各国・地域情報

英国

作成年月日:2009年9月8日

職業能力開発の政策とその実施状況

3.1 職業能力開発の背景

 英国では、職業能力開発政策についての権限を各構成国政府及び議会(イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランド)に委譲しているため、同政策については3つの階層から成り、それぞれが影響しあっていることを理解する必要がある。この3つの階層とはつまり、1)欧州レベル、2)国レベル、3)各構成国レベルのことである。まず、欧州レベルでは、2000年の「リスボン宣言」において『2010年までに、より多くのより良い雇用を創出し社会的連帯を強化し、持続可能な経済成長を達成しうる、世界中で最もダイナミック、かつ、競争力のある知識集約型経済を発展させる』という方向付けがなされた。これがさらに発展し、2008年12月、欧州委員会は「新しい仕事のための新しい技能(New Skills for New Jobs)」という標語を提唱し、職業技能の発展を欧州の雇用と発展の中心課題に置いた。
 次に、国レベルでは、英国政府が戦略的な観点から包括的なゴールを設定しており、英国のすべての職業技能の発展を企図している。2006年12月の「リーチレポート(Leitch Report)」において『グローバル経済すべてのための英国の技能の発展:世界基準の技能(UK Skills Prosperity for all in the global economy: world class skills)』という政策が提言されている。このリーチレポートで注目すべきは、能力開発システムを雇用主の声を反映させ、より需要に根差したものにするという点である。2008年4月1日、政府は「英国雇用・技能委員会(UK Commission for Employment and Skills:UKCES)」を創設し、この委員会が戦略的な提言主体であり、英国の雇用と能力開発システムが経済的な競争力と社会的結束の2つのゴールに向けて最善の働きをするものであると強調した。
 同委員会による2009年4月に発行された「アンビション2020」では、英国が2020年までに雇用と能力開発において世界のリーダーとなることを宣言している。このレポートは同時に、英国における世界基準の能力開発と雇用計画がリーチレポート内の計画に沿っているか、また各構成国の目的にも沿っているかといった点について、初めて年次進捗状況の調査を行った結果をまとめたものである。この結果は将来の進捗度を測るための基準にもなるであろう。
 最後に各構成国レベルの政策であるが、この詳細は後述する。

  1. 欧州レベル
     リーチレポートに盛り込まれた提言は、能力の格差や不足解消を目的としており、効果的な能力開発の方法を発達させるための以下のような取り組みが必要であると示されている。
    • 雇用主に働きかけ、より革新的な経営を行うための能力を開発するよう促すこと
    • 学習者が学習を継続あるいは再開できるようにすること
    • 基礎的な職業能力に欠ける労働者に注意を向けて、教育を行うこと
    • 職業教育及び訓練(Vocational Education and Training:VET)を雇用主のニーズに合うものにすること
    • 初級職業教育の地位や品質を、より広い範囲のコースとプログラム、高い質の職業上の選択肢、参加率の上昇と初等教育の退学率の低下、高いレベルの職業資格へと向上させること
     全体としての戦略については、職業能力の開発と広範な学習者を対象とした、明確な単位・資格枠組みシステムの下の学習プログラムを発展させることを目標に掲げた。

  2. 英国全体レベル
     英国雇用・技能委員会(UKCES)発行のアンビション2020レポートは、英国の雇用と技能システムが将来の高い技能にも、人間主導の経済にも適合するシステム、つまりすべての人々に機会が開かれ、かつビジネスニーズに対応したシステムを構築するための明確な基準を示している。これは人々が生涯にわたって新しい技能を得ようとする意欲を増加させるものである。加えて、雇用主が従業員に対する投資を増加させ、その結果、従業員の高い技能を有効に利用することを期待している。確かに、小企業や、いくつかの主要な職種(例えば、熟練技能の必要な仕事や専門・技能職のような仕事)、及び多くの業種(建設業や音響・画像関係)、また特定の地域(ロンドンなど)での特に深刻な技能者不足の問題を示している。技能格差の問題はより深刻である。現在失業者のおよそ10倍、約180万人分程度の雇用は存在している。しかし、多くが高い技能を要する仕事であり、これは英国では高いレベルの技能を持った労働者が少ないことを意味している。さらに高い技能を必要とする仕事は、高い技能を持つ労働者の増加率のそれを著しく上回っている。
     労働者と仕事のミスマッチは、カレッジ卒業者の供給と需要との差、及び現在の仕事に対して「学歴過剰」である労働者の増加といった問題からも発生している。つまり、技能を必要とする仕事と、技能のある人の数、利用可能な技能と需要のある技能の間に、潜在的な不均衡があることを示している。これまでのところ、国際基準により高賃金・高技能レベルの労働者には影響を与えていないが、今後技能過剰、又は技能者の低い処遇での雇用を招く恐れがある。

  3. 各構成国(イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランド)レベル
     単位認定システムは4つの各構成国において多少異なっている。しかし、相互に比較できるよう換算されており、詳細は次の章で取り上げる。
     イングランド、ウェールズそして北アイルランドで用いられている全国職業資格(National Vocational Qualifications:NVQ)やスコットランドで用いられているスコットランド職業資格(Scottish Vocational Qualifications:SVQ)は主要な業種に関する資格である。加えて幅広い他の職業資格もまた認定されており、各4構成国におけるさまざまな資格枠組みの中に収まりうるものである。現行の政策の意図は、学習者の成果が幅広く認められるよう単位累積加算制度によって、単位を基礎とする広範囲の資格を資格枠組みに組み入れようというものである。この枠組みはマーケット主導であり、学習者にとって分かりやすく柔軟性があり、加えて単位累積加算制度を用いたことで、多くの人々に支持されている。これらの発展が、欧州資格枠組み(European Qualification Framework for Lifelong Learning:EQF)の設立への動きにつながる。
     EQFは欧州各国にある資格制度を相互に関係付ける指標として2007年10月24日に欧州議会が設立を決めたものである。EQFは、資格がEU加盟各国、雇用主や労働者個人にとって理解しやすく、また移動性を持たせる役割をしている。また労働者が他国へ移動し就労又は就学する際、資格を合理的に移行することを可能にするものである。

