各国・地域情報

英国

作成年月日:2009年8月30日

雇用労働事情

2.1 労働市場の状況

 英国では、全国統計局(Office for National Statistics:ONS)が運営する全国統計オンラインから、常時無料で政府各省、スコットランド、ウェールズ及び北アイルランド管掌行政機関作成データを入手できる。全国統計は、雇用、失業、職業別就業者数、及び毎月の労働市場データを労働市場月報にまとめ提供する。労働市場統計は初公表以後毎年改訂版を継続刊行している。月次発表に加え、ONSは広範囲な労働市場データを多種多様な方法で提供している。過去の統計資料は労働市場統計初版・追録、及び時系列データサービスから無料で入手できる。
 地域及び地方の労働市場情報はNomisのサイトでも入手できる。この資料には多種多様な情報源から集めた労働市場及び関連人口データの現地情報、労働力調査(Labour Force Survey:LFS)、失業保険申請者数、ビジネス調査年報(Annual Business Inquiry:ABI)、新所得調査(New Earnings Survey:NES)、及び1981年、1991年人口調査、公式政府筋(大概は全国統計)のデータ、最新版時系列データが含まれる。全国統計は定期刊行物“経済及び労働市場評論”も発行しており、統計を通じて英国経済及び労働市場の全体像が把握できるよう、専門家も調査、分析に参画している。

2.1.1 過去3年間の労働力人口、就業者数及び失業率

 2008年までは歴史的にみても失業率の低い時代が続いていたが、金融危機による不況に伴い、失業率は急激に上昇し続けている。しかしながら、2009年8月時点で英国経済はこの不景気から脱出し始めたようだ。
 失業率は地域で異なり、本項の資料はONSの2009年8月時点の最新情報を使って作成した。2009年第2四半期の季節調整済労働年齢別就業率は72.7%、前期から0.9%下降している。この数字は前期比、就業者数27.1万人の減少、年初比較57.3万人の減少に相当する。同時期における常勤労働者数は男性1,360万人、女性776万人の計2,136万人、前期比30.9万人の減少になる。パートタイム労働者数は男性189万人、女性568万人の計757万人、前年から3.8万人の増加であった。このパートタイマー数の増加は多数の企業が従業員と合意の上、一部の従業員を正社員からパートタイム労働者へ変更したことによる。過去の不況時にはこうした選択はなされず、雇用者が景気回復時の事業拡大に備え労働者を確保しておくためとは言い難い。
 公共部門の就業者数は2009年3月には602万人、2008年12月から1万5,000人増加している。しかし民間部門は230万9,000人、28万6,000人の減少となった。過去、公共部門は比較的不況の影響を受けにくいと信じられていたが、公共部門の就業者数は2011年の総選挙結果に関係なく減少する見込みである。

表2‐1 英国の16歳以上の就業者数(単位:千人)
調査時期 就業者数(四半期平均、季節調整済み)
2006年 5月 28,998
11月 29,085
2007年 5月 29,159
11月 29,398
2008年 5月 29,505
11月 29,361
2009年 5月 28,933
※出典:
Office for National Statistics, “Labour Market Statistics (updated on 2009, August 10)”,
http://www.statistics.gov.uk/statbase/
tsdtables1.asp?vlnk=lms

 2009年第2四半期の全国季節調整済失業率は7.8%、前期比0.7%の上昇、年初比2.4%の上昇である。失業者数は243万人、前期比22万人の増加、年初比では75万人の増加である。同じく失業者数は149万人、前期比15万7,000人の増加であり、うち女性は94万2,000人、前期比6万3,000人の増加であった。過去12カ月の失業者数累計は54万3,000人、前期比3万6,000人の増加である。同じく18歳から24歳の失業者は72万2,000人、前期比4万6,000人の増加、年初比19万6,000人の増加である。このことから、若年労働者層が特に不況の打撃を大きく受けたことが分かる。

表2‐2 16歳以上の失業者数及び失業率
調査時期 失業者数(単位:千人) 失業率(%)
2006年 5月 1,687 5.5
11月 1,698 5.5
2007年 5月 1,662 5.4
11月 1,602 5.2
2008年 5月 1,685 5.4
11月 1,971 6.3
12月 2,029 6.5
2009年 5月 2,435 7.8
※出典:
Office for National Statistics, “Labour Market Statistics (updated on 2009, August 10)”,
http://www.statistics.gov.uk/statbase/
tsdtables1.asp?vlnk=lms

2.1.2 業種別労働者数

 業種別労働者数の推定には、国際標準産業分類(International Standard Industrial Classification:ISIC)第3次修正版、と互換性があり、かつ正確に対応している英国標準産業分類(United Kingdom Standard Industrial Classification:UKSIC)92を使用するのが最も適している。
 安全衛生庁(Health and Safety Executive:HSE)は、全国統計局(ONS)雇用主調査の数値、主に短期雇用調査(Short-Term Employment Survey:STES)、年次企業経営調査(Annual Business Inquire:ABI)及び労働力調査(Labour Force Survey:LFS)を利用している。STESは企業活動状況から2万4,000企業の実例サンプルを、四半期ごと(6月、9月、12月及び3月)に収集する。また、ABIは特定時点(通常は12月に実施)における雇用見通しを示すものである。STES提供データより詳細な従業員向け雇用データが必要な場合は、ABIのデータを産業別に4桁のSICレベルに分割すれば得られる。しかし、ABIは1年1回行われる定点調査であるため、集計産業コードのデータは正確にはSTESコードによる集計値と一致しない。

