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英国

作成年月日:2009年10月19日

職業能力基準、職業能力評価制度

4.1 職業能力基準

4.1.1 制度概要

  1. 全国職務基準(NOS)
     イギリスでは、主に全国職務基準(National Occupational Standards:NOS)を土台とした各種資格を通じて、職業能力が測定される。NOSは産業別技能委員会(Sector Skills Council:SSC)又は基準策定機関(Standard Setting Body:SSB)を通じて雇用主たちによって発展してきたもので、さまざまな職業における労働者に期待される職務遂行能力、つまり実績、将来期待できる適応能力、知識と理解力を示したものである。主要な職業はほぼすべてを網羅しており、NOSは英国の職業資格制度を形成するための基礎的な要素であり、ビジネス改善のツールでもある。2008年秋、英国雇用・技能委員会(UK Commission for Employment and Skills:UKCES)はNOSが当初主張していた目的に則ったものであるか、初めて協議を行った。この第1回目の協議では、NOSの現在の利用状況と今後の発展に関するいくつかの疑問に基づいた専門的な話し合いが行われた。 次の協議では、NOS評価制度の主要目的及び利用について、主要投資者たちの同意を得ることが目的とされた。特にこの協議では、資格や資格枠組みなどではなく、NOSの目的に焦点を当てた話し合いとなった。協議は第2段階に入り、先立って取り上げた主要項目にさらに詳細な説明を加え、NOSに対するこれまでの貢献度にかかわらずすべての雇用主に向けたものとなっている。今後SSCとSSBは、雇用主とそのパートナーとともに、NOSを産業の変化に伴うニーズの変化や労働スタイル、経営習慣、テクノロジーなどにおける変化へ対応できるものへと発展させる取り組みを行う。
    【全国職務基準(NOS)の用途】
    • 職務記述書の作成
    • 研修や研修の計画
    • 評価基準、従業員の職務能力の向上
    • 最善の業務遂行方法に関する情報の提供
    • 英国認定資格情報の提供

  2. 産業別技能委員会(SSC)
     前述のように、SSCはNOSの開発に主要な役割を担っている。雇用主主導の全英に散らばるそれぞれが独立した組織であり、雇用主のニーズに応える技能制度を構築するために設立された。現在、英国の経済活動の約90%以上に当たる25組織が活動しており、以下4つの重点目標に向け活動している。
    • 実際の技能と、求められる技能とのギャップの軽減、及び技能不足の解消
    • 生産性、ビジネス及び公共サービスの成果向上
    • 最善の業務遂行方法に関する情報の提供
    • 全国職務基準、徒弟制度、継続教育、及び高等教育を通じた学習教育の改善

 SSCは過去5年間にわたりその基礎を造り発展してきた。その間、英国政府、所轄官庁、研修機関、研修資金提供団体及びその他の技能投資家と強固な業務関係を築き、職務基準の設定及び雇用主の代表組織として技能関連事項に関して指導的役割を果たしてきた。しかし、英国雇用・技能委員会は2009年SSCの業績評価を行った。その結果、大規模なネットワークの再構築に乗り出す意向はないものの、英国雇用・技能委員会はより単純で分かりやすい技能環境のために、各SSC間で共有できるものは共有させ、結果としてSSCの縮小を促すようである。

4.1.2 整備状況

 全国職務基準(NOS)は、個人が与えられた職業で期待される測定可能な業績成果を規定する。英国各地域の経営者によって開発されたNOSは、個人が職場で求められる技能、知識及び理解力を規定する。また、資格及びビジネス改善ツールのような製品及びサービスがどの程度までの範囲で開発可能かを問う場合の基盤を提供する。
 2008年、英国雇用・技能委員会はSSC又はSSB向けにNOSの新訂・改訂用の手引きを発行した。SSCとSSBが新たに職務基準を開発するには、実質的な証明資料によりその目的と必要性を証明しなければならない。証明資料とは、産業別技能協定(Sector Skills Agreement)又は資格戦略からの情報分析、労働市場分析、及び現行NOSあるいは他のサービスの使用者からの意見などである。この作業は、現行のNOSの評価・監視と関連付けて実施しなければならない。例えば、ある免許又は資格についてNOS以外の資格基準が既に存在する場合、これまでの実施状況や予備調査の評価を含めて必要性を証明する。NOSの開発及び見直しの根拠となる労働市場の情報分析には、各職業における技能の必要性について、下記のような情報を含めなければならない。

  • 技能の種類や対象となる職業の範囲についての明確化及び説明
  • グローバル化、技術変化、消費者需要及び政策の変更とそれらが技能に与える影響など、技能開発を促進する重要な要素の特定
  • 実際の現場と理想とする技能のギャップ及び技能不足の分析
  • 将来の技能ニーズの変化についての理解
  • イングランド、スコットランド、ウェールズ及び北アイルランドを含めた、地域による技能差異の徹底した確認
  • 早急に対処すべき技能や問題点の確認

 さらに、分析には以下に挙げる労働力開発政策と実際の実施状況とのギャップや問題点、実現化の優先順位及び技能規定の範囲と品質を加えるのが妥当である。

  • 全産業分野共通の教育、研修及び技能規定の概要及び個別分野の将来ニーズに応え優先的に提供する制度との適合性
  • どんな技能不足の原因でもそれが将来を見据え優先順位の高い技能及び取り組み活動にどう影響するか
  • 雇用主は現有労働力に対する投資が将来とも必要か否か
  • 分野を通じて技能に対してどんな投資が行われているか