3.2 職業能力開発を進めるための国の政策

 ここでは職業能力開発促進のための最近の大きな動き2つを取り上げる。 他の長年続いている取り決め又は過去のレポートに含まれている動きに関しては、職業能力発達のための示唆を含んではいるが、職業能力開発を支えるための最近の発達に焦点が当てられており、徒弟制度、成人教育、継続教育、職業発達プログラム、パートタイムHE、HEプログラムへのアクセス、基礎学位(Foundation Degrees)などは含まれていない。なお、徒弟制度を見直す動きは、2008年1月に政府が世界クラス徒弟制度を公表した時から続いており、今日までの総評と全国徒弟サービス(NAS)の創設が含まれている。

  1. 国家政策の政策方針の概略
     英国雇用・技能委員会(UKCES)は、英国全土における職業開発を委託される役割を持つ。主に地方政府がこの分野の政策遂行に責任を持つ。例外として、イングランドでは英国政府が直接的政策を遂行している。したがって、2007年7月に政府はリーチレポートを受け入れ、その実行プランを発行したが、「世界クラスの技能‐技能に関するリーチレポートのイングランドにおける実行」における委託はイングランドへのみ適用されたのである。
     英国雇用・技能委員会(UKCES)は2008年に英国政府と地方政府により設立され、英国が雇用と技能において世界のリーダーになるために貢献することを目的としている。それは2020年までに、雇用と技能において世界クラスのレベルに到達するよう行政に対して独立した立場で助言を行う。UKCESは、雇用主が主導し、以下の5つの広範な責務を負っている。
    • 2020年までに、雇用と技能において世界クラスのレベルに到達するという目標に向かい、進捗状況と4つの各構成国の目標や優先順位の適切性を毎年調査する。
    • 政府最高レベルに対し、雇用、技能及び生産性を向上させるための政策に関するアドバイスを行う。
    • 英国における雇用と技能開発制度の各部分が雇用主と労働者のニーズに合致しているか、その貢献度を監視し、政策や刷新などを提言する。
    • 労働者の能力開発における雇用主側の関与、影響力、投資を推進する。
    • 技能と雇用の面で産業を主導する産業別技能委員会(Sector Skills Council:SSC)の管理・運営をする。

     英国雇用・技能委員会(UKCES)は、イングランド、スコットランド、ウェールズそして北アイルランドの4つの構成国が、英国を2020年までに雇用と技能における世界のリーダーにするという目標に向かった政策を行っているか監督している。また、UKCESは技能レベルを向上させ、技能の需要と供給のバランスを整えるとともに、より多くの技能を需要させる経済を打ち立てることや、技術革新や生産性が雇用主の技能に対する需要を刺激することも大切であると認識している。したがって、技能レベルを上げることは、確実に経済発展に貢献することであり、またその結果であるともいえる。経済発展に関しては、景気後退後の回復や、より高い技能を打ち立てるという刷新戦略は、雇用主の需要を向上させるものとして考えられている。そのため経済レベルと同様に、個別の組織レベルにおける政策も必要と考えられるが、同委員会は、経営管理のレベルを満たしてない、又は適合していない管理者が比較的多いという点についても議論している。そのため、英国の主体性と経営管理を改善することは、英国の経済的な業績を改善させることに不可欠であると考えられている。高い業績の職場は、生産性を向上する重要な貢献要素として考えられ、有能な管理者は、潜在的に高い技能の職場を、さらに改善された組織的な業績へと変化させることが求められている。UKCESは、より多くの企業が共通価値観を向上させれば、より多くの革新的で高い専門性の商品やサービスを生み出すことができると結論づけている。つまり、組織が高いレベルに到達すれば、より多くの高い技能も必要となるということである。強い経営管理とリーダーシップ、及び職場における強い技能志向は、同時に技能力の向上も要求する。その目的は、経営戦略を持った、より多くの雇用主が存在する経済を打ち立てることにある。そこでは品質や、付加価値、技術革新及び職場の技能において競争することになる。そのような経済において必要とされる仕事は、より高い技能を要するものであり、そのような経済と労働市場が発展を続けるには、やはり高い技能が必要とされ、したがって技能レベルを向上させることが必要である。

     UKCESはまた、2009年から5年間の戦略計画を策定しており、4つの構成国家間を通して行政が実行すべきと考えられている。その計画の5つの優先項目は次のとおり。
    1. 景気後退期、回復期、成長期を通して英国を支えることができる、経済改革のための明快で包括的な戦略を創出すること。
       その戦略に合わせて、変革を促すために工業戦略や雇用、技能における政策や実践を行う。国の工業技術と経済発展政策においては、より強力な連携が要求される。
    2. 工業及び労働市場の強さと機会に立脚している都市部や郡部のコミュニティにおいて、効果的な経済発展を支えること。
       そして地方の労働力の技能を最大限に活用することである。
    3. 有力なカレッジや教育機関とともに、雇用主の必要とする技能や仕事の要望に応えることができるよう、より機敏かつ対応力のある技能と雇用条件を促進すること。
       これにより雇用主は生産性と競争力向上のために必要とする技能を得ることができ、個人は自分の才能や潜在力を引き出す機会を得ることができる。
    4. 個人の意欲と技能を世界クラスの労働力へと変革させること。
       すべての人が個人的に、職業上成功するためには、動機と労働力を最大化する必要がある。若年層の減少と労働者の高齢化という人口統計学上の2つの課題があり、経済競争力と人々の生活の質を最大限に高めるためには、すべての成人の才能を開発する必要がある。
    5. 雇用主の向上心と管理能力を世界クラスにすること。
       高い技能及び知識集約型経済の中で、国際的に競争できる能力を持ちその労働者の才能や技能を最大限に高めることは必要不可欠である。ビジネスの将来は革新、品質、高付加価値そして効率化にかかっており、各構成国はその教育や教育政策に責任を持っている。