表2‐3 標準産業分類部門別就業者数(2007年、2008年暫定値)
産 業 就業者数(単位:人)
農業、狩猟及び林業 219,964
漁業 6,501
鉱業及び採石業 59,354
製造業 2,818,576
電気、ガス、水道業 104,964
建設業 1,242,684
卸売業、小売業、自動車修理業、オートバイ修理業、
個人及び家庭用品
4,505,950
ホテル、レストラン 1,794,186
運輸、倉庫、通信業 1,540,012
金融仲介業 1,023,714
不動産、賃貸及びその関連事業 4,637,752
行政、防衛、社会保障 1,445,425
教育 2,325,463
保健及び社会福祉 3,286,546
その他の地域社会サービス 1,399,666
従業員のいる家内工業(自営業) -
国外の組織、団体 -
合 計 26,410,156
※注
軍隊及び自営業者は就業者に計上しない。
※出典:
Health and Safety Executive,
http://www.hse.gov.uk/statistics/index.htm
UK National Statistics,
http://www.statistics.gov.uk/hub/index.html

表2‐4 主要産業別雇用状況(2007年〜2008年、暫定推計値)
産 業 就業者数(従業員及び自営業者)
(単位:人)
農業、狩猟、林業及び漁業(部門A, B) 400,578
製造業(部門D) 3,092,043
採取産業及び公益事業(部門C, E) 175,482
建設業 2,098,520
サービス産業(部門G - Q) 24,673,091
合 計 30,452,483
※出典:
Health and Safety Executive,
http://www.hse.gov.uk/statistics/index.htm
UK National Statistics,
http://www.statistics.gov.uk/hub/index.html

2.1.3 新規学卒者の就職状況

 英国の義務教育修了年齢は16歳だが、大部分の若者は少なくとも18歳まで在学し教育を受けるか、あるいは訓練生になる。イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランド政府から権限を委譲されている各行政機関は自国の教育及び訓練政策の責任を負っており、各国ともできるかぎり多くの若者に教育、訓練あるいは訓練を伴う雇用の機会を与えようと試行錯誤している。中でも、徒弟制度の復活をはじめ色々な政策を立案、実施してきた経験豊富なイングランドの例が今後もモデルとして参考にされるだろう。
 最近、16〜18歳で教育、訓練、又は就業中でない若者を減らすため(ニート対策)、政府は2015年までに就学年齢の18歳への引き上げを提案している。この背景には基礎能力と職業能力不足の解決を目指す政策がある。提案は16〜18歳の若者の就職、職場での実習訓練、又は継続教育への参加が含まれる。若者の教育、訓練、雇用の現状は、2009年6月の「児童・学校・家庭省(Department for Children, Schools and Families:DCSF)のプレスリリース」に概要がある。16、17歳のすべての若者は何らかの場所と方法で学習の継続が保証される。2009年の予算では、保証実行を支援するため今後2年間に6億5,500万ポンド※1の追加財政支出を公表している。2007年は義務教育修了者(16歳)が適用対象だが、2008年には17歳も対象になった。この提案は若者のニーズに合っており、教育又は訓練と同様に現場実習での学習が含まれる。この政策は変化し続ける労働市場と未熟練又は低技能労働者をなくすこと、同じく最近の経済状態を反映している。教育又は訓練に参加している16〜18歳の若者の比率は過去最高の79.7%に達している。
 現在は一般的に16歳から19歳で学校を終え社会人になるが、これは17歳、あるいは18歳のいずれかに段々と移行する予定である。2007年5月、政府は16歳以降も教育及び訓練を続けることをうたった「青少年教育緑書:未来への期待(Green Paper on ‘Raising Expectations: staying in education and training post-16)」を刊行した。緑書の骨子は、すべての若年者に18歳の誕生日までは教育又は訓練への参加を促す政策である。1)学校、2)カレッジに進学する、3)働きながら学習する、4)あるいは事業主が提供する認定資格を取得する。このように道はいくつもあり、政策実現のため、失業中であれば週を通じた一定時間、パートタイマーなら週20時間以上、それ以外の若年者は認定資格取得に向かってフルタイムで働くことを求められる。最近は、18歳までに一般教育を離れ、その後いかなる教育や訓練も受けていない者の多くは、研修なしに就労するか、又は失業中となっている。したがって事業主が18歳前後の若年者を雇用する場合に、専門学校を含む学卒者に関心が集まる現在の傾向にかなっているといえよう。2006年の統計では、年齢18歳の層のうち37.6%が上級教育、23%が就労中教育、事業主負担の訓練あるいはその他の教育や訓練を受けており、24.3%が就労中、15.1%がニートである。18歳年齢層の人数は35万200人である。
 政府の方針では、16〜19歳の若年層をできるだけ多く教育又は訓練することに主眼が置かれており、公式統計や政策から徒弟制度のような継続教育及び訓練を受けずに就職する者の部門別目標人数を設定するより、むしろ教育方法や訓練方法、就職先などに焦点を当てていることが分かる。
 義務教育修了から3年後の18歳層を対象とした2006年春実施の第12回若年者層研究調査(Youth Cohort Study:YCS)では、18歳の過半数(47%)が全日制教育を受けており、約4分の1(23%)がフルタイムの仕事に就いている。残りは、政府支援の訓練(8%)、パートタイムの仕事(8%)、就職以外(8%)、その他、家内労働等(6%)となっている。
 1993年以降、18歳年齢の上級学校進学率は約20%から30%に向上した。女性の進学率は男性を超え、女性50%、男性44%となった。逆に、男性は政府支援の訓練を受ける者が12%と、女性の5%に比べて多くなっている。
 進学までに習得した成績は進学者数に強く影響し、中等教育修了資格試験(General Certificate of Secondary Education:GCSE※2)において、5科目以上でグレードC以上(QCF※3レベル2相当)を修めた者の5分の3以上が全日制教育を受けているのに比べ、5科目以上でグレードD以下(QCFレベル1相当)は5分の1である。また、18歳までにQCFレベル3資格取得者の3分の2が全日制教育を受けているのに比べ、レベル2までの者は5分の1である。
 近年、ほとんどの業界では入社後に訓練するのではなく、元から質の高い人材を採用しようとする傾向にあり、そのため18歳以下のものより18歳以上の質の高い求職者を採用しようとしている。徒弟訓練に採用される者でさえ平均年齢が上昇しつつある。一方、小売業、ホテル、ケータリング、娯楽産業のような特定の部門では、一般の学校卒業後すぐ、あるいは在学中のアルバイトを通して就職する若年者が比較的多くなっている。ただし、スタッフの平均年齢が比較的若い会社においては自発的退職者数も多くなりがちである。この現象は特にホテル、ケータリング及び娯楽産業が該当し、2009年、補充労働者数が最も高い産業部門である。
 新卒の若年者は職業訓練受講後の就業に強い魅力を感じており、その点徒弟制度は特に重要である。徒弟制度は、学習者(徒弟訓練生)が職務遂行に必要な知識、技能及び経験を習得する雇用主主導の学習プログラムである。徒弟制度は新規就職者にふさわしいものだが、在職中の労働者もこれらのプログラムを受講できる。
 政府は更なる徒弟制度拡充を図るため、制度推進のための全責任を担う全国徒弟制度サービス(National Apprenticeship Service:NAS)を2009年4月に発足させた。この事業は徒弟制度を活用する雇用主数の大幅な増加を狙っており、雇用主向けサービス、学習者向けサービス、及びウェブ上の人材マッチングシステムが含まれる。このオンラインシステムにより、求職者は実際の生きた求人情報の収集と応募が可能となり、雇用主とサービス提供者は広範囲な応募者を対象に自社の企業情報、求人情報及び募集案内の発信が可能となる。これらの事業は、国家目標の達成及び利用組織への財政資金の活用との連携による究極の枠組みである。NASはプログラムを普及させるためにいかなる障害も越え、徒弟制度の推進とその価値を雇用主、学習者、及び国全体に浸透させ促進する責任を負っている。

