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ロシア

作成年月日:2008年12月28日

労働力の国外送出について

5.1 関係法令及び制度の概要

労働力送出制度の枠組みは、当初はロシア連邦の憲法第27条により形作られた。

  1. ロシア連邦の領土内に合法的に滞在するすべての者は、旅行の自由、滞在地あるいは居住地の選択の権利を有する。
  2. あらゆる者はロシア連邦を自由に離れることができる。ロシア連邦の国民は、ロシア連邦に自由に帰国する権利を有する。
※出典:
The constitution of the Russian Federation, Chapter 2: Rights and Freedoms of Man and Citizen
<http://www.constitution.ru/en/10003000-03.htm>
accessed on 28 December 2008.

その他の重要な法令規則は、1996年8月15日公布の「ロシア連邦からの出国及びロシア連邦への入国の手続きに関する法律」である。ロシア国民に対しては、出国の際に一定の制限(国家機密へのアクセス、拘留の経歴保持者等)があるが、労働活動に関しての制限はなく、個人の労働契約にしたがって、誰でも自由に外国に行くことができる。このように、外国へのロシア人労働者の送出に関するロシアの規制は、比較的自由なものとなっている。加えて、ロシアは、外国人のロシアへの入国及び労働関係を持つことに関する多数の法律が存在している。

労働力の送出に関する法律は少なく、移民労働者に係る多くの重要な問題を扱う法律は存在していない。例えば、2001年12月31日公布のロシア連邦労働法(2001年連邦法No.197-FZ)では、第53条のみが労働者の送出に関連するロシアの在外領事館及びロシア連邦省庁の在外事務所の担当官の身分について規定している。外国に居住する、その他のロシア人労働者の権利義務に関しては、労働法の規定は存在していない。

5.2 送り出しの所轄機関

労働力の送出に関する政策の決定を担当する主要な政府機関は、ロシア連邦移民局である。当機関は、労働者のために許可証関係の手続き及びロシア国内の各地から外国へ送出するサービスを提供する人材採用機関のネットワークを創設している。

図5-1 外国での労働を希望する者と国外の雇用主をつなぐ2つの経路
図5-1 外国での労働を希望する者と国外の雇用主をつなぐ2つの経路

すべてのロシア人労働者は、これらの人材採用機関とのコンタクトが可能で、コンサルティング、査証取得のためのサービス及び外国で契約するのに必要となるその他サービスの提供を受けることができる。ロシア連邦移民局が提供するデータによれば、ロシアにおいて、そのようなサービスの提供が認可された553の採用機関が存在している。連邦移民局は、このような採用機関が十分に法令を順守した活動を行っていると認めていると見られるが、2008年の半期には、118の採用機関が査察を受け、資格停止処分を受けたのはわずか1機関のみであった。
ロシア連邦の連邦移民局は、ロシア国民の国外での就労に関する権利の提供に焦点を当て、国外に送出される労働力の規制に係る特別プログラムを開発している。当プログラムの実施期間は、2008~10年までの3年間であり、予算はほぼ1億5,000万ルーブル※1(約500万米ドル)となっている。当プログラムにおける主要な実施機関は、連邦移民局が監督する人材採用機関である。
しかし、この連邦移民局及び採用機関による労働力送出の経路は、外国で雇用されるロシア人の主要な部分を占めるものではない。国際移住機関が実施した分析調査の推計によれば、ロシアからの移民のわずか5%が採用機関を利用しており、90%以上の移民は友人、親類及びその他の非公式ルートの支援を選好している。前者の採用機関からの労働力送出の公式ルートに関する公的データは取得可能であるが、後者の非公式ルートを通じた国外での雇用のデータは、取得することが不可能である。

※1
1ルーブル=3.09184円(2008年12月28日現在)
※参考
ロシア連邦移民局
<www.fms.gov.ru>

※出典:
ロシア連邦移民局、2008~10年ロシア連邦移民局の成果及び主要活動に関する報告、モスクワ、2007年、
<http://www.fms.gov.ru/upload/
drond.doc#_Toc184197882
>
accessed on 28 December 2008.
S.K.Olimova, E.Yu.Sadovskaya、中央アジア、ロシア連邦、アフガニスタン及びパキスタンにおける労働移民の分析報告、2006年
<http://www.tcc.iom.int/iom/images/uploads/
IOM-Labour-Migration-in-Central-Asia-2005_1118060229.pdf
>

