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英国

作成年月日:2009年7月14日

雇用労働関係法令

1.1 雇用労働関係法令一覧

 被雇用者と労働者の権利義務に関する規定の大部分は、1996年雇用権法(Employment Rights Act 1996)に統合されている。必要な増補・修正とともに追加的権利は新法制定がなされ今日に至っている。主なものは、1999年雇用関係法(Employment Relations Act 1999)、2004年雇用関係法、2002年雇用法(Employment Act 2002)、2006年就業家族法(Work and Families Act 2006)、2008年雇用法がある。それ以外の主な追加権利関連法規を列記する。

  • 1995年障害者差別禁止法(Disability Discrimination Act 1995)
  • 2002年雇用法(紛争解決)規則(Employment Act 2002(Dispute Resolution)Regulations 2004)
  • 2006年雇用均等(年齢)規則(Employment Equality(Age)2006)
  • 2003年雇用均等(宗教・信仰)規則(Employment Equality(Religion or Belief)Regulations 2003)
  • 2003年雇用均等(性的指向)規則(Employment Equality(Sexual Orientation) Regulations 2003)
  • 1996年雇用審判法(Employment Tribunals Act 1996)
  • 1970年同一賃金法(Equal Pay Act 1970)
  • 2002年有期契約労働者(不利益待遇の防止)に関する規則(Fixed-term Employees(Prevention of Less Favourable Treatment)Regulations 2002)
  • 2002年フレックスタイム労働(適格、苦情、救済)規則(Flexible Working(Eligibility, Complaints and Remedies)Regulations 2002)
  • 1998年全国最低賃金法(National Minimum Wage Act 1998)
  • 1999年全国最低賃金法(National Minimum Wage Act 1999)
  • 1999年全国最低賃金規則(National Minimum Wage Regulations 1999)
  • 1999年出産・育児休暇等に関する規則(Maternity and Parental Leave etc. Regulations 1999)
  • 2000年パートタイム労働者(不利益待遇の防止)規則(Part-time Workers(Prevention of Less Favourable Treatment)Regulations 2000)
  • 2002年父親の育児休暇及び養子縁組休暇規則(Paternity and Adoption Leave Regulations 2002)
  • 1998年公益開示法(Public Interest Disclosure Act 1998)
  • 1976年人種関係法(Race Relations Act 1976)
  • 1974年犯罪者更生法(Rehabilitation of Offenders Act 1974)
  • 2001年教育訓練休業の権利規則(Right to Time Off for Study or Training Regulations 2001)
  • 1977年安全代表及び安全委員会規則(Safety Representatives and Safety Committee Regulations 1977)
  • 1975年性差別禁止法(Sex Discrimination Act 1975)
  • 2002年法定育児賃金及び法定養子賃金(全般)規則(Statutory Paternity Pay and Statutory Adoption Pay(General)Regulations 2002)
  • 1992年労働組合労働関係(統合)法(Trade Union and Labour Relations (Consolidation)Act 1992)
  • 2006年企業譲渡(雇用保護)規則(Transfer of Undertakings(Protection of Employment)Regulations 2006)
  • 1998年労働時間規則(Working Time Regulations 1998)

1.2 労働基準関係法令

 雇用規定の重要部分は2002年雇用法(Employment Act 2002)に規定されている。同法は、働く母親に対する有給、無給の出産休暇及び追加出産休暇、養子縁組をした親の育児休暇、父親の育児休暇、法定母子手当の増額、さらに雇用者負担で出産、育児、養子養育により発生した費用の償還について定めている。また、働く親(6歳未満の子供又は傷害を持つ18歳未満の子供を持つ者)がフレックスタイム勤務の適用を受ける権利、組合教育訓練担当者の助言・相談を受ける権利、同一賃金事例における質問手続き、期間限定従業員用の規定、雇用契約内容の文書化に関する規定も含まれている。2006年就業家族法(Work and Families Act 2006)、2008年雇用法に追加規定が定められている。

1.2.1 労働契約

 2002年雇用法は、有期雇用制度の乱用防止のため、有期契約労働者に対して正社員と同等の待遇をするよう規定している。雇用者は、客観的に正当と認められ事業上必要かつ妥当な理由がなければ、有期契約労働者に対して正社員と同じ又は同等の賃金及び雇用条件、福利厚生、年金の受給権を与えなければならない。また、雇用者は有期契約労働者に正社員登用の機会も与えなければならない。2002年の有期契約労働者(不利益待遇の防止)関する規則(Fixed-term Employees(Prevention of Less Favourable Treatment)Regulations 2002)では、4年以上の有期契約で就労する労働者は契約更新をするか又は新たに有期契約を結べば、大抵の場合法的には正社員として扱われる。

1.2.2 解雇規則

 1996年雇用権法(Employment Rights Act 1996)は最短通告期間を従業員の権利として明確に規定する。雇用者が1カ月以上継続雇用中の従業員に雇用契約終了を通知する場合の予告期間は、下記のとおりである。

  • 継続雇用期間が1カ月以上2年未満の場合:1週間
  • 継続雇用期間が2年以上12年未満の場合:継続雇用年数×1週間
  • 継続雇用期間が12年以上の場合:最低12週間