     スコットランドでは、2003年に担当責任者が統合的な戦略である「学習を通した人生、人生を通した学習」を出版している。技能政策に関する戦略は、2007年9月の「スコットランドのための技能‐生涯を通しての技能戦略」で増補されている。これは、スコットランド政府の、生涯を通しての技能習得への探究心を表現するものであり、この中で、変革が必要とされる3つ主要な分野について言及している。つまり、個人の能力開発への、経済や雇用主のニーズへの反応、有機的な構造の構築、スコットランドにおける能力開発の進行状況である。
     ウェールズでは、議会は「学習する国家」計画の中で、教育と訓練のための一般的な枠組みを構築するという、スコットランドに似た政策を打ち出しており、その内容は4つのウェールズ技能・雇用アクション・プランから成る。その4つとは、労働力開発のメカニズムの改善に焦点を当てること、労働市場へ雇用主が必要とする技能を持った新規参入者を供給すること、技能を改善するために雇用主や労働者と協働すること、そして持続可能な雇用関係に多くの人々を取り入れることである。労働力開発口座(Workforce Development Account)の活用を通して、雇用主支援の強化に重点を置いている。
     北アイルランドでは、雇用学習省(Department for Employment and Learning)が16歳以降の継続教育と職業訓練を担っている。2006年には、そこから人々が技能の階段を上ることができるよう意図した「技能を通しての成功‐北アイルランドのための技能戦略」が刊行された。それは技能レベルを向上させた後に、生産性を向上させ競争力を高める目的も持っている。整理するとその目的には、1)必要とされる技能と労働市場情報の流れを向上すること、2)教育と職業訓練の妥当性、一貫性及び品質を向上すること、3)技能の取得を促進すること、4)持続可能な雇用のために技能へのアクセスを改善すること、5)教育と訓練基盤の使い勝手を向上させることなどである。その戦略は技能開発のためのフレームワークの大枠を提供することを意図している。その焦点は、現行労働力の技能を向上させること、これからの労働者の質を向上させること、そして失業者の技能向上に取り組むことである。雇用主とその組織が求める技能の識別と向上が英国における戦略全体の中心的な課題である。

  2. 資格枠組み(Qualifications Framework:QF)
     構成4カ国はそれぞれに委譲された独自の教育と訓練方針に責任を持つだけでなく、教育訓練は政策展開において各構成国の特徴を出す機会がある1つの分野となっているようである。これは資格枠組み(QF)についてもいえることで、共通の枠組み、共通の発展目標を持ちながらも、各国がそれぞれに異なるアプローチを見せている。職業能力評価は基本的に職業資格制度によって管理されている。例えばイングランド、ウェールズ、北アイルランドの全国職業資格(National Vocational Qualifications:NVQ)は、習熟度別の資格制度であるが、その他にもさまざまな職業資格制度が存在している。スコットランドでは、スコットランド職業資格(Scottish Vocational Qualifications:SVQ)という別の分類を用いているが、土台となる評価基準は、他3構成国と同様である。SVQは実務能力を表すものであり、実務の中で必要とされる知識や技能を評価し、全国的な適性基準と照らし合わせるものである。技能と知識に差がある場合、SVQは基本的な訓練枠組みを使用することができる。他の英国各地域では、職業資格は各構成国によって発展しており、スコットランドでは、業界団体とも協力しながら、評価主体と証明書発行者、管理者の3つの役すべてをスコットランド資格機関(Scotland qualifications authority:SQA)が行っており、これは他構成国と異なる点である。
     スコットランドの資格はすべてスコットランド単位・資格枠組み(Scottish Credit and Qualifications Framework:SCQF)によって管理されている。SCQFは、資格間の関連性や次に取得するべき資格などの情報が、雇用主及び学習者、また他すべての人々に分かりやすいように設計されている。これは年齢や職歴に関係なく、一生を通して社会的にも経済的にも最適な教育及び訓練を受けられるようにするためである。SCQFはスコットランドのすべての資格制度をひとつの枠組みに統一するため、スコットランド資格機関(SQA)、スコットランド大学連盟(Universities Scotland:US)、スコットランド高等教育質保証機関(Quality Assurance Agency Scotland:QAAS)、スコットランド政府(Scottish Executive)が協力して2001年12月に設立され、以降スコットランドの学習者のニーズに応える形で発展してきた。SCQFでは、資格及び訓練プログラムは難易度と単位数(所要学習時間)によって測られ、12のレベルに分けられる。また、次に取るべき資格の提案や、有効な単位変換方法などを示すことで、学習計画を立てる助けを行う。
     イングランド・ウェールズ・北アイルランドでは同じような資格・単位枠組みを使用しており、そのため英国全体で広範な資格を網羅し、1つの基準に換算して考えることができ、多くの学習者の理解を得ている。
     CQFW(Credit and Qualifications Framework for Wales)は、ウェールズで用いられている資格枠組みであり、16学年以上の高等教育を対象としている。CQFWはWAGとHEFCWが合同で設立し、2003年よりウェールズ内の資格制度は次第に1つに統合されてきている。この枠組みは、すべての学習資格を単位数(所要学習時間)でレベル分けをし、各レベルにおける学習者の需要によって包括的に設計されている。
     上記各構成国の資格枠組みは、EQFへ互換できるよう設計されている。各国の枠組みを超えて比較することが可能であることから、同等レベルの資格を持っている場合、他の枠組みでも同様のスキルがあるとみなされる。しかし、一部同等レベルとみなされる資格でも、その学習内容や時間に大きなばらつきがある場合がある。それでもなお、各枠組み間に互換性があることは、学習者の次の目標を立てる指南となり、モチベーションを高めることで、国際競争力が強化され、また、学習順序を明確にすることで、生涯学習の姿勢を養い、さらに国から評価を受けることで、社会的・専門的信頼性を高めることができる。