 「全国職務基準指導書(Guidance on the format of NOS)」には必ずNOSの標題と概要を含めるよう明示する。標題はNOSの内容と文脈・前後関係を明確に反映し、すべての規定は職務の名称ではなくカバーする規定内容の機能面をきっちりと反映する。概要は、1)NOSの使用者が使えるか使えないかの判断基準を提供しているか、2)職務内容がNOSに記述されているか、3)NOS使用の前提条件、5)NOSの説明である。
 職務遂行基準はNOSの心臓部で、個人への期待値を詳細に定義している。また、NOSの標題に記載のすべての機能達成に重要で、かつ関連分野を横断的にカバーするベストプラクティスを示し、不測事態、緊急事態にも対応できることをも示している。職務遂行基準は、実際の目的達成なしにただ単に実行可能な活動を羅列するのではなく、個人が達成でき、満足する結果を述べ、職務遂行を保証する成果の品質を示すものである。職務遂行基準に関する知識及び理解の面では、基準に合致するには個人が、何を知り何の理解が必要かを示す。例えば、法律への適合では、個人は現行関連法律を知る、なぜ順守しなければならないか、そしてどう自分の仕事に適用するかが必要となる。さらに、関連分野に一律に適用できる本質的なもの及び固有のもの両方が含まれる。加えて、NOSを人が遂行すべき活動を記述する2つ以上の部分(要素)に分割することも可能である。それぞれの要素は、職務基準を遂行する際の行動に重大な影響がある環境領域、あるいは状況と、NOSの枠内で個人が発揮するよう期待される個人的特質を表す価値及び行動を含めることもできる。
 NOSは製品及びサービスの開発が可能となる基盤を提供する。それらの製品及びサービスは、雇用主が職務記述書又は職務内容書の最新版作成に利用でき、研修又は成果需要分析の規格、適当な教育及び研修プログラムの開発あるいは選択、学習企画の効果評価、及び個人評価に利用できる。個人にとっては、キャリア開発又は専門分野の能力開発の一助として自分の職務又は他の職務についての自己の能力評価に活用できる。同様に、資格認定機関が行う認定資格の開発、研修機関が行うコース開発、規制機関が行う実務免許の創設、専門団体が行う会員資格基準の開発にも利用できる。
 NOSは、雇用主が経営計画を作成する場合など、職場のほかの場面でも活用できる。管理者は、職場で必要な技能を記述する場合、現在職場で使われている技能を評価する場合、目に見える技能ギャップ及び技能不足を埋めるための研修及び採用計画を作成する場合などに活用できる。人選、新規採用の場面では、職務記述書の基本あるいは良い実務慣行事例の記述、成果・目標設定の基準として、良い実務慣行の内容を詳細に特定する研修内容を伝える場合、期待される成果の定義により研修評価を行う場面、また、基準作成を内部で実施するか、外部機関とともに作成するかの判断基準の基礎としてNOSを利用できる。
 いったんNOSが明確に規定されると、スコットランド職業資格あるいは全国職業資格(S/NVQ)のような特定の資格に組み込むことができる。S/NVQはNOSに由来する職能資格である。このようにNOSは職務を効率的に行うのに必要な職務遂行能力、及び知識を示している。必要なすべての場面において、有能で一貫して基準を満たす証明を提出した者は資格を取得することができる。資格監督官はS/NVQ関連基準の決定及び設定に責任を負う。S/NVQの構成は、産業別技能委員会又は基準策定機関(Sector Skills Council or Standards Setting Bodies-SSC/Bs)が資格付与団体と産業部門と共同して開発する。S/NVQ単元には、また単元評価規定の明確化に必要な証明資料が含まれている。資格付与機関は、個人の能力証明に必要な様式、及び証明資料を定義する。これには、業績、知識、及び理解の検証に際して実施場所、範囲、環境を特定するか又は証拠としてシミュレーション法を採用するか否かについても定義することができる。SSC/BがS/NVQ体系(構造)を開発する時には、評価戦略もあわせて開発する。戦略とは付与機関がS/NVQの評価手法を開発する際に考慮する必要がある広範な評価原則を要約したものである。
 このシステムは、広範囲にわたる職業分野における、能力に基づく資格として使われているNOSを基礎にした単元ユニットの提供が目的である。最近、以下の分野でNOS指定がなされている。(括弧内数字は記録用分類番号である)

専門職業−Professional Occupations(5951)
情報通信技術専門家−Information and Communication Technology Professionals(590)
リサーチ専門家−Research Professionals(118)
図書館司書及び関連分野の専門家−Librarians and Related Professionals(331)
エンジニアリング専門家−Engineering Professionals(1276)
科学専門家−Science Professionals(125)
健康専門家−Health Professionals(457)
教育専門家−Teaching Professionals(189)
法律専門家−Legal Professionals(122)
ビジネス及び統計専門家−Business and Statistical Professionals(62)
建築、都市計画及び監督官−Architects, Town Planners and Surveyors(316)
公共サービス専門家−Public Service Professionals(591)
管理者及び上級公務員、役員−Managers and Senior Officials(6640)
企業管理者及び上級公務員−Corporate Managers and Senior Officials(71)
接客及び余暇産業管理者及び所有者−Managers and Proprietors in Hospitality and Leisure Services(331)
生産管理者−Production Managers(213)
機能管理者−Functional Managers(1233)
品質及び顧客サービス管理者−Quality and Customer Care Managers(95)
金融機関及び事務管理者−Financial Institution and Office Managers(89)
流通、倉庫、小売業管理者−Managers in Distribution, Storage and Retailing(256)
警護公務員−Protective Service Officers(136)
健康及び社会サービス公務員−Health and Social Service Officers(910)
農業、園芸、林業及び漁業管理者−Managers in Farming, Horticulture, Forestry and Fishing(139)
その他サービス業管理者−Managers and Proprietors In Other Service Industries(99)
準専門家及び技術職−Associate Professionals and Technical Occupations(8190)
科学及びエンジニアリング技術者−Science and Engineering Technicians(1170)
製図者及びビル検査官−Draughtpersons and Building Inspectors(108)
ITサービス提供職−IT Service Delivery Occupations (139)
健康準専門職−Health Associate Professionals(858)
治療専門家−Therapist(77)
社会福祉準専門家−Social Welfare Associate Professionals(339)
警護サービス職−Protective Service Occupations(328)
芸術家及び文筆業−Artistic and Literary Occupations(311)
設計準専門家−Design Associate Professionals(205)
メディア準専門職−Media Associate professionals(463)
スポーツ及びフィットネス職業−Sports and Fitness Occupations(506)
輸送準専門職−Transport Associate Professionals(176)
法律準専門職−Legal Associate Professionals(119)
ビジネス及び金融準専門職−Business and Finance Associate Professionals(207)
販売及び関連準専門職−Sales and Related Associate Professionals(72)
(自然資源等の)保全準専門職−Conservation Associate Professionals(117)
公共サービス他準専門職−Public Service Associate Professionals(689)
管理及び秘書的職業−Administration and Secretarial Professionals(3045)
政府及び関連組織−Government and Related Organizations(487)
金融−Finance(669)
記録−Records(223)
コミュニケーションズ−Communications(333)
一般−General(687)
秘書及び関連職業−Secretarial and Related Occupations(217)
専門職業−Skilled Trades Occupations(6755)
農業専門職−Skilled Agricultural Trades(220)
金属成形、溶接及び関連職−Metal Forming , Welding and Related Trades(244)
金属機械加工、組立及び部品製造職−Metal Machining, Fitting and Instrument Making
貿易−Trades(63)
輸送職−Vehicle Trades(359)
電気職−Electrical Trades(356)
建設職−Construction Trades (980)
建築職−Building Trades(616)
繊維、縫製職−Textile and Garment Trade (306)
印刷職−Printing Trades(470)
食品調理職−Food Preparation Trades(534)
専門職NEC−Skilled Trade NEC(210)  *National Exhibition Centre(in the UK)
個人サービス職−Personal Service Occupations(4110)
保健サービス−Healthcare and Related Personal Services(1493)
保育サービス−Childcare and Related Personal Services(201)
動物飼育サービス−Animal Care Services(264)
余暇・旅行サービス−Leisure and Travel Service Occupations(188)
理容・美容サービス−Hairdressers and Related Occupations(398)
家事・整備−Housekeeping Occupations(70)
個人向けサービスNEC−Personal Services Occupations NEC(78)
販売及び顧客サービス業−Sales and Customer Services Occupations(1394)
販売補助及び小売キャッシャー−Sales and Retail Cashiers(399)
販売及び販売関連業務−Sales Related Occupations(175)
顧客サービス−Customer Service Occupations(189)
装置、プラント及び機械操作職−Process, Plant and Machine Operatives(6506)
装置操作−Process Operatives(1537)
プラント及び機械操作−Plant and Machine Operatives(1493)
組立及びルーティン作業−Assemblers and Routine Operatives(313)
建設作業−Construction Operatives(245)
輸送運転手及び作業員−Transport Drivers and Operatives(678)
移動機械操作員及び作業員−Mobile Machine Drivers and Operatives(113)
初級職業−Elementary Occupations(2430)
農業−Elementary Agricultural Occupations(414)
建設−Elementary Construction Occupations(214)
装置・プラント−Elementary Process Plant Occupations(68)
物品貯蔵−Elementary Goods Storage Occupations(110)
管理−Elementary Administration Occupation(271)
個人サービス−Elementary Personal Services Occupations(56)
洗浄(クリーニング)−Elementary Cleaning Occupations(92)
警護−Elementary Security Occupations(278)
販売−Elementary Sales Occupations(114)

