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ドイツ

作成年月日:2008年8月30日

雇用労働事情

ドイツの雇用労働市場の状況については、連邦労働社会省の雇用局が国レベルから州及び地方レベルに至るまで幅広く調査を行っており、その結果は統計資料としてまとめられ、<www.arbeitsagentur.de> で公表されている。また、それに加えて同局の雇用調査研究所から入手可能である。さらに連邦統計局のウェブサイト <www.destatis.de> では、国勢調査のデータや国内雇用関係の情報を掲載している。ここでは、連邦雇用局、連邦労働社会省、連邦統計局、雇用調査研究所の情報を基にして報告書を作成している。

2.1 労働市場の状況

2.1.1 過去3年間の労働力人口、就業者数、失業者数及び失業率

2007年の国民総生産 (GDP) の前年比2.5%増加という好調な経済成長とは対照的に、2008年は景気が減速している。現時点の景気指標では経済的活力が弱まることを示している。ここ数カ月、工業生産の上昇が減速してきており、新規受注数、景況感指数等の先行指数は停滞を示している。労働市場は依然として上昇を見せているが以前ほどではない。ここ数カ月、社会保障対象の求人及び就業者数が増加しており、失業者数が減少している。前年と比べて就業者数が大きく増加していて、失業者数は激減している。失業者数の減少の主な原因は、継続している好調な景気状況の影響に加えて、労働市場の改革及び労働人口の減少であろう。
連邦統計局及び連邦雇用局の概算では、2008年の被雇用者数は年間平均で約3,998万人であり、2007年と比べて25万人の増加である。また、2008年の社会保障対象の就業者数は2007年と比べて21万人増加し、年間平均で約2,713万人となるが、無給家族労働者を含む自営業者は5,000人の増加であった。
2007年の好況を受けて2008年に入っても失業率は減少し続けており、2008年6月現在失業者数は320万人の水準まで減少(14.4%の減少)している。

※出典:
雇用調査研究所 (IAB), IAB-Kurzbericht 3/2008, <http://www.iab.de/doku> accessed on 30 August 2008

表2-1 労働市場の主要指標(2008年6月)
項 目 2008年6月 2007年6月 増減数 前年比
全国被雇用者総数(人) 40,200,000 39,640,000 - +0.98%
社会保険加入被雇用者数(人) 28,130,000 27,340,000 - +0.97%
失業率        
 民間失業率 7.5% 8.8% - -
 民間非自営業者失業率 8.5% 9.9% - -
 - 男性 8.2% 9.5% - -
 - 女性 8.7% 10.2% - -
 - 25歳以下 6.4% 7.7% - -
 - 外国保有者 17.8% 20.0% - -
失業者総数(人) 3,159,811 - -527,308 △14.4%
 - 男性(労働人口の50.5%) 1,595,005 - -245,751 △13.4%
 - 女性(労働人口の49.5%) 1,564,794 - -281,537 △15.3%
 - 25歳以下(労働人口の9.6%) 304,022 - -62,275 △17.1%
 - 55歳以上(労働人口の13.3%) 419,590 - -57,268 △12.1%
※出典:
連邦雇用局 (BA), “The Labour market in June/July 2008” <http://www.pub.arbeitsamt.de/hst/services/statistik> accessed on 30 August 2008.

【労働の需要】
現時点では経済指数は経済活力の減少を示しているものの、労働の需要はわずかに上昇した。2008年7月に報告された求人数は、季節調整後で9,000件上昇した。その求人数の中で89%は即時決定を要していた。しかし2007年と比較すると、公表求人数は年間61,000件 (9%) 減少しており、労働需要の上昇傾向が終わったことを示唆している。それにもかかわらず、多くの企業が依然としてインターネットを通して求人広告を出していることから想定できるように、株式市場の混乱と大手企業の雇用削減は労働需要に多少の影響を及ぼしている可能性がある。インターネットに掲載される求人広告は主に高い技能を持った労働者向けの求人に使われるため、雇用者は未だに新規に被雇用者を雇うことに大変前向きであることが分かる。

※出典:
連邦雇用局 (BA) “The Labour market in July 2008” <http://www.Pub.arbeitsamt.de/hst/services/statistik/
detail/a.html
> accessed on 30 August 2008.

2.1.2 業種別労働者数

連邦雇用局は、今後雇用の伸びが見込まれているのはサービス産業であると予測している。特に、医療サービス、ビジネスサービス等では数年間のうちに急速な伸びが予測される。運輸、物流事業も同様に成長していくと思われるが、製造業及び建設業においては引き続き雇用は減少傾向が続く。

表2-2 産業別の労働者数(2008年3月)(単位:人)
産 業 労働者数
農業、狩猟、林業、漁業 294,900
鉱山業、採石業 100,600
製造業 6,799,000
電気、ガス、水道 263,300
建設業 1,483,000
卸売業、小売業;自動車、オートバイ、個人・家庭用品の修理 4,003,400
ホテル、レストラン 762,600
交通・輸送、保管、通信事業 1,581,700
金融仲介業 978,000
不動産、賃貸、ビジネス活動 3,759,000
行政、防衛、強制加入社会保険、ドイツ国外団体及び法人 1,668,300
教育 1,015,200
医療、福祉 3,257,600
その他の地域奉仕サービス、社会サービス、 個人・世帯向けサービス 1,252,800
その他 11,400
合 計 27,224,000
※注:
国際標準産業区分 (ISIC-Third Revision) 使用
※出典:
連邦雇用局 (BA) “The Labour market in July 2008” <http://www.Pub.arbeitsamt.de/hst/services/statistik/
detail/a.html
> accessed on 30 August 2008.