 また、従業員が雇用契約終了通知をすでに受領し雇用契約が終了する場合、又は有期雇用契約で満期により契約が終了する場合であっても、解雇通知書が必要である。一方、継続雇用期間が2年以上の従業員は解雇理由の開示を要求できる。雇用者は要求を受けてから2週間以内に書面により解雇理由を開示しなければならない。妊娠、又は出産後の出産休暇が解雇を理由に終了する場合は、従業員は解雇理由書を求める権利がある。1996年雇用権法では、従業員が不当解雇されないこと、及び産業法廷に苦情を申し立てる権利を与え、申し立てに根拠がある場合は補償金が支払われるとともに、復職又は再雇用命令が出される。
 雇用者が雇用契約を終了すれば従業員は解雇される。従業員が不当解雇だと考えれば、産業法廷に苦情申し立てができる。懲戒処分は最後の手段として非公式な方法では問題解決ができない場合のみに行わなければならない。解雇を含めた懲戒処分手続きについては助言斡旋仲裁局(The Advisory, Conciliation and Arbitration Service:ACAS)の懲戒及び苦情処理手続きに関する行為準則(Code of Practice on Discipline and Grievance)に規定されている。同準則自体には法的強制力がなく、産業法廷は当該事件処理に際しこの規定を斟酌する。雇用者が重大な雇用契約違反をした場合は、従業員の退職が認められている(みなし解雇)。

1.2.3 賃金、労働時間、休憩、休日、年次有給休暇、時間外及び休日労働、時間外の割増賃金

  1. 全国最低賃金
     1998年全国最低賃金法(National Minimum Wage Act 1998)は以後の修正・補足を含め、賃金に関する唯一つの実質的な法律である。同法が適時定める最低賃金以下の支払いを行う雇用者は違法とされる。従業員が賃金見直し又は賃上げを要求する権利について、法律上の規定はない。全国最低賃金は、ほぼすべての労働者に適用され、最低賃金額以下の賃金は認められていない。最低賃金は、独立機関の低賃金委員会の勧告に基づき決定される。同法では、正社員、パートタイマー、派遣労働者、臨時又は日雇労働者、出来高払い労働者又は在宅勤務労働者の別なく、労働者は全国最低賃金に関する権利を持つ。全国最低賃金は年齢別に3種類に分かれ、通常毎年10月に改定が行われる。2009年10月1日以降の最低賃金は以下のとおりである。
    • 22歳以上:時給£5.80※1
    • 18〜21歳:時給£4.83
    • 16〜17歳:時給£3.57
    ※1
    1ポンド=155.62円(2009年7月14日現在)

  2. 労働時間
     労働時間規則(Working Time Regulations)は、週当たりの平均労働時間の上限、労働時間中に休憩を取る権利、夜間勤務の場合の労働時間を規定している。18歳以上の一般労働者は、週休1日、又は2週間に2日の休日を取る権利が与えられている。また、連続して6時間以上働く場合は20分の休憩時間の権利、週当たりの平均労働時間は48時間以内と定められている。16〜17歳の労働者は、連続して4.5時間以上働く場合は最低30分の休憩時間の権利、労働時間は1日当たり8時間、週当たり40時間以内とすること、1日に12時間以上の休息の権利、週休2日の権利が定められている。同規定は、ほぼすべての労働者を対象とし、パートタイマー、臨時労働者、フリーランサー、派遣労働者にも適用される。ただし、18歳以上の労働者は平均週48時間以上の労働を強いられることはない。雇用主は17週以上の平均で労働時間を算出しなければならない。
     労働時間規則の例外として、労働者の職場と自宅が離れている場合、労働者が仕事で長距離を移動する場合、警備及び監視業務、24時間体制の勤務が必要な業務、鉄道・運輸業務の一部、繁忙期及び緊急事態の場合がある。このような場合、雇用者は労働時間を17週ではなく、26週以上の平均で算出することができる。2005年春以降、道路交通労働時間規則(Road Transport(Working Time)Regulations)は、自営業者を除く全移動労働者に影響を与えている。現行規定の下では移動労働者は(a)各週の平均労働時間が48時間以内、(b)週当たりの労働時間は60時間以内、(c)夜間労働の場合は、24時間当たりの労働時間が10時間以内とされている。
     1998年労働時間規則の導入及びその後の制定は1993年EU労働時間指令(European Commission Working Time Direction)、2003年同指令の影響を受けている。英国政府はEU労働時間指令のオプト・アウト(適用除外)※2を表明しており、英国の労働者は週48時間を超えて働くことができる。2009年4月、ECはEU労働時間指令改正案が廃案となったため、英国では国内法を修正することなく、書面による労働者の合意があれば依然として週48時間の限度を超えて労働できる。労働者は例外規定をいつでも破棄できるが、遅くても7日前までに雇用者に通知しなければならない。さらに労働者は平均労働時間の算定期間を通常の17週から最長52週まで延長できる。
     仕事の性質上通常は労働時間を自分で決められる上級管理職は、労働時間規則の適用から除外されるが、労働者の意思に反して平均週48時間以上の労働を強制してはならないという規則は適用される。雇用者は規則順守のため労働時間を記録して管理することが重要である。
    ※2
    オプト・アウト(opt out)とは選択して外すという意味で、EU労働時間指令による週48時間労働の規制を個人の希望により外せることをいう。英国ではEU労働時間指令を受けて週48時間規制が導入されたが、労働者の書面による合意があれば週48時間を超えて労働できるオプト・アウト制度も同時に導入された。

  3. 休日
     労働時間規則によると、労働者が受ける年間法定休日は、週5日勤務で年間5.6週(28日)である。2009年4月1日以降、法定休日勤務に対する賃金支払いは認められない。しかし、年間5.6週(28日)の最低法定休日を超える未取得の休日に対する賃金は支払うことができる。パートタイマーの受給日数は比例配分した日数とする。週3日勤務の労働者は年間16.8日の休日がある(週3日×5.6週=16.8日)。ACASは休日及び休日賃金について手引用冊子を作成している。それによると、従業員が休暇を取得するには、休暇期間の2倍以上前に雇用主に通知する必要があるとされている。また、雇用主は以下の条件により休暇取得を制限することができる。
    1. 雇用契約に明確な規定がある
    2. 暗黙の慣行による
    3. 労働協約により個別契約に含まれている
     例えば、雇用主は、全労働者又は一部のグループが一定期間にいっせいに休暇を取ると予想される場合(クリスマスや年末年始など)、休業日として指定することができる。また、一度に取得できる最長休暇日数及び休暇が取得できる時期を決めることができる。休暇希望日が複数の労働者間で重複した場合、職務上の必要性と個人の事情を考慮するか、あるいはくじ引きや先着順等の方法で解決することができる。合意がない場合は1998年労働時間規則を適用し、雇用主は従業員に対して休暇期間の2倍以上前に通知することにより、すべて又は一部の休暇を特定の時期に取るよう要求することができる。