 職業基準を全国職業資格(NVQ)の単元で見ると分かることがある。例えば両者の関係を全国職業資格(NVQ)の抜粋から分野別技能委員会科学・工学・製造技術部会作成の「航空工学・製造技術レベル2−ユニット15:航空機機体構造補強部材組み立て」(Aeronautical Engineering Level 2−Unit No15:Assembling Aircraft Airframe Ancillary Components)を見ると、本編は、1)ユニット全体の要約、2)成果内容、3)具体的作業内容、4)必要知識の4部である。要点を以下に再現する。1)の要約では、承認済み手順に沿って航空機機体構造補強部材組立作業に必要な能力の要点を述べる。必要な組立作業に基づき、使用する適正な工具類及び設備を選び、使用できる状態にあるか否かをチェックし、多種多様な部材部品を使って決められた組立品を完成するため定められた手順と独特の組立技術に従うことが求められる。代表的な組立品は、トランク(胴体)工事、ダクト(空調)工事、箱仕切り、ストリンガー、フレーム、パネル、トレイ、スキン、タンク、ギャレー、電気・通信キャビネット、操縦端末コンソール等がある。
 続けて、細部についても慎重に計画している。例えば、組織の方針及び請け負った仕事の方法・手順を順守する責任、組み立てに使用する工具、設備、材料はすべて組立完了後正確に数量確認すること、すべての職務・仕事に必要な文書を必ず正確で読みやすい文章で作成すること。職務は上級者の監督の下あるいはチームの一員として行い、自分が成し遂げた仕事の質と正確さに個人として責任を持つことが期待され、持てる知識は仕事を行うに正確かつ十分であること、そして組立技法及び手順は指示どおりに取り組むこと。組立中の構成要素、用途を理解し、使用材料と締め付け工具、作業を仕上げるのに十分な程度に知っており、仕様どおりに仕事をすること。仕事を通じて安全作業手順を実証し、職場で自分自身と他者に対して負っている責任を自覚することが求められる。
【職務要件】
職務遂行内容は以下のとおりである。志望者は以下の項目を順守する。

  • 常に、保健安全立法、規制類及びガイドラインに沿って安全作業をすること
  • 関連する指示、組立図及びすべての仕様書に従うこと
  • 特定部品が入手でき使用可能状態にあることを確実にする
  • (中間)組立部品を正確な位置に組み立てるのに適切な方法と技術を使用すること
  • 特定の接続用具及び安全装置を使用して部品の安全確保をすること
  • すべての作業が終了し組み立てが完了したことを確実にする組立完了チェックを行うこと
  • 要求仕様に合致していること
  • 自分の管理下の問題は迅速かつ効率的に処理し、解決できない時は報告すること

【職業基準の最小要件】
 さ らに、職業基準の最小要件としてユニットの具体的作業範囲7項目を明示する。その中の4項を以下に記す。志望者は必ず従うこと。

  • 航空機機体構造補強部材組立には、以下のうち3つ以上の作業が含まれること。すなわち、トランク(胴体)工事、ダクト(空調)工事、箱仕切り、ストリンガー、フレーム、パネル、トレイ、スキン、タンク、ギャレー、電気・通信キャビネット、操縦端末コンソール。
  • 下記の組み立て方法と技術を適用すること:正しい部品番号の使用保証、部材の左右勝手の保証、充填剤/接着剤の使用、電気接合部材、安全な部材、機械的止め具(ネジ、リベット等)の使用、ボルト締め方法の使用(スプリットピン、輪締め、ロックナット、スティッフナット)
  • 品質及び精度チェックの励行(以下5項目のうち3項目以上を含む):外観化粧、表面精度、無疵、トルク荷重チェック、電気接着及び連続性
  • 下記規格・標準のうち1つ以上を組み立てに使用すること:民間航空局(Civil Aviation Authority:CAA)、国防省(Ministry of Defence:MoD)、連邦航空局(Federal Aviation Authority:FAA)、ISO9000シリーズ、顧客標準及び要求(customer standard and requirements)、会社標準及び手順類。

【知識要件】
 この仕事の志願者に必須の“知識と理解力”について21項目を列挙している。その一部(5項目)を選び紹介する。

  • 作業実行中の安全確保に関する具体的予防策(作業、設備又は材料に関する全法規、規制又は作業心得を含む)
  • 使用部品の確認方法、部品確認システム、使用コード及びコンポーネント・インディケイター
  • 使用部品の整列及び位置決め方法、冶具及び固定具を含め工具、設備の使用方法
  • 作業場内の充填剤及び接着剤の使用、及び多種多様な接着剤、充填剤を使用する作業時の注意事項
  • 組立完成品の精度及び品質確保に必要な検査実施方法