※1
1ポンド=151.2503円(2009年8月31日現在)
※2
GCSEとは、11年間の義務教育修了時に受けることが義務付けられた全国統一テストをいう。各自5科目から最高10科目を選択受験し、各科目ごとに最高A*からABCDEFGUのランクが付けられる。
※3
QCF(Qualifications and Credit Framework:資格単位枠組み)は、入門レベルからレベル8まで設定され、各種資格レベルを共通した表記に換算できる。

2.1.4 離職者の現状

 人材能力開発研究所(Chartered Institute of Personnel Development:CIPD)は毎年労働離職率調査を実施している。2009年の求人、定着、及び離職調査報告(回答者数:755団体)によれば、2008年の英国の全離職率は15.7%、これは2007年の17.33%、2006年の18.1%に比べ顕著な低下である。
 離職率は産業によって相当大きく変化し、特に民間部門は16.8%と高い。その中でも、小売業、ホテル、ケータリングは特に高く、娯楽産業は2008年も34%と引続き最高レベルが続いているが、前年の数字41%に比べれば減少傾向でもある。雇用主の60%は、労働者の企業からの離職は業績にマイナスの影響があると考えている。離職の理由は、依然としてキャリアアップが50%、キャリア変更が49%となり、労働者の自発的理由に起因する離職が大多数を占めている。労働者の定着の難しさを経験する雇用主数は2007年の80%から2008年には69%と減少している。最近の経済状況において、求人市場は鈍化しており、自発的離職者の数はさらに減少に向かうと予測される。表2‐5は、主要産業別の全離職者数と自発的離職者数の労働離職率概要である。

表2‐5 主要産業別労働離職率
産 業 全離職者(%) 自発的離職者(%)
製造及び生産 15.3 7.7
民間部門サービス 16.8 10.4
専門職サービス 13.8 10.7
ボランタリー、
地域サービス、非営利
16.4 11.0
公共部門 12.6 7.6
※出典:
Chartered Institute of Personnel and Development (CIPD),
http://www.cipd.co.uk/

 2009年5月のCIPD調査報告によれば、労働者の75%は当面の間は今の職場にとどまるとしているものの、そのうち約3分の1は、実際は職を変えたいと思っている。この調査報告では、経済が下降傾向にあるため、転職先を見つけるのは難しいだろうという悲観的な予想により、現状維持の傾向が強く現れたことが分かる。
 離職率引き下げの手段としては、学習及び能力開発機会の提供が47%、研修方法の改善が45%、賃金引き上げが42%、選抜技術改善の42%などがほとんどである。また、72%の回答者が、人事・労務管理技術が最も重要だとしており、同じく74%が非常に効果的ならスタッフの努力がより反映されやすい評価制度への方針転換を検討している。しかし、2008年に実際にこの戦略を採用したのは、わずか19%にすぎなかった。
 2008年の労働離職率に占める余剰人員を理由とする離職の割合は2007年より高く、2009年はより高いと予想される。回答のあった組織の4分の1が2008年には10人あるいはそれ以上の余剰人員整理を行った。作業方法の再編、経費節減及び景気後退が、この決定に影響を与えている。CIPD/KPMGの季刊労働市場展望調査では、37%の回答者が今後3カ月にわたり余剰人員整理を計画中であると報告している。しかし、これら回答者の52%は計画中の余剰人員整理による労働力の減少は3%以下にとどまるとしている。労働力展望調査では、余剰人員整理の40%は管理者、専門職の地位にも影響が及ぶとしている。2009年春には公共部門、非営利部門(ボランタリーセクター)においても、かつて見られないほど余剰人員整理が急激に問題化している。この事実は景気後退の衝撃がこれらの部門でも初めて身近に感じられていることを示唆している。