3.3 政府及び関係団体の制度、組織、機能

 教育及び訓練政策の大枠については、各構成国政府及び議会が策定しているが、実際の提供に関しては主に各地域の責任において行われる。そのため実施状況は自治体や産業団体、各訓練施設、雇用主、労働組合の影響、各資格授与団体など、幅広い利害関係者の影響を受け、各地域で大きく異なっている。地方への職業教育訓練に関する予算配分を行ってきた教育技能委員会(Learning and Skills Council:LSC)は廃止が予定されており、技能資金提供庁(Skills Funding Agency:SFA)と若年学習庁(Young People’s Learning Agency:YPLA)の2組織が業務を引き継ぐ。
 高等教育と訓練のこうした急進的な変化に伴って、その戦略と予算の優先順位決定プロセスにおける地域開発庁(Regional Development Agency:RDA)の役割について議論が起こっている。現在の極端に中央集権化したシステムは、今後、分権化されることは確かだが、現時点では各地方及び産業組織のどれに重点を置くか不明である。ビジネス・イノベーション・職業技能省(Department for Business, Innovation and Skills)がこの政策に関与しているのは、SFAとRDAとの間の関係性を詳細に読み解く意図もある。SFAは契約と財政の管理における国の役割を負い、YPLAと地方政府は19歳以下の学習規定を管理運営している。YPLAは、16歳から19歳の若者に適した学習場所を確保するという新しい義務を負う一方で、政府を財政面・運営面において支える役割も担っている。
 英国では職業能力は部分的には業務に関連した、習熟度別の資格検定を通して測定される。その資格は業務効率を上げる技能と知識の有無を反映し、主に全国職務基準(NOS)に基づいて定められている。これらの基準は特定の職業において、求められる能力を記述したものである。これにより、あらゆる角度からあらゆる職業における最適な方法、将来の要件に適合する能力、適格な知識や理解力・実績を測ることができる。英国における資格とビジネス改善のツールのひとつである。NOSは全英国の産業別技能委員会 (SSC) 又は基準設定団体を通して、雇用主グループによって労働者のために開発されたものである。SSCとSSBは雇用主・協賛者とともに、産業変化に伴うニーズ、業務パターンの変化、そして実務規定や技能の変化に合わせたNOSを開発、維持及び更新する。
 全国職務基準(NOS)の働きは以下のとおりである。

  • 職務明細書の開発
  • 訓練・開発プログラムのデザイン
  • 従業員の業績評価とその改善
  • ベストプラクティス情報の提供
  • 英国の認定資格情報の提供

 産業別技能委員会(Sector Skills Councils:SSC)は、雇用主の需要に応じた技能制度を構築するための雇用主が主導する民間機関である。現在全英に25のSSCがあり、英国経済の90%以上をカバーしている。それらはすべて技能格差と技能不足を減らす方向で活動をしている。つまり、生産性、ビジネスと公的サービスの向上、産業におけるすべての労働者の技能と生産性を押し上げる機会の増大、全国職業基準、徒弟制度及び高等教育を通しての学習機会の改善などである。すべてのSSCはスコットランド、ウェールズ及び北アイルランドの担当大臣と相談の上、所轄の大臣により承認される。
 SSCは雇用主とともに、産業技能協定(Sector Skills Agreements:SSA)の開発に重要な役割を果たしている。SSAは雇用主が自らの労働者に対して具体的にどの技能を必要としているかを表示し、そのような技能をいかに現在と将来にわたって提供するかを示す。また、SSAは雇用主が主導するSSCのネットワークにより促進されるが、教育や訓練を提供する者、資金を出す者及び計画する者すべてに用いられる。SSAは調査を含むプロセスによって創出され、それぞれの産業が短期、中期、長期に必要とされる技能を決定し、産業の中で変化すべき要素を図示する。
 SSAの機能として次のような項目がある。

  • 現在の訓練規定はすべてのレベルにわたるが、その範囲、性格そして雇用主との関連性が測れるよう見直しされる。
  • 労働力開発における主な問題点及び弱点を分析し、優先順位を検討する。
  • ビジネスの業績を支える雇用主の技能開発投資を通して、共同的行動への範囲において見直しを行う。
  • 雇用主が何に関心があるかについて調査を行う。
  • SSCと雇用主が必要な訓練の供給を確実にするために鍵となる、財務上のパートナーとの協働関係を維持する。