4.1.3 利用状況

 全国職務基準(NOS)は能力に基づく資格制度(SVQやNVQ)の強力な基盤である。そして、これら資格の採用率(採用状況など)については、2009年3月26日発行の“英国職業資格2007/08”(Supplementary Release to the Statistical First Release “Vocational Qualifications in the UK: 2007/08)に記載がある。この発表は認定職業資格の成果に絞ったものである。全国職業資格(NVQ)、スコットランド職業資格(SVQ)及び職業関連資格(Vocationally Related Qualification:VRQ)の資格付与に関する情報は児童・学校・家庭省(Department for Children, Schools and Families:DCSF)が保有する全国職業資格情報システムから引用する。NVQ/SVQ付与数は2007〜08年にかけて7万3,000人、前年比15%の増加である。うち英国における付与数の57%は年齢25歳以上である。2006年までのレベルではNVQ/SVQ全付与数の70%以上をレベル1及び2が占める傾向が続き、この数字は技能労働者(レベル3)を下回った。上級レベル(レベル3−5)付与は主として保健、公共サービス、及び介護(合計19万900人のうち7万800人がレベル3、合計3万3,200人のうち半分以上の1万7,500人がレベル4/5)、ビジネス、管理、及び法律(合計19万900人のうち3万4,400人がレベル3、3万3,200人のうち1万2,800人がレベル4/5)である。同時にこれら2分野でレベル4/5の90%以上を占める。職業専門学校と民間研修機関が引き続き上位を占めており、前者が39%、後者が38%、雇用主付与は10%である。
 旧システム下では、資格要件の全体を5レベルでカバーし個々の資格を割り当てていた。5レベルは以下に示す。
【レベル1】多様な作業活動の一部の遂行に求められる知識及び技能の活用を含む能力で、大部分パターン化した日常業務。
【レベル2】いろいろな状況下で、多様な作業活動の相当部分に知識及び技能の使用を含む。活動の一部は複雑でパターン化した日常業務ではなく、ある程度の責任と裁量を伴う。グループメンバーやチームを通じた、他者とのコラボレーション(協働)が頻繁に必要になる。
【レベル3】いろいろな状況下で、多様な作業活動の相当部分に知識及び技能の使用を含む。活動の相当部分は複雑でパターン化した日常業務ではない。ある程度の責任と裁量を伴い、他者を管理、指導することがしばしば必要になる。
【レベル4】いろいろな状況下で、多様な作業活動の相当部分を知識及び技能の使用が占める。活動の相当部分は複雑、技術的、又は専門的な活動で、相当程度の責任と裁量を伴う。他者の仕事にも責任を持ち、人員配分を行う。
【レベル5】広範囲でしばしば予測困難な状況下において、技能、重要な基本原則及び複雑な技術を駆使できる能力。他者の仕事に対して非常に重要な個人的裁量権を発揮し、責任を負い、経営資源配分に重要な役割を果たし、分析及び診断、設計(デザイン)、計画、執行及び評価に対し個人的な説明責任を果たす。

 職業関連資格(VRQ)は飛躍的に重要さが増している。2007/08年、50の資格付与団体が全国職業資格情報システム(NISVQ)に報告した数字によれば、170万人のVRQ履修者がいる。前年は47資格付与団体、140万人だった。このうち、39万1,000人はVRQの全課程履修者(推奨履修時間数の少なくとも80%がガイドライン)は全体の約23%だった。全体の22万8,000人がレベル2、11万9,000人がレベル3だった。

4.2 職業能力評価・資格制度及び実施状況

4.2.1 制度概要

 英国全体レベルの職業能力評価は、主として職業資格システムに関連する統計資料から入手できる。イングランド、ウェールズ、及び北アイルランドで使われる全国職業資格(NVQ)、及びスコットランドで使われるスコットランド職業資格(SVQ)が主要な職能資格である。政策としては、広範囲にわたって学習者の到達度を認定し、単位の累積加算や移転を認めることで多種多様な資格を組み込み資格枠組みの開発を行ってきた。この枠組みは、雇用主と学習者双方のニーズにより一層応えるもので、需要及び市場主導、簡単で、柔軟で、学習者に普及しやすく、単元及び資格の到達度を認定する単位制に基づいている。もちろん、これらの枠組みは欧州資格枠組み(European Qualifications Framework:EQF)と歩調を合わせている。
 英国の資格制度は4カ国内においても重要かつ有意な差異が認められる。イングランド、ウェールズ、北アイルランド3国では全国職業資格(NVQ)を能力に基づく資格のカギとして位置付けるが、これ以外にもいろいろな認定資格が存在する。SVQが最有力資格であるスコットランでは“資格”自体の定義が異なるが基本に据える全国資格は他国と同じである。SVQは能力基準に基づき、志願者がSVQのレベルに基づく基準に到達していることを一種保証するような機能がある。NVQが現場で必要な職務関連能力及び知識を認識するのに対して、SVQは労働者各人の能力基準として設計されている。NVQの各セット別に個別の資格構造と評価戦略が存在する。能力と知識にギャップがある場合、SVQは研修枠組みの基礎として使用できる。またSVQは、多くの職業に関わる転用可能な技能を身につけ仕事ができ、今後ともビジネスと経済の需要に応え、年齢を問わず、職業人生のどの場面でも、単位制で時間をかけて徐々に習得でき、職場、研修機関で、あるいは専門学校で修得でき、さらに上級資格に進むよう勇気づけられ、普通は日々の仕事をしながら修得できる。レベルは5段階になっている。
【レベル1】基礎、ルーティンで繰り返し作業能力
【レベル2】非ルーティン活動及び個人的責任を伴う広範囲な能力
【レベル3】指揮監督能力
【レベル4】管理能力
【レベル5】上級管理能力