  4. 有給休暇
     従業員が離職する場合、年次有給休暇の受給及び未消化の休暇に見合う補償金の権利は雇用開始日から発生する。ただし、雇用主は、雇用1年目は合意により休暇を次年度に繰り越し累積することができる。休暇日数は、毎月、年間日数の12分の1の割合で加算される。雇用契約終了時、労働者は、未消化の有給休暇の代わりに離職年又は就労年の初日から離職日までの比例配分基準で計算した日数に相当する賃金を請求できる。週単位の未消化の休日について、労働者は週給での支払いを請求する権利が認められている。週給額の算出は以下のとおり職種によって異なる。
    1. 固定時給支払いの場合:1週間分の賃金に相当する額
    2. 変形時間給支払い(ボーナス、コミッション、出来高払い)の場合:平均時給×通常の週当たり労働時間に相当する額
    3. 交替制勤務の場合:直近12週の平均時給×平均労働時間に相当する額

  5. 時間外労働
     英国では、法的に雇用者が従業員に対し時間外労働を命じられるという規定も、時間外労働を活用してもよいという規定もなく、さらには、従業員に追加賃金請求権を与える規定もない。1998年労働時間規則では、労働者は平均週48時間を超えて働くことを要求されない。しかし、雇用主が従業員に定期的な時間外労働を期待しているのであれば、従業員契約書に記載しておくべきである。例えば契約書には、(a)強制的なものか自発的なものか、(b)割増賃金率、(c)割増賃金適用開始時刻、(d)時間外労働協定通知書、(e)認可手続き、例えば労務責任者が必ず事前に合意文書を取り交わすこと等が記載されることが望ましい。

  6. 休日労働
     雇用主は、休日及び祝日でも従業員を勤務させることができる。しかし、雇用契約書に明記しておくのが実務慣例として良い方法である。内容としては、(a)該当するすべての祝日、(b)有給か無給か、(c)賃金料率(すなわち、通常賃金率か、割増率か、例えば通常の1.5倍かあるいは2倍か等)を明記する。ただし、従業員が長期間にわたって休日及び祝日に休みが与えられている場合は、実際の契約書に記載がなくても実質的には契約の一部になる黙示条項となりうる。

  7. 時間外の割増賃金
     時間外労働に対する法的な最低賃金の規定はないが、割増料率は業界内の協定により定めることができるため、時間外賃金は業種によって多様である。典型的な割増料率は、平日と土曜日午前1.5倍、土曜日午後、日曜日及び祝日は2倍(店員については例外とすることができる)、クリスマスと新年は2倍以上となっている。時間外割増を勤務時間の長さに応じて変える企業もあり、例えば、最初の2時間はプラス3分の1、以後、プラス2分の1としている。

1.2.4 年少者、女性、民族、外国人労働者、労働安全衛生、アウトソーシング(委託業務や派遣労働)

  1. 年少者
     16〜17歳の若年労働者は、連続して4時間半を超えて労働する場合の30分の休憩時間の権利、労働時間は1日当たり8時間以内、週当たり40時間以内とすること、1日に12時間の休息の権利、週休2日の権利がある。こうした時間数については、平均値とすることはできず、適用除外は受けられない。若年労働者は、継続した業務又は生産、あるいは急増する業務や生産に対応する必要があること、さらに成人労働者が仕事を遂行できず、訓練によって若年者が悪影響を受けない場合、労働時間の延長ができる。
     雇用主は若年労働者の雇用に際しては、当人の健康及び安全に留意してリスク評価を実行し、必要な見直しをしなければならない。18歳以下の若年労働者を危険な環境下で雇用できるのは、以下の条件を満たす場合のみである。すなわち、訓練のために行う場合、監督者の監視下で就労し、かつリスクが最小限である場合に限定される。
     若年労働者は通常22時から翌朝6時の夜間労働はできない。義務教育修了年齢以上の16〜17歳の全若年労働者の全国最低賃金は時給£3.57であり、19歳以下の徒弟労働者に適用される全国最低賃金は免除される。ただし、イングランドにおいては教育技能委員会(Learning and Skills Council:LSC)の資金で採用されるすべての徒弟労働者は週給£80以上を受け取る権利がある。また、16〜17歳の若年労働者で一定水準の教育が未履修ならば、有給で学習・訓練を受ける権利がある。

  2. 女性
     2006年就業家族法の規定は、家族に対する義務を履行する権利を女性に限らず対象を拡大している。同法では、出産及び養子給付金を6カ月から9カ月に延長し、成人介護者に対してはフレックスタイム勤務の請求権を与え、さらに就労中の父親には、母親が職場復帰すれば、新たに最長26週の新父親休暇(一部は有給)が与えられる。
     雇用主は、妊婦の安全衛生を保護することが義務付けられており、例えば作業工程や労働環境に不妊につながるようなものはないか、母体や胎児への危険要因がないかなどのリスク評価を行わなければならない。したがって、雇用主は、妊娠中か否かに関係なくすべての出産年齢女性の健康に留意し、通常のリスク評価の一部としてどの仕事においても彼女らに特に危険をもたらすかどうか考慮すべきである。
     雇用主は性差別の苦情を招きかねないので、妊娠中を理由に労働者に不公平な取り扱いをしてはならない。これには解雇も含まれ、雇用主が解雇、又は余剰人員削減、妊娠に関連する理由あるいは出産前の治療で有給休暇の権利を行使しようとする理由による解雇は、自動的に不当解雇になる。
     妊娠中のすべての女性従業員は、勤続年数の長短又は労働時間数にかかわらず、出産前の治療のために有給休暇を取る権利がある。また、妊娠に伴う病気には通常の病気有給休暇を取る権利及び52週間の出産休暇を取る権利がある。出産休暇は26週間の通常出産休暇(Ordinary Maternity Leave:OML)とOML 終了後間を置かず直ちに始まる26週間の追加出産休暇(Additional Maternity Leave:AML)がある。OML適用中の女性は、契約上の利益が普通に受けられる。例えば、通常与えられる契約上の休暇及び同じ職務に復帰する権利などである。AML取得中の女性は、雇用主の信用と信頼による黙示の義務を享受する権利があり、解雇通告に関する契約条件、剰員整理補償金、懲戒・苦情の手続き、原職への復帰、もしくは実際的でない理由があれば、妥当な契約条件で類似の仕事に復帰する権利が与えられている。

