旅客需要が見込めることから、ウタパオ空港とは別に、バンコク西部のナコンパトム県に新しい空港を建設する構想を発表した。また、2020年には新しく格安航空LCCのタイへの乗り入れを許可するなどタイをシンガポールに次ぐ、アジアの空港のハブとする計画が出されてきた。

 

このように産業の高度化を謳うためには、例えば、航空機の整備、メンテナンスなど航空産業を支える人材の育成も大きな課題となっている。

 

 

(写真は、12/17タイ運輸省主催ナコンパトム空港セミナーから筆者撮影)

 

2.先進国入りをする条件(最低賃金引き上げの背景)

2020年1月からタイの最低賃金が引き上げられる。

2019年9月時点で、チャトモンコン労働大臣は連立政権の約束事で、最低賃金は引き上げるとうたった。しかし、46県の賃金委員会からは、引き上げの要請は中央賃金委員会(委員長:労働事務次官)には届いていない、と説明をされていた。労働大臣の説明では、その後、46県から20県余りは賃金の据え置きの意見も出たという。その理由は、最低賃金を引き上げると、事業所の閉鎖が多く、失業者が増える、という懸念がある。

 

現在の連立政権は2030年には国民所得も引き上げて先進国入りをすると説明をしてきた。

 

では、先進国とは何か。ウイキペヂアでは、先進国とは、高度な工業化が進み、技術水準ならびに生活水準も高い、経済発展が進んだ国のことを示す。反対に、後進国、発展途上国という言葉があるように、タイ政府は高度な工業化が進んだ国にしたい。また、生活水準を引き上げるには、未熟練工など最低賃金も引き上げは必須の事項でもある。

 

現実的には、2019年はタイ経済は苦戦をしてきた。タイ経済を下支えする自動車産業が半年ほど生産台数の前年割れが続いている。来年も悲観する声も多く減速基調である。タイ政府はGDPが年初予想の3%台を超えるという予測が外れて、11月26日の閣議で新たに総額1,440億バーツ(約5,126億円)の経済刺激策を講じて、経済成長を2.8%の水準まで引き上げたいという。

 

タイは、先進国入りをするため今は苦しみの時期なのか、どうか、不明であるが、タイの賃金水準が引き上げられるのは、確定をしている。


  

(図表は、バンコクポスト紙 2019.12.6号、チャトモンコン労働大臣(右)は2019.9.24号から)


3.倒産と雇用調整、解雇について

12/20に日本政府、法務省民事局とタイ政府法務省法執行局および在タイ日本大使館の共催でタイの倒産法に関するセミナーがあった。内容はタイ国における事業関連法制のうち,特に倒産法制(事業再生,破産制度)に焦点を当てて,その理解を深めるため、日本とタイの倒産及び事業更生に関係する法制当局、破産管財人も講師となり解説をいただいた。

 

さて、今回は倒産に関係して雇用の問題は同セミナーでは取り上げられなかったので、現状のタイでの事業所の閉鎖と失業者、および新規開業と雇用創出の関係を見ておくと次の通り。

 

12/28のバンコクポストによると労働省労働者保護福祉局のアピンヤ女史は最近の失業者の増加を次のように説明をしている。2018年は174,082人の解雇者があった。その内、27,859人は休職となったが、126,384人は失職した。19,839人は契約社員で、契約満了共に失業をしている。12月だけでもチョンブリ県のセイシン社、アユタヤ県のミズノプラステイック社、サムットサコン県のポンパラコダンラバー社が廃業した。

 

もちろん東部経済回廊で新しく事業を起こす企業、がある。しかし、中国系の企業ではローカル社員を採用するには少ない。大半が、工場の機械化を進めている、からである。タイの労働組合の一つであるタイ労働者調和委員会(TLRC)のチャリー会長は、新規設立企業が雇用を拡大するという確とした情報はない、という。労働者が失業するという情報が多い、のが現実だという。

 

  

 (写真は、12/20の倒産セミナーの様子)

 

4.環境問題と省エネ、技術革新

12/13に日系のH水産物加工会社に新しく導入された省エネの機器を見る機会があり、また12/16に同じく日系でS社の幹部と会って、工場の省エネ対策への取り組みについて意見交換を行った。

 

まず、H 社に導入された機器は、中国ではサーバーを設置する会社に入れた設備であるが、工場内の作業場の空調設備としては初めてタイに導入する機器であった。

 

設備業者もタイでの事例を作るため、努力をしたが、H社の幹部はなぜん、導入する判断をしたのか、お聞きした。

 