 スコットランド資格機関(Scottish Qualifications Authority:SQA)は現在のところ約650資格を提供している。スコットランド以外の地域では資格は開発、認定、付与を別の機関が担当するが、SQAはユニークな役割を果たしており、これらの3つすべての機能を行っている。付与機関としての活動には、資格及び資格証書の信用性と価値を高めることができるよう、資格の質の維持と保証が含まれる。SQAはこの活動をしばしば産業部門とのパートナーシップで行っている。
 すべてのスコットランド資格は単一のスコットランド単位・資格枠組み(Scottish Credit and Qualifications Framework:SCQF)に位置付けられ、雇用主、学習者、及び一般市民が資格の全体像と資格間の相互関係を理解でき、異なる資格が労働力の技能向上にどのように貢献できるか、そして生涯を通じて置かれた環境に関係なく、個人的、社会的、経済的潜在力を発揮するのにふさわしい教育研修の機会が得られるようにする。資格間の相互関係をより明確にするのを助ける。教育と研修分野あるいは全体を通じた出発地点、経路、そしてゴールを明確にし、単位移転機会の最大化を支援する。例えば、SCQF認定資格はレベルと単位の2つの物指しで比較する。単位ポイントは資格の大きさと資格修得に要する仕事量を示す。例えば、ある人がSCQFレベル4、中級1コースを学習し、ある人はレベル6、上級を学ぶとする。両方とも授与される単位数は同じだがレベルの難易度は異なる。
 スコットランド以外の3カ国はスコットランドの例に倣い、広範囲な学習者の到達度を認定する単位累積加算及び移転制度に基づき、単位資格枠組みに多種多様な資格類を組み込もうとしてきた。資格単位枠組み(Qualification and Credit Framework:QCF)はイングランド、ウェールズ、及び北アイルランドにおける能力と資格認定の新しい流れで、資格等級と単位の授与によりこれを行う。目的は、人々が柔軟な経路で、個人ペースでの資格修得を可能にし、学習者はより広範囲な選択肢、機会、より増した柔軟性、QCFを維持する中で基準、比較性、及び公共の信頼を支える基盤の提供である。制度構築の試験及び試行段階では基本プロセスにおける多くの課題が明らかになった。それは、利点の大部分がまだ実現しておらず、期待に終わっていることである。結果として、各国の資格管理監督組織、Ofqual(イングランド)、DCELLS(ウェールズ)、CCEA(アイルランド)は、QCFの管理統制に影響を与えるモニタリング評価の必要性を痛感した。
 QCFでは、すべての単元と資格は単位価値と等級(レベル)を持っている。
QCFでは、1単位の習得時間を10時間とし、必要単位数に応じて1〜12単位の「Awards」、13〜36単位の「Certificate」、37単位以上の「Diploma」の3段階の区分があり、さらに各段階が難易度により8段階に分かれている。
 1単位の標準学習時間は10時間であり、それには指導学習時間(Guided Learning Hours:GLH)、自習時間、及び資格修得に要する時間を含む。レベルは難易度に応じて入門レベルから8レベルまである。また、QCFには3つのサイズがある。
「Awards」 1〜12単位
「Certificate」 13〜36単位
「Diploma」 37単位以上
 したがって、新枠組みでは授与レベル1あるいは授与レベル8を受けとれる。これは、「資格タイプ(Awards、Certificate、Diploma)」が資格の量的規模を表し、難易度を示すものでないからである。学習者の期待利益(有利さ)がQCFでは、1)より自由で、選択度が高く、柔軟性を持つものになること、2)自分のペースに合わせて単位を積み上げ、自分が選べる方法で1つのものにまとめられること、3)資格間で単位移転ができること、4)各人の到達度は電子式記録システム上に記録される(いつでもアクセスできる)。雇用主の期待利益は、1)採用見込み従業員の到達レベル及び量を迅速に測定できること、2)全国的枠組みの範囲で認められる企業内研修機会が得られること、3)到達レベルを誰でも理解できる文章で記述できること、4)研修オプションと経路を簡潔にして従業員と雇用主双方が学習とビジネスのニーズに合った正しい研修発見の手助けになることである。
 QCFのレベルは以下のとおりである。
【入門1】最も初歩的な段階から、目前の環境に関する技能、知識、及び理解を活用するまでの向上が認められる。
【入門2】単純で、精通した仕事と活動を指導に従って果たすのに必要な技能、知識及び理解を活用する能力がある。
【入門3】体系化(組織化)された任務と活動を、熟知した状況下で必要なら適当な指導を伴い果たすのに必要な技能、知識、及び理解力を活用する能力がある。
【レベル1】定型的な業務を関連知識、技能、理解力、及び手順を使って完成する能力がある。指導又は指揮に従い職務と手順を完遂する責任を含む。
【レベル2】限定された範囲の職務の完遂に関連する知識、アイデア、技能、及び手順を選択、使用し、率直な問題提起能力がある。全体的な指揮監督の下、職務と手順の完遂、及び自治と判断の下で行い責任を負うことを含む。
【レベル3】職務を遂行し、ある程度の複雑さを含む問題指摘に必要な理解力、方法、及び技能を認識し使用する能力がある。限定された範囲内で、職務と手順を完遂すること、自ら判断し実行しその責任をとることを含む。学習又は仕事の範囲内で異なる視点を持つ、あるいは取り組みができる能力がある。
【レベル4】関連する理解力、方法、及びよく定義された複雑ではない非ルーティングワークから生ずる問題点を指摘する技能を認識し使用する能力がある。学習又は仕事の範囲内で異なる視点を持つ、あるいは取り組みができる能力を含む。
【レベル5】関連する理解力、方法、及び広く定義された複雑な問題点を指摘する技能を認識し使用する能力がある。計画、実行過程の開発及び定められた範囲内での自己裁量の行使と判断の責任をとることを含む。異なる視点、取り組み、又はその根拠となる学説及び理論及びその背景にある理論付けの理解も含まれる。
【レベル6】定義が乏しい複雑な問題処理に関連する理解力、方法、及び技能を洗練し使用できる能力がある。大幅な変更、改良を支える計画及び開発、及び広範囲な自治と判断の責任を負うこと。異なる視点、取り組み、又はその根拠となる学説及び理論及びその背景にある理論付けの理解も含まれる。
【レベル7】相互に関連する多くの要因を含む問題状況を再定義した上で、指揮監督に使う理解力、方法論、及びアプローチを再計画、実行する能力がある。大幅な変更又は開発を主導するか支援する計画及び行動過程での開発責任、同じく広範囲な自治と判断の責任を負うこと。また関連する理論的かつ方法論的な将来見通し、及び研究又は職務の場での影響に対する責任を負うこと。
【レベル8】独創的な理解、知識の拡張あるいは専門的業務の開発能力がある。また、多くの複雑な、着手、計画、調査の請負、開発又は戦略的活動を含む問題のある状況を明確にする能力がある。仕事の分野、知識、又は重要な専門的あるいは組織の変革をもたらす責任分担における自己裁量、判断、リーダシップを含む。もちろん、関連する理論的かつ方法論的将来見通し、そして研究又は職場で与える影響についての決定的な理解を含む。
 スコットランド以外の3カ国は、全国職業資格(NVQ)を能力基準規格の重要規格と位置付けたが、現状はSVQと同じような全国職務基準がベースになっている。これらの資格は、測定可能な成果、及び特定の職業に求められる能力、知識、理解力について当てはまる。ほとんどすべての職業を網羅する全国職務基準(NOS)は、すべての職業基準の基礎になる単元及び型式を提供する。NVQは職場あるいは職場環境を模して作られた場所で付与される資格である。これらの資格は学習プログラムの規定がなく成果ベースで、柔軟性があり職場で個々の学習ニーズに適合させた資格である。担当分野別の団体が資格内容、構造、及び評価戦略を決定する。成績は付与機関間の相互認証を経て、単元レベルで証明される。評価は証明に基づき、他の評価方法、例えば、NVQの他の構成要素が利用できる場合でもそれは変わらない。品質保証手順は全国レベルで証明書類の合致性、有効性、信頼性、充足性、通用性、及び真正性を保証するのが目的である。全国認定資格データベース(National Database of Accredited Qualifications:NDAQ)にある全国職業資格によりすべての職業は認証され、新QCF内のレベルが割り当てられる。