5.3 送出労働力の属性

ロシアの体制移行期間中、ロシアから外国への労働者送出の増加は顕著なものであった。Rosstat(ロシア連邦国家統計局)のデータによれば、1994年に送出した労働者数は8,083人であったが、2006年にはその8倍以上の6万5,747人に増加した。しかし、この数値は、ほかの先進国及び移行期にあるヨーロッパ各国と比較して極めて少ない。例えば、欧州社会調査のデータによると、過去10年に国外で賃金労働に就いた労働者の比率は、調査対象となったヨーロッパ各国(表5-1参照)と比較してロシアは最低であった。この調査では、ロシアの比率はわずか1.6%である一方、その他の国の合計での比率は6.2%であり、ロシアは6分の1に近い比率となっている。なお、この比率がもっとも高いのはアイルランドで、ロシアの8倍にも及んでいる。

※出典:
Federal State Statistics Service
<http://www.gks.ru/wps/portal/english>
accessed on 28 December 2008.

表5-1 過去10年間に外国で6カ月以上労働した者の割合(単位:%)
国名 過去10年間において、外国で6カ月以上賃金を得て労働したことがありますか 合計
はい いいえ
オーストリア 3.8 96.2 100.0
ベルギー 4.7 95.3 100.0
ブルガリア 4.5 95.5 100.0
スイス 5.0 95.0 100.0
キプロス 4.5 95.5 100.0
ドイツ 3.5 96.5 100.0
デンマーク 6.1 93.9 100.0
エストニア 9.5 90.5 100.0
スペイン 6.3 93.7 100.0
フィンランド 4.6 95.4 100.0
フランス 6.1 93.9 100.0
英国 6.9 93.1 100.0
ハンガリー 2.8 97.2 100.0
アイルランド 13.4 86.6 100.0
オランダ 9.6 90.4 100.0
ノルウェー 7.7 92.3 100.0
ポーランド 6.1 93.9 100.0
ポルトガル 7.7 92.3 100.0
ロシア 1.6 98.4 100.0
スウェーデン 7.9 92.1 100.0
スロベニア 4.2 95.8 100.0
スロバキア 10.8 89.2 100.0
ウクライナ 7.1 92.9 100.0
ラトビア 6.6 93.4 100.0
ルーマニア 5.9 94.1 100.0
合 計 6.2 93.8 100.0
※出典:
European Social Survey
<www.europeansocialsurvey.org>
accessed on 28 December 2008.

5.3.1 受入国

1990~2000年代の間に、国外で働くロシア人の数は安定的に増加した(表5-2参照)。労働者の送出国のグループの構造を調査すると、さまざまな国及び地域における政策、経済状態によってその数は大きく変動している。
ロシアの労働力送出の主要部分はヨーロッパ各国向けであり、2000年にはその3分の2を占め、また現在でも40%以上となっている。主たる受入国は、金融・銀行サービスに関するオフショア制度を有し、またロシア人富裕層が保養のために訪れるキプロスとなっている。第2位はアメリカ大陸の各国に占められており、米国が1番多くなっている。しかし、2006年になって米国への労働者送出が顕著に増加するまでは、アジア諸国がこの位置を占めていた。なお、2006年においては、米国への労働者送出がほかのどの国よりも多くなっている。