2.1.5 職種別技能労働者数

 以下の表は2007年の職種別労働者数の記録である。管理者及び多岐にわたる専門職は既に労働者の43%に近く、技能工は11%弱、管理、事務及び秘書的なスタッフがほぼ12%、ほかのサービス職種が15%、運転手及び操作員が7%、初歩的な職種が11%強を占める。

表2‐6 2007年主要産業小分類別労働者数
主要職業群 労働者数(単位:千人) 全体比率(%)
経営管理者及び上級公務員 4,828 15.5
専門職業 4,091 13.1
準専門職/準技術専門家 4,472 14.3
経営管理及び秘書的職業 3,715 11.9
熟練ビジネスマン 3,404 10.9
人事・労務サービス職業 2,482 7.9
販売及び顧客サービス職業 2,418 7.7
機械及び輸送作業 2,290 7.3
基礎的職業 3,536 11.3
合 計 31,234 100.0
※出典:
R.Wilson, K.Homenidou & L.Gambin. (2008). “Working Futures 2007-2017”, UKCES,
http://www.ukces.org.uk/upload/pdf/
Working%20Futures%203%20FINAL%20090220.pdf

2.2 賃金

 最新の全国統計局(ONS)季節調整済み四半期調査によれば、2009年第2四半期(4〜6月)における英国全体でボーナスを除く平均所得は前年比2.5%上昇している。ボーナスを含む平均所得も前年比2.5%の上昇である。製造業の年間所得成長率(ボーナスを除くと1.1%、含むと1.4%)はサービス業(ボーナスを除くと2.8%、含むと2.6%の上昇)よりもかなり低い。公共部門の年間所得成長率(3.7%)は民間部門(2.1%)よりもかなり高い。経済全体では、2009年第2四半期の賃金コストは前年同期比3.6%の上昇、製造業部門単位では6.6%の増加である。
 より詳細な数字は毎年10月公表の労働時間及び賃金年報(Annual Survey of Hours and Earnings:ASHE)※4から入手できる。以下は2008年4月時点の常勤労働者平均賃金の中央値である。※5

  • 常勤労働者全体賃金:479ポンド/週(前年比4.6%上昇)
  • 常勤労働者男性賃金:521ポンド/週
  • 常勤労働者女性賃金:412ポンド/週
  • 上位10%平均賃金 :946以上ポンド/週(前年比4.4%上昇)
  • 下位10%平均賃金 :262以下ポンド/週(前年比3.5%上昇)
  • 常勤労働者最高位平均賃金:539ポンド/週(年齢40〜49歳)
  • 常勤労働者男性賃金 :598ポンド/週(年齢40〜49歳)
  • 常勤労働者女性賃金 :480ポンド/週(年齢30〜39歳)
    (注)最高位年齢層までは徐々に上昇し、以後減少する傾向にある。
  • 地域別常勤労働者全体賃金:ロンドン613ポンド/週、北アイルランド地区418ポンド/週、イングランド南東地区500ポンド/週
  • 職種別最高賃金:保健専門家977ポンド/週、企業経営者727ポンド/週、科学及び技術専門家691ポンド/週
  • 職種別最低賃金:販売職272ポンド/週
  • 部門別賃金:公共部門523ポンド/週(上昇率4.3%)、民間部門460ポンド/週(上昇率4.6%)
※4
データは標準職業分類2000年の第2分類(大、中、小、単位の中分類)25項目の集計値である。 賃金とは成人常勤労働者の(税控除前)総額を指し、調査対象週の在籍を問わない。年間賃金及び週給は残業代を含む。ASHEは税務当局の課税報告書を取り入れた労働者の仕事の見本をベースにしている。2008年ASHEは約14万6,000人の回答と、4月16日を含む2008年における支払期間に集められた情報に基づく。
※5
中央値とは、これ以下に労働者の50%が該当する値である。

2.2.1 法定最低賃金の最近の動向

 1998年全国最低賃金法(National Minimum Wage Act 1998)は、義務教育修了後のほとんどすべての労働者に適用され、その額は、独立機関の低賃金委員会(Low Pay Commission)の勧告に基づき決定する。全国最低賃金を受ける権利は、常勤労働、パートタイム労働、派遣・請負労働、臨時又は季節労働、出来高労働、在宅労働など雇用形態にかかわらずすべての労働者に適用される。全国最低賃金は通常毎年10月に更新され、年齢別に3料率が設定される。2009年10月1日以降の料率は以下のとおりである。

  • 22歳以上の成人労働者:時給5.80ポンド
  • 18〜21歳:時給4.83ポンド
  • 16〜17歳(ただし、義務教育終了年齢以上):時給3.57ポンド

 出来高払いの労働者も、同様に最低賃金、又は適正な換算値設定による賃金が保証される。歩合制の場合も同様に保証されている。英国内で適法に就労するすべての労働者は少なくとも最低賃金法の時給を受け取る。英国内で働く外国人労働者にも滞在期間の長短を問わず適用する。事業主の拠点が英国内か外国かは問わない。ただし、完全自営業者、会社役員、19歳以下の徒弟訓練生、特定の政府による養成訓練に備える訓練生、就労体験中の学生、オーペアのように家族の一員として生活する者、家族、空軍の隊員、ボランティアには最低賃金が適用されない。
 農業労働者の最低賃金及びその他の労働条件は、別途、イングランド及びウェールズ農業賃金委員会(Agricultural Wages Board for England and Whales)が定める。ほとんどの労働者の稼ぎは最低賃金以上である。委員会が定める条件が低い場合は、全国最低賃金が適用される。

