各国・地域情報

ドイツ

作成年月日:2008年9月30日

労働力の国外送出について

5.1 関係法令及び制度の概要

【関係法令】

  1. 越境労働業務提供において守らなければならない労働条件に関する法令及び労働者派遣法 (AEntG:Arbeitnehmer-Entsendegesetz)
    ますます多くの外国企業が、ダンピング価格でドイツの労働市場に参入しようとしている。1996年3月1日、公正な競争と労働者の権益保護のために「越境労働業務提供において守らなければならない労働条件に関する法令及び労働者派遣法 (AEntG) 」が発布された。これによりドイツは、労働業務提供(派遣労働者指令)の中の労働派遣に関する指針を国の法律と置き換えた。同法律は、ドイツ国内在住の雇用主、国外在住の雇用主(両国間の二国間契約に基づいて営業活動を行う請負業者も含む)だけでなく、ある産業分野における法で定められた労働団体協約の下で行っている一時的業務においても遵守しなければならない法である。加えて、雇用主にはほかのさまざまな義務も課せられる。
    ※出典:
    ZOLL <http://www.zoll.de/english_version/index.html> accessed on 30 September 2008. Official publication: Federal Gazette 1996 part 1 p. 227, last amended by Article 1 of the Law of 25.4.2007 (FG I p. 576) Arbeitnehmer-Entsendegesetz
    <http://bundesrecht.juris.de/bundesrecht/AEntG/
    gesamt.pdf
    >
  2. 臨時雇用法
    ドイツの法律下で労働者を派遣するということは、その雇用主が第三者に対して労働者(臨時労働者)を派遣することを意味する。臨時雇用法では、職業上労働者を派遣するには許可が必要であるとされている。同法は、労働者派遣許可書を発行するのに必要な諸条件及び諸手続きについて規定している。また、臨時労働者を保護するための方法も併せて提示している。特に注意しなければならないのは、臨時労働者が派遣される場合、正規の労働者と比較して賃金も含み同等の労働条件で働く権利を持つということである。ただし、臨時労働者との間に適切な賃金契約書がある場合はその限りではない。臨時労働者用に6種類の国民賃金契約書及び多くの企業内契約書がある。これらの賃金契約は、臨時労働者用の労働条件を専門に取り上げているが、特殊な産業及び地域における臨時労働の許認可については規定していない。また、これらの賃金契約は、「AEntG」の趣旨における最低賃金は設定していない。
    ※出典:
    連邦法務省(Bundesministerium fur Justiz)<http://bundesrecht.juris.de/a_g/index.html> accessed on 30 September 2008.
    連邦労働社会省 (BMAS) <http://www.bmas.bund.de/BMAS/Navigation/
    Arbeitsrecht/gesetze,did=22194.html
    >
    European Commission(欧州共同体委員会), Employment, Social affairs and Equal Opportunities, Labour Law <http://ec.europa.eu/employment_social/
    labour_law/postingofworkers_de.htm
    >
  3. 「AEntG第7章第1条」に基づく、労働者派遣に適用され得る法定及び行政規制のリスト
    1. 最長労働時間及び最小休憩時間に関する「AEntG第7章第1条」の法定及び行政規制
      • 労働時間法
      • 運転業人事労務法
      • 店舗閉店時間法
      • 海事労働者
    2. 最低年次有給休暇日数に関する「AEntG第7章第2条」の法定及び行政規制
      • 連邦休日法
    3. 時間外労働を含む最低賃金に関する「AEntG第7章第3条」の法定及び行政規制
      • 最低雇用条件法
      • 搾取的賃金に関する民法第138条及び第134条
    4. 労働者の派遣条件、特に臨時雇用した労働者の供給について
      • 労働者リース法
    5. 職場における健康、安全、衛生について
      • 労働健康及び安全法
      • 取引規制法
      • 連邦鉱業法
      • 自宅勤務法
      • 労働安全法
    6. 妊婦又は出産後間もない女性、子供及び若年者の雇用条件保護法
      • 妊婦保護法
      • 若年者雇用保護法
      • 児童労働保護法令
    7. 男女雇用機会均等及びその他差別を禁止する法律条文
      • EC(欧州共同体)条約第141条
      • 基本法第3条
      • 民法第611-a条、第611-b条及び第612 (3) 条
※出典:
ZOLL <http://www.zoll.de/english_version/index.html> accessed on 30 September 2008.

連邦政府の健康及び安全に関する法規制については、欧州安全健康労働局のウェブサイトから該当部分を参照することが可能である。

※参考:
「AEntG第7条1項」に基づいた、労働者派遣に関する法律及び行政面での規則
http://ec.europa.eu/employment_social/labour_law/
postingofworkers_de.htm

【関連体系】
ドイツの「AEntG」に関連した法体系の枠組みに関して、EC(European Commission:欧州共同委員会)の指令に拘束力があることをまず認識しなければならない。したがって、まずEC指令の主要原則が記載され、次にドイツで施行される法体系が続く。