 SSCは次の産業をカバーしている。

  • アセット・スキル(Asset Skills)
     資産、住宅、清掃や施設管理
  • コージェント(Cogent)
     化学、薬品、原子力、オイル、ガス、石油やポリマー
  • 建設スキル(Construction Skills)
     建設業、建設環境における開発と維持等の幅広い産業
  • クリエーティブ・文化スキル(Creative and Cultural Skills)
     芸術、文化遺産及びデザイン
  • イースキル(e-skills)
     ビジネスIT
  • エネルギー・公共事業スキル(Energy & Utility Skills)
     電気、再生可能エネルギー、ガス、廃棄物処理や水道事業
  • ゴースキル(GoSkills)
     輸送業
  • ガバメントスキル(Government Skills)
     中央政府
  • インプルーブLtd(Improve Ltd.)
     食品や飲料に関する製造や加工業
  • ラントラ(Lantra)
     環境及び土地、不動産
  • 英国生涯学習(Lifelong Learning)
     地域学習及び開発、継続教育、高等教育、図書館、アーカイブと情報サービス、業務ベースの学習及び開発
  • ピープルズ・ファースト(People 1st)
     ホスピタリティ、レジャー、旅行産業
  • プロスキル(Pro skills)
     製造業
  • SEMTA
     科学、技能及び製造技能
  • スキルファスト(Skill fast)
     ファッションと衣料
  • ケアと開発のためのスキル(Skills for Care & Development)
     社会的なケア、子供及び若者
  • 健康のためのスキル(Skills for Health)
     すべての英国の健康セクターを代表する
  • 正義のためのスキル(Skills for Justice)
     遵法、青年倫理、地域の秩序、裁判所、検察、犯罪科学
  • 物流のためのスキル(Skills for Logistics)
     物流セクター
  • スキルアクティブ(Skills Active)
     活動的なレジャーや学習
  • スキルセット(Skill set)
     オーディオ・ビジュアル業界
  • スキルスマート・リテイル(Skill smart Retail)
     小売業
  • サミットスキル(Summit Skills)
     ビル管理技能業界
  • 自動車工業会(The Institute of the Motor Industry (formerly Automotive Skills)
     乗用自動車業

 総じて、産業別技能委員会(SSC)は、新しい職業的基準を設定する責任を持つとともに継続的学習と開発に雇用主が関与するための主な手段として考えられている。中央政府レベルでは、職業能力開発における利害関係を持つ多くの産業が存在する。財務省は、競争力問題と技能開発における利害を持っている。また政策チームが他の行政部門の仕事からは一部独立して、特別の問題を調査するために設置されている。例えば、リーチ委員会は財務省の委任を受け組織されている。ビジネス・イノベーション・職業技能省は2009年6月に英国の将来の経済的な強さを構築するための唯一の部門として産業、技能者、革新、世界クラスの科学及び研究を促進させる規則的な環境を活性化させることにより創設された。雇用年金省(Department for Work and Pension:DWP)は、センター・プラスを通じて人々の就職の手助けをし、また、就職できない人々には、例えば技能診断プログラムの提供などを通して技能開発を進める。児童・学校・家庭省(Department for Children, Schools, and Families:DIUS)は、高等教育を除く3歳から19歳を対象とするすべての教育を実施し、それには学校、短大、徒弟制度での職業教育も含まれる。

3.4 予算と財源

 2008年における教育技能委員会(LSC)への公的な資金の総額は、120億ポンド※1を超える。LSCの予算はすべての16歳以降の教育と訓練(継続教育以外)をカバーしており、2008年から2009年においては130万人の若者が学校、カレッジもしくは資格を目指す業務ベースの学習をするために73億ポンド投資した。また成年教育には26億ポンドで330万人が技能研修を受けており、8億3,350万ポンドが継続教育と訓練施設に使われている。

※1
1ポンド=152.22円(2009年9月8日現在)

3.5 外国・国際機関からの援助

 欧州の財政サポート以外、外国や国際機関からの援助はない。例えば、教育技能委員会(LSC)は、欧州社会基金(European Social Fund:ESF)から2007年から2008年にかけて、2億9,250万ポンド、2008年から2009年かけては1億5,900万ポンドを得ている。他は職業能力開発に使われ、地域や中央政府又はカレッジを通して用いられる。この点に関しては他の欧州のプログラムも同様である。例えばレオナルド・ダ・ビンチ・プログラムはEU生涯学習プログラムの一部で、欧州のパートナーシップを通して技能のある労働力を構築するために策定されている。海外の職場に対して資金を用意し、欧州の職業教育訓練(Vocational Education and Training:VET)を改善する目的のもと訓練用具の開発を行う。このプログラムは、VETの質と関連性を高めることに焦点を当てており、欧州のパートナーシップを構築し、成功事例の情報を交換し、またスタッフの専門性や学習者の技能を開発するためにVET関連の組織に対して機会を提供している。英国の教育機関や企業はともにこのプログラムや同様の欧州の企画に関与することができるが、それらは常に他の欧州各国の組織と協働することが必要とされる。