2.2.2 賃金もしくは給与の実態調査結果

 表2‐7は職業分類及び成人常勤労働者の週給賃金(中央値、年間上昇率、平均値の調査結果である。成人全労働者を網羅し、調査期間中の欠勤は考慮していない。

表2‐7 職業別成人常勤労働者の週当たり賃金総額
職 務 職務数
(千人)
中央値
(ポンド)
上昇率
(%)
全就業者(パートタイマーを含む)     24,630 388.4 3.3
管理職及び上級職員  3,851 668.7 2.9
 経営者 3,331 695.2 2.3
 農業及びサービス業 520 489.2 1.7
専門職業 3,279 636.3 2.7
 科学及び工学専門職 887 673.6 2.7
 保健専門職          245 876.2 - 1.8
 教育及び研究専門職 1,449 609.3 2.8
 経営及び公務専門職  699 623.0 1.7
準専門職及び技術職 3,713 496.0 4.3
 科学及び技術準専門職 523 486.1 3.0
 保健及び社会福祉準専門職 1,184 455.8 4.6
 保安サービス職     392 644.4 2.4
 文化、メディア及びスポーツ職 291 438.2 4.0
 ビジネス及び公的サービス準専 1,323 501.8 4.1
管理及び秘書的業務      3,158 308.8 3.4
 経営管理職及び行政職 2,488 315.2 3.3
 秘書及び関連職        671 279.5 4.9
熟練取引人、仲介人職 1,887 434.0 4.3
 熟練農家及び関連職 117 313.0 0.7
 熟練金属及び電気関係営業職 992 493.5 4.9
 熟練建築及び建設職 391 448.2 5.8
 繊維、印刷及び他の熟練職 387 301.7 1.7
個人向けサービス職      2,134 233.9 4.0
 介護・個人サービス職 1,731 228.4 3.6
 余暇及び他の個人向けサービス 403 258.8 5.5
販売及び顧客サービス職 1,894 179.6 2.9
 販売職 1,521 160.8 2.7
 顧客サービス職 373 268.2 0.9
設備、プラント及び機械操作職 1,629 395.5 3.4
 設備、プラント及び機械操作職 889 393.1 4.3
 運輸及び稼動機械運転及び操作 740 398.3 2.6
初級操作職 3,084 225.2 3.3
 初級職、設備及び倉庫関連操作職 1,000 315.4 3.4
 初級管理及びサービス職 2,084 154.6 2.5
職 務 平均値
(ポンド)
上昇率
(ポンド)
全就業者(パートタイマーを含む)     471.9 4.1
管理職及び上級職員  812.4 2.6
 経営者 847.5 2.3
 農業及びサービス業 587.4 3.2
専門職業 694.9 3.9
 科学及び工学専門職 726.9 3.7
 保健専門職          1,077.8 3.1
 教育及び研究専門職 602.7 5.2
 経営及び公務専門職  711.1 2.2
準専門職及び技術職 532.5 4.3
 科学及び技術準専門職 514.7 2.6
 保健及び社会福祉準専門職 456.6 5.5
 保安サービス職     654.8 2.2
 文化、メディア及びスポーツ職 500.3 5.7
 ビジネス及び公的サービス準専 578.2 3.9
管理及び秘書的業務      327.0 4.5
 経営管理職及び行政職 334.6 4.6
 秘書及び関連職        298.8 4.1
熟練取引人、仲介人職 458.5 3.9
 熟練農家及び関連職 320.1 1.2
 熟練金属及び電気関係営業職 521.8 4.1
 熟練建築及び建設職 472.1 5.1
 繊維、印刷及び他の熟練職 324.6 2.2
個人向けサービス職      250.0 5.0
 介護・個人サービス職 240.5 3.7
 余暇及び他の個人向けサービス 290.5 10.0
販売及び顧客サービス職 203.5 2.7
 販売職 188.1 2.7
 顧客サービス職 266.3 - 0.2
設備、プラント及び機械操作職 421.6 4.0
 設備、プラント及び機械操作職 430.0 5.1
 運輸及び稼動機械運転及び操作 411.5 2.8
初級操作職 238.6 3.6
 初級職、設備及び倉庫関連操作職 337.0 3.1
 初級管理及びサービス職 191.4 3.2
※出典:
Office for National Statistics, “2008 Annual Survey of Hours and Earnings”,
http://www.statistics.gov.uk/StatBase/
Product.asp?vlnk=15187

 2009年5月時点での産業別労働者の週当たりの平均所得(季節調整前)は以下のとおりである。

  • 農林業及び漁業:  322.7ポンド
  • 鉱業、採石業:  969.0ポンド
  • 製造業:  496.9ポンド
  • 電力、ガス、水道業: 633.4ポンド
  • 建設業:  542.4ポンド
  • 卸売業:  508.4ポンド
  • 小売、修理業:  272.9ポンド
  • ホテル、レストラン:  217.1ポンド
  • 運輸、倉車、通信業:  564.0ポンド
  • 金融仲介業:  759.9ポンド
  • 不動産、賃貸、経営活動:  511.8ポンド
  • 公務:  512.2ポンド
  • 教育:  388.4ポンド
  • 保健、社会事業:  395.3ポンド
  • その他サービス:  375.4ポンド
※出典:
Office for National Statistics, “Average Weekly Earnings”,
http://www.statistics.gov.uk/STATBASE/
Product.asp?vlnk=14015