  • 指令96/71/EC(欧州共同体委員会)
    EC条約第49条には、加盟国はEC内で業務を提供する自由を保障しなければならないという原則がうたわれている。この基本原則には、業務を提供するために、ほかの加盟国に臨時労働者を派遣する業務提供者の権利も含まれる。判例法の下では、条約の基本原則である自由な労働派遣業務は非差別及び調和の精神に従い、EC条約第46条に記載された例外規則を除いて自由に行っていい。ただし、一般的に見て理由が見当たらない場合に限り制限される。
    「指令96/71/EC」は、当事国の多くが均一に義務を果たすべき諸規則を規定する。それらの規則は、労働及び雇用条件の中核となるものを制定し、労働者を自国以外の加盟国へ派遣する事業に規約を履行させることによって、派遣労働者に適用される。同指令の目標は、派遣期間中、臨時労働者が確実に保護規定を尊重するよう保証することである。第3条にうたわれたこれらの規則とは、最大労働時間、最少休息時間、最少年次有給休暇、最低賃金、労働者の派遣条件、臨時雇用(請負)事業による労働者供給、労働安全衛生、妊婦又は出産後間もない女性、子供及び若年者の雇用条件を言う。社会保障に関し、労働者派遣に適用される規則は労働者派遣指令には規定されていないが、社会保障の枠組みと同様に、No.1408/71の規則に次のように規定されている。派遣労働者は正規に雇用されていた国で社会保険に加入し続けている状態であり、その国の社会保障制度に従って賦課金を支払い続ける。派遣の最長期間は12カ月である。ただし例外として、24カ月に延長することもできる。労働者は、今まで生活してきた国と本質的に同等の健康のためのすべての給付を受ける権利を有する。ただし、正規に雇用されていた国を離れる前に、書式“E101”と“E106”を請求しなければならない。それにより正式に派遣されたことが証明され、同等の医療給付を受ける資格を得る。
    加盟国は、指令に合致すること、それらの規則に合致しない場合には適切な手段を取ること、規則に合致しない場合に労働者及び彼らの代理人が同指令に明示された義務を実行するために必要な最適の方法で対応でき、公的行政機関との協力対策が得られるよう手筈を整えることを満たすような規則を採択しなければならない。
※出典:
European Commission, Employment, Social affairs and Equal Opportunities, Workers posted temporarily to another EU country <http://www.ec.europa.eu/employment_social/
labour_law/postingofworkers_de.htm
> accessed on 30 September 2008.

上述のとおりドイツは、業務提供の枠組み(派遣労働者指令)のうち、労働派遣に関するEC指令をドイツの「AEntG」という国の法律にした。「AEntG」に従い、臨時労働者は特定の産業分野では特別な義務を果たさなければならない。「AEntG」は、法令あるいは行政的に条項に記載されるような必須で義務的な雇用条件と団体労働協約に基づくような雇用条件とを区別している。法令的あるいは行政的な条項に基づく労働条件には、産業の本支部に関係なく、すべての国民、派遣労働者が従わなければならない。また雇用主は、その企業の業務が次の労働に集中している場合には、労働協約に規定されている労働条件を守らなければならない。

  • 社会倫理法第3巻第175項第2節に定義される建設業。
  • 建設現場における組立工事業。

同様のことが海運航行を補佐する業務に対しても適用される。表5-1は、団体協約で定められた雇用条件に従わなければならない産業分野の一覧である。

表5-1 団体協約の事業範囲に入る産業分野と雇用条件
雇用条件 産業分野 最低
賃金
残業
手当
休暇
期間
休暇
手当
休暇
賞与
休暇
基金
建設工事業
屋根工事業
庭園・造園・スポーツ施設の工事業
塗装及びニス塗装工事
石組積工事及び石彫刻工事
建設現場における組立工事
産業清掃分野
郵便分野
※出典:
ドイツ連邦財務省 < http://www.zoll.de> accessed on 30 September 2008.

すべての雇用主は、不法雇用を監視する所轄機関が行う監査に協力しなければならない。団体協約の事業範囲に入る建設業分野の雇用主は、毎日の労働時間を記録する義務を負う。外国において登記された事務所を持つ建設業界の雇用主は、更に建設工事着工前に登記簿を提出し、一定の書類を保管しなければならない。「AEntG」に違反すれば、違反行為として罰金刑を科せられる可能性がある。雇用主の団体協約違反に関しても、民事法による制裁が建設業の会社に科せられる可能性がある。過誤の有無を問わず、雇用主は被雇用者に対する最低賃金、社会基金に対する休日手当て基金賦課金を支払う義務を負う。
ドイツの建設現場で外国人労働者を雇用する会社は、届出を行う義務を負う。ドイツの建設現場に1人又はそれ以上を雇用する建設業界の雇用主は、国外の登記事務所と併せて、ドイツで書類による登録を必ず行わなければならない。文書による届出には、雇用主の国外における登記事務所、建設業務に関する以下のデータが記載されていなければならない。

  • 本雇用主にドイツで雇われたすべての労働者の氏名、生年月日
  • 職務開始日及び予定雇用期間
  • 雇用場所(建設現場はドイツ国内とし、「AEntG第2章第3項」にて必要とされる文書が保管されるドイツ国内の建設現場)
  • 担当者(例えば建設工事監督や職長等の監視機関に情報を提供する連絡員)の氏名、生年月日、ドイツでの住所
  • 代理で連絡を受ける権限を与えられた連絡員の氏名、生年月日、ドイツでの住所。ただし、その連絡員が、責任を有する担当者と同一人物でない場合に限る。

次の場合も、雇用主は通知義務がある。

  • 建設現場の作業開始日が変更になった場合
  • 登録された被雇用者以外の者を雇用しようとする場合
  • 既に登録された被雇用者が、ドイツ国内の別の工事現場で雇用される予定の場合

海運航行補助の業務に携わる外国の雇用主には、これらの通知義務はない。雇用諸条件が法に沿っているかどうかという確認は、届出によってなされる。また、届出書の提出は次の雇用主に対して強制される。

  • ドイツの建設現場で1人又はそれ以上を雇用し、外国に登記済み事務所を所有する建設業界の雇用主
  • 二国政府間契約の枠組みの範囲で、ドイツでの工事契約を実施する者を含む雇用主。賃金及び休暇等の許認されるべき重要な労働条件は、雇用認可の制定法に基づくべきであり、関連する政府間契約にも基づくべきである。しかし、それにより「AEntG」の適応対象外となることはない。