3.6 職業能力開発の政策評価

 2007年、政府はリーチレポートを受け入れ、実行プラン「世界レベルの技能:イングランドにおけるリーチレポート実行計画」という政策を発行した。その後、下院教育技能委員会は2007年8月に16歳以降義務教育終了後の技能に関する報告書を公表した。これには、全体としては政府方針を支持するが、同時にいくつかの懸念事項が指摘された。例えば、リーチレポートの1つの目標である、資格を国家技能資本増加の指標として使用することへの問題点である。すなわち、政府案では社会的経済的繁栄と、単なる訓練の強化が必ずしも直接結び付くわけではなく、技能は職業活動という大変複雑な方程式の一部にしかすぎないといった指摘である。さらに、資格種類の増加と、技能労働者の増加がイコールとは限らない。それよりも必要とされるのは、ビジネス全体をサポートするための、これまで以上に経営能力に焦点を当てた支援である。しかしながら、資格コースへの財務支援は、多くの雇用主や個人が一番効果的だと主張している形、つまり「一口サイズ(Bite-sized)」の学習を積み重ねていく単位累積型に真っ向から反対している。この新しい資格と単位枠組みは歓迎に値するものであるが、同時により柔軟かつ対応力のある財政も伴わなければならない。
 2009年1月に英国議会下院、イノベーション・大学・科学・技能委員会は「回復のための再技能‐リーチレポート実行後の技能、訓練政策(2008‐2009年第1回委員会報告第1巻)」を発表した。2006年12月にリーチ委員会が発表した技能に関する報告書では、英国市民全体の技能を底上げするという、政府も積極的に支持した野心的な目標を定めていた。しかし、それ以降、経済的環境は悪くなり、イノベーション・大学・科学・技能委員会の報告書が発表されると同時に技能政策の前進について見直しが行われた。同委員会は、全体の技能底上げではなく、技能の再訓練が必要であるとリーチ委員会の考え方に根本的な疑問を投げかけ、目標や政府の資源配分はそれを反映するよう変化しなければならないと主張した。
 Work Foundation社によって行われた、この職業能力開発の業績に関する最終評価は、あらゆるヨーロッパの国が導入している知識集約型経済と、競争能力の発達に関して、リスボンゴールに照らした進行状況の調査結果を踏まえたものである。その最終報告内容は、「英国はこれまで多くの労働者に見られる低い水準の職業能力問題に苦しんできた。教育改革の遅さ、一貫性のない不十分な訓練や承認制度も問題である。同時に、欧州の名門カレッジの比率は高いまま維持している。…近年の欧州プログラムの中での優先事項という観点から見ると、以下のような評価とする」

  • 国際的な調査において英国の15歳の基礎的技能が平均より比較的高い。
  • 成年の多くが基礎的な技能が不足しており、革新政策が社会的な結果を達成するために実行されたが、いまだ達成をみない。
  • 低学年の退学率はEU目標値より高く、高等学校レベルでの取得資格は低い。改革は進展しているものの、その多くは改革プログラムの効果に左右される。
  • 英国は数学、科学そして高等教育における技能への参加の観点からほとんどのEU各国の業績と比較して優位にある。
  • 英国は生涯学習とCVTへの参加の利用可能な指標のすべてにおいて、既にEU目標値に到達し高い評価である。
  • 教育と訓練への政府の出費は、1999年においてはほぼEU平均にあり、その後急速に減少したが、現在ではEU平均よりかなり上にある。
  • 雇用レベルは欧州レベルよりかなり上位にあり、リスボンの目標に到達しつつある。低い技能と高齢化する労働力は、改革への継続的な圧力となっている。
  • コペンハーゲン・プロセスの観点からは、特に資格枠組み及び単位枠組みの開発は英国の改革政策に関しては高い。

3.7 職業能力開発の実施概況

 英国統計庁により認められた手続きによると16歳以降の教育、学習者の参加と成果及び最高資格レベルの最近の全国統計は、イノベーション・カレッジ・職業技能省(Department for Innovation, Universities and Skills:DIUS)と、児童・学校・家庭省(Department for Children, Schools and Families:DCSF)の統計やコンサルティングを受けてデータサービスにより作られ、2009年3月26日に公表された。最近のニュースからの重要な点は、以下のとおりである。

  • 2001年2月〜2007年8月にかけ、283万5,000人の労働年齢者が基礎的技能を改善した。
  • 2007〜08年は138,600人の若者がレベル2の資格を取得している。
    これは2006〜07年の3.4%の増加である。
  • 2007〜08年は159,800人の若者がレベル3の資格を取得している。
    これは2006〜07年の7.8%の増加である。
  • 2007〜08年は320,600人の若者がレベル2の資格を取得している。
    これは2006〜2007年の36.5%の増加である。
  • 2007〜08年は134,500人の若者がレベル3の資格を取得している。
    これは2006年の07の17.0%の増加である。
  • 教育技能委員会(LSC)が資金提供する継続教育(高等教育を除く、継続教育カレッジ、労働ベースの学習、Train to Gain※2、成人保護教育を含む)における成人の総合計参加者は、327万8,400人であり、2006〜07年の3.2%増である。
  • 18万7,300人の成人が2007〜08年にTrain to Gainの資格を取得したが、これは2006〜07年の倍である。
  • 2008〜09年の上半期に14万500人が徒弟訓練をスタートさせ、8月1日から1月31日までの徒弟訓練修了者は4万9,100人であった。これは2007〜08年の同期比ではそれぞれ19.4%増と7.6%増である。
※2
Train to Gainとは教育技能委員会(LSC)による、職業資格に乏しい従業員を対象に雇用主が職業訓練を実施する際、訓練費用を政府資金によって補助する職業訓練支援プログラムをいう。

 最初の統計である「英国における職業資格2007〜08年」は2009年3月に発行されており、職業資格に焦点を当てている。2007〜08年に英国で授与されたNVQとSVQの数は77万3,000件であり、2006〜07年と比較すると15%の増加である。2005〜06年では8%の増加となっている。英国におけるNVQ・SVQ全体の57%は25歳以上の者に与えられ、職業関連の資格(Vocational Related Qualifications:VRQ)は急速に重要になっている。2007〜08年では170万件のVRQは、NISVQへの50の授与機関によって報告されており、前年では140万件のVRQが、NISVQへの47の授与機関によって報告されている。これら計39万1,000件のほとんどは、指示された学習時間が少なくとも推奨時間の80%という完全なVRQで、全体の23%である。これらのうち、22万8,000件はレベル2で11万9,000件はレベル3である。すべてのVRQにおいて、女性より男性の方が完全なVRQを受けており、レベル2取得者の66%が男性で、レベル3については52%が男性である。この大多数である68%が、継続教育(FE)又は第3次カレッジ(Tertiary Colleges)を通してもたらされた。すべての完全なVRQ取得者のうち、22%は「建設、計画及び建設環境」、16%が「芸術、メディア及び出版」、15%が「健康、公的サービス及び介護」である。レベル2の完全なVRQ取得者の25%は「建設、計画及び建設環境」であり、レベル3の完全なVRQ取得者の31%は「芸術、メディア及び出版」である。女性の完全なVRQ取得者の最大部門は「健康、公的サービス及び介護」の分野で34%を占め、「芸術、メディア及び出版」が24%となっている。男性ではすべての完全なVRQ取得者の34%が「建設、計画及び建設環境」であり、21%が「エンジニアリング及び製造技能」である。