2.2.3 役職別給与体系のサンプル

 給与システムは、企業、業種、組織によって変わる。伝統的に、ブルーカラーは時給ベース、ホワイトカラーは月給ベースだが、最近では単一給与制度(single spine salary systems)の考えが強くなっている。もちろん昔からある出来高払い及び歩合制の賃金も使われている。職務給及び職能給も普及しつつある。
 助言斡旋仲裁局(ACAS)の2006年版賃金制度の手引では、基本給制度(時間、週、月単位の固定レートでの受け取りで付加給はない)や、賃金の全部あるいは一部を個人又はグループの成果に関連付けたり、労働者が新たに技能を習得、あるいは習得した技能を活用すれば一部それに見合う賃金を支払うなど、英国で採用されているいくつかの賃金制度を紹介している。事業体が労働者個人の貢献度、技能及び成果に対する報酬の基礎を提供するこういった技能又は成果給への関心が増えつつあり、ほとんどの事業体は基本給制度、又は成果給の要素を既に部分的に採用している。
 基本給制度は、最も運用しやすいシステムで多くの労働者に適用しており、労働者は固定時間給、週給、月給を受け取る。公共部門で増えつつあるが、給与の一部を奨励給又は調整可能給制にする企業も増えており、そこでは給与が自分自身、チーム、グループあるいは企業の業績に左右される。もちろん労働者個人又はグループ間の相対格差及び賃金格差は基本的に重要である。これらは一般的には賃金制度よりはむしろ組織の賃金・給与構造によって決定される。しかし、逆に賃金制度によって賃金・給与構造が決まる面もある。基本給制は賃金に職務(ポスト)を反映する職務給になりがちである。組織内の職務を適切に等級分けする職務評価制度を通じて、職務給の格付けシステムは成り立っている。給与の増加は、等級移動、能力開発、他の等級への昇格、又は給与レベル全体のアップによる。報奨制度は、短期、長期があり、前者は個人の週、月単位の生産高ボーナス又は販売報奨金を基礎とし、後者は利益分配及び自社株購入権(シェアオプション)制度を通じて組織の成長により生じた利益の分配を受け、労働者の意欲向上に貢献する。組織はさまざまな制度を組み合わせて使い、必要に応じてさらに柔軟性を持たせている。例えば、基本給を決めて、追加分は成果に応じた上乗せ分として支給する方法である。
 一方、近年では技能の習得、向上、効果的な活用が個人の賃金と直接連動する職能賃金制度が一般的になっている。職能賃金制度は伝統的な業績を評価する成果主義と異なり、個人のコンピテンシーを評価する。コンピテンシーとは、一般的には「個人が職務遂行に必要な知識、技能及び行動を統合した能力」と定義される。職能制度は既に多くの組織が賃金とかかわりのない採用、能力開発、訓練のような分野でコンピテンシーを導入しているため、広範囲に普及している。職能賃金制度では、職務の等級のみによるのではなく、むしろ個人の能力に連動して賃金が上昇することになる。職能賃金制度はしばしば成果給と連動して使われ、例えばコンピテンシーにはリーダシップ力及びチームワーク能力を含むがあり、個人の業績にとどまらずグループ全員の目標達成に対する報酬としても使われている。コンピテンシーに連動した賃金制度は、全組織をあげた継続的向上の考え方に適した制度として受け入れられている。
 また製造業の分野では、労働者の新たな技能の習得や技能の向上に基づく技能評価賃金制度がよく用いられている。この場合、報酬は多能化とより柔軟な能力への奨励策として、同一作業グループ内で担当外の仕事ができる技能に対して与えられる。労働者はより高度な作業群に必要な技能修得が認められる。
 チーム評価賃金制度もまた、グループボーナス制度の形であちこちに見られ、チームワークへの関心が高まるにつれより重要性を増している。この制度では、チームの評価可能な目標が賃金に反映する。チーム、グループの目標、到達点を決め評価するのは難しい面もあるが、メンバーがお互いに協力し合い、創造力が求められる職場では非常に有効なシステムである。計画はオープンで透明性がなければ内部で意見の相違が生まれやすい。チーム評価賃金の目的は、報奨を通じて良好な関係で一致団結した、相互に支えとなるグループを築き、チームの強化を図ることにある。また、仲間同士のライバル心もチーム全体の成績向上の助けになる。

2.3 労働時間の現状

 2008年の年次労働時間及び所得調査によれば、2008年4月のフルタイム労働者の週平均労働時間は39.5時間(男性40.8時間、女性37.6時間)、パートタイム労働者では18.7時間(男性17.6時間、女性18.5時間)であった。長時間労働者の上位10%の平均労働時間(有給時間数)は男性が48.5時間、女性は42時間であり、全労働者の週平均労働時間(有給)は34時間であった。
 1990年代後半以降、英国の平均労働時間数が低下した原因は全く不明である。ある分析ではEU労働時間指令の適用による1998年労働時間規則(Working Time Regulations:WTR)の導入が理由だとする。しかし、これでは説明を尽くしたとは思えない。労働力調査によれば、全就業者の19.5%に相当する570万人が週45時間以上働いている。この値はEU標準では高いが、オーストラリア、日本、米国のような先進諸国は英国よりも長時間働いている。
 貿易産業省(Department Trade and Industry:DTI)刊行の「長時間労働実態調査」によれば、英国の長時間就業層は民間部門に勤務する30〜49歳の子持ち男性である。業種別では、EU諸国のホテル及びレストランに反し、英国では概して製造業である。しかし、しばしばワーカホリック(仕事中毒者)と呼ばれる管理者は、EU諸国の同レベルの者と比較して、それほど長時間労働ではない。
 英国の労働者はEU労働時間指令を法制化した労働時間規則(WTR)が適用される。WTRでは、17週以上の平均で週48時間労働、夜間労働も同様に17週以上の平均で24時間ごとに平均8時間と規定している。また、1日に連続11時間の休息、1週間に1日の休日が付与される。当初の労働時間規則では週48時間労働から多くの適用除外を受けていたが、徐々に適用除外が外されている。しかし、労働者が希望すれば週48時間以上、働くこともできる。