最低賃金の支払いに関する法的条文は、「AEntG」に書かれた条文の中でも不可欠な部分である。「AEntG」に規定されたとおり、最低賃金に関する次の団体協約は現在も有効である(前回改定2008年4月)。

  • 解体工事
  • 建設工事
  • 屋根工事
  • 塗装・ニス
  • 産業清掃分野
  • 郵便集配

表5-2は、現在の最低賃金率表である。最低賃金は額面賃金であり、税金及び社会保険料を含む。

表5-2 分野別・地域別最低賃金(単位:ユーロ)
分 野 期 間 地 域
シュレスヴィッヒ・ホルシュタイン、ブレーメン、ハンブルグ、ニーダーザクセン、ノルトライン・ヴェストファーレン、ヘッセン、ラインラント・プァルツ、ザールラント、バーデン・ヴュールッテンベルグ、バイエルン、ベルリン ブランデンブルグ、メクレンブルグ、フォールポメルン、ザクセン、ザクセン・アンハルト、チューリンゲン
賃金
グループ
最低
賃金
賃金
グループ
最低
賃金
解体工事 2007年9月1日~ 1
2
9.49※1
11.60
1
2
9.10
10.16
建設工事 2008年9月1日~ 3
4
9.49
11.60
3
4
9.10
10.16
屋根工事 2008年1月1日~12月31日 --- 10.20 --- 10.20
2009年1月1日~12月31日 --- 10.40 --- 10.40
塗装・
ニス
2008年4月1日~6月30日 5
6
8.05
11.05
5
6
7.50
9.65
産業清掃
分野
2008年1月1日~12月31日 5
6
8.15
10.80
5
6
6.15
8.17
郵便集配 2007年12月1日~ 5
6
8.40
9.80
5
6
8.00
9.00
(注)
賃金グループ

1. 助手
2. 訓練済み労働者、解体、ボーリング/ドリル、鋸切助手
3. 労働者/機械営繕労働者
4. 訓練済み労働者/機械操作員/運転手
5. 非熟練労働者
6. 熟練労働者

※出典:
ZOLL <http://www.zoll.de/english_version/index.html> accessed on 30 September 2008.
※1:
1ユーロ=149.7981円(2008年9月30日現在)

労働者が団体協約で決められた通常の業務成果以上の仕事を発揮しても賃金額に反映されない場合、雇用主は最低賃金の一部として賞与又は補足的給付を支払う必要がある。

  • 常に最低賃金に加えられなくてはならないボーナス、補足的給付の例:
    • 建設業の賞与
    • 母国での賃金と支払うべき最低賃金の差額として、雇用契約の中に明示されている補足的給付
  • 一定の条件の下、最低賃金に加えなくてはならないボーナス、補足的給付の例:
    • 雇用主が「AEntG第1章」の趣旨の範囲で、団体協約に基づく時間外勤務手当を支払う義務を負う場合の補足的給付。その場合、時間外勤務手当を含んで支払われた実際の賃金が、団体協約に記載された最低賃金規定額に少なくとも達していれば、あるいは同協定の規定額であれば十分である。
※出典:
ZOLL <http://www.zoll.de/english_version/index.html> accessed on 30 September 2008.

「AEntG」は、団体協約で定められた休日、休日手当及び休日賞与についての取り決めに従うよう規定している。休日、休日手当及び追加休日賞与が、一般的に拘束性のある団体協約によって規定される場合、建設業界の雇用主、海運航行支援業務を提供する雇用主、建設現場で組立作業を提供する雇用主、建設業界の会社に労働者を派遣する臨時雇用代理会社等は、これらの団体協約の規定を適用しなくてはならない。「AEntG」に従い、休日に関する規定を含む団体協約は、下記の分野に対して適用できる(最終改定:2007年1月)。

  • 建設工事
  • 屋根工事
  • 造園、ランドスケープ、競技場建設工事
  • 石組積工事、石彫刻

建設業界での休日認可等は、特別休日手当基金の手続きにより管理される。つまり、ULAK(Urlaubs- und Lohnausgleichskasse der Bauwirtschaft:建設産業休日手当基金)とZVK(Zusatzversorgungskasse des Baugewerbes AG:付加的年金金庫)の共同機構であるSOKA-BAUが休日に関する手続きを管理する。SOKA-BAUは、欧州法手続き(Europaverfahren)の中の、海外からの派遣に関する手続きについて情報を提供している。SOKA-BAUはまた、建設業界における最低賃金情報等も提供する。

※出典:
SOKA-BAU <http://www.soka-bau.de> accessed on 30 September 2008.

労働者及び臨時労働者派遣に関する規則は、「臨時雇用法令第3条1項d節及び第3条9項」に従う。臨時雇用法は、臨時労働者を保護するための規定を多く含んでいる。同法は、特に臨時労働者が雇用された場合、賃金を含めて、常用雇用の労働者と実質的に同じ労働条件を享受する資格があることを規定している。例外は、適切な臨時労働賃金契約が締結されている場合である。臨時労働者用契約として、6通りの国家賃金契約とその他多数の組織別賃金契約がある。これらの賃金契約は、臨時労働者の労働条件を取り扱っているが、特別な産業や地域における臨時労働の許認可については規定していない。また、これらの賃金契約は、「AEntG」の趣旨における最低賃金も設定していない。

