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労働力送出制度の枠組みは、当初はロシア連邦の憲法第27条により形作られた。
その他の重要な法令規則は、1996年8月15日公布の「ロシア連邦からの出国及びロシア連邦への入国の手続きに関する法律」である。ロシア国民に対しては、出国の際に一定の制限(国家機密へのアクセス、拘留の経歴保持者等)があるが、労働活動に関しての制限はなく、個人の労働契約にしたがって、誰でも自由に外国に行くことができる。このように、外国へのロシア人労働者の送出に関するロシアの規制は、比較的自由なものとなっている。加えて、ロシアは、外国人のロシアへの入国及び労働関係を持つことに関する多数の法律が存在している。
労働力の送出に関する法律は少なく、移民労働者に係る多くの重要な問題を扱う法律は存在していない。例えば、2001年12月31日公布のロシア連邦労働法(2001年連邦法No.197-FZ)では、第53条のみが労働者の送出に関連するロシアの在外領事館及びロシア連邦省庁の在外事務所の担当官の身分について規定している。外国に居住する、その他のロシア人労働者の権利義務に関しては、労働法の規定は存在していない。
労働力の送出に関する政策の決定を担当する主要な政府機関は、ロシア連邦移民局である。当機関は、労働者のために許可証関係の手続き及びロシア国内の各地から外国へ送出するサービスを提供する人材採用機関のネットワークを創設している。

図5-1 外国での労働を希望する者と国外の雇用主をつなぐ2つの経路
すべてのロシア人労働者は、これらの人材採用機関とのコンタクトが可能で、コンサルティング、査証取得のためのサービス及び外国で契約するのに必要となるその他サービスの提供を受けることができる。ロシア連邦移民局が提供するデータによれば、ロシアにおいて、そのようなサービスの提供が認可された553の採用機関が存在している。連邦移民局は、このような採用機関が十分に法令を順守した活動を行っていると認めていると見られるが、2008年の半期には、118の採用機関が査察を受け、資格停止処分を受けたのはわずか1機関のみであった。
ロシア連邦の連邦移民局は、ロシア国民の国外での就労に関する権利の提供に焦点を当て、国外に送出される労働力の規制に係る特別プログラムを開発している。当プログラムの実施期間は、2008~10年までの3年間であり、予算はほぼ1億5,000万ルーブル※1(約500万米ドル)となっている。当プログラムにおける主要な実施機関は、連邦移民局が監督する人材採用機関である。
しかし、この連邦移民局及び採用機関による労働力送出の経路は、外国で雇用されるロシア人の主要な部分を占めるものではない。国際移住機関が実施した分析調査の推計によれば、ロシアからの移民のわずか5%が採用機関を利用しており、90%以上の移民は友人、親類及びその他の非公式ルートの支援を選好している。前者の採用機関からの労働力送出の公式ルートに関する公的データは取得可能であるが、後者の非公式ルートを通じた国外での雇用のデータは、取得することが不可能である。
ロシアの体制移行期間中、ロシアから外国への労働者送出の増加は顕著なものであった。Rosstat(ロシア連邦国家統計局)のデータによれば、1994年に送出した労働者数は8,083人であったが、2006年にはその8倍以上の6万5,747人に増加した。しかし、この数値は、ほかの先進国及び移行期にあるヨーロッパ各国と比較して極めて少ない。例えば、欧州社会調査のデータによると、過去10年に国外で賃金労働に就いた労働者の比率は、調査対象となったヨーロッパ各国(表5-1参照)と比較してロシアは最低であった。この調査では、ロシアの比率はわずか1.6%である一方、その他の国の合計での比率は6.2%であり、ロシアは6分の1に近い比率となっている。なお、この比率がもっとも高いのはアイルランドで、ロシアの8倍にも及んでいる。
| 国名 | 過去10年間において、外国で6カ月以上賃金を得て労働したことがありますか | 合計 | |
| はい | いいえ | ||
| オーストリア | 3.8 | 96.2 | 100.0 |
| ベルギー | 4.7 | 95.3 | 100.0 |
| ブルガリア | 4.5 | 95.5 | 100.0 |
| スイス | 5.0 | 95.0 | 100.0 |
| キプロス | 4.5 | 95.5 | 100.0 |
| ドイツ | 3.5 | 96.5 | 100.0 |
| デンマーク | 6.1 | 93.9 | 100.0 |
| エストニア | 9.5 | 90.5 | 100.0 |
| スペイン | 6.3 | 93.7 | 100.0 |