2.4 労使関係の現状

 ここ10年間で労使間の大きな労働争議は非常に少なくなった。助言斡旋仲裁局(ACAS)は、依然として注目を集めている労働争議の解決支援をしているが、このような争議は比較的珍しくなり、雇用環境は変化し職場における労働者の権利は強くなっている。1990年代初頭以来、ACASでは業務の大部分を個別苦情の雇用審判所への提訴に焦点を絞ってきた。これらの苦情・不満はACASに持ち込まれるが、現状では75%は持ち込まれる前に解決するか取り下げられている。ACASは“予防は治療に勝る”をモットーに業務を進めており、年間80万件に上る電話相談で助言と手引を与え、講習会に毎年、数千人の相談員を派遣している。個人企業の職場では、労使・労働組合とパートナーシップを組み永続的な問題解決に努めている。
 労使が公になるような闘争をするのはまれになっているにもかかわらず、ACASは労使関係の安定が組織の業績にどの程度寄与しているかについては悲観的である。ACASでは、過去30年以上いろいろな組織と仕事をしてきた経験から、雇用関係の質と従業員が上手く管理されているか、これが業績を差別化する上で重要だと確信している。ACAS独自に経営効率化の要因決定及び解決法を開発したが、結果は画期的な進歩を遂げるにはまだまだやるべきことが多いのが実情である。英国は他の西欧諸国に比べ管理者層の割合が高いが、管理者はしばしば問題解決者になるよりも自分が問題の渦中の人間になっている場合が見受けられ、チームをまとめてモチベーションを高めるには自信と能力を欠いている。

2.4.1 労働組合の現状

 労働組合加入率の最近の動向(2008年12月第4四半期調べ)は以下のとおりである。

  1. 英国労働者組合加入率:27.4%
    • 前年比0.6%減少(28.0%)
    • この数字は1998年以来、最大の年間減少率である。
  2. 全労働者組合加入率(自営業者を含む):24.9%
    • 前年比0.9%減少(25.3%)
  3. 全労働者数:690万人
    • 労組加入率からの推算である。
    • 前年比1.8%減少(12.5万人)
  4. 労組加入率:720万人
    • 前年比1.5%減少(11.2万人)
  5. 男女別加入率
    • 女性:29.2%(0.4%減少)
    • 男性:25.6%(0.8%減少)
    • 最近7年連続して女性の加入率が男性よりも高い。
  6. 部門別加入率
    • 民間部門:15.5%(0.6%減少)
    • 公共部門:57.1%(1.9%減少)
  7. 国別・地域加入率
    • ウェールズ:37.4%、北アイルランド:35.6%、スコットランド:32.9%、イングランド:26.1%、
    • イングランド地域内、北東部:35.3%、南東部:21.5%
  8. 年齢層別加入率
    • 過去13年間(1995〜2008年)、50歳以上の層はほとんど横ばいに近く、より若い年齢層では低下している。
※出典:
Labour Force Survey(autumn quarter)and Trade Union Membership 2008.

 興味深いのは、労働組合が今後は従業員の訓練及び能力開発の推進において重要な役割を果たすと予想していることである。このような流れを作ったのは、労働者組合学習代表制度(Union Learning Representative:ULR)の影響が大きい。ULRは職場内から選出され、企業側に対して職業訓練の実施を働きかけ仲介を行う。また、個々の組合員に対して助言を与え、訓練と能力開発の重要性を広める役割も持つ。現在は未熟練者あるいは専門技術訓練を対象にしているが、今後は読み書き、計算、あるいはリフレッシュのため、さらに上の技能を身につけるための訓練を広める活動をしている。例えば、現場が企業の提供する訓練を実際は利用できない状況にある場合や、労働者側に学習意欲が見られない場合、ULRが有意義に取り計らい、構造的かつ組織的な障害へ対処する。また、学習が企業全体の“ボトムアップ”の需要を喚起し、結果として組織風土の変化をもたらすのに貢献している。

2.4.2 労働争議の現状

 ここ数年間、労働争議はほとんどなく、労働損失日数、参加人員数、経済に及ぼす影響、すべてが比較的穏健だった。2009年6月は、16件のストライキにより労働損失日数は4万7,000日となった。6月までの12カ月通算での労働損失日数は121件のストライキで59万8,000日、2008年の労働損失日数は155件のストライキで93万1,000日、2007年は43万5,000日であった。

2.5 募集、採用、雇用、解雇の現状

 CIPD調査報告書「採用、雇用、転職(2009年版)、調査対象755組織」は、2008年を通して国内における主要な採用側面を調査した。前年と比較すると、全部門を通じて明らかに雇用主側の採用意欲は減退している。689の回答者が補充努力した欠員数は平均して2008年は81である。2007年は270だった。公共部門及び民間部門双方で減退は特に顕著だった。減少率はそれぞれ前者57%、後者81%となっている。2008年後半は景気後退の影響が特に明らかだった。募集活動の明らかな減退にもかかわらず、依然として募集を行っている組織のかなりの部分は採用難(81%)を経験しており、その主な理由は必要とする経験者の不足である。採用難を克服するために、潜在的能力はあるが今すぐ仕事に必要な力量のすべてを持ち合わせない者をとりあえず採用するのが最も頻繁に行われる取り組みである(73%)。最も効果的な採用策は、内部スタッフを訓練してポストを埋められるようにすることだとの回答が大半を占めた(75%)。求人に際して使われる媒体は、自社のホームページ(78%)、人材派遣会社(76%)、地方紙の求人広告を通ずる方法であった。コンピテンシーに基づく面接(69%)及び履歴書による応募の後に面接(68%)というのが最も使われる選考法である。
 人的資源問題(採用、雇用及び解雇を含む)についての調査も2009年にCIPDで行われ、その結果色々なことが分かってきた。調査対象組織の半数が不景気は翌年の予算と行動に否定的な衝撃があると回答した。組織の56%は有能者の新規採用よりも雇用維持に焦点を当てており、4割の組織は2008年よりも2009年は新規採用が少ないと報じており、回答者の72%は、雇用主は景気の低迷を機会に、できの悪い者を整理して企業文化を変えるのに使おうと考えていると答えた。雇用維持が困難なことに直面している雇用主数は2008年の80%から2009年は69%に減少している。組織は管理職と専門職の雇用に最も悩まされている。雇用維持のための引き留め策としては、学習及び能力開発機会の増加(47%)、導入プロセスの改善(45%)、賃金引き上げ(42%)、及び選別技術の改善(42%)が挙げられる。回答者の72%はライン管理者の人材活用能力が雇用改善の最有力手段とするが、2008年には、わずかに39%がこの手法を使っているにすぎないと報じている。