4.2.2 評価の実施状況

 SSC及びSSBは全国職務基準の評価と監視を期待されており、資格基準は適正か、法規変更はないか、現場実務の変更を反映しているかについて定期的に見直される。見直しは、詳細な資格基準の再検討、そこでは、現行基準一式がもはや目的に合わないので行う再検討である。あるいは、特定の基準規定のマイナーな変更の要否、又は、規定の細部事項の変更が必要か追加的事項の再検討を含む。SSC及びSSBは、詳細な基準の再検討が必要になるまで待たずに評価又は監視(モニタリング)に着手でき、再検討に必要な変更事項、又は潜在的用途を見つける目的で利用者の定期的フィードバックシステムを設定することが求められる。フィードバックは、雇用主、在職者、付与組織及び評価センター、他の基準使用者、研修実施機関、調整官、あるいは基準の製品・サービスの開発者から求められる。評価方法としては、1)現存の雇用主又は利害関係者、2)NOSに基づく資格からの採取データ再検討、3)NOSに基づく特定の製品・サービスの公式評価、4)意見聴取のためユーザーと行う特定調査事業、5)別件で訪問した雇用主から非公式に得た情報、6)雇用主を対象とする他の調査又は検査に利用するためNOSに関する質問を集大成すること、などがあり定期的にフィードバックを得ることができる。
 能力に基づいて単元化されたSVQ及びNVQの性質上、試験レベル、受験者数、合格率など等の記録作成は難しい。個人はコース又は評価プログラムを通して移動するので、準備が整えばいつでも自分自身の技能及び知識を全国職務基準と比較でき、そして個々の単元、又は資格全体の組み立てができる。評価者は個人が必要基準に達すればNVQ個々の単元を終了する。査定は‘能力あり’か‘能力なし’のいずれかである。理由があれば“1”NVQの修了には時間制限はなく、個人にあったペースで受講できるように設計されている。
 全NVQ及びSVQ付与数の71%以上がレベル1及びレベル2で、77%が高等専門学校又は民間研修機関を通じて、ちょうど10%が雇用主により付与されている。2007〜09年に付与された全NVQの3分の2以上が、1)物品及びサービスの提供、2)健康、公共及び警備サービスの提供、3)ビジネス・サービスの提供の3つの枠組み領域である。一方、上級レベルでの付与はごく少数である。英国では2007〜08年にNVQ及びSVQの取得者は77万3,200人、そのうちレベル4、5は3万3,200人にすぎない。レベル3は技能労働者レベル、両資格(NVQ・SVQ)は主として比較的低レベルの能力開発に使われている。レベル1、2は個人の進歩と発達の意味では使えるが労働市場での価値は比較的低い。

4.3 相互認証

 相互認証は3つのレベルで機能する。すなわち、1)英国内4カ国、2)欧州全域、3)欧州域外諸国との相互承認である。欧州資格枠組み(EQF)は欧州各国の資格制度を相互にリンク可能にする欧州共通参照枠組みである。すべての国に資格制度は存在するが、資格枠組みはより組織的な通常はレベル制をとる資格分類方法である。EQF開発への動きはより透明性のある国家資格への需要の高まりに関する議論の中から2000年欧州主導でスタートした。この作業は2004年から“欧州間参照レベル”草案によって加速した。すべての欧州連合加盟国の専門家による調査報告書起草段階を経て、2005年までに広範囲な協議を行い2008年4月最終草案が公式に採択された。EQFは、EC出版局刊行の「欧州生涯学習資格枠組み(2008)」に記載され(細部)につき具体的に述べられている。
 EQFは、異なる国々の資格制度及び枠組みを結びつける欧州共通参照制度として、効果的に機能するよう国境を越えより読み易くする翻訳装置として設計されている。枠組みの目的は国々を移動する学習者及び労働者の利益と、また異なる国の制度との資格レベルを比較したい雇用主と教育機関のためにある。EQFは、個々の資格の相互関係を直接に結びつけるよりも、むしろ各国の資格及び枠組みに責任を持つ団体が利用できるように設計している。EQFは、学習経験の型と期間よりも、学習成果アプローチ(知識、技能、及び能力レベルが必要)を採用し、すべての資格レベルを網羅、8段階レベルをカバーするよう設計している。原則的には、各レベルは多様な教育とキャリアパスにより獲得すべきである。
 EQFの目的は、投入量(学習経験の長さ、教育機関のタイプ)からある特定資格保有者が現実に何を知っており何ができるかに焦点を移すこと、そして労働市場ニーズと研修機関間のよりよいマッチングを支援可能にすること、非正規及び非公式学習の公認の促進、異なる国々、教育、及び研修システムを超えて資格の移転及び使用を促進すること、の一助となることである。EQFは現行の国家資格を置きかえたり何らかの形で調整を求めたり、除外したり又は特定資格を入れたり外したりはしない。EQFの運用は自発的なプロセスである。なぜならば、EQFは法規制上の機能を持たず、個々の資格基準ではないからである。むしろ、資格レベル枠組みをEQFレベルに関連付けるのが目的である。
 英国政府は2007年、2010年までに全国職務基準に関連付ける方針でEQF制定に署名した。イングランド、及び北アイルランドの全国共同作業点(National Coordination Point:NCP)は、2009年8月資格単位枠組み(Qualifications and Credit Framework:QCF)とEQFへの対照作業を完了した。結果はスコットランド、ウェールズ、北アイルランドと似たようなものである。英国全体の作業結果を取りまとめた報告書を資料とともに2009年末に欧州委員会に提出の予定である。この報告書は資格と単位間の対照関係を公式に記述している。したがって、イングランド、及び北アイルランドにおけるQCFとEQF正式対照を記述する報告書は、今後EQFとQCFに関連する開発の際に重要な予備知識になる。
 QCFは、高等教育資格枠組み(Framework for Higher Education Qualifications:FHEQ)がカバーする高等教育資格、及び専門家団体が認定付与する職業資格を別扱いにし、イングランド、ウェールズ、北アイルランドのすべての資格を1つにまとめる目的で2008年に導入された。レベル制枠組みの中で、現時点での到達度、同じく単位制度、及び認証、非認証を問わず修得した成績を認める制度を導入した。QCFは9レベルあり、入学レベルは1〜3レベルに細分化している。入学レベル1は最も基礎的なレベル、レベル8は、最高度レベルである。NCP(QCFとEQFの対照に責任を担う公的機関)は、イングランド資格教育課程総局(Qualification Curriculum Authority:QCA)、及び北アイルランド教育課程・試験・評価評議会(Council for the Curriculum, Examinations and Assessment:CCEA)が主導し、教育、研修、及び技能分野から参画した委員のもと共同運営している。NCPは各枠組みのレベルの表現内容を比較対照し、QCF等級を8レベルに図示する。この作業結果は公表され、公開協議を経て、NCPは下記対照表を承認した。

図4‐1 QCF/EQC対照表
図4‐1 QCF/EQC対照表

※出典:
Qualification Curriculum Development Agency.