  • 労働時の健康、安全、衛生[指令の第3条1項e節]
    労働者保護の法的・行政的規制の一覧は、労働保護局事務所のホームページに掲載されている。労働安全衛生を規定する「AEntG第7条」によれば、ドイツで雇われた労働者は、たとえ雇用主がドイツ国外に居住していようとも、ドイツ国内の雇用主に雇われた場合と同様に法が適用される。
    労働者保護規定の目的は、労働時に生じる危険から労働者を保護することにある。企業は、労働時の労働者保護に関して責任を持ち、同時に工場、機械、設備、施設等を保守又は維持すること、労働者を健康や生命の危険から守るような企業組織にすることへの責任を負う。雇用主は働く人を第一に考えた職場環境を用意するためにも、労働現場での事故、健康被害対策を実施しなくてはならない。これらの義務は、労働保護規則に含まれ、諸規則は個別に下記法律及び法令によって規定されている。
    • 労働者保護法
    • 職場安全令
    • 加工場令
    • 危険物令
    • バイオ物質令
    • 建設現場令
    • 労働安全法
    • 設備及び製品安全法
※出典:
Directive 96/71/EC of the European Parliament and the Council <http://ec.europa.eu/employment_social/
labour_law/docs/2007/posting/germany_de.pdf
>

労働条件は外国人にもドイツ人にも平等である。ドイツに労働者を派遣し、国外に登記済み事務所を持つすべての雇用主は、建設産業だけに限らず海運航行補助業務に携わる場合、「AEntG第7章第1項」に従い、普遍的な雇用条件を保証しなければならない。その条件は、法的及び行政的な規定としてドイツ語で記載されているとおりである。したがって、ドイツ国籍の労働者と同様、次の雇用条件を遵守しなくてはならない。

  • 最長労働時間及び最少休憩時間
  • 年次有給休暇
  • 時間外手当率を含む最低賃金率
  • 臨時雇用会社による臨時労働者派遣のための条件
  • 労働現場における健康安全衛生
  • 妊婦又は出産後間もない女性、子供、若年者の雇用条件における保護方法
  • 性別及びその他の差別を禁ずる規定

故意であるか過失であるかに関係なく、次に該当する者は、雇用主あるいは労働者派遣会社は罰せられる可能性がある。

  • 「AEntG第1章」に規定された雇用条件不履行者
  • 休日手当基金へ規定の賦課金を支払わなかった者
  • 検査の受入れを拒絶した者、検査中に協力しなかった者
  • 敷地内、業務場所へ入ることを拒絶した者
  • 資料を提出しなかった者、又は不正確で不完全な資料を提出した者、規定の方法であるいは期日までに資料を提出しなかった者
  • 雇用主の日常業務時間の始業時、終業時、中間時に記録を収集、編纂しなかった者、不正確、不完全に収集した者、保管しなかった者、又はその記録を最低でも2年間保管しなかった者

外国に事務所を登記している雇用主あるいは労働派遣会社は、次のような違反をすれば罰せられる可能性がある。

  • 「AEntG第1章」に規定された雇用条件不履行者
  • 休日手当基金へ規定の賦課金を支払わなかった者
  • 経理を含む監査の受入れを拒絶した者、又は監査中に協力しなかった者
  • 敷地内又は業務場所へ入ることを拒絶した者
  • 資料を提出しなかった者、又は不正確で不完全な資料を提出した者、規定の方法であるいは期日までに資料を提出しなかった者
  • 雇用主の日常業務時間の始業時、終業時、中間時に記録を収集、編纂しなかった者、又は不正確、不完全に収集した者、保管しなかった者、その記録を最低2年間保管しなかった者
  • ドイツ国外に登記した会社を持つ雇用主あるいは派遣会社の場合、最短2年間ドイツ国内にドイツ語の監査用書類を保管しなかった者、かつ監査当局の要請時に建設現場で書類を用意できなかった者
  • 「AEntG第3章」に従い、登録をしなかった者、不正確又は不完全な登録をした者、期日までに登録をしなかった者
  • 「労働法1章」に規定された雇用条件を守るという誓約書を提出しなかった者、不正確又は不完全に提出した者、又は期日までに提出しなかった者

請負業者が建設業務をほかの請負業者に委任し、請負業者が超過勤務手当、有給休暇、追加的休日手当への積立金を含んだ最低賃金を与えないことを知っていた又は過失で知らなかった場合には罰せられる。違反には最大50万ユーロの罰金が科せられる。また、上記のような信頼のおけない請負業者に業務を委任した場合にも同様の罰則があり、違反には最大2万5,000ユーロの罰金が科せられる。「AEntG」に違反して2,500ユーロ以上の罰金を科せられた者は、ある一定期間、購買、建設業務の入札に参加することを認められない。
請負業者は、二次あるいは三次請負業者が最低限認められた労働基準を満たさない場合、罪をまぬがれない。「社会法3巻175条2項」に基づき別の業者に建設業務を委任する業者も、同様に罪をまぬがれない。すなわち、委託した側の建設業者は、その主債務に対する予備訴訟への防御を放棄した保証人として、不履行に関係なく下記関係者に対し責任を負う。

  • 委託元建設業者
  • 下請建設業者
  • 委託元建設業者又はその下請建設業者から委託された労働者派遣業者
  • 労働者への手取り賃金
  • 休日手当基金への賦課金

手取り賃金は、税金、社会保障、雇用保険を最低賃金から控除して計算する。ドイツ人、ドイツ人以外にかかわらず、労働に関する事項で裁判所に訴えることが認められている。

※出典:
ZOLL <http://www.zoll.de/english_version/index.html> accessed on 30 September 2008.