2.5.1 就業規則の例等

 以下の法律では、解雇に関して労働者に以下のような権利を与えている。

  1. 1996年雇用権利法:解雇予告期間に関する規制
    • 1カ月以上の継続雇用者すべてに適用する
    • 2年以内の継続雇用者−解雇予定日の2週間以上前に通告すること
    • 2年以上12年以下の継続雇用者−予定日の12週間以上前に通告すること
  2. 1996年雇用権利法第10章:不当解雇に関する規定
    • 被雇用者の不当解雇されない権利
    • 雇用裁判所に苦情申立てができる権利
  3. 公休日に関する規定:法定休日に関する規定
    • 5.6週間(週5日就労者28日)2009年4月1日以降実施、
      ただし、パートタイム就労者については比例配分
  4. 有給休暇、未消化有給休暇に関する権利について
    • 離職する場合は、雇用開始日から起算する

 雇用主がビジネス活動から派生する労働安全衛生について法的責任を負っているように、労働法規は職場での労働安全衛生上の要請に対応すべきである。すべての雇用主にかかわる義務は、1)職場の安全確保、2)保健リスク防止、3)安全な使用に耐える設備・機械の確保と安全作業基準の設定、見直をすること、4)すべての原材料の安全な取り扱い、貯蔵、使用を確実にすること、5)適当な応急・救急処置用の設備を備えること、6)すべての従業員に作業から生じるあらゆる潜在的な災害、会社が使用する化学薬品及びその他の物質について知らせ、必要な情報提供、指示、訓練(研修)、監督監査を行うこと、7)緊急事態対応計画の設定、8)空調、室温、照明及びトイレ、洗濯・休憩設備はすべて保健・安全衛生上の要求に合っていること、9)正しい作業設備を提供し、適正に使用し、定期的に点検を行うこと、10)健康を害する恐れのある物質の暴露防止及び管理統制、11)可燃物又は爆発物災害、電気設備、騒音及び放射線により発生するリスクの事前注意、12)手作業を伴う潜在的に危険な仕事を避け、避けえない場合は、傷害リスク減少のため事前注意をすること、13)必要に応じて、保健監査を行うこと、14)リスク除去あるいは他の方法により十分管理できない時は防護服又は設備を無料支給すること、15)正しい注意報が発せられ、事故、傷害、疾病及び危険発生について安全衛生庁(HSE)又は事業によっては地方当局に事後報告をすること。

2.6 転職の現状

 本項については前記の「2.5募集、採用、雇用、解雇の現状」で引用したCIPD調査報告書「採用、雇用、補充(2009年版)、調査対象755組織」を参照のこと。2008年は、回答者(組織)と転職者が共通して強調する離職及び転職理由の上位3つは、転職による昇格(50%)、キャリアチェンジ(49%)、キャリア開発機会不足(37%)である。次いで、余剰人員解雇(36%)、(定年)退職(34%)がこれに続くが、これらは希望退職・転職に該当しない場合が多い。

2.7 その他の雇用慣行

2.7.1 企業の慣行

 給与は成果向上に直結する唯一つの要素ではない。会社は多くの給与以外の恩典供与を行っている。例えば、追加支給金、ボーナス、非分担制年金制度、現物供与(乗用車、生命保険、子供保育支援(職場での保育・託児所)などである。いくつかの企業では、従業員が受け取れるすべての恩典を一枚の文書で把握できるように「恩典一覧表」を作成している。これは従業員が転職・転属の際受け取る報酬価値を比較検討するのに役立つ。代表的な「恩典一覧表」に含まれるものは、年金と雇用主負担額、有給休暇、妊娠(母親)休暇・父親休暇、傷病時賃金、児童手当、給料前払いと貸付金、転勤に伴う転居支援、地域社会の会員権、及び持ち株券、自由時間制労働(フレックス労働)、従業員カウンセリング、訓練、学習、能力開発、環境・設備(駐車スペース、良好な職場環境など等)がある。
 支給方法にもさまざまある。例えば、児童手当をバウチャーの形で賃金支払いの代案として発行すれば、税法上のメリットがある。またもしも、恩典の方が相当する給料よりより有利な時は恩典の方を選択する権利がある。福利厚生などを社員が自由に選択できるカフェテリア方式は、依然として契約交渉権を持つ立場にある幹部レベルに限られている。普通従業員レベルでは、多様な恩典の中から随時恩典受けることができる制度がある。例えば、季節乗車券購入に社員割引制度又は給料前払いを受けるなどである。
 社用車制度は税法の適用が厳格になって人気が落ちている。乗用車の提供は採用及び雇用継続の報奨金として長く使われている。大会社の大多数は必需品として又地位への報奨あるいはその両方の目的で提供している。近年台数は減少しているが運転者の数は変化している。運輸省の発表数字は、2006年の自家用車の5%は社有車で、2000年の8%に比べ減少している。


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