2.1.3 新規学卒者の就職状況

新規学卒者の雇用状況に影響を与える要因はいくつかあるが、まず経済的状況が挙げられる。この点で2006年のドイツ経済は好調であった。ドイツは多様性のある経済構造を持つ多くの地域から構成されるため、新規学卒者を取り巻く状況も各地域によって大きく異なり、例えば、ハイテク産業が盛んな南ドイツではここ数年間、雇用状況が落ち込んでいたが、近年再び回復している。
ドイツでは、中等学校卒業者は女性の方が男性より多い傾向があり、これに対し一般の大学、応用科学大学では、学位を取得する学生には男性が多い。中等学校卒業者でも、女性より男性の方が就職先の選択肢が多いという面で恵まれている。中等学校を卒業した男性の多くは3年間の見習い訓練制度に参加し、修了後に就職する。もちろん、女性も同様に見習い訓練制度へ参加することはできるが、実際に参加する割合は少ない。中等学校を卒業後に職業訓練学校等に参加しない女性は、レストラン、小売店等の低賃金のサービス業の職に就くことが多い。
雇用機会は、特に教育レベル、性別及び年齢に関係しており、一般に職業訓練資格及び大学卒業資格を持つものは、低学歴のものと比較すると失業する可能性ははるかに低い。経済協力開発機構 (OECD) が2005年に行った調査から分かるように、ドイツでは教育と雇用は密接に関連している。2005年に大卒者の失業率は非熟練者の失業率より15%低かった。表2-3は、ドイツにおける2005年の学歴別失業率を示しており、このような状況は1991年から明らかになってきている。

表2-3 ドイツの学歴別失業率(1991〜2005年) (単位:%)
中等学校卒業レベル以下
(ISCED※1レベル0~2)
高等学校卒業レベル
(ISCEDレベル2~3)
大学卒業レベル
(ISCEDレベル5~6)
2005年 20.2 11.0 5.5
2003年 18.0 10.2 5.2
1999年 15.6 8.6 4.9
1995年 13.3 7.9 4.9
1991年 7.4 4.7 3.2
※1:
ISCED(International Standard Certificate of Education):ユネスコ国際標準教育基準
※出典:
Zeit online <http://www.zeit.de/2007/40/Tabelle-2> accessed on 30 August 2008.

ドイツにおける労働市場の政策の主たる目的は、長期的失業問題への取り組み、失業の予防措置及び非熟練労働者を労働市場に融和させることである。連邦政府は職業資格のない若者の支援を特に重視している。一例として、2007年10月にかつての特別企画であった「若者の入門訓練 (EQJ:Einstiegsqualifizierung Jugendlicher) 」は、「社会法 (SGB:Sozialgesetzbuch) 第3巻」に組み込まれ、その訓練のための資金は雇用者に給付されるようになった。以前の若者の入門訓練の企画と違い、公的機関も給付されるようになり、年齢制限もない。さらに、訓練助成金に加えて職業訓練を受けていない者を長期的に雇用する雇用者には賃金費用の助成金が導入された。雇用者はその助成金の一部を被雇用者の訓練に充てなければならない。
労働市場へのアクセスが限られ、就職に対し複数の障壁のある長期的失業者の就職の見込みを良くするための対策も取られている。当該失業者への支援がない場合、労働市場において雇用機会を見出すことは困難である。「社会法第2巻 (SGB II) 」に新しく規定された「就職支援給付」では、新規契約の場合は初めに24カ月の短期的支援給付が支払われ、それ以降は最大賃金費用の75%の永久給付に加えて、訓練のための助成金等が支払われる。現在、連邦雇用局の「企業勤務非熟練・高齢労働者向け継続的職業教育 (WeGebAU) 」の特別企画では250人以下の従業員を持つ企業で働く45歳以上の高齢労働者及び非熟練労働者の訓練給付金が支払われている。

※出典:
ReferNet/BIBB (Ed), National ReferNet report on progress in the policy areas for Vocational Education and Training. Draft Version 2008, <http://www.bibb.de> accessed on 30 August 2008.

ドイツでは学校中退者の割合が高く、特に少数民族等に多いため、社会問題となっている。高校卒業者は一般的に豊かに暮らせるが、学校中退者は通常、低賃金の職に就く傾向がある。連邦教育研究省 (BMBF) によるドイツの教育年次レポートにはここ数年の学校中退率が次のように発表された。

  • 学校中退率は1990年以降ほとんど変わらず、約15%である。
  • 貧困層の子どもの学校中退者数は、富裕層の子どもに比べ6倍も多い。
  • 退学者は非常に低賃金の職に就くことが多く、時に違法行為を行う。
  • 一度学校を辞めても、中にはまた学校へ戻り、卒業資格を取得する者もいる。これは将来、職を見つけるためには、彼らにとって必要不可欠である。

ドイツは学校中退者を減らすために、さらに多大な努力を必要としている。若年者、特に男性の成功率を高める努力なくしては、社会問題は継続するであろう。

※出典:
連邦教育研究省 (BMBF) 、Basic and Structural Data 2004 ff <http://www.bmbf.bund.de> accessed on 30 August 2008.