5.2 送り出しの所轄機関

派遣労働者に適用される諸条件を担当する総合的な権限をもつ組織は、ドイツ財務省の管轄にある税関である。税関の下には、特別な下部組織のFKS(Finanzkontrolle Schwarzarbeit:未申告雇用財務管理局)があり、雇用主、採用者、労働者に労働派遣の情報を提供している。

※出典:
ZOLL <http://www.zoll.de/english_version/index.html> accessed on 30 September 2008.

ドイツでの労働派遣の監査は、条件に応じてそれぞれの官庁に振り分けられている。最低賃金、最低休暇資格、休日手当基金への賦課金の支払いを含む「AEntG」に沿った強制的労働条件の遵守に関してはFKSが担当し、労働安全衛生に関しては州政府が担当する。連邦雇用局及び税関は、雇用主への労働者の派遣について総合的に管理する。一般的に適用できる団体協約に基づかない場合、休暇取得資格、平等待遇に関する監査は、現状では不十分である。
FKSによる監査には、年次計画に基づき行われる通常監査、過去の違反や確実な情報、事前調査により調査対象を定めて行う監査があり、企業の国籍に関わりなく労働者に対して行われる。監査では、勤務時間内に監査員が事業所又は建設現場に立ち入る権限があり、以下の調査を行う。

  • 雇用関係及び業務活動に関する情報の収集
  • 保管されている書類に業務範囲、種別、雇用関係及び雇用期間に関する情報が含まれていることの確認
  • その場にいる人々への質問、詳細な確認作業、又は身分証明書類の提示の要求
  • 雇用契約、給与支払票、支払済み賃金、勤務時間の記録、業務範囲、雇用形式及び期間が記載された書類等の監査

雇用主、被雇用者、建設請負業者及び第三者が以下の目的で監査に立ち会う。

  • 監査員が彼らの不動産及び事業所に立ち入ることを容認する。
  • 監査を容認する。
  • 監査に協力し、情報を提供する。
  • 雇用契約、給与支払票、支払済み賃金、勤務時間の記録、業務範囲、雇用形式及び期間が記載された書類等の提出。
  • 身分証明書(外国籍の場合はパスポート)、住民票、休暇滞留証明又は居住許可証の提示。

データ処理システムに保存されたデータは、雇用主又は建設請負業者によって区分され、要請に応じて電子データ処理メディア又はリストにして税関行政官庁に転送される。
労働時間証明及び特定の書類は、監査期間中にFKSの監査官に提出しなければならない。ドイツあるいは国外に登記済み事務所を有する雇用主は、労働者の勤務時間の始業時、終業時、1日の労働時間を記録する義務が課せられ、これらの記録を最低2年間保管しなければならない。国外に登記済み事務所を所有する雇用主は、「AEntG」に準じた労働条件に従っていることを証明するのに必要な下記の書類をドイツ語で、ドイツ国内で保管しなければならない。

  1. 雇用契約書及びこれに関連して母国の規定で発効される諸書類
  2. 勤務時間証明書
  3. 給与支払票
  4. 賃金支払い証明書

上記4種の書類は、ドイツ国内で常時保管されなくてはならない。これに違反すれば、「AEntG第5章」に従い、起訴される可能性がある。もしその他の補足的書類が必要とされる場合、当局の監査を受ける際に遅延なく用意しなければならない。
建設業における社会的パートナー(労使団体)は、連邦財務官との協力の下、建設業における未申告労働、不法雇用を監視する役目を負う。団体協約を締結する個々の組合は、未申告労働に反対するため地域的な連携を進めてきた。このような地域的連携の下、社会的パートナー(労使団体)は、違法行為を摘発するためにとるべき行動についての書類を地域に配布し、とりわけ未申告労働についての情報提供書式を用意している。

【連絡事務所】
ドイツ国内の連絡事務所は、部局の国際協力に対して責任を負い、ほかの加盟国の連絡事務所からの問い合わせに対応する。同連絡事務所は4人の担当者で構成され、それぞれの通常業務に関連した派遣についての情報を提供する。しかし、個々の連絡先担当者は明らかにされない。連絡事務所は、ドイツ、英国、オランダに所在し、電話あるいはメール等の方法で月平均50件ほどの問い合わせを受ける。
2006年には問い合わせ件数は月平均1~2件に限られていたが、2007年にはかなり増加した。ドイツの連絡事務所は、翻訳が必要な場合、他の官庁に持ち込まなければならない場合を除き、他国からの質問に回答するのに職務規約に規定された4週間で済ませているが、逆にドイツからの問い合わせの回答には、平均して2~4カ月を要することを指摘している。単純な質問には複数言語の書式が使用されるが、より複雑なデータについては記入自由な追加欄が付け足される。ドイツ当局の対応能力のために情報の提供は限られ、休暇取得資格と平等待遇を監視する制定法がないので、一般的に適用可能な団体協約に基づかない限りこれらの2つの問題に関する情報が他国の連絡事務所に提供されることはない。

※出典:
European Commission, Employment, Social affairs and Equal Opportunities Labour Law <http://ec.europa.eu/employment_social/
labour_law/documentation_en.htm#19
> accessed on 30 September 2008.

5.3 送出労働力の属性

SOKA-BAUからから得た情報によれば、建設業における派遣労働者数は表5-3のとおりである。

表5-3 建設業での派遣労働者数(2006~07年)(単位:人)
労働者数
EU加盟国 非EU加盟国
2006年 68,321 11,454
2007年 11,869 59,775
※出典:
SOKA-BAU <http://www.soka-bau.de/soka_bau/europaverfahren/
europaverfahren_statistik/
> accessed on 30 September 2008.