 NVQレベルの次の定義は、すべての資格において要求される広範囲な基準を示している。
【NVQレベル1】
 ほとんどが決まった予想可能な範囲の業務において知識と技能を適用することができる能力。
【NVQレベル2】
 さまざまな状況の中、重要な業務において知識と技能を適用することができる能力。その活動のいくつかは複雑で決まったものではなく、いくつかの独立した責任や自律性がある。グループやチームのメンバーなどの協力がしばしば必要とされる。
【NVQレベル3】
 さまざまな状況の中、重要な業務において知識と技能を適用することができる能力。その活動のほとんどは複雑で決まったものではなく、かなりの責任や自律性、他人の管理がしばしば必要とされる。
【NVQレベル4】
 さまざまな状況の中で重要な業務を知識と技能の適用し行うことができる能力。その活動は複雑で、技能的もしくは専門的な仕事で、幅広い責任や自律性が求められる。他人の仕事や資源の配分への責任がしばしば必要とされる。
【NVQレベル5】
 幅の広い、予想不可能な状況の中で重要な業務を深い知識と複雑な技能を適用し行うことができる能力。大変重要な個人の自律と他人の仕事や資源の配分への責任が問われる。また分析や診断、デザイン、企画、実行、評価に対して個人の説明が求められる。

3.8 公共職業能力開発実施機関

3.8.1 目的、組織、施設など

 職業訓練実施機関には、継続教育(FE)カレッジや民間訓練機関など多種多様な機関がある。また、多くのFEカレッジでは、特に19歳以下を対象とする一般的な教育プログラムも実施している。さらに、授業形式が比較的少なく、評価者が直接職場で評価を行う能力に基づく教育がある。以上の理由から、1つの機関を代表的な訓練機関として挙げることは非常に難しいため、いくつかの一般的な情報と、FEカレッジの1つ、ニューハムFEカレッジ(Newham College of FE)を例に紹介する。
 2007年5月、教育技能委員会(LSC)は、継続教育(FE)カレッジの床面積に関する指針を発表した。これは毎年、昼間(午前9時から午後5時まで)に提供される現場の「指導学習時間数」に従ってカレッジの床面積を提案するものである。この中で、施設が用意すべき広さの下限と上限の基準を示すものであり、カレッジの床面積はその範囲内でなければならない。総床面積に対する各スペースの割合は推奨する値にそって、適宜割り当てられる。
 この指導学習時間(Guided Learning Hours)とは、教師が学生に対して実際に教えた時間を指す。それは学生が学習したという単なる個人の学習記録ではなく、講義、クラスでの議論そして実際的な技能のデモンストレーションを通して教師が学習者の理解の発達を補助し学習した時間である。したがって、オープン学習、混合学習、自習、学習合意契約(Learning Agreement Contract)の一部として学習に割り当てられた時間割上の時間などは含まない。また、明らかに教師がいないところ、例えば学習資源センター(Learning Resource Centre)やカレッジ図書館、インターネットを通して行われるオープン学習(欧州・コンピューター・ドライビング・ライセンスのようなもの)も含まない。
 例えば、大規模の職業訓練環境を必要としない、多数の講義主体の一般継続教育カレッジ(General Further Education Colleges:GFEC)は、通常より少ない床面積しか求められていない。逆に、ワークショップや実際の労働環境での作業が多いGFECでは、許容上限床面積範囲内で行われるよう、より慎重に計画する必要がある。

 カレッジ内のスペースは4つの構成要素に分けることができる。

  1. 教育・学習スペース
    管理室、食堂、通路、倉庫及びバランス・スペース以外。
  2. 他に利用可能なスペース
    教育以外のすべてに利用可能なスペース。これらは通常、管理室、食堂、通路、倉庫及び集会場などを含む。
  3. バランス・スペース
    使うことができないスペース。典型的には通路、階段、エレベーター、機械室及び壁などに覆われた部分。
  4. アトリウム(開放的な吹き抜け空間)
    新しいカテゴリーで、ふつうガラスで囲われたスペース。少なくとも2フロア分の高さと十分な広さがあり、多目的に用いられるスペースであると定義されている。カレッジのアトリウム全体の広さは、総内部面積の10%を超えてはならないとされている。

 昔から総床面積の60%が教育と学習に充てられるべきであるとされてきた。しかしながら、LSCが実施した調査では、最近建設されたカレッジの建物には数多くの変化が見られる。主要な変化の1つは、最新のカレッジの建物は、バランス・エリアの占める割合が増加している点である。カレッジとその企画者は、学習、社会、共同利用又はバランス・スペースを拡大するために、またコスト効率の良い建物のデザインを推進するために、個々のカレッジが資産開発において柔軟になってきている。