  3. 民族
     1976年人種関係法(The 1976 Race Relations Act)は雇用主が従業員を人種で差別することを違法としている。人種とは肌の色、国籍及び民族又は出身国を含み、法律上差別が意図的なものか否かは問題ではなく、雇用主の差別行為が結果として一人の人間が人種を理由に不利な扱いを受けることが問題とされる。同法は人種、肌の色、国籍、信仰、出身国又は出身民族にかかわらず、すべての人種グループを保護する。

  4. 外国人労働者
     英国のすべての雇用主は不法移民流入防止の責任を負っており、したがって国内において就労目的で採用する際は労働資格を確認しなければならない。これを怠たると罰金が課せられ、不法移民労働者と知りながら採用している場合は刑事訴追もあり得る。居住権を有するすべての英国市民及び欧州経済領域(European Economic Area:EEA)の加盟国民は、自動的に英国内で就労できる。東欧のEEA加盟国の中には、英国内での合法的な就労のため英国入国管理局に登録し、労働許可の取得が必要な国もある。労働許可のない者を制限なく就労させたい雇用主は、点数制に基づく制度(Points-based system)により申請しなければならない。現在、英国内で学ぶフルタイムの学生は、若干の制限はあるものの自動的に就労(アルバイト)する権利が与えられる。同制度は以前からあるすべての就労、研修又は修学ルートに取って代わるもので、以下の5段階構成になっている。
    • 第1段階  高度な専門技術を有する者
    • 第2段階  英国内で不足している技能者
    • 第3段階  一時的な労働力不足を補う単純労働者
    • 第4段階  学生
    • 第5段階  一時的労働者(ワーキングホリデー等)
     申請者は労働許可を得るために区分ごとに定められた基準点数に達しなければならない。技能、年齢、職業資格、以前の収入、英語力、預金額等に応じて点数は与えられる。この制度では、特定の雇用主に雇われて仕事をする労働者に身元引受証(Certificate of Sponsorship)が発行される。

  5. 労働安全衛生
     雇用主は、企業活動の影響を受けるすべての人々の健康と労働安全衛生に法的責任を負っている。会社の敷地内で働く従業員、在宅あるいは他の場所で働く従業員、顧客又は下請け業者のような会社の敷地内に立入る外来者、雇用主が経営する建築現場のような敷地内で働く者、一般市民(会社の敷地外でも)、企業が設計、産出又は供給した製品及びサービスの影響を受けるすべての者に対して責任がある。さらに、企業は公共の場所、職場、1人以上の使用に供される車両内の禁煙ルールも守らねばならない。雇用主は、企業が直面するリスク評価を徹底的に行い、また、健康、労働安全方針を作成し、従業員5人以上の場合は明文化しなければならない。雇用主は、明確な法的必要条件に従って、事故の記録及び報告を行い、健康及び労働安全衛生については安全部門の代表者と協議し、従業員が健康と労働安全衛生への理解を深め、確実に責任を果たすようにしなければならない。
     また、すべての雇用主は職場の安全を確保しなくてはならない。すなわち、(a)健康に害が及ぶ危険を防止する、(b)設備及び機械の安全な使用を確実にする、労働安全の実施を確立し、確実に順守する、(c)すべての材料の安全な取り扱い、貯蔵及び使用を確保する、(d)十分な応急処置を用意する、(e)全従業員に対して従事する仕事のあらゆる潜在的な危険、工場で使用する化学薬品、物質について告知し、情報を提供し、指示を与え、研修を行い、必要に応じて監督する、(f)緊急対策プランの策定、(g)空調、温度、照明、トイレ、洗濯及び休憩設備など健康、安全、福祉面で必要条件を満たす設備を確実に整備する、(h)作業設備が正しく提供されているか、適切に使用されているか、定期的に整備されているかを確認する、(i)健康に害を及ぼす物質にさらされることを防止又は管理する、(j)可燃物、又は爆発の誘因となるもの、電気設備、騒音、放射線等により発生するリスクを予防する、(k)手作業も含めて潜在的に危険な作業を避け、やむをえない場合は負傷の軽減措置を取る、(l)危険が除去できず他の方法では制御できない場合は、無料で防護服、防護装置を提供する、などである。さらに、雇用主は適切な注意警告を確実に提供し、事故、傷害、疾病、危険事態の発生については事業別に安全衛生庁(Health and Safety Executive:HSE)又は地方当局に報告する責任を持つ。
    包括的な安全衛生に関する法律については、下記サイトを参照。
  6. アウトソーシング(委託業務や派遣労働)
     派遣労働では、健康及び安全規則及び個別的雇用関係法など労働法令のいくつかの分野で被雇用者と労働者との相違が問題となっている。誰が被雇用者で誰が労働者か、正確な定義が法令ごとに微妙に異なっているためである。一般的に、被雇用者とは、文書、口頭、あるいは黙示による雇用契約に基づき雇用者のために働く者を指す。派遣会社を通さず雇用される臨時労働者もいるが、彼らの多くは短期契約による被雇用者となりうる。労働者とは、雇用契約の有無に関係なく、雇用者のために働くすべての個人を指しており、例えば、季節労働者、派遣労働者、フリーランスで働く者などである。つまり、すべての被雇用者は労働者であるが、すべての労働者が被雇用者であるわけではない。法律において労働者と言及する場合は、規定や規則を比較検討すると被雇用者だけを意味するわけではない。雇用者のために働く労働者(自営の労働者を除く)、あるいは雇用される労働者は、少なくとも全国最低賃金、労働時間、年次有給休暇の権利を持つ資格がある。