5.4 送出労働力の技能水準の評価制度

信頼に足るデータが不足しているため、現在、技能水準の正式な評価システムはない。

5.5 労働力送出・受入に関する二国間・多国間協定

前述したとおり、「EC条約第49条」は、加盟国による共同体の域内での自由な業務提供を保障している。この基本的自由は、加盟国で設立された業務提供者が業務を提供するために、ほかの加盟国へ労働者を臨時に派遣する権利を含んでいる。EU内での派遣労働者数は約100万人と見積もられており、EC指令を正しく守ることに経済的重要性がある。業務提供者が国の法規に従うこと、当局による監査の必要性があるということには議論の余地がなく、異なる社会規範を疑問視したり、加盟諸国の団体協約体制を組織する手段に異論をはさんだりする意図がないことも明白である。しかし、いくつかの規定は派遣労働者の保護の範疇を超えるほど過剰であったり、同条約下の自由な業務移動、基本的権利にとっての障害となったりする場合もある。欧州裁判所は、いかなる管理体制も目標と釣り合いのとれたものでなくてはならないと規定している。現在のところ、多くの加盟国が国ごとの方法及び手段だけに頼っているようである。この状況は、行政面の協力関係の実質的な欠如、つまり、いまだ不十分な情報へのアクセスと国境を越えて権力行使ができないという問題に深く関連しているのかもしれない。
「EC指令第4条(指令96/71/EC)」は、情報提供に関する加盟国間の協力について規定している。加盟国はそれぞれ雇用条件等を監視するために、連絡事務所と主管当局を指定している。指定された連絡事務所及び主管当局は、労働派遣会社と派遣された労働者のために受入国当局との間の調整役となる。その連絡事務所と主管当局の主な任務は次のとおりである。

  • 指令に定められた雇用条件についての情報を常に入手可能な状態にすること。
  • 指令に定められた雇用条件が守られているかどうかの監視。
  • 公的団体からの国際的労働者派遣についての質問、違法と疑われる活動及び制度の悪用に関する問い合わせに応じること。
  • 条項の適用に関連して生じる可能性がある問題をすべて検討すること。

「同指令」に定められた雇用条件に関する情報へのアクセスを容易にするために、いくつかの加盟国はウェブサイトを開設した。

※出典:
ZOLL <http://www.zoll.de/english_version/index.html> accessed on 30 September 2008.

情報へのアクセスを改善しているにも関わらず、加盟国が「同指令」に規定された行政協力の規則を実際に執行しているかどうかということへの関心が当然のことながらある。「同指令」を実際に満足の行くように執行し、正しく申請し、効果的に遵法しているかということについては、このような状況が是正されない限りなしえない。そのような理由でECは、2007年に派遣サービスの枠組みの趣旨に沿った行政協力の拡大可能性について調査を行った。
ECによる「派遣業務の枠組みにおける派遣労働業務へのガイダンスの意思疎通に関する監査」によれば、多くの加盟国がまだ自国の手法に依存して派遣労働者への労働条件の遵法状況を監視している段階にある。こうした状況の背景として、加盟国間の行政協力が不十分であること、情報へのアクセスがまだまだ満足ゆく段階でなく国境での執行も不十分であることがある。
派遣業務の枠組みにおける労働者派遣に関して、異なった管理風土、構造、言語、よく整備された手順の欠如及び誰が担当者か分からない状況が、加盟国間での効率的な業務の遂行に支障を与えている。加盟国間の情報交換を互いに促進するように設計された適切でよく機能する電子情報システムが、こうした支障を乗り越え、加盟国間の協力を促進するのに非常に効果的である。このようなシステムは、担当部局と関係部門、例えば労働組合が他の加盟国の関係相手を認識し、相互にうまく情報交換を行わせる。更には、互いの信頼と確信の雰囲気の醸成、行政協力を効果的に行う土台を構築するのに役立つ。

※出典:
European Commission, Workers posted temporarily to another EU country
<http://ec.europa.eu/employment_social/
labour_law/postingofworkers_en.htm
>
accessed on 30 September 2008.

加盟国の労働者及び請負業者に対し、簡単にアクセスができ、正確で最新の派遣労働に関する情報を提供することは、衝突、問題、乱用といった事態の発生を食い止める基本的な条件となる。したがって、労働者及び雇用主が簡単にアクセスできるような情報供給体制を作ることが必要である。「AEntG」における実行、申請、法の適用が今すぐにでも求められており、それは加盟国間の行政協力体制によって成り立つものである。より効果的な情報交換システム、情報へのアクセス方法の改善、最適事例等の情報交換を奨励するような仕組みにより情報供給体制を実現できる。
加盟国はそれぞれ必要な措置を取り、電子方式による情報交換システムを実現させること、例えばIMI(Internal Market Information:国内市場情報システム)、特に業務委任サービスでの緊密な協力関係を構築することが必要である。それは、第一に具体的な適用であり、指令の実施を改善するのに必要な行政協力体制を支援することである。指令の文脈における行政協力のための電子情報システムの開発には、加盟国に次のような努力が求められる。

  • 情報交換されるべき主な課題と疑問点を認識し、それらを情報交換システムに入れること。
  • 情報交換システムに参加する派遣労働者の雇用条件を管理・監督する担当部局、もし必要なら他の関連部門を認識すること。
  • 連絡事務所の役割を明確にすること。
  • 加盟国の当局間で情報交換される個人情報の保護対策を十分調べあげ、もし必要ならほかの部門にも関与させ、最初の保護対策に基づき、指令に規定された情報交換に最も適したサポートをIMIが行えるかどうか、業務委任サービス業の関連で評価、決裁すること。EC委員会はこの点で加盟国への支援を行い、期日内に必要な進展が見られるように緊密に作業を行う。特に、実務の運営がうまく行くようタスクフォースを編成し、もし十分なものが期待できるのなら外部からの技術支援も受け、特化した用途を開発できるようにする。