【ニューハムFEカレッジ】
 ニューハムFEカレッジは1985年に、ロンドンのニューハムに設立された継続教育カレッジである。これはイーストハムとウエストハム技能カレッジが合併したもので、ニューハム地区の人々のニーズにより良く応えることを目標としている。カレッジは、幅広く学生の参加を広げようとしているとの評価を得ている。そのカレッジは、カレッジの枠を幅広くロンドン中に拡大し、学外の地区や学習パートナーなどの総合的な組み合わせを発展させてきた。カレッジは2つのメイン・キャンパス、イーストハム・キャンパスとストラットフォード・キャンパスがあり、ロンドン特別区ニューハム周辺や地域コミュニティの中心部で多くのローカル・センターが教育を提供している。ニューハムはイングランドにおける最も多様化した地域の1つであり、学生の約63%が少数民族の出身である。このカレッジは、全国的にもロンドン市(Greater London)※3においても最大の継続教育カレッジであり、2万人以上の全日制及び定時制の学生がいる。学生の多くは、地元出身であり、80%以上が入学時19歳以上である。また平均年齢は31歳である。ニューハムカレッジはロンドン・メトロポリタンカレッジの提携校であり、他にも多くのカレッジと提携関係を結んでいる。 同カレッジはIT技能やビル改築へかなりの資本投資を行ってきており、学生の個人学習を支える新しいコンピューター・センターの開発やバーチャル学習環境の開発に注がれた。ニューハムカレッジは、広範の資格証書、NVQ、一般又は応用科目、高等教育コース、現代徒弟制度、基礎コース、BTEC国家証明書、高等国家証明書、RSA、市やギルド、基礎学位及び多くの他の資格を提示している。つまり、ほぼすべてのレベルのほぼすべての職業分野における職業的及び学問的プログラムを提供していることになる。
 ニューハムFEカレッジは、最近の教育水準局(Office for Standards in Education, Children’s Services and Skills:Ofsted)の調査で、最高評価の「素晴らしい(グレード1)」との評価を受けた。これは公開されている全国的な比較において上位に位置する評価であり、16〜18歳の学習についての評価では、群を抜いて良い評価である。2009年7月に刊行されたレポートの中でOfstedは、カレッジの革新的で包括的なカリキュラムの品質とコミュニティのニーズに合致する取り組み、それに焦点を合わせた非常に実りあるパートナーシップを称賛している。以下は評価内容である。

※3
Greater London(大ロンドン)は、シティ(the City)と32のロンドン特別区(London borough)から構成される。1965年に制定された行政区で、通常ロンドン市といえば大ロンドンを指す。

  • カレッジの教育及び社会プログラムと学習者のニーズや関心への対応は素晴らしい。
  • 規定の質は素晴らしい。
  • 際立った学習者へのサポート
  • リーダーシップ、マネジメント及びガバナンスは素晴らしい。
  • 雇用主のニーズは良く合っている。
  • 雇用の平等は素晴らしい。
  • 生き生きとした、寛容な、そして尊敬できるカレッジのコミュニティ。

<グレード評価>

  • 規定の効率性:素晴らしい(グレード1)
  • 改善の能力:素晴らしい(グレード1)
  • 業績と基準:良い(グレード2)
  • 規定の質:素晴らしい(グレード1)
  • リーダーシップとマネジメント:素晴らしい(グレード1)
  • 機会の均等:素晴らしい(グレード1)

3.9 民間企業が行う職業訓練への支援体制

 民間の訓練機関が提供する教育と同様に、専門職団体、労働組合や経済団体もまた職業訓練への援助をしている。労働組合は、各メンバー企業と密接なので、企業が今求めている職業能力訓練をよく理解している。団体が認める民間訓練機関を推薦したり、評判のよい期間を見つけるのを手伝ったり助言をする場合がある。時には労働組合自らが訓練コースを提供することもあるが、訓練実施について関連専門団体・機関に提案することもできる。これらの組織により提供された、もしくは推奨された訓練コースや情報は、1つの産業に特化したものというより、貿易や会計などといったより一般的で、むしろ職種としての専門性のあるものである。訓練が継続的職業開発プログラムの一部として行われる場合は、特にそうした傾向が強い。また、特に管理者レベルに関して、ビジネス組織もしばしば独自の訓練を提供している。
 民間訓練機関による訓練は個人が自らのスキルを改善するために履修することが多いが、企業が組織的な技能開発や開発ニーズのために活用することもある。SSDAの「技能レベルを向上させる:地域の訓練機関はいかに対応しているか?」と題した調査は、多様性を持たせるため4産業8地域における雇用主を対象に行われた。調査の結果から、どの産業でも少数しか継続教育カレッジ、又は商業訓練機関のサービス利用を希望していないことが分かった。衣料業界を除き、彼らは独自の手段や、機械や備品の供給者による訓練を活用していた。カレッジや商業訓練機関を活用しない主な理由は、企業の訓練ニーズや費用面で、スペックが合わないからであった。この調査によると、成人従業員に対する合理的で短い訓練機関で済むプログラムへのニーズが大きい。しかしながら、ほとんどのFEカレッジの学部や民間訓練機関は、特にLSCの財務基準にかなうコースや資格を提供することに腐心してきた。他方、最近数十年の訓練市場の変化に生き残りをかけた組織に求められる企業家的技能を発揮して、いくつかの訓練機関は既に地域企業の成人向け技能向上ニーズに適応するため地域企業との協力を強化している。このことは特に比較的立ち直りの早い地域企業(例えばイングランド南部の機械エンジニアリング)及び急速に変化する技術と製品に遅れないよう生き残りをかける通信業のような分野では顕著である。これらの訓練関係の大部分は大企業に限られ、中小企業は、経済的制約から訓練機会を設けず、全額負担の訓練コースを歓迎しない傾向がある。けれども、多数多様な訓練ニーズの中から一般向け共通コースを探している訓練機関同士がグループを組み訓練機関団体を通じて中小企業とまとまった例はいくつかある。


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