2.1.4 自発的離職者の現状

ドイツにおける自発的離職の理由はさまざまであるが、最も多いのが早期退職である。その主な理由としては、以下の2つがある。

  • 50%の企業には50歳以上の被雇用者がいない。
  • 55歳以上の55%が就職していない。

政府が高年齢者の雇用機会を改善するために多くの政策を実施したことで、1998年4月~2002年4月までに55歳以上の失業率が36%減少した。このような改善政策のひとつに州と労使団体による「高年齢者パートタイム制度」がある。この制度は1996年に制定され、1999年及び2000年に改定された「高年齢者パートタイム雇用法」に基づくもので、55歳以上の被雇用者は雇用者と協定を結ぶことにより退職するまでパートタイムで働くことができる。このような制度を実施するにあたっての条件は、団体協約締結等がある。上記制度により55歳以上の労働者がパートタイム業務に移る代わりに、企業が失業者や訓練修了生を雇用した場合、連邦雇用局はパートタイム労働者の賃金の一部を負担する。
およそ10万人が団体協約で受ける待遇は、高年齢者パートタイム雇用法の待遇よりも手厚くなっている。法律ではパートタイム労働者はフルタイム賃金の70%及び年金拠出金の90%を受けるが、ほとんどの団体協約ではフルタイム賃金の85%以上で、さらに一部では年金拠出金の全額を受けることができる。しかし、実際のところはこのような高年齢パートタイム待遇を利用している者は数少ない。ほとんどの場合、労働者が最初の一定期間フルタイムで働き、そのあとの期間は出勤しない。この場合、労働時間を減らしているというよりも年金受給年齢を下げているということになる。
近年のドイツの政策はEU加盟国によるリスボン戦略を受けて変化している。リスボン戦略では2010年までに55~64歳の雇用率を50%に改善することを目標とし、ドイツでは「2005~08年国家改革プログラム」の中で、リスボン戦略の2010年の目標を取り入れることにした。連邦政府は高年齢労働者を労働市場に融和させるように取り組みを強めており、2005年10月に「50プラスイニシアチブ」という2年間計画を始めた。2008年1月1日から第2期「50プラスイニシアチブ」が始まり、2010年末まで継続される予定である。この計画の目的は、高年齢者の雇用価値を高め、雇用機会を増やすことである。高年齢者の賃金補給制度 (Kombilohn) の拡張といくつかの調整により高年齢者の労働市場への参加の見通しを改善することができる。賃金補給制度では高年齢者がより少ない賃金の仕事に移る場合、その賃金の差が補われ、雇用者には融和補助金が支払われ、CVET(Continuing Vocational Education and Training:継続方式職業教育訓練)の援助も受けられる。雇用者がより多くの高年齢者を雇用するように地域法律に従いながら、52歳以上の被雇用者との有期契約を永続的により締結しやすくした。現在ドイツには合計194の共同体 (Arbeitsgemeinschaften, ARGEn) 及び地方自治体が参加する62の地域計画が援助されている。2006年と2007年に雇用協定の援助のために連邦政府が2億5,000万ユーロを出資した。

※出典:
連邦労働社会省 <http://www.bmas.de> accessed on 30 August 2008.
ReferNet/ BIBB 2008, National ReferNet report on progress in the policy areas for Vocational Education and Training, Draft Version <http://www.bibb.de> accessed on 30 August 2008.

2.1.5 職種別技能労働者数

技能別のデータはないが、社会保険加入者を対象とした職種別労働者数を表2-4に示す。

表2-4 職種別労働者数(社会保険加入者)(2007年6月30日現在)
業 種 総 数 男 性 女 性
農水畜産業 396,414 280,827 115,587
鉱業 32,589 31,921 668
製造業
うち 金属加工業者
   組立工、機械工
   電気技師
   食品関連
   建築関連
7,279,225
524,015
1,775,876
644,519
704,748
610,887
6,084,508
490,329
1,683,269
606,268
401,383
604,000
1,194,717
33,686
92,607
38,251
303,365
6,887
工業 1,848,801 1,528,391 320,410
サ―ビス業
うち 営業販売員
   運輸・運送関連
   公務員、事務職
   健康関連
16,970,859
2,113,231
2,004,744
5,824,395
1,983,366
6,648,509
747,888
1,662,589
2,115,992
310,876
10,322,350
1,365,343
342,155
3,708,403
1,672,490
その他 326,678 195,686 130,992
合計 26,854,566 14,769,842 12,084,724
※注:
Classification of Occupations, Federal Statistical Office, Edition 1988使用
※出典:
Federal Statistical Office,“Employment Structural data on employees subject to social insurance contributions at the place of their employment on 30 June 2007”,
<http://www.destatis.de/jetspeed/portal/cms/Sites/
destatis/Internet/EN/Content/Statistics/Arbeitsmarkt/
Sozialversicherungspflichtige/Tabellen/Content75/
Berufsbereiche,templateId=renderPrint.psml
>, accessed on 30 August, 2008.

2.2 賃金

2.2.1 法定最低賃金の最近の動向

ドイツはほかのEU諸国と違って2007年末までは最低賃金法は施行されていなかった。しかし最低賃金に関する議論がここ2年続いたため、政府には圧力がかかっていた。2008年6月に「労働者派遣法」 (A Ent G) の改正案が通過し、その法律では被雇用者の50%以下が協約で決められた賃金を支払われている分野に最低賃金制度を導入することが許可されている。ドイツでは法定最低賃金の規定は、建築工事、屋根工事、解体工事、ペンキ・ニス塗装及び郵便配達の分野だけに適用されている。全国の屋根工事業界の被雇用者の最低賃金は、およそ10ユーロ※1である。東ドイツではそれ以外の分野の最低賃金は、非熟練ペンキ・ニス塗装工の7.15ユーロから建築工事の非熟練労働者の8.90ユーロまでである。一方、西ドイツではペンキ・ニス塗装工の7.85ユーロから建築工事の10.30ユーロまでである。熟練労働者の場合、ペンキ・ニス塗装工は東ドイツでは9.37ユーロで、西ドイツでは10.73ユーロであり、建築工事は東ドイツでは9.80ユーロで、西ドイツでは12.40ユーロである。現在の職種別最低賃金は表2-5のとおりである。

表2-5 職種別最低賃金(2008年4月)(単位:ユーロ)
職種 西ドイツ、ベルリン 東ドイツ
時間給
建築工事 10.40~12.50 9.00~9.80
ペンキ・ニス塗装 8.05~11.05 7.50~9.65
電気技師 9.40 7.90
室内洗浄 8.15 6.58
設備管理 10.80 8.17
郵便配達 9.80 9.00
屋根工事 10.20 10.20
解体工事 11.96 10.16
※1:
1ユーロ=159.65円(2008年8月29日現在)
※出典:
連邦統計局 “最低賃金” <http://www.destatis.de/jetspeed/portal/cms/Sites/destatis/
Internet/EN/Content/Statistics/VerdiensteArbeitskosten/
Tarifverdienste/Mindestloehne/Tabellen/Content50/
TariflohneDeutschland,templateId=renderPrint.psml
> accessed on 30 August 2008.
Posting of Workers: Information on the implementation of the Act on the posting of workers (AEntG) <http://www.zoll.de/english_version/index.html> accessed on 30 August 2008.