| フィンランド | 4.6 | 95.4 | 100.0 |
| フランス | 6.1 | 93.9 | 100.0 |
| 英国 | 6.9 | 93.1 | 100.0 |
| ハンガリー | 2.8 | 97.2 | 100.0 |
| アイルランド | 13.4 | 86.6 | 100.0 |
| オランダ | 9.6 | 90.4 | 100.0 |
| ノルウェー | 7.7 | 92.3 | 100.0 |
| ポーランド | 6.1 | 93.9 | 100.0 |
| ポルトガル | 7.7 | 92.3 | 100.0 |
| ロシア | 1.6 | 98.4 | 100.0 |
| スウェーデン | 7.9 | 92.1 | 100.0 |
| スロベニア | 4.2 | 95.8 | 100.0 |
| スロバキア | 10.8 | 89.2 | 100.0 |
| ウクライナ | 7.1 | 92.9 | 100.0 |
| ラトビア | 6.6 | 93.4 | 100.0 |
| ルーマニア | 5.9 | 94.1 | 100.0 |
| 合 計 | 6.2 | 93.8 | 100.0 |
1990~2000年代の間に、国外で働くロシア人の数は安定的に増加した(表5-2参照)。労働者の送出国のグループの構造を調査すると、さまざまな国及び地域における政策、経済状態によってその数は大きく変動している。
ロシアの労働力送出の主要部分はヨーロッパ各国向けであり、2000年にはその3分の2を占め、また現在でも40%以上となっている。主たる受入国は、金融・銀行サービスに関するオフショア制度を有し、またロシア人富裕層が保養のために訪れるキプロスとなっている。第2位はアメリカ大陸の各国に占められており、米国が1番多くなっている。しかし、2006年になって米国への労働者送出が顕著に増加するまでは、アジア諸国がこの位置を占めていた。なお、2006年においては、米国への労働者送出がほかのどの国よりも多くなっている。
| 国 名 | 人数(単位:人) | ||||
| 1994年 | 1998年 | 2000年 | 2003年 | 2006年 | |
| 合 計 | 8,083 | 32,507 | 45,760 | 47,637 | 65,747 |
| 欧 州 | 2,766 | 18,484 | 30,320 | 26,179 | 28,641 |
| -英国 | 4 | 1,919 | 6,771 | 2,056 | 1,630 |
| -ドイツ | 171 | 1,704 | 4,189 | 2,484 | 3,419 |
| -ギリシャ | 484 | 2,786 | 3,242 | 3,122 | 2,221 |
| -キプロス | 1,622 | 6,366 | 8,218 | 9,875 | 8,875 |
| -マルタ | 148 | 1,731 | 3,063 | 3,258 | 4,416 |
| アジア諸国 | 547 | 4,294 | 9,136 | 11,465 | 8,163 |
| -香港 | 54 | 1,616 | 479 | 389 | 226 |
| -モンゴル | 3 | 22 | 82 | 181 | 360 |
| -シンガポール | 9 | 935 | 1,978 | 1,056 | 972 |
| -日本 | 223 | 754 | 1,754 | 3,107 | 1,603 |
| アフリカ諸国 | 353 | 2,347 | 1,516 | 2,612 | 4,484 |
| -リベリア | 209 | 709 | 1,239 | 1,979 | 3,963 |
| 米国諸国 | 4,269 | 3,632 | 4,763 | 6,888 | 23,081 |
| -バハマ諸島 | 3,982 | 538 | 337 | 437 | 1,877 |
| -パナマ | 115 | 1,030 | 1,180 | 1,084 | 1,590 |
| -米国 | 118 | 450 | 1,135 | 2,408 | 13,457 |
| オセアニア | 148 | 3,750 | 25 | 493 | 1,378 |
| -オーストラリア | 148 | 3,750 | 25 | 493 | 1,378 |
| 国 名 | 構成比率(単位:%) | ||||
| 1994年 | 1998年 | 2000年 | 2003年 | 2006年 | |
| 合 計 | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 |
| 欧 州 | 34.2 | 56.9 | 66.3 | 54.9 | 43.6 |