 NCP報告書では、EQFはQCFのE1及びE2に対応していないことを指摘している。基礎能力が低レベルか、あるいは自信不足レベルにある学習者支援の重要性は理解しているので、EQF助言グループが、このレベルのEQFにおける位置付けを検討するよう促している。対照作業が完了し、報告書へリンクできる旨欧州委員会に通知される。ウェールズ、スコットランド、イングランド、及び北アイルランドの報告を取りまとめた英国報告書が、2009年末には欧州委員会に正式に提出される。
 資格単位枠組みは2年間の試行期間を経て2008年正式に導入された。QCFは英国職業資格改革プログラムの重要課題なので、当初の焦点は職業とその関連資格であった。QCFは、高等教育資格枠組み(FHEQ)がカバーする高等教育資格、及び専門家団体が認定付与する職業資格は別として、イングランド、ウェールズ、北アイルランドのすべての資格を1つにまとめるのが目的であった。もちろん、QCFは児童・教育・生涯学習能力省(Department for Children, Education, Lifelong Learning and Skills:DCELLS)が運営するウェールズ単位資格枠組みの役目を果たしている。英国では、全国枠組みに含まれる資格について成文法上の義務はないとしながら、現実は公的資金による教育及び研修を通じて提供されるほとんどの資格を含んでいる。QCFは、学習者の到達度保証を最大限可能にする包括的で、かつ柔軟で整理された単元及び資格の枠組みとして設計されている。単位制はもちろんとして、レベル制枠組みの中で、現時点での到達度、単位制度、及び認証、非認証を問わず修得した成績を認める制度を導入している。イングランド、及び北アイルランドの全国資格枠組み(高等教育資格は別として)に加えて、学習成果に基づき9等級制(レベル)を組み入れている。つまり、通常の一般教育及び職業教育レベル以下の“入学レベル(レベル1、2、3に細分)”、加えて数字表示レベル1〜8となっている。レベル記述は、各レベルの学習内容の複雑さ又は必要とされる到達度を定義する。入学レベル1では最も基礎的な成果が、レベル8では最高水準の成果が要求される。
 QCFと他の資格枠組みとはかなり複雑な関係にある。イングランド、北アイルランド2カ国内では現在のところ3種類の枠組みがある。すなわち、1)QCF、2)全国資格枠組み(NQF−QCF開発前に使用していたシステム)、3)イングランド、ウェールズ、北アイルランド対象の高等教育資格枠組み(FHEQ)である。これら3資格のレベルは相互に比較可能である。NQFの全資格及び入学レベル資格は2010年末までにQCFへの移行する予定である。NQFはQCFと同じレベル制(入学1〜3、レベル1〜8)を採用しているが、単元よりもむしろ資格全体に適用している。
 FHEQは5段階レベル高等教育資格枠組みとして、学習到達度の証しとして授与される資格概念の基礎である。レベル4〜8資格はQCFのレベル4〜8と比較可能だが、内容を明確にする段階では異なる取り組み(アプローチ)がなされている。FHEQの5段階等級(5レベル)は、各レベルの資格保持者が持つ知識、理解力、及び能力の型を要約する共通資格要件によって区別する。FHEQは欧州高等教育分野資格枠組み(FQ-EHEA)との適合性のあるものとしてその正しさが確認されている。イングランド、ウェールズ、及び北アイルランド高等教育資格枠組みと欧州高等教育分野資格枠組みとの適合性の証明については、下記サイトを参照のこと。

 その上、QCFはウェールズとスコットランドの単位資格枠組みにもリンク可能である。スコットランドでは、SCQFが高等教育機関の資格を含めすべての資格をカバーする包括的枠組みとして2001年に現在の形で導入された。枠組みは入学レベル3段階(広い意味で、QCFの入学レベルと比較できる)、及び12レベルを含む。ウェールズのCQFWはQCF/NQFとFHEQを内部に抱え、現在のところどの枠組みにも含まれない成績問題の壁を抱える総合的枠組みである。CQFWの等級(レベル)はQCAと適合性がある。短文の説明文書‘資格は国境を越えられる’は英国の資格レベル枠組みとアイルランド資格枠組み(NFQ)とをグラフで比較表示している。
 EQFの中核要素は8段階の対照等級(レベル)の1セット式で、全国及び産業分野レベルの教育及び研修当局間の共通で中立的な対照点の位置にある。8段階等級(レベル)は義務教育研修修了者から最上級レベルの学問的、専門的職業研修習得者までをすべて網羅する資格である。8段階EQF対照等級(レベル)の記述内容は、学習成果に基づき、学習者は何を知り、理解し、そして学習過程を完了できる学習成果を表現するものと考えられている。学習成果の定義は知識、技能及び能力の組み合わせである。これら要素間のバランスは、EQFがすべての等級すべての資格を、学問資格及び職業資格も同じく網羅するので、資格により異なる。学習成果は正規教育研修機関以外の場でも使われ、生涯学習では一般的に見られることで、学習の有効性を促進すると理解される。EQFの最初の使用者は各国、各産業分野、又は両者の資格制度枠組担当機関(組織体、団体、法人)になる。
 8段階の各等級(レベル)は、どんな資格制度でも、その等級に関連する資格への学習成果を示す項目の組み合わせ(セット)により定義される。EQFでは、知識は、理論的及び/又は事実に基づく、技能(スキル)は、認知的(論理、直観、及び創造思考)かつ実用的(人の器用さ、巧みさ、手法、材料、工具及び装置の使用)、能力とは責任性及び自主性と表現される。
【レベル1】

  • 基礎的一般知識
  • 簡単な仕事の遂行に必要な基礎技能
  • 体系化された状況下で直接監督の下で仕事又は学習をする

【レベル2】

  • 仕事又は学習の場面での基礎的事実の知識
  • 仕事をやり遂げ、簡単な規則と工具を使用して日常的な問題解決に必要とされる基礎的認知及び実用的技能
  • ある程度の自主権を持って監督のもとで仕事又は学習をする