2.2.2 賃金もしくは給与の実態調査結果

上述のような最低賃金以外、ほとんどの被雇用者の賃金は依然として雇用者及び雇用者連盟と労働組合の間の交渉で取り決められる。こうして締結された団体協約の結果の詳細な情報は次より入手可能である。

  • WSIのウェブサイト <www.tarifvertrag.de>
  • 団体協約に関する政策等を分析した報告書「WSI-Tarifhandbuch」

1995~2005年のドイツ実質賃金の伸び率は1~2%と非常に低く、EU拡大前の加盟国15カ国が平均7.4%であったのに比べ、EU加盟国の中では最低であった。2006年の第1四半期には賃金が下がり、夏のストライキで状況は変わったが、全体として賃金状況は低調に終わっている。2006年後半に団体協約で合意された非熟練労働者の最低賃金支払額は時給5ユーロであった。
チューリンゲン州では警備員の賃金は4.38ユーロと合意された。ノルトライン・ヴェストファーレン州ではホテル・レストラン業の最低賃金は約5.25ユーロであった。その他の州と地域の団体協約で合意された最低賃金支払額も法定最低賃金として提案されている7.50ユーロを下回っている。例として、ヘッセン州のビル警備員の賃金は夜間勤務の場合は5.78ユーロで、昼間勤務の場合は6.72ユーロである。ザクセン州のホテル・レストラン業での最低賃金は6.29ユーロである。小売業の非熟練労働者の賃金は、ニーダーザクセン州では6.56ユーロで、メックレンブルク・フォアポメルン州では7.06ユーロである。ザクセン州では熟練美容師の入社1年目の賃金は3.82ユーロで、最大10人の部下を管理する美容院の店長は5.96ユーロである。ブレーメン市では熟練美容師の入社1年目の最低賃金は6.28ユーロである。ザクセン州では熟練料理人及びホテル係員の賃金は7.47ユーロであり、ノルトライン・ヴェストファーレン州ではウェイター及びウェイトレスの賃金は8.44ユーロである。

表2-6 業種別フルタイム労働者の収入(2007年)
産 業 週労働時間 時間当たり 月当たり
時間 ユーロ
生産産業 38.5 20.91 3,497
鋼業、採石業 40.4 19.82 3,482
製造業 38.4 21.53 3,592
電力、ガス、水道 38.1 26.83 4,444
建設業 39.1 15.88 2,696
サービス業 39.1 19.15 3,251
小売・卸売業 39.1 18.29 3,106
ホテル・レストラン 39.3 11.44 1,954
輸送、倉庫、通信業 40.1 16.76 2,923
クレジット・保険業 38.5 27.98 4,685
不動産業 38.8 20.21 3,410
教育 38.6 19.28 3,232
医療 38.9 18.61 3,131
その他の公共サービス 39.2 18.49 3,146
※出典:
連邦統計局 <http://www.destatis.de/jetspeed/portal/cms/Sites/destatis/
Internet/EN/Content/Statistics/VerdiensteArbeitskosten/
Bruttoverdienste/Tabellen/Tabellenuebersicht,templateId
=renderPrint.psml
> accessed on 30 August 2008.

産業とサービス業におけるフルタイム労働者の2008年第1四半期の月当たり平均総収入は3,057ユーロであり、2007年第1四半期より2.5%上昇した。表2-7を分析すると、西ドイツのフルタイム被雇用者の月当たり平均総収入は3,174ユーロで、東ドイツの被雇用者の2,320ユーロと比べ36%上回っている。男性の月当たり平均総収入は3,259ユーロで、女性の2,570ユーロと比べると大きく上回っている。

表2-7 2008年第1四半期のフルタイム被雇用者の収入
項目 総収入
(ボーナスなし)
前年比
ユーロ
ドイツ全国 3,057 2.5
西ドイツ 3,174 2.5
東ドイツ 2,320 3.1
男 性 3,259 2.6
女 性 2,570 2.3
※出典:
連邦統計局 < http://www.destatis.de/jetspeed/portal/cms/Sites/destatis/
Internet/EN/ Content/Statistics/VerdiensteArbeitskosten/Bruttoverdienste/
Tabellen/Tabellenuebersicht,templateId=renderPrint.psml
> accessed on 30 August 2008.

2.3 労働時間の現状

2007年の団体協約による交渉で決められた週当たりの平均労働時間は、フルタイム労働者で約38.3時間であり、2008年の第1四半期も同じく約38.3時間である。しかし、業種ごとで独自に決められるため、産業及び職種によって若干の違いがある。また、1日又は週当たりに残業時間も含めてどれだけの労働時間を割り当てるか等も労使の合意によって決められる。
ドイツでは従来どおりの週38~40時間が通常の労働時間とされているが、多くの雇用主が柔軟な勤務スケジュールを認めており、労働者は自由に始業及び終業時間を決めることができる。ただし、一定期間内に決められた時間数は働かなくてはならず、1日のうちでも「コアタイム」とされる時間は職場で仕事をしていなくてはならない。こうしたフレックスタイム制度、シフト制、土曜勤務及び残業等についても、労使の取り決めにより決定される事項に含まれる。
ドイツの年間の総労働時間数は2006年から上昇傾向にある。前述のとおり、2008年のフルタイム労働者の週当たりの平均労働時間は約38.3時間である。一方、パートタイム労働者の週当たりの平均労働時間は14.38時間である。また、病気休暇率は3.2%に落ちている。2008年始めの経済情勢が悪化するに伴い、パートタイム労働者数は2008年に年間平均9万3,300人まで上昇すると推定されている。
パートタイム労働は、仕事量の変化に対し雇用主が迅速に対処できる労働形態であり、競争力を上げるためにもパートタイム労働の必要性はさらに増加している。また、家族、友人、趣味、ボランティア活動等の社会貢献等により多くの時間を使いたいと考える労働者も多く、雇用主がパートタイム労働を採用することにより、労働者を満足させるだけでなく、労働意欲の向上にも役立てることができる。より高い労働意欲は、生産性向上、仕事の質の向上につながるため、企業にも利点があると考えられる。
パートタイム労働者は2008年に1.5%増加した。これは“ミニジョブ”※2と呼ばれるパートタイム労働及び“1ユーロジョブ”※3という社会関係の仕事の増加が関係している。現在、全就業者の3分の1 (33.8%) がパートタイムで働いている。