| -英国 | 0.0 | 5.9 | 14.8 | 4.3 | 2.5 |
| -ドイツ | 2.1 | 5.2 | 9.2 | 5.2 | 5.2 |
| -ギリシャ | 6.0 | 8.6 | 7.1 | 6.6 | 3.4 |
| -キプロス | 20.1 | 19.6 | 18.0 | 20.7 | 13.5 |
| -マルタ | 1.8 | 5.3 | 6.7 | 6.8 | 6.7 |
| アジア諸国 | 6.8 | 13.2 | 19.9 | 24.1 | 12.4 |
| -香港 | 0.7 | 5.0 | 1.0 | 0.8 | 0.3 |
| -モンゴル | 0.0 | 0.1 | 0.2 | 0.4 | 0.6 |
| -シンガポール | 0.1 | 2.9 | 4.3 | 2.2 | 1.5 |
| -日本 | 2.8 | 2.3 | 3.8 | 6.5 | 2.4 |
| アフリカ諸国 | 4.4 | 7.2 | 3.3 | 5.5 | 6.8 |
| -リベリア | 2.6 | 2.2 | 2.7 | 4.2 | 6.0 |
| 米国諸国 | 52.8 | 11.2 | 10.4 | 14.5 | 35.1 |
| -バハマ諸島 | 49.3 | 1.7 | 0.7 | 0.9 | 2.9 |
| -パナマ | 1.4 | 3.2 | 2.6 | 2.3 | 2.4 |
| -米国 | 1.5 | 1.4 | 2.5 | 5.1 | 20.5 |
| オセアニア | 1.8 | 11.5 | 0.1 | 1.0 | 2.1 |
| -オーストラリア | 1.8 | 11.5 | 0.1 | 1.0 | 2.1 |
この項目に該当するデータは存在していない。
一番若い年齢層(年齢16~29歳)は、外国に移住する労働者の多くの部分を占めるようになっており、1994年に23%であったのが2006年には41%を占めるに至っている(表5-3参照)。この調査の対象期間中に、ロシアから送出される女性労働者の増加が見られる。1994年の男性の比率は92%であったが、2006年にはわずか79%に減少している。ただし、男性は現在においても送出労働力の主要な部分を占めている。
| 人数(単位:人) | 構成比率(単位:%) | |||||
| 合計 | 男性 | 女性 | 合計 | 男性 | 女性 | |
| 合計 | ||||||
| 1994年 | 8,083 | 7,523 | 560 | 100 | 100 | 100 |
| 2005年 | 60,926 | 50,722 | 10,204 | 100 | 100 | 100 |
| 2006年 | 65,747 | 52,185 | 13,562 | 100 | 100 | 100 |
| 16~29歳 | ||||||
| 1994年 | 1,884 | 1,539 | 345 | 23.3 | 20.5 | 61.6 |
| 2005年 | 20,995 | 12,763 | 8,232 | 34.5 | 25.2 | 80.7 |
| 2006年 | 27,238 | 15,780 | 11,458 | 41.4 | 30.2 | 84.5 |
| 30~39歳 | ||||||
| 1994年 | 4,003 | 3,871 | 132 | 49.5 | 51.4 | 23.6 |
| 2005年 | 16,110 | 15,295 | 815 | 26.4 | 30.2 | 8 |
| 2006年 | 15,190 | 14,091 | 1,099 | 23.1 | 27 | 8.1 |
| 40~49歳 | ||||||
| 1994年 | 1,776 | 1,703 | 73 | 22 | 22.6 | 13 |
| 2005年 | 16,392 | 15,662 | 730 | 26.9 | 30.9 | 7.2 |
| 2006年 | 16,085 | 15,386 | 699 | 24.6 | 29.5 | 5.2 |
| 50~54歳 | ||||||
| 1994年 | 378 | 370 | 8 | 4.7 | 4.9 | 1.4 |
| 2005年 | 5,065 | 4,762 | 303 | 8.3 | 9.4 | 3 |
| 2006年 | 4,934 | 4,710 | 224 | 7.5 | 9 | 1.7 |
| 55~59歳 | ||||||
| 1994年 | 36 | 35 | 1 | 0.4 | 0.5 | 0.2 |
| 2005年 | 2,102 | 1,994 | 108 | 3.5 | 3.9 | 1.1 |
| 2006年 | 2,014 | 1,951 | 63 | 3.1 | 3.7 | 0.5 |
| 60歳以上 | ||||||