1.2.5 就業規則、労働協約

  1. 就業規則
     就業規則は、通常雇用主が健康及び労働安全衛生、労働時間規則等々の法令に則って作成する。本件に関する最も重要な法規は1996年雇用権法である。本法により、すべての雇用主は、従業員に対し就業開始後2カ月以内に雇用内容の詳細を文書にして提供しなければならない。しかし、雇用契約は従業員の就業開始から直ちに適用される。就業規則には、時間外労働手当及び休日労働のような問題について、業界全体及び地域の労働協約を組み込まれる場合もある。

  2. 労働協約
     すべての組織体で雇用主と管理者は色々な形で労働者とかかわる。零細企業では雇用主が労働者に直接情報提供し協議する。大企業でも労働者に直接情報提供し、その上で協議する必要性は残っているが、労働者側の代表者と効果的な雇用関係を築くことが重要になっている。加えて、多くの法令は雇用主が労働組合代表者への情報提供や協議を持つことを求めている。より大きな組織では、労働組合代表者への情報提供と協議の正式手順を決めている。最も利用されているのは労働諮問会を通す方式である。労働組合には常設のものから一次的なものまで色々な形態がある。助言斡旋仲裁局(ACAS)は労働組合との色々なかかわり方や効果的な活用法を紹介する印刷物を作成しており、法律上の必要事項についても最新版を記載している。
     ACASは、1998年労働時間規則により導入された労使協定の考え方に注目している。労使協定は団体交渉による労働協約ではなく、雇用者と正規に選ばれた労働者の代表、労働者20人以下なら労働者の大多数との間で交わされる合意である。雇用者と独立した労働組合間で合意した労働協約が適用される労働者には、この労使協定は適用されない。文書による雇用契約などにより、労働協約あるいは労使協定は規則の適用を変えることができる。
     団体交渉は、賃金及び労使間に生じる労働条件の相違点について解決策を協議するため労使代表者間で合意された規則である。従業員が労働組合に加入すると、雇用主に対し承認請求がなされる。承認によって、組合員に代わり交渉する権利が組合に与えられる。公認労働組合は、団体交渉を目的とする情報提供、組合員としての義務及び組合活動(訓練を含む)のための休業、事業譲渡が行われる場合などの特定の状況における新事業主からの組合承認、安全衛生担当者の任命など一定の法的な権利を持つ。健康及び労働安全衛生を含む問題、90日以内に一企業20%以上の解雇提案、あるいは事業譲渡などの特定の問題において、事業主は個々の独立した公認労働組合の代表者、あるいは他の選任された代表者との協議が義務付けられている。

1.2.6 その他

 2006年雇用均等規則(年齢関連)は、労働者、従業員、求職者、及び訓練生を、年齢によって差別することを違法としている。2004年労働者への情報提供と労働者との協議に関する規則(The Information and Consultation of Employees Regulations)は、従業員50人以上の組織において、労働者が、雇用主に所属組織に関する情報提供を求める権利と、それについて協議、変更を要求する権利を与えるものである。しかし、それら要求に対して、雇用主側が応じる義務については定めていない。その代わり、従業員の10%以上(15人以上2,500人以下)が正式に文書で要求するか、それに満たなくとも雇用主側が交渉開始を選択する場合、これら権利は行使される。雇用主は交渉担当となる労働者代表の選任を認める取り決めが必要となる。

1.3 労使関係法令

 前述のとおり、労働者が協議する問題の範囲について制定法上の規定があるが、ここでは労使関係の法律に焦点をあてる。

1.3.1 労働組合

 2004年雇用関係法(Employment Relations Act 2004)は主として労働協約法及び労働組合の権利に関係し、第1部では労働組合の承認、第2部は争議行為、第3部は労働組合員、労働者、及び被雇用者、第4部は最低賃金法の施行を扱う。
 ACASは、雇用者と労働者に労働組合が労働者を代表して団体交渉を行うことを承認し、同意できることを明らかにしている。また、ACASは組織が自発的に組合承認協定を結ぶよう支援する。自発的な合意に達しない場合、従業員21人以上の雇用者に対しては、労働組合は法的な承認手続きに訴えることができる。法的手続きは何段階もあるため手続き開始後でも、当事者が合意すれば労働組合は法的手続きを撤回できる。ACASと中央仲裁委員会(Central Arbitration Committee:CAC)は、承認案件について可能な限り自発的に解決することを切望している。当事者間で合意できなければ、労働組合はCACに申請することができ、CACは交渉単位(承認の対象となる労働者の範囲)として適切かどうかを決定し、団体交渉方法を指示する。CAC審査委員会が当事者の見解及び2000年労働組合承認(団体交渉方法)命令(Trade Union Recognition(Method of Collective Bargaining)Order 2000)を考慮し、団体交渉方法を作成する。
 当事者間で文書による反対の別途合意がなければ、CACが指示した団体交渉方法には法的な強制力がある。法的に拘束力のある契約の履行については裁判所事項であり、指示された方法が不履行の場合、救済策として裁判所から契約どおりの履行を命じられる(特定履行)。