※2:
2003年にドイツで施行されたMINIJOB制度では、月収400ユーロ、週の労働時間15時間以内であれば税金と社会保険料の支払いが免除される。
※3:
2005年に始まった政策で、失業保険給付者に与えられる公共性の高い仕事。通常、失業保険給付額に1ユーロを加えて支払われるため、こう呼ばれている。

表2-8 平均労働時間数(2005~08年)
項 目 単位 2005年 2006年 2007年 2008年※注
総労働者数 千人 34,490 34,696 35,291 35,530
パートタイム労働者 % 32.6 33.3 33.5 33.8
公式休暇日数 30.9 30.9 30,9 30.9
有効労働日 213.6 211.9 211,3 213.8
フルタイム標準週労働時間 時間 38.21 38.28 38,29 38.3
※注:
2008年のデータは雇用調査研究所の予測に基づいている。
※出典:
雇用調査研究所 (IAB Kurzbericht) <http://www.iab.de> accessed on 30 August 2008.

2.4 労使関係の現状

ドイツ憲法では、雇用条件について交渉し、決定を行う団体交渉の権利を保証している。特に憲法第9条3項では労働及び雇用条件を守り改善するための組合の結成又は結社の自由を認めている。ここでは明確な記述があるわけではないが、判例及び広く使われている法的解釈により組合結成又は結社の自由には自律的な団体協約締結の権利も含まれるとされる。さらに、組合活動及びストライキ権が認められている。
労使関係において労働組合と雇用者あるいは雇用者団体が主となり、産業、部門ごとに労働組合が結成される。個々の組合が属する上部組織にはドイツ労働総同盟 (DGB) があり、現在8つの産業別労働組合組織で構成されている。組合数は組合同士の合併により減少傾向にある。2001年にはÖTV(公共勤務・運輸・交通)、DPG(郵便労働組合)、HBV(商業・銀行・保険労働組合)、IG(メディア)、DAG(ドイツ被雇用者組合)が合併されて「ver.di」というIG Metall組合に並ぶ大規模な新しいサービス組合同盟を造った。2007年12月31日時点のドイツ労働総同盟組織は表2-9のとおりである。

表2-9 ドイツ労働総同盟のメンバー組合
(2007年12月31日現在)(単位:%)
組合名 割合
建設・農業・環境労働組合 5.5
鉱山・化学・エネルギー労働組合 11.1
教育・化学労働組合 3.9
金属工労働組合 35.8
食品・飲料・ケータリング労働組合 3.2
警察官労働組合 2.6
トランスネット鉄道労働組合 3.8
合同サービス産業労働組合 34.1
合 計 100.0
※出典:
ドイツ労働総同盟 <http://www.dgb.de/dgb/mitgliederzahlen> accessed on 30 August 2008.

雇用者団体は労働組合と平行して組織され、団体協約を含む労働社会政策分野を統括する上部組織として、ドイツ使用者団体連盟 (BDA) があり、Gesamtmetallという金属細工組合、民間銀行の雇用者連盟等40以上の雇用者連合会がこれに所属しており、組織率は40~45%である。団体交渉の方針の決定に関して重要な点は、被雇用者両組織の総括組織のDGB及びBDAではなく、業界別の労働組合と雇用者同盟が決定することである。
個々の具体的な交渉は、DGBを構成する関係労働組合が雇用者、その連合側と賃金、労働時間、休日等について団体交渉事項の折衝を行う。交渉が決裂し、労働争議となった場合には、ストライキを組織し、組合員への賃金代替の支払を行う。
最近のデータによれば、2006年には約35%の企業が依然として団体交渉の取り決めに関し法的に拘束されているが、その内訳は、西ドイツでは38%(被雇用者の59%)で、東ドイツで19%(被雇用者の42%)となっている。さらに、全国の企業の37%(被雇用者の48%)は団体協約の取り決めにおおむね従っていると答えている。これらの数字は1990年代を通じて着実に低下した。このデータを見れば、東ドイツでは産業レベルの交渉は完全に崩壊しており、西ドイツでも崩壊の過程にある。

※出典:
ドイツ労働総同盟 <http://www.dgb.de/sprachen/englisch/dgb.htm> accessed on 30 August 2008.

2.4.1 労働組合の現状

労働組合は相互に協力体制をとることで合意し、いくつかの組合では合併が行われ、今後も数年間で組合数が減少するものと思われる。また、組合員数の増加は、基本的に雇用数の増加が大きく関係している。

表2-10 DGBに属する労働組合と組合員数(2007年12月31日時点)
組合 男性 女性 合計
% % %
建設、農業、環境 290,791 82.7 60,932 17.3 351,723 5.5
鉱山、化学、エネルギー 576,155 80.8 137,098 19.2 713,253 11.1
教育、科学 76,748 30.8 172,045 69.2 248,793 3.9
金属細工 1,892,814 82.1 413,469 17.9 2,306,283 35.8
食品、飲料、
ケータリング
125,179 60.2 82,768 39.8 207,947 3.2
警察官 132,278 78.5 36,155 21.5 168,433 2.6
交通運輸 188,620 78.8 50,848 21.2 239,468 3.7
合同サービス産業 1,105,088 50.1 1.100,057 49.9 2,205,145 34.2
DGB合計 4,387,673 (平均)68.1 2,053,372 (平均)31.9 6,441,045 100.0
ブルーカラー及び
ホワイトカラー
3,797,597 67.9 1,793,849 32.1 5,591,446 86.8
公務員 317,293 67.0 156,010 33.0 473,303 7.3
その他※注 272,783 72.5 103,513 27.5 376,296 5.8
DGB合計 4,387,673 (平均)68.1 2,053,372 (平均)31.9 6,441,045 100.0
※注:
ブルーカラー、ホワイトカラー及び公務員でもない労働者のこと。
※出典:
ドイツ労働総同盟 (DGB) <http://www.dgb.de/dgb/mitgliederzahlen> accessed on 30 August 2008.