| 1994年 | 6 | 5 | 1 | 0.1 | 0.1 | 0.2 |
| 2005年 | 262 | 246 | 16 | 0.4 | 0.5 | 0.2 |
| 2006年 | 286 | 267 | 19 | 0.4 | 0.5 | 0.1 |
中等職業教育を受けた者の比率は、1994~2006年の間に大幅に減少している。高等教育を受けた者の構成割合にはほとんど変化が見られず、中等一般教育を修了した者の比率は4倍にもなっている。この中等一般教育修了者の大幅な増加は、外国へ移住する労働者の中で若い世代の比率が上昇していることが理由として考えられる。
| 教 育 | 人 数(人) | ||||
| 1994年 | 1998年 | 2000年 | 2003年 | 2006年 | |
| 合計 | 8,083 | 32,507 | 45,760 | 47,637 | 65,747 |
| 高等教育 | 2,692 | 8,631 | 16,839 | 16,824 | 20,901 |
| 中等職業教育 | 4,754 | 12,305 | 18,380 | 22,046 | 23,381 |
| 中等教育 | 562 | 11,125 | 10,238 | 8,593 | 20,857 |
| 中等教育未満 | 75 | 446 | 303 | 174 | 608 |
| 教 育 | 比 率(%) | ||||
| 1994年 | 1998年 | 2000年 | 2003年 | 2006年 | |
| 合計 | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 |
| 高等教育 | 33.3 | 26.5 | 36.8 | 35.3 | 31.8 |
| 中等職業教育 | 58.8 | 37.9 | 40.2 | 46.3 | 35.6 |
| 中等教育 | 7.0 | 34.2 | 22.4 | 18.0 | 31.7 |
| 中等教育未満 | 0.9 | 1.4 | 0.6 | 0.4 | 0.9 |
加えて、3分の2は専門家としての経験を持たない者により構成されており(表5-5)、この比率は、1994~2006年の期間中に3倍も増加している。
| 在職期間 | 人 数(人) | ||||
| 1994年 | 1998年 | 2000年 | 2003年 | 2006年 | |
| 合 計 | 8,083 | 32,507 | 45,760 | 47,637 | 65,747 |
| 6カ月未満 | 1,677 | 4,527 | 12,101 | 19,296 | 43,834 |
| 6カ月以上 1年未満 |
5,952 | 20,408 | 24,811 | 16,963 | 14,949 |
| 1年以上 2年未満 |
217 | 1,282 | 1,060 | 1,118 | 1,651 |
| 2年以上 3年未満 |
123 | 1,394 | 1,028 | 2,411 | 1,843 |
| 3年以上 | 114 | 4,896 | 6,760 | 7,849 | 3,470 |
在職期間 |
比 率(%) | ||||
| 1994年 | 1998年 | 2000年 | 2003年 | 2006年 | |
| 合 計 | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 |
| 6カ月未満 | 20.8 | 13.9 | 26.5 | 40.5 | 66.7 |
| 6カ月以上 1年未満 |
73.6 | 62.8 | 54.2 | 35.6 | 22.7 |
| 1年以上 2年未満 |
2.7 | 4.0 | 2.3 | 2.3 | 2.5 |
| 2年以上 3年未満 |
1.5 | 4.3 | 2.2 | 5.1 | 2.8 |
| 3年以上 | 1.4 | 15.0 | 14.8 | 16.5 | 5.3 |
1994年において、送出労働力の最大のグループは現場労働者(57%)であり、専門家の比率は36%、またマネージャークラスは7%であった。2006年においては、これらの数値は、マネージャークラスが17%、現場労働者の比率には変化がない一方、専門家の比率は26%まで減少している。
現在、ロシアにおいて送出労働力の技能水準に関する評価制度は存在していない。
移民に関しては、ロシアと諸外国との間で80近くの多国間及び二国間の国際協定が締結されている。しかし、それらの協定の大部分は、外国人労働者のロシア国内への受け入れに関する協定であり、国外への労働力の送出に関する協定はない。
調査中
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