加盟国は、派遣サービス業者に適用される雇用条件の情報に広くアクセスできるように努力を重ねる必要がある。また、連絡事務所がその任務を効果的に行うよう保証しなければならない。情報へのアクセスを更に改善するために、加盟国は次のことを行わなければならない。

  • 単に労働法の一般情報だけを提供あるいは参照するのではなく、その国のどういった法律のどの部分が派遣労働者の雇用条件に当てはまるのかをはっきりと明示すること。
  • 団体協約のどの情報が誰に当てはまり、雇用条件のどの部分が外国の派遣会社に当てはまるか、場所、参照すべきサイト、その他照会すべき点、特に関係する労働組合はどこかということを一般的にアクセスできるようにすること。
  • こうした情報を労働者と派遣会社に対し、派遣受入れ国以外の言語でも分かるように提供すること。もしできるのなら、主な労働条件を広告にまとめておくとなお良い。
  • インターネットのより効果的な使用方法及び国のウェブに載っている情報へのアクセスと情報の明快さ向上を図ること。さらに、加盟国は次の事項を行わなければならない。
    • 連絡事務所が効率的に組織され、十分なスタッフ数及びその他資源を備え、情報提供ができるようにすること。
    • できる限り連絡事務所で情報提供を担当する者を明らかにしておくこと。

ECはこの分野での加盟国の支援を続け、特に現在ある“ポータルサイトEUROPA”を派遣先国のウェブとリンクさせて支援する。ECは加盟国に対し、労働派遣の分野で良い事例を交換し合えるような仕組みづくりを積極的に行うよう提案している。そこでECは、次のような任務と目的を持った上級委員会を設置することを図っている。

  1. 経験とベストプラクティスを認識し、交換を推奨すること。
  2. 関連情報の交換を推奨すること。特に加盟国間、労組間の現状ある形での(二方向)行政協力を含む。
  3. 指令及び労働派遣に関連する国の実施策の順法状況、法の実行、適用といった、特別な事項、疑問、難点を検証すること。
  4. 「指令96/71/EC第3条10項」の適用で生じる可能性のある困難を検証すること。
  5. 行政協力で改善された進展内容を監視すること。特に行政協力を支援するための特定の応用、IMIの適用と実施、適用情報へのアクセスの改善、必要ならそのために取られた措置等。
  6. 労働者権利の強化と立場の保護の遵法状況が、より効果的に行われる可能性についての検証。
  7. 国境での実行具体策の詳細検証。

これら目的達成のため、上級委員会は加盟国間の派遣労働者に適用される法監視部門、例えば労働監視局等と緊密に協力すべきである。これは国内法、実証によれば労組を含んでおり、特に派遣労働者なしでは考えられない業界の労組の代表はメンバーに含まれるべきである。ECは、近い将来上級委員会を設置する決議の準備をしており、構成目的、運営方法がこれから定義されることになる。この趣旨で、前記の推薦内容を受けた評議会での話し合い結果を考慮に入れることになるだろう。
ECの更なる試みの一つは「協力標準」の草案に関係している。これには行政協力を構築し、実施するための手段となる良好な協力関係の主要原則を含む。この草案に含まれる行動規範は専門家グループにより承認され、他国の所轄機関から情報提供の要請があった場合に国内所轄機関として機能しなくてはならない。協力標準に規定される行動規範の実施については、ECの専門家グループが評価する。所轄機関に加盟国間の監査制度についてより知ってもらうため、ECは異なる労働監査制度の機能と組織に関する専門家グループ内での情報交換を組織化することにした。
加盟国の中には数千人もの労働監査官が統合された制度の枠組みの中で業務を行っているところがある一方(例えば、2003年にドイツの管轄機関は3万7千件の監査を行い、その結果ドイツ労働派遣法に基づき2万1千件に罰金を科した)、その他の加盟国(英国、デンマーク、スウェーデン等)ではこのような監査の実施はまだ大きく遅れている状況である。このような状況の違いはあるが、派遣労働者に関するEC指令の下で働く監査官同士の協力体制を強化することが必要かつ有効と思われる。第一段階として、同専門家グループは労働監査官とその他の監察組織とのより緊密な連携を進めることを決めた。また、2006年時点で少なくとも年1回は監査に関する実際的な問題に関する会議を開催することを決定した。

【指令の規定に違反した場合の対処】
「指令97/71/EC」には、規定に違反した場合の罰則については述べられておらず、加盟国に対処の選択を任せている。EC法の一般的原則の下、その対処法は基本的な人権保護の性質に基づくものでなくてはならない。これは、適切な司法手続きをとること、また効果的で適切な抑止力をもつ罰則を設けることを意味し、これらの罰則の基本的な条件と手続きは、国内法に違反した場合に適用されるものと同等でなければならない。
「同指令」に記載されている義務を果たして行く法的手順に加え、すべての加盟国は指令遵守違反をした場合の罰則及び行政制裁システムを導入しなければならない。こうした制裁の内容は、原則として違反内容のタイプ及び重度による。指令で網羅されている国をまたいだ活動には、特に労働派遣会社の登記国での罰金の必要性認識及び実施が有効である。国際レベルでの共通認識、実施システムなしでは、この実現可能性は非常に低くなる。しかし、「評議会設置枠組みの決定 (2005/214/JHA)」で、金銭的罰金を加盟国間で互いに認めるという原則を導入することに向け、状況を改善しなければならない。
ECからの詳細内容を受け、国の専門家グループは枠組み決定を歓迎して、これが「同指令」の文脈にどのように当てはまるかを検証した。専門家グループではその結果、現存する問題の解決手段として「同指令」で引用された雇用条件規則を守るのに、「決定2005/214/JHA」が有効な手段だとみなした。ECからの提案で、ある国が刑法に罰金制度を取り入れ実施する場合、それが「枠組み決定5条3項」に書かれた重複有罪になるのではないかという点を専門家グループは疑問として呈し、検証した。
専門家グループは、罰金実行を拒否する可能性については「同指令第5条1項」の文脈とは無関係だと感じた。すなわち、「第5条1項」、「7条2項b節」に記載された「ある国で発生し、EC条約の下で採択された法律から派生した義務実行に違反する行為」という所に二重罰則の規定がなく、国別の法令実施を拒否できる記述もないということである。更には、すべての加盟国は、「同指令」に書かれた雇用条件を守らなかった場合に制裁措置を講ずることができるとしている。
EU議会と労組は、主請負業者はその下請け業者が労働者に対する義務を全うしなかった場合連帯して責任を負うという原則を支持した。というのも、業者は労組によって労働法令の遵守状況を監視されるからである。派遣労働者には、次のようないくつもの保護制度が用意されている。