  1. 組合組織率
    ドイツ経済研究所 (IDW:Deutsche Institut für Wirtschaftsforschung)が行った2006年の調査によれば、賃金・給与労働者の17.5%が組合員であるが、2004年の20.5%、2002年の23.0%に比べ組合組織率が減少している。1989年のドイツ統一後、労働組合の組合員数は何百万人も減少している。表2-11は全就業者に対する組合員組織率である。2006年の東ドイツの組合員比率(19.1%)は西ドイツ(17.1%)を上回っており、2004年のデータ(東ドイツ17.8%、西ドイツ21.2%)とは対照的である。これは組合員比率の減少を示す1つの指標であるが、特に2004~06年の西ドイツで減少傾向が顕著である。またフルタイム労働者の方がパートタイム労働者より組合員組織率が高く、2006年の西ドイツではフルタイム労働者が19.4%でパートタイム労働者が8.7%となっている。

    表2-11 全就業者に対する組合組織率(2002~06年)(単位:%)
    項 目 2002年 2004年 2006年
    全組合員(西ドイツ) 23.0 21.2 17.1
     男性 25.3 25.8 22.3
     女性 19.8 15.0 11.1
     フルタイム 24.5 22.5 19.4
     パートタイム 14.0 15.5 8.7
    全組合員(東ドイツ) 20.2 17.8 19.1
     男性 22.3 16.3 -
     女性 17.5 19.6 -
     フルタイム 20.7 17.2 -
    ※出典:
    Institut der deutschen Wirtschaft Köln <http://www.iwkoeln.de/> accessed on 30 August 2008.

    組合員組織率を年齢別、雇用形態別に表したデータで現在入手可能なものは2004年のもののみである。

    表2-14 西ドイツ・東ドイツの年齢別組合員組織率
    (2004年)(単位:%)
    年齢 西ドイツ 東ドイツ
    18~30歳 15.3 12.3
    31~40歳 21.5 18.3
    41~50歳 30.1 22.8
    51歳以上 23.4 19.2
    平 均 23.1 18.8
    ※出典:
    Institut der deutschen Wirtschaft Köln <http://www.iwkoeln.de/> accessed on 30 August 2008.

    表2-15で示されているとおり、2004年に賃金労働者での組織率が31%、給与労働者が15.3%であるのに対し、公務員では約39.8%となっている。2004年の数値では単純業務の公務員が最高の組合員比率を示しているのに対し、賃金・給与労働者では資格保有労働者のほうが比率が高い。年齢別では、41~50歳での組合員比率が最も高く、(西ドイツ30.1%、東ドイツ22.8%)、18~30歳では西ドイツ15.3%,東ドイツ12.3%にとどまっている。

    表2-15 雇用形態別組合員組織率(2004年)(単位:%)
    雇用形態 組織率
    公務員 39.8
     - 公務員(単純業務クラス) 52.9
     - 公務員(業務クラス) 42.9
     - 公務員(管理監督職) 38.8
     - 公務員(上級職) 34.9
    給与労働者 15.3
     - 単純業務給与労働者 10.7
     - 複雑業務給与労働者 16.4
     - 独立業務給与所得者 16.3
     - 管理職給与労働者 10.8
    賃金労働者 31.0
     - 非熟練労働者 22.1
     - 半熟労働者 23.4
     - 熟練労働者 34.7
     - 雇用主、現場監督 37.7
    ※出典:
    Institut der deutschen Wirtschaft Köln <http://www.iwkoeln.de/> accessed on 30 August 2008.
  2. 企業内労働者代表制
    企業内労働者代表制は、「経営組織法」に基づいている。この法律では企業とは、企業家が単独で又は従業員とともに事業の目的を達成しようとする一団と定義される。5人以上の労働者を常時雇用している企業の労働者は、任期を4年として労働協議会を設置できる(第21章)。実際には、労働協議会の設置は大・中企業で多くみられ、小企業ではほとんどみられない。1999年には、労働者1,000人以上の企業の97.5%で労働協議会が組織され、5~20人規模の企業ではわずか4.2%であった。
  3. 経営共同決定制度
    労働者は、労働協議会とは別に経営共同決定制度が認められている。これが認められるのは、企業形態が株式会社 (AG) 、株式合資会社 (KGaA) 、有限責任会社 (GmbH) 及び商業協同組合等の法人格の場合である。また、労働者の代表が企業の監査役会のメンバーに入ることで共同決定が確保できる。株主の代表も参加するこの監査役会は企業の経営を監督するが、監査役会の影響力は各企業の法的特徴によって異なる。
    監査役会で雇用主がどの程度の影響力が持てるのかは1) 石炭鉄鋼産業共同決定法、2) 石炭鉄鋼産業共同決定法の改正法、3) 1952年営組織法、4) 1976年共同決定法で規定されている。これらの法律の範囲と規定内容は異なっているが、いずれも労働者代表の監査役会における限定的な議決権を認めている。ある企業が複合企業体の一企業であり、共同決定が法律で強制されていない企業がその複合企業体を主導していても、被雇用者の共同決定権は保護される。
    ※出典:
    国際労働機関 (ILO), National Labour Law Profile: Federal Republic of Germany <http://www.ilo.org/public/english/dialogue
    /ifpdial/info/national/ger.htm
    > accessed on 30 August 2008.