表5-2 ロシアからの労働者の受入国(1994~2006年)(単位:人、%)
国 名 人数(単位:人)
1994年 1998年 2000年 2003年 2006年
合 計 8,083 32,507 45,760 47,637 65,747
欧 州 2,766 18,484 30,320 26,179 28,641
 -英国 4 1,919 6,771 2,056 1,630
 -ドイツ 171 1,704 4,189 2,484 3,419
 -ギリシャ 484 2,786 3,242 3,122 2,221
 -キプロス 1,622 6,366 8,218 9,875 8,875
 -マルタ 148 1,731 3,063 3,258 4,416
アジア諸国 547 4,294 9,136 11,465 8,163
 -香港 54 1,616 479 389 226
 -モンゴル 3 22 82 181 360
 -シンガポール 9 935 1,978 1,056 972
 -日本 223 754 1,754 3,107 1,603
アフリカ諸国 353 2,347 1,516 2,612 4,484
 -リベリア 209 709 1,239 1,979 3,963
米国諸国 4,269 3,632 4,763 6,888 23,081
 -バハマ諸島 3,982 538 337 437 1,877
 -パナマ 115 1,030 1,180 1,084 1,590
 -米国 118 450 1,135 2,408 13,457
オセアニア 148 3,750 25 493 1,378
 -オーストラリア 148 3,750 25 493 1,378
国 名 構成比率(単位:%)
1994年 1998年 2000年 2003年 2006年
合 計 100 100 100 100 100
欧 州 34.2 56.9 66.3 54.9 43.6
 -英国 0.0 5.9 14.8 4.3 2.5
 -ドイツ 2.1 5.2 9.2 5.2 5.2
 -ギリシャ 6.0 8.6 7.1 6.6 3.4
 -キプロス 20.1 19.6 18.0 20.7 13.5
 -マルタ 1.8 5.3 6.7 6.8 6.7
アジア諸国 6.8 13.2 19.9 24.1 12.4
 -香港 0.7 5.0 1.0 0.8 0.3
 -モンゴル 0.0 0.1 0.2 0.4 0.6
 -シンガポール 0.1 2.9 4.3 2.2 1.5
 -日本 2.8 2.3 3.8 6.5 2.4
アフリカ諸国 4.4 7.2 3.3 5.5 6.8
 -リベリア 2.6 2.2 2.7 4.2 6.0
米国諸国 52.8 11.2 10.4 14.5 35.1
 -バハマ諸島 49.3 1.7 0.7 0.9 2.9
 -パナマ 1.4 3.2 2.6 2.3 2.4
 -米国 1.5 1.4 2.5 5.1 20.5
オセアニア 1.8 11.5 0.1 1.0 2.1
 -オーストラリア 1.8 11.5 0.1 1.0 2.1
※出典:
Federal State Statistics Service
<http://www.gks.ru/wps/portal/english>
accessed on 28 December 2008.

5.3.2 職種

この項目に該当するデータは存在していない。

5.3.3 年齢

一番若い年齢層(年齢16~29歳)は、外国に移住する労働者の多くの部分を占めるようになっており、1994年に23%であったのが2006年には41%を占めるに至っている(表5-3参照)。この調査の対象期間中に、ロシアから送出される女性労働者の増加が見られる。1994年の男性の比率は92%であったが、2006年にはわずか79%に減少している。ただし、男性は現在においても送出労働力の主要な部分を占めている。

表5-3 男女及び年齢別ロシアの労働者送出数(1994~2006年)
  人数(単位:人) 構成比率(単位:%)
合計 男性 女性 合計 男性 女性
合計
1994年 8,083 7,523 560 100 100 100
2005年 60,926 50,722 10,204 100 100 100
2006年 65,747 52,185 13,562 100 100 100
16~29歳
1994年 1,884 1,539 345 23.3 20.5 61.6
2005年 20,995 12,763 8,232 34.5 25.2 80.7
2006年 27,238 15,780 11,458 41.4 30.2 84.5
30~39歳
1994年 4,003 3,871 132 49.5 51.4 23.6
2005年 16,110 15,295 815 26.4 30.2 8
2006年 15,190 14,091 1,099 23.1 27 8.1
40~49歳
1994年 1,776 1,703 73 22 22.6 13
2005年 16,392 15,662 730 26.9 30.9 7.2
2006年 16,085 15,386 699 24.6 29.5 5.2
50~54歳
1994年 378 370 8 4.7 4.9 1.4
2005年 5,065 4,762 303 8.3 9.4 3
2006年 4,934 4,710 224 7.5 9 1.7
55~59歳
1994年 36 35 1 0.4 0.5 0.2
2005年 2,102 1,994 108 3.5 3.9 1.1
2006年 2,014 1,951 63 3.1 3.7 0.5
60歳以上
1994年 6 5 1 0.1 0.1 0.2
2005年 262 246 16 0.4 0.5 0.2
2006年 286 267 19 0.4 0.5 0.1
※出典:
Federal State Statistics Service
<http://www.gks.ru/wps/portal/english>
accessed on 28 December 2008.