  1. 派遣労働者には追加救済策が用意されていること、特に雇用主が雲隠れ又は破産した場合。
  2. 業者が建設作業を下請けに出す時、派遣労働者を巡る諸手続きが手順通りに行われる場合。
  3. 仕事を下請けに出す時に、下請け先が遵法意識に欠け、遵法能力に欠けると疑われる場合、発注側がそのような業者に仕事を任すことを躊躇するようになること。

しかし、こうした状況は、本来は自由に派遣業務を行えるはずであるが、外国の下請け業者がしぶしぶ仕事を請けるというような状況も生み出す。ドイツ、スペイン、イタリア、オーストリア、オランダ、ポルトガルは連帯責任の考えを採用しているが、それぞれの国ごとに内容は異なっている。ドイツ、スペイン、オランダの労働者は主請負業者に異議申し立てを行うことができる。オーストリアの主請負業者は、雇用主に救済策が講じられるまでは罰せられない。スペインとポルトガルの場合、一時的労働(非常勤)における連帯責任にはある特殊な規則が適用される。

※出典:
Commission’s services report on the implementation of Directive 96/71/EC concerning the posting of workers in the framework of the provision of services. <http://www.ec.europa.employment_social/
labour_law/docs/sec_2006_439.en.pdf
>

5.6 送出労働力の技能水準 二国間・多国間協定

上述のとおり、派遣労働者の全実数とドイツだけでなくEUにおける彼らの属性を把握することは非常に難しい。多くの加盟国が信頼できるデータを提出できない現実から、派遣労働者の技能熟練度の評価に関する多国間・二国間協定は現在も実現していない。


参考文献

  1. Commission recommendation of 31. March 2008 on enhanced administrative cooperation on the context of the posting of workers in the framework of the provision of services (2008/C85/01), <http://www.ec.europa.eu/employment_social/
    labour_law/postingofworkers_de.htm
    >
  2. Commission staff working document (Sec 2006/439), Commission's services report on the implementation of Directive 96/71/EC concerning the posting of workers in the framework of the provision of services <http://www.europa.eu.int/comm/employment_social/
    labour_law/postingofworkers_en.htm
    >
  3. Commission’s services report on the implementation of Directive 96/71/EC concerning the posting of workers in the framework of the provision of services. <http://www.ec.europa.employment_social/
    labour_law/docs/sec_2006_439.en.pdf
    >
  4. Directive 96/71/EC of the European Parliament and the Council <http://ec.europa.eu/employment_social/
    labour_law/docs/2007/posting/germany_de.pdf
    >
  5. European Commission, Employment, Social affairs and Equal Opportunities Labour Law <http://ec.europa.eu/employment_social/
    labour_law/documentation_en.htm#19
    >
  6. Information on the implementation of the Act on the Posting of Workers (AEntG) can be obtained at: Posting of Workers. Information on the implementation of the Act on the Posting of Workers (AEntG),
    <http://bundesrecht.juris.de/bundesrecht/AEntG/
    gesamt.pdf
    >,
    <http://www.bmas.bund.de/BMAS/Navigation/
    Arbeitsrecht/Gesetze,did=22066.html
    >
  7. Official publication: Federal Gazette 1996 part 1 p. 227, last amended by Article 1 of the Law of 25.4.2007 (FG I p. 576) Arbeitnehmer-Entsendegesetz
    <http://bundesrecht.juris.de/bundesrecht/AEntG/
    gesamt.pdf
    >
  8. SOKA-BAU <http://www.soka-bau.de/soka_bau/
    europaverfahren/europaverfahren_statistik/
    >
  9. SOKA-BAU <http://www.soka-bau.de>
  10. ZOLL <http://www.zoll.de/english_version/index.html>
  11. 連邦法務省(Bundesministerium fur Justiz)<ttp://bundesrecht.juris.de/a_g/index.html>
  12. 連邦労働社会省 (BMAS) <http://www.bmas.bund.de/BMAS/Navigation/
    Arbeitsrecht/gesetze,did=22194.html
    >

印刷用PDFページ

このページの内容をプリントアウトしたい方は、以下のPDFファイルをクリックしてください。

ドイツ-労働力の国外送出についてのPDFファイル(78KB)

掲載されている内容をご利用になる際は、こちらを一読いただきますようお願いいたします。
各国の情報はPDFファイルでも作成されています。PDFファイルを見るためには、Adobe Readerというソフトが必要です。
Adobe Readerは無料で配布されています。ダウンロード・インストールする場合には、下のアイコンをクリックしてください。
Get Reader

▲ ページトップへ