1.3.2 労働争議解決システムに関する法令

 政府は、職場内での個人間の紛争解決法関連法令を要約した手引書を準備している。手引書には、職場での苦情の発生・処理について雇用者と労働者が従うべき原則、事項の要点は述べられているが、双方を拘束する法的な手続規定はない。職場での苦情を訴える従業員は、ACASの懲戒及び苦情処理手続きに関する行為準則に従って行われる雇用者の苦情処理手順を守らなければならない。ACASの行為準則は、労働者と雇用者が苦情処理の際に取るべき妥当な行動基準の原則を定めている。集団的労使紛争が発生した場合、可及的速やかに問題解決を図るには、雇用者が労働者代表と会うことである。承認労働組合あるいはその他の代表と合意した会合・協議手順がある場合は、その手順に従う。初会合の議題は以下の3点になる。

  • 紛争の原因を限定すること
  • 双方の交渉担当者を明確にすること
  • 紛争が解決できる選択肢を探し出すこと

 多くの事例は、会合あるいは交渉を続けることで問題が解決する。しかしながら、交渉が暗礁に乗り上げた場合は、ACASのような外部の助けを求めることになる。ACASは両者の調停を行い、ACAS側の調停人は労使双方の相違点の話し合いと受け入れ可能な合意に達するよう支援する。調停が不調に終わり、当事者双方が仲裁に持ちこむ気持ちがない場合でも、調停人は紛争解決のための和解勧告ができる。勧告は双方を拘束しないが、当事者は紛争解決のため真摯に受け止めることが求められる。事前に当事者双方が拘束力のある仲裁人の解決策に従うことを受け入れ、仲裁人への付託期間内に申請をした場合、ACASが自発的な仲裁を提案することができる。しかしながら、その決定には法的拘束力はなく、仲裁への移行決定は一時的、あるいは労働協約の紛争解決手順における一段階ということもある。

1.4 労働保険関係法令

1.4.1 労働者災害補償保険

 ほとんどの雇用者は、1969年雇用者責任法に基づき雇用から生じる従業員の傷害・疾病に対して責任保険を付保しなければならない。安全衛生庁(HSE)は、雇用者の理解に役立つ手引書を発行しており、雇用者責任保険について、職場の内外を問わず従業員の身に生じた傷害・疾病の補償費用の支払いが重要だとしている。ただし、勤務中の交通事故による傷害又は疾病は、別途、雇用者自動車保険(employer’s motor insurance)により補償される。雇用者は最低500万ポンドの保険を付保し、保険会社は最低1,000万ポンドの補償を勧めている。雇用者責任保険証書には最低付保金額と付保事業者名を明確に記載し、「写し」を従業員が容易に読める場所に表示することが定められている。2008年10月以降、雇用者は電子的な方法による表示が認められている。
 この方法を選択した雇用者は、従業員に証書の閲覧方法を明示し、公正な閲覧に努めなければならない。簡単にアクセスできる方式、従業員が使用法を理解できるなどの配慮が必要である。例えば、全従業員が仕事の一部としてコンピュータにアクセスできることなどが求められる。HSEは雇用者責任保険の実効を図っており、適切な保険を付加しない雇用者には1日当たり2,500ポンド以下の罰金が科される。また、雇用者責任保険証書が表示されていない、あるいはHSEの査察官が要求した際に入手できない場合は、雇用者に1,000ポンド以下の罰金が科される。

1.4.2 雇用保険

 英国では雇用関連給付、年金も含めた社会保険制度が国民保険(National Insurance:NI)に一元化されている。保険料率は職域、所得等により異なり、雇用者対象の第1種保険料、自営業者対象の第2種保険料、任意加入者対象の第3種保険料、高所得の自営業者を対象とする第4種保険料がある。雇用者は、雇用者負担分の国民保険料を納めるとともに、被雇用者の国民保険料(National Insurance Contributions:NICs)を会計処理する法的義務がある。雇用者の保険料率は12.8%、被雇用者の保険料率は11.0%となっており、第1種保険料に拠出される。雇用者は被雇用者の保険料を賃金・給与から源泉徴収し、英国歳入関税庁(HM Revenue and Customs:HMRC)に納付する。雇用者負担の保険料は雇用者がHMRCに納付する。雇用者が被雇用者の給与から控除した所得税及び第1種保険料は、通常毎月1回HMRCに納付し、経営幹部の国民保険料は別途計算する。社有車提供などを含む従業員へのすべての課税対象ベネフィット(手当)は、雇用者が第1種A保険料に拠出する。

1.4.3  健康保険

 国民保険料(NICs)は、1)社会保障給付(失業者と求職者のため)、2)国民保健サービスの双方に貢献することを目的としている。したがって、健康保険について別途の規定はない。しかしながら、雇用者は任意に、全従業員又は一部の従業員が加入する民間健康保険の保険料を負担できる。これらの経費、手当は、所得税及び国民保険料の納付と関係し、例えば、雇用者が民間保険会社と契約して健康保険制度を従業員に適用する場合、雇用者が保険料を記録し、第1種A保険料をHMRCに納付しなければならない。しかし、個人で加入する民間健康保険の保険料を雇用者が従業員に払い戻す場合、所得税及び第1種保険料負担金の算定において、払戻金は従業員の総所得額に加算される。雇用者に要求される経費と手当の処理については、個々の事例で明示されている。