2.4.2 労働争議の現状

2006年にはドイツで3件の大規模なストライキがあった。しかし、この事実がドイツの労働実態を表している訳ではなく、一般的に他国(特に欧州諸国)と比べても公式統計で分かるとおり、ドイツはストライキの発生が少ない国である。1996~2005年で、ストライキで失われた千人当たりの年間労働日数は2.4日であり、スペインの145日、イタリアの86.8日に比べればかなり少ない。2006年の16万9,000人のストライキ参加者と42万9,000日のストライキ日数は1993年以来最も高い数値である。2007年にはドイツでストライキ参加者数とストライキ日数は減少したが、それでも2005年以前の数値よりも著しく高いものとなっている。

表2-16 労働争議データ(2005~07年)
ストライキ参加者数
(人)
ストライキ日数
(日)
企業数
2007年 106,483 286,368 542
2006年 168,723 428,739 545
2005年 17,097 16,633 270
※出典:
連邦雇用局(BA) Zeitreihe Streiks und Aussperrungen, <http://www.pub.arbeitsamt.de/> accessed on 30 August 2008.

2.5 募集、採用、雇用、解雇の現状

  1. 募集、採用
    職業紹介所は就職斡旋の手続きとして、プロファイリングと呼ばれる訓練あるいは、求職者の能力、就職の可能性についての分析から始める。プロファイリングは、求職者とその職業に求められている資質、候補者に求められる努力についての合意がなされた後に作成される。就職斡旋サービスを提供するのは雇用局だけでなく、民間の職業紹介所も雇用局から委託を得られれば斡旋業務を行うことが可能である。
    職業紹介所には顧客センターが設置され、より顧客の要望に合った訓練及び就職斡旋を行うことを目的としている。顧客センターはサービスセンター、受付、顧客エリアに分かれており、受付では通常の手続きが行われ、書類の記入、担当部署へ書類の回覧をする。サービスセンターでは職員が電話での質問に答え、斡旋担当者に直接尋ねたいことがある求職者は、誰でもサービスセンターで面談の予約ができる。また、予約をすることで職員も準備ができ、待ち時間の減少につながる。
    いくつかの条件を満たした求職者は職業紹介クーポンを与えられ、このクーポンを使って自分で選んだ民間職業紹介所で就職活動を開始できるが、この費用は雇用局又は社会基礎年金供益機関の負担となる。それ以外の求職者はすべて自己負担である。就職できた場合に民間職業紹介所へ支払われる手数料は、法的には2,000ユーロが最高限度とされる。
    職業紹介所では、就職斡旋だけでなく労働市場の需給に合った斡旋手続きが行えるようアドバイスも提供している。こうしたサービスは、職業アドバイス、職業オリエンテーション、労働市場アドバイス等と呼ばれ、若年者、成人だけでなく労働者も対象に行われている。職業アドバイスは若年者、成人を対象としている。このサービスでは情報を提供し、どのような職業を選んだらよいか、そのためにはどんな資格が必要か、最近の職場や労働市場の傾向、訓練及び仕事をどのように探せばいいのか等について助言を与える。また、仕事と訓練の候補者をより早く見つけるように労働市場に関しての助言が労働者を対象に提供される。同時に労働条件、労働時間、企業内基礎訓練及び向上訓練、実習生と従業員の組み合わせ等についてもアドバイスを行う。
    ※出典:
    連邦労働社会省 <http://www.bmas.bund.de/Englisch/Navigation/
    Labour-market/advice-orientation-and-
    placement,did=144240.html
    > accessed on 30 August 2008.
  2. 雇用及び解雇
    スペイン、オランダと同様に、ドイツは1980年代中頃までは拘束力を持つ雇用保護行政策を実施していた。その後、固定期間雇用及び臨時雇用斡旋機関への制限等がいくつかの段階を経て廃止され、団体協約上の賃金及び労働条件以外においては、臨時労働者と終身雇用労働者とが平等な扱いを受けるという原則が掲げられた。最近の改正では臨時雇用斡旋機関への制限条項がほとんどすべて廃止された。
    解雇は、解雇防止を目的とするPADA(Protection Against Dismissal Act:解雇保護法)の条項に準拠して行われなければならないとされる。同法第23条の規定により、PADAの適用はフルタイムの終身雇用者(職業訓練生は含まず)が11人以上の場合で、5人以下の機関には適用されず、また6人以上10人以下の場合は部分的に適用される。週労働時間30時間以下のパートタイム労働者は0.75人、また20時間以下は0.5人として人数に加えることができる。同法第1条により、雇用期間が半年以内の者には雇用保護法は適用されない。同法第1条により解雇通告が社会的に正当化され、法的にも有効とされるのは以下の理由による解雇の場合である。どの場合でも証明責任は雇用者にある。
    1. 個人の能力及び適性の欠如
      従業員個人の能力及び適性が欠如しているという理由による解雇で、雇用主側の主張の正当性が認められるには、本人の能力、業務適性が欠落し、改善の見込みがないこと、組織に与える影響の大きさ等についての事実証明が求められ、解雇による雇用主と従業員の利害の程度が解雇可否を左右することになる。こうした解雇の例としては、長期の病欠、頻繁な病欠があるが、解雇はあくまでも最後の手段であり、雇用主の責任能力及び良識のある視点で判断されるべきである。
    2. 不正行為
      従業員の不正行為による解雇とは、契約義務事項の違反、雇用関係に否定的な影響ある事柄、雇用継続の見込みがない等の理由によるもので、(a) と同様に両者の利害の程度が解雇適否の決め手となる。また、不正行為があった場合は2週間以内に警告文が発せられなければならない。ただし、当該労働者の改善実施が適当でない場合、企業秘密の漏洩、犯罪行為等の雇用主にとって堪えがたい事態の場合は除く。しかし、一般的には、不正行為があった場合ではなく、当該従業員の業務成績が非常に悪い場合に警告文が発せられることが多い。
    3. 操業上の緊急的事情
      企業の倒産、経済的理由、合理化等による解雇は、一部の法的判断に従うこととされる。企業の決定自体は法廷では考慮されず、法的判断基準は、その緊急性と当該職が不要とされるかどうかによる。またPADA第1条3項で、解雇者選定において、従業員の雇用期間、年齢、扶養家族、身体障害について考慮することを義務づけている。企業の継続に必要不可欠な人材はこの解雇者選定から排除される。雇用主がこの条項を遵守できない場合には、その証明責任を有する。
    ※出典:
    国際労働機関(ILO) “Social Dialogue, Labour Law and Labour administration” <http://www.ilo.org/public/english/dialogue/ifpdial/
    info/termination/countries/germany.htm
    > accessed on 30 August 2008.