5.3.4 技能水準

中等職業教育を受けた者の比率は、1994~2006年の間に大幅に減少している。高等教育を受けた者の構成割合にはほとんど変化が見られず、中等一般教育を修了した者の比率は4倍にもなっている。この中等一般教育修了者の大幅な増加は、外国へ移住する労働者の中で若い世代の比率が上昇していることが理由として考えられる。

表5-4 1994~2006年の期間中、ロシアから送出された労働者の教育水準
教 育 人 数(人)
1994年 1998年 2000年 2003年 2006年
合計 8,083 32,507 45,760 47,637 65,747
高等教育 2,692 8,631 16,839 16,824 20,901
中等職業教育 4,754 12,305 18,380 22,046 23,381
中等教育 562 11,125 10,238 8,593 20,857
中等教育未満 75 446 303 174 608
教 育 比 率(%)
1994年 1998年 2000年 2003年 2006年
合計 100 100 100 100 100
高等教育 33.3 26.5 36.8 35.3 31.8
中等職業教育 58.8 37.9 40.2 46.3 35.6
中等教育 7.0 34.2 22.4 18.0 31.7
中等教育未満 0.9 1.4 0.6 0.4 0.9
※出典:
Federal State Statistics Service
<http://www.gks.ru/wps/portal/english>
accessed on 28 December 2008.

加えて、3分の2は専門家としての経験を持たない者により構成されており(表5-5)、この比率は、1994~2006年の期間中に3倍も増加している。

表5-5 1994~2006年にロシアから国外に送出された者の在職期間
在職期間 人 数(人)
1994年 1998年 2000年 2003年 2006年
合 計 8,083 32,507 45,760 47,637 65,747
6カ月未満 1,677 4,527 12,101 19,296 43,834
6カ月以上
1年未満
5,952 20,408 24,811 16,963 14,949
1年以上
2年未満
217 1,282 1,060 1,118 1,651
2年以上
3年未満
123 1,394 1,028 2,411 1,843
3年以上 114 4,896 6,760 7,849 3,470

在職期間
比 率(%)
1994年 1998年 2000年 2003年 2006年
合 計 100 100 100 100 100
6カ月未満 20.8 13.9 26.5 40.5 66.7
6カ月以上
1年未満
73.6 62.8 54.2 35.6 22.7
1年以上
2年未満
2.7 4.0 2.3 2.3 2.5
2年以上
3年未満
1.5 4.3 2.2 5.1 2.8
3年以上 1.4 15.0 14.8 16.5 5.3
※出典:
Federal State Statistics Service
<http://www.gks.ru/wps/portal/english>
accessed on 28 December 2008.

1994年において、送出労働力の最大のグループは現場労働者(57%)であり、専門家の比率は36%、またマネージャークラスは7%であった。2006年においては、これらの数値は、マネージャークラスが17%、現場労働者の比率には変化がない一方、専門家の比率は26%まで減少している。

5.4 送出労働力の技能水準の評価制度

現在、ロシアにおいて送出労働力の技能水準に関する評価制度は存在していない。

5.5 労働力送出・受入に関する二国間・多国間協定

移民に関しては、ロシアと諸外国との間で80近くの多国間及び二国間の国際協定が締結されている。しかし、それらの協定の大部分は、外国人労働者のロシア国内への受け入れに関する協定であり、国外への労働力の送出に関する協定はない。

5.6 送出労働力の技能水準 二国間・多国間協定

調査中


参考文献

  1. The constitution of the Russian Federation, Chapter 2: Rights and Freedoms of Man and Citizen
    <http://www.constitution.ru/en/10003000-03.htm>
  2. ロシア連邦移民局、2008~10年ロシア連邦移民局の成果及び主要活動に関する報告、モスクワ、2007年、
    <http://www.fms.gov.ru/upload/
    drond.doc#_Toc184197882
    >
  3. S.K.Olimova, E.Yu.Sadovskaya、中央アジア、ロシア連邦、アフガニスタン及びパキスタンにおける労働移民の分析報告、2006年
    <http://www.tcc.iom.int/iom/images/uploads/
    IOM-Labour-Migration-in-Central-Asia-
    2005_1118060229.pdf
    >
  4. Federal State Statistics Service
    <http://www.gks.ru/wps/portal/english>
  5. European Social Survey
    <www.europeansocialsurvey.org>

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