1.4.4 年金

 現在、国民年金(State Pension)の受給年齢は男性65歳、女性60歳である。女性の受給年齢は2010〜20年にかけて段階的に65歳まで引き上げられる。受給年齢の引き上げは、1950年4月5日以前に出生の女性には影響しない。1950年4月6日から1955年4月5日(含む)までの期間に出生の女性は60〜65歳になる。1955年4月6日以降1959年4月6日の間に出生の女性は65歳になる。さらに、2024〜46年に受給年齢の段階的な引き上げが、10年ごとに2年連続で実施され、男女とも65〜68歳となる予定である。
 国民保険(NI)に含まれる国民年金制度は2階建てとなっており、1階部分は義務教育終了年齢を超えるすべての就業者に加入義務のある基礎年金(Basic State Pension)、2階部分は1)国家第二年金(State Second Pension:S2P)、2)職域年金(企業年金)、3)個人年金、4)ステークホルダー年金(確定拠出型の個人年金)のいずれかを選択する。個人の基礎年金受給額は就業期間を通じて支払われた保険料、又は保証された金額に基づいている。個人は国家第二年金に加入することもできる。被用者は職域年金に加入していれば、国家第二年金の適用除外(contract out)が許されている。適用除外を受けた被用者は、国家第二年金加入者よりも低い適用除外料率で保険料を支払うことができる。国家第二年金の適用除外には、COSR(Contracted-out Salary Related Scheme)、COMP(Contracted-out Money Purchase Scheme)、COMPSHP(COMP Stakeholder Pension Scheme)3つの形態があり、被用者が加入する制度によって適用料率が決まる。
 2001年10月以降、特定の雇用者に対して、有資格被用者をステークホルダー年金へ加入させることが義務付けられた。雇用者は、被用者と適切なステークホルダー年金の運用会社・団体選択について協議し、最終選択結果をすべての有資各被用者に通知する必要がある。雇用者に保険料を負担する義務はないが、被用者の賃金から天引き徴収した保険料を運用会社に納付する義務(アクセス提供義務)が課される。被用者は保険料の代行納付を希望しない場合、直接支払うことができる。雇用者は免除されない限り、同年金制度を提供しなければならない。免除条件は以下のとおりである。

  1. 従業員5人以下(パートタイマー及び非常勤従業員を含む全従業員数)
  2. 会社側が、全被用者が就業開始後1年以内に加入できる企業年金の利用を促していること
  3. 会社側が、全被用者対象の個人年金を運営し、個人年金へ基本給の3%以上を負担していること(この制度は保険料拠出の停止、又は他の制度へ乗り換える加入者に対する処罰はなく、会社は要請があれば、被用者の給与から保険料を源泉徴収し制度に納入する)
  4. 会社側が、特定の被用者を対象とする企業年金を持ち、残りの被用者は上述の条件に合致した個人年金を利用していること

 現在、年金制度改革の動きが浮上し法案作成中で、2012年から雇用主には新しい義務が発生する。詳細は下記のウェブサイトを参照。


1.4.5 その他、独自の保険や基金に関する法令

 なし

1.5 職業能力開発法令

 英国雇用・技能委員会(UK Commission for Employment and Skills:UKCES)は、雇用及び技能の分野において英国が世界のリーダーになるような変革への貢献を目的として英国政府及び権限を委譲された行政当局によって2008年に設立された。同委員会は、また、2020年までに世界レベルの雇用及び技能を獲得するために必要な手段を政府の最高レベルに独立した立場で助言する。同委員会は雇用主代表が主導し、5つの広範な責務を負っている。

  1. 4地域(イングランド、ウェールズ、アイルランド、北アイルランド)の目標と優先順位を考慮しながら、2020年までに英国が雇用及び技能で世界レベルのリーダーとなるための進捗を毎年評価する
  2. 政府の最高レベルに対して雇用、技能及び生産性の向上に貢献する政策と実行についての助言をする
  3. 雇用者と個人のニーズ合った英国の雇用及び技能制度の達成状況を監視し、意見を述べる
  4. 労働力開発における雇用者の一層の関与と、影響力の拡大及び投資の促進
  5. 技能及び雇用分野において重要産業を主導する産業別技能委員会(Sector Skills Council:SSC)への資金提供と運営

 UKCESは2009〜2014年にかけて3つの最優先事項を採択し、「どうすれば英国は成功するか」に関する政府への答申のために、調査、分析、実行プログラムの設計を行う。答申には、より戦略的で、迅速、かつ需要主導の雇用及び技能制度の確立、個人の技能獲得及び持続的な雇用機会の最大化、雇用主の意欲の向上、関与及び投資の促進が含まれる。

1.5.1 職業能力開発制度

 英国の職業能力は、仕事を効率的に行うのに必要な技能と知識を反映した能力に基づく資格によって測定され、大部分は全国職務基準(National Occupational Standards:NOS)に基づいている。NOSは、特定の職業において労働者に期待される職務遂行能力が記され、主要な職業のほぼすべてを網羅し、1)実績、2)将来の要請に適応できる能力、及び3)優秀な業績を支える知識と理解力から成っている。
 NOSは職務遂行に必要な行動、知識、理解を記述するとともに、英国の資格及びビジネス改善ツールの基礎的要素である。英国全体の産業別技能委員会(SSCs)又は基準策定機関(Standard Setting Body:SSB)を通じ、雇用者グループが従業員のためにNOSを発展させている。
 SSCsとSSBは産業別雇用者とそのパートナーとともに、産業の環境変化、労働形態の移行、新しい管理運営業務、法律及び技術変化に対応する必要性から、NOSの開発、維持及び更新を行う。NOSには下記のように色々な用途がある。

  • 職務記述書の開発
  • 訓練及び能力開発プログラムの計画
  • 従業員の業績評価及び向上
  • 実務の成功例の情報提供
  • 英国認定資格の通知

 SSCsは、英国全体にわたる雇用者主導の独立団体で、設立の趣旨は雇用者側の需要により運営される技能制度の確立である。現在、経済の90%以上を網羅する25のSSCsがあり、技能格差及び労働力不足の削減、生産性、企業及び公共サービスの改善、産業別労働者の個々の技能及び生産性の底上げ、並びにNOS、徒弟訓練制度(Apprenticeship)、継続及び高等教育を通じて教育機会の改善に取り組んでいる。すべてのSSCsは、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの大臣と相談の上、関連省庁により認可を受ける。
 SSCsは、雇用主が現在から将来にわたって、どのような技能を持つ労働者を、どのように集めるかについて綿密に計画する産業別技能協定(Sector Skills Agreements:SSA)の開発に重要な役割を担っている。雇用者主導のSSCsのネットワークによりSSAの導入が促進され、教育訓練プロバイダー及び出資者も協定を締結している。 SSAは以下の段階を経て締結される。