2.6 転職の現状

ドイツは長期雇用が根づいている国である。厳格な国内労働市場が存在し、労働者が同じ企業で10年、20年と長く勤務することを希望しているという背景もあり、この状況はこの数十年変わっていない。

表2-17 企業内被雇用者数と雇用期間(公務員を含む)(単位:%)
勤続年数 西ドイツ 東ドイツ
2年以内 21.6 30.0 23.1
3~5年 16.0 19.4 16.7
6~9年 18.5 25.3 19.9
10~15年 16.1 7.7 14.5
16~20年 9.8 5.1 9.0
20年以上 18.0 12.5 16.0
合 計 100.0 100.0 100.0
合計人数 24,174人 5,749人 29,923人
平均勤務年数 11.53年 8.90年 11.03年
※出典:
Friedrich-Schiller-Universität Jena <http://www.uni-jena.de> accessed on 30 August.

一方、国外労働市場については、労働者派遣機関の数も増加しつつあり、社会的評価も高まっている。雇用研究所 (IAB) 等のデータによれば、サービス産業でもある程度派遣労働者は普及しているが、大手製造業での低熟練職での利用が依然として最も多く、例外はあるが一般に補助的作業に限られている。また解雇、雇用期間、職場代表制及び報酬等の観点から見れば派遣雇用は普通の雇用形態より不安定である。
こうした労働者派遣業務は、1972年に施行された労働者派遣法 (AentG) で規定され、2003年の改訂以来、労働者派遣機関は派遣期間の制限を受けずに派遣労働者を選任することが認められている。なお、それまでの同時雇用禁止及び再雇用禁止は廃止されている。しかし有期労働契約は、依然としてパートタイム労働・有期労働契約法の規定によって規制されている。また、派遣労働者の権利は強化され、労働初日から同等処遇の原則適用が義務とされる。しかし、この適用は派遣労働者がそれまで失業状態にあった場合には、その報酬について6週間までは同等処遇の原則が免除される。その場合は、派遣労働者に対して、直近の失業手当と同等の支払をすることが認められている。また、団体協約の取り決めによっては契約当事者が同等処遇を適用しないことにする場合もある。そのため、2003年には派遣労働において多数の団体協約が締結された結果、同等処遇の原則義務はほとんどの派遣労働者に適用されなくなった。

※出典:
Antoni, Manfred/Jahn, Elke J.” Do changes in regulation affect employment duration in temporary work agencies?” IAB Discussion Paper, No. 18/2006,<http://ideas.repec.org/p/iab/iabdpa/200618.html> accessed on 30 August 2008.

参考文献

  1. Antoni, Manfred/Jahn, Elke J.: Do changes in regulation affect employment duration in temporary work agencies? IAB Discussion Paper (Research institute of the German federal Employment Agency), No. 18/2006, <http://ideas.repec.org/p/iab/iabdpa/200618.html>
  2. Basic and Structural Data 2004 ff, published by the Federal Ministry of Education and Research, <http://www.bmbf.bund.de>
  3. Biebeler, Hendrik/Lesch, Hagen: “Mitgliederstruktur der Gewerkschaften in Deutschland”, IW-Trends – Vierteljahresschrift zur empirischen Wirtschaftsforschung aus dem Institut der deutschen Wirtschaft Köln, 33. Jahrgang, Heft 4/2006. <http://www.iw-koeln.de/default.aspx?
    m=pub&ber=Informationen
    >
  4. Federal Ministry for Labour and Social Affairs <http://www.bmas.de>
  5. Federal Ministry of Labour and Social Affairs, <http://www.bmas.bund.de/Englisch/Navigation/
    Labour-market/advice-orientation-and-placement,did=144240.html
    >
  6. Federal Employment Agency (BA), “The Labour market in 2007/2008, <http://www.pub.arbeitsamt.de/hst/services/statistik>
  7. Federal Employment Agency: The Labour market in July 2008, <http://www.Pub.arbeitsamt.de/hst/services/statistik/
    detail/a.html
    >
  8. Federal Employment Agency <http://www.Pub.arbeitsamt.de/hst/services/statistik/
    detail/a.html
    >
  9. Federal Statistical Office <http://www.destatis.de/jetspeed/portal/cms/
    Sites/destatis/Internet/DE/Content/Statistik
    >
  10. Federal Statistical Office, Statistical Yearbook 2007, <http://www.destatis.de>
  11. German Confederation of Trade Unions, <http://www.dgb.de/dgb/mitgliederzahlen>
  12. German Confederation of Trade Unions <http://www.dgb.de/Sprachen/Englisch>
  13. Institute for Employment Research (IAB), IAB Kurzbericht No.35/2008 <http://www.iab.de/doku>
  14. International Labour Organisation (ILO) <http://www.ilo.org/public/english/dialogue/ifpdial/
    info/termination/countries/germany.htm
    >
  15. International Labour Organisation (ILO) <http://www.ilo.org/public/englisch/dialogue/
    ifpdial/info/national/ger.htm
    >
  16. Posting of Workers. Information on the implementation of the Act on the Posting of Workers (AEntG), Abteilung Finanzkontrolle Schwarzarbeit <http://www.zoll.de/english_version/index.html>
  17. ReferNet/BIBB (Ed), National ReferNet report on progress in the policy areas for Vocational Education and Training. Draft Version 2008, <http://www.bibb.de>

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