前の段階がある。 従来の機器が長く使用していたため、更新時期にあったこと。フロンを使っている機器で、電力消費量が高く、省エネタイプを探していたこと。たまたま、冷凍機器の更新を請け負ったB社に空調機器についても相談すると、中国での事例があるので、そこで実際に省エネをされた実績が紹介された。

 

最初の説明は、日本であって、本社の財務担当の役員も同席して説明を行い、機種のコンパクト化と省エネにつき説明をした点に理解を得たこと。その後、本社の役員の交代があって、財務担当役員が社長に昇格された。子会社の役員から機器更新の進言を受けた際も、すでに社長就任前に、概要を理解していたため、判断に迷いが無かったことが大きい。

 

時期も、10月から更新を初めて、11月には、古い空調機器を撤去して12月には新設工事を終えなければ、工場内の作業が進まない。たまたま、受注のピークも終えて、端境期になったので、設備更新は順調に進んだ。運転開始まで、手間とらせたが、効果は出ている。 何よりも新しい設備、技術の導入には、勇気がいる。

 

2020年にはS社との協議が始まるが、設備更新には新しい技術を取り要られれるのか?楽しみでもある。それには、技術導入への意欲がどれだけあるのか、技術者の資格要件や人柄も含めた設備業者の選定も重要である。

 

   

 (写真は、省エネ機器を導入されたH社)


5.自動車産業の展望と人材教育

自動車業界は世界中で大きな変革の時を迎え、電動化の波が欧米や中国を中心にその速度を早めています。こうした中、タイにおいても今年11 月の電気自動車(EV)の新規登録台数が、過去最高を記録したとの報道もあり、自動車関連サプライヤーを中心に今後の動向に注目が集まっています。

 

タイ経済の成長を支えてきた主要産業の一つである自動車産業は、トヨタのように50年以上前からタイに進出し、輸入代替から国産化に向けてサプライヤーの育成が進められてきました。そのおかげで、日系の主要メーカーはすべてタイに工場を設け、欧米企業も主要なプレイヤーはタイに進出しています。

 

タイ政府は、ピックアップカー、エコカーとともに第3の柱として電気自動車のアジアの拠点にすべく様々な優遇策を講じてきました。

 

そこで、新しい自動車産業を担う人材をどう育成するのか、課題になっています。今後の人材育成は、自動車の電動化を中心にCASE(Connected(コネクテッド)、Autonomous(自動運転)、Shared(カーシェアリング)、Electric(電気自動車)など業界のいわゆるCASEについて、ITも活用して行ける人材をどう育てるのか、様々な試みがなされています。

 

12/9にアジア工科大学(Asia Institute of Technology、AIT)と日本政府との提携50周年の式典がありました。そこで、優秀な学生を育てるための教授員、設備とともに、アジア各国から優秀な学生を集めるための様々な試みを伺いました。例えば、奨学金制度です。水関連のK社では、関連学科の学生を毎年複数名に奨学金を供与しています。卒業後は同社に入社する義務はないのですが、多くの学生は帰国して官庁に勤務するとともに、各国に展開する同社の関連会社にも就職をしてくれる、との説明も受けました。タイ国内の各大学の卒業生、中でも優秀な学生を確保する手法として、効果がある方法の一つでもあると思えます。

 

   

 (写真は、11/20シンガポール植物園で運転手がいない車を体験した、筆者撮影)

 

6.(参考)タイ人が海外で働く国

チャトモンコン労働大臣は労働省としては、海外で働くタイ人の数を10万人と推計している。

 

1/3付のバンコクポスト紙によると労働省が、海外に送り出しをする人数の内訳は、台湾34,100人、韓国12,200人、日本7,300人、イスラエル5,000人、およびその他の国である。

 

労働大臣は「これらの国に行くタイ人が多いのは、よく知られた国というだけではなく、給与と現地の生活条件が良いからである。また、それぞれ経済が発展した国でもあり、技能訓練もしっかりとしている。また、現地で働くことにより未熟練タイ人が熟練工となり、また専門家になってタイ人自身の労働効率が良くなる」としている。最近、労働省にマカオから70名の求人があった。それらは、カジノで働く労働者で、ホテルやカジノの仕事をするため、月40,000バーツの労働条件の提示があった。スチャート雇用局長はこの仕事内容と労働条件に納得して、労働省としては1月末まで雇用局のWebsiteで応募を受け付けている。

 

一方、日本での外国人の研修生については、どのような受け止め方をされているのであろうか。アセアン+6か国の経済連携(RCEP)が進めば、ますます域内の人の交流が高まると思われる。その中で、タイから行きたいという国に、10年後も日本が残るのか、大きな宿題を負っているようにも感じるのである。(2020.1.6)

 

   

 (写真は、タイ労働省)

 

以 上