  1. 産業別にそれぞれ短期、中期、長期に必要な技能の決定、産業における変化要因の想定
  2. すべてのレベルにわたる現行訓練規定の範囲、性質、及び雇用主の適性などの再検討
  3. 労働力向上の主な欠陥や弱点の分析及び優先改善事項の確認
  4. 業績向上のため技能開発に力を注ぐ雇用者が行う協調行動の再検討、及び雇用者が協定に参加しやすい技能の評価
  5. 必要な訓練を確保するため、SSCと雇用主が、主要な資金提供パートナーとどのように連携するかについての合意

1.5.2 職業能力評価制度

 職業能力評価は主に職業資格制度の管理下にある。イングランド、ウェールズ、及び北アイルランドでは、全国職業資格(National Vocational Qualifications:NVQs)が基幹となる能力に基づく資格だが、その他にも広範囲の認定職業資格がある。スコットランドでは資格は異なる定義がなされ、スッコトランド職業資格(Scottish Vocational Qualifications:SVQs)が主流である。しかしそのSVQsもまた、他のイングランド地域と同じく、土台となるのは全国職務基準(NOS)である。SVQsには就職希望者の職場での実務能力が記述される。必要とされる職務関連技能と知識を認定することにより、全国能力基準に対して個々の労働者の実務能力の評価がなされる。SVQsの資格構造及び評価戦略はNOSと一体となっており、技能と知識に格差がある場合、訓練枠組みの基礎として使用される。英国の一部の地域では、異なる組織団体が職業資格の開発、認証、付与しているが、スコットランドでは、SQAが3つの機能をすべて果たしている。SVQsの資格付与組織として資格に信頼性と価値を持たせるために、SQAは資格の質の維持を確実にし、証明書を発行している。SQAはしばしば、類似の役割を担う産業団体と協力してこうした取り組みを行っている。
 スコットランドの職業資格は、スコットランド単位・資格枠組み(Scottish Credit and Qualifications Framework:SCQF)にすべて位置付けられる。この枠組みは、資格の相互関係、異なる種類の資格がどのように労働力の技能向上に貢献するのかについて、雇用者、学習者、及び一般市民に資格の全容を理解させることを目的とし、また、すべての年齢及び環境において市民が生涯を通じて自らの、社会の、そして経済的な潜在能力を十分に発揮できるよう適切な教育訓練を受けられるよう支援している。
 イングランド、ウェールズ、北アイルランドは類似の資格単位枠組み(Qualification and Credit Framework:QCF)を設けているため、現在、英国では、学習者の成果が幅広く認められるよう単位累積加算制度によって、単位を基礎とする広範囲の資格が資格枠組みに組み込まれている。QCFは、すべての職業資格のレベル、習得期間、内容、及び各資格の相違点が明瞭になり、現行資格を容易に理解、評価する手段となっている。QCFでは、1単位の習得時間を10時間とし、必要単位数に応じて1〜12単位の「Awards」、13〜36単位の「Certificate」、37単位以上の「Diploma」の3段階の区分があり、さらに各段階が難易度により8段階に分かれている。
 英国の職業能力評価、QCF及びSCQFの取り組みは、欧州資格枠組み(European Qualification Framework for Lifelong Learning:EQF)と互換性を持つことを目的としている。EQFは、欧州各国にある通常はレベル別となっている資格制度をより系統的な方法で分類し、各国の資格制度を相互に関連付ける欧州共通の資格枠組みである。実際には、資格を合理的に移行する方法として機能し、各国間を移動する者、転職者、あるいは国内で教育機関を移動する者など労働者及び学習者の助けになる。移動性と柔軟性を持つ真の欧州労働力を創造することがEQFの重要な目的である。EQFは知識、技能及び遂行能力で定めた学習成果に基づく8段階のレベルを使用し、各国にまたがる資格、教育訓練制度の移行及び活用の促進を図る。

1.6 その他の雇用労働関係法令

1.6.1 職業紹介制度

 雇用年金省(Department for Work and Pensions:DWP)が運営するジョブセンター・プラス(Jobcentre Plus)では、適切な職業を探す求職者を全国的に支援している。地域によっては、職業安定所と給付サービスを包括した支援を提供するため、担当アドバイザーが求職者の一人一人の要求に合った仕事を探す積極的な支援を行っている。DWPでは求職の手引きを作成し、就職活動への助言、徒弟訓練制度の申請情報のような教育訓練の機会に関する助言も行っている。コースを履修する場合は、受講費の上限80%、その他に住居費や書籍購入費等も含めたキャリア開発ローン(Career Development Loan)を申請する資格が得られる。
 キャリア相談は、以下の窓口でも受けられる。


1.6.2 外国投資法により進出した企業で、海外から招聘され就労する者の労働許可条件

 2008年11月、ブルガリア人とルーマニア人採用を希望する雇用者を除き、就労許可制度は廃止された。非欧州経済地域からの移民者向けの就労許可制度は、点数制に基づく制度の第2段階に取って代わった。現在、非欧州経済地域から移民者を採用する予定の雇用者が、身元引受人となるには免許が必要である。一旦免許を取得すれば、雇用者は身元引受人として登録される。一般技能労働者と企業内での転勤による労働者は、第2段階に含まれる。

1.6.3 海外から招聘され就労する者の加入義務のある制度

 なし

1.6.4 その他雇用労働に関する法令

 なし


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