【レベル3】

  • 仕事又は学習の分野における事実、原則、手順及び一般概念の知識
  • 基本方式、工具類、材料及び情報の選択及び応用により職務遂行及び問題解決に求められる一定範囲の認知的かつ実用的技能
  • 仕事又は学習における職務完遂の責任を負う
  • 問題解決に、自己の態度、行動を環境に適応させる

【レベル4】

  • 仕事又は学習の分野内部の広範囲な周囲の状況における事実及び理論的知識
  • 仕事又は学習の分野における特殊問題の解決に導くのに求められる認知及び実用的技能の範囲
  • 通常予測可能、しかし変化の対象となる職務又は学習のガイドライン(指導基準)内の自己管理の行使
  • 仕事又は学習活動の評価及び改善に何らかの責任を負い他人の日常業務を監督する

【レベル5】

  • 仕事又は学習の分野内部の、総合的、専門化された、事実的及び理論的知識及びこれら知識の限界(境界線)を自覚すること
  • 抽象的な問題を創造的に解決するのに求められる総合的認知及び実用的技能
  • 予測しない変化がある仕事及び学習活動状況下での管理、監督権の行使
  • 自己及び他者の実力、仕事振りを評価し発達(成長)させる

【レベル6】

  • 理論及び原理原則の重要な理解を伴う仕事又は学習領域の先進的知識
  • 特別な仕事又は学習領域で、複雑かつ予測不可能な問題解決に求められる熟達、精通していること、革新を演出する先進技能
  • 予測不可能な仕事又は学習環境のもとで意志決定の責任を負い、複雑な技術又は専門家的活動あるいはプロジェクトを経営する
  • 個人及びグループの職業発達(開発)の管理責任

【レベル7】

  • 高度に専門化した知識、そのうち幾つかは、独創的思考の基礎となるような仕事又は学習領域の最先端知識である
  • 一領域及び/あるいは異領域間の共通領域問題である知識問題の意識
  • リサーチ及び/あるいは革新、新知識及び手順の開発と異領域の知識を統合するのに求められる専門的問題解決技能
  • 個人及びグループの職業発達(開発)の責任を負う
  • 職業知識及び実務及び/あるいはチームの戦略遂行の評価への貢献責任を負う

【レベル8】

  • 仕事及び学習領域の最先端及び領域間の共通領域の知識
  • リサーチ及び/あるいは革新の重要問題を解決し、現存の知識、専門家の実務の拡張及び再定義に求められる合成及び評価を含め、最先進かつ専門化した、技能、技術
  • 相当な権威、革新、自主性、学問的かつ専門職業人の誠実さ、リサーチを含め最先端の仕事及び研究環境で新しいアイデア又はプロセス開発への継続的関与を実証する

 英国の相互認証プロセスは当初英国内各国間(及びアイルランド共和国)に確かな絆を築くこと、及び欧州との関連付けに焦点を合わせてきた。欧州では過去2年間を通して資格枠組みの開発ペースに拍車がかかり欧州資格枠組み(EQF)が2007年末実行に移された。しかしながら、相互認証プロセスに影響を及ぼすより広い展開もまた存在する。欧州の大多数の国で全国資格枠組み(NQF)の開発が進み現在も進行中である。OECDは経済的圧力が、教育制度と労働市場間の連携強化を目的に国家資格制度改革(研修ニーズと資格のギャップ)の牽引力であると見なし、資格枠組み及び技能基準の開発理由として作用すると認めている。生 産及びサービス分野でのイノベーションは学習形態がますますより自己管理的になることを意味し、その結果として職場での学習構造がより複雑化することを意味する。焦点はもはや単に知識習得のみでなく新しい価値、新しい行動倫理、及び過去の経験の革新を含むようになる。資格制度は、技術的進歩と労働組織の様式変化から生じる新知識、技能、より広い能力の認識を考慮し、使用者/顧客/依頼人をより明確にすべきである。技術革新は、国際資格の成長、重要な認識、基準、評価、品質保証、及び法律案件から生じる発展を促進する。このことが2方向からの圧力を与える、すなわち他国からの資格輸入及び自国資格の輸出である。OECDはこれに応えて、資格制度は以下の方法により開発すべきであるであると要約している。

  • 柔軟性及び敏感さ(increase flexibility and responsiveness)
  • 若者の学習意欲への動機付け(motivate young people to learn)
  • 教育と労働とのリンク(link education and work)
  • 資格へのアクセスの開放促進(facilitate open access to qualifications)
  • 多様な評価方法(diversify assessment processes)
  • 資格の先進化(makes qualifications progressive)
  • 資格の透明化(makes them more transparent)
  • 財政投資と効率向上の監査の促進 (facilitates review of funding and increase efficiency)
  • 制度経営方法の改善へのリード(leads to improvements in the way the system is managed)

 NQFは教育、研修、及び資格改善への構造ツールと見られ、各国の資格レベルを分類し伝達する。資格取得とある資格から他の資格又は仕事への進級要求はより明確にできる。NQFの存在がより幅広い相互認証プロセスの手助けになりうる。
 NQFがより幅広い相互認証プロセスを促進している間に、開発の1つの推進力(刺激、勢い)が単位認定制の開発及び高等教育への移転だったことがハッキリしてくる。したがって、例えば、EQFは、ボローニャ・プロセスの一部である欧州高等教育資格枠組みにおける欧州全域の高等教育資格基準開発の成功の上に成り立っている。EQFは、したがって、高等教育資格の成文化、及び他分野、主として職業教育及び研修、進級を促進するため高度技能作業遂行に求められる技能、能力、知識、及び理解力の提供を探し求めた。欧州高等教育資格枠組みは、各国資格枠組み間の接続を促進する欧州資格構造を成功裏に創出し、欧州内の異なる高等教育資格間の関係が明瞭になった。
 これらの枠組みはボローニャ・プロセスが異なる高等教育システム間の透明性を確立し、それによって国境を越えた、市民の移動障壁を少なくする資格認識を改善する一助となることを目的としていた。全体枠組みは高等教育の幅広い目的を正しく考慮し、労働市場への準備、活き活きした市民生活への準備、個人的開発、及び広範囲かつ先進的な知識ベース開発と維持活動に配慮しなければならなかった。しかしながら、教育と仕事の関係は高等教育をこえて成長し、そして2つの領域に関わる1つの仕組みが資格なので、他の分野で修得した資格が高等教育環境での修得資格にどう記述されているか注意深く見ることが重要である。どのように他の資格が互いに関係を持ち国境を越え移動するか、高等教育外で修得した資格にも同じ効力が適用されるかは全般的な課題である。資格単位枠組みが英国で発展してきたという事実、相互認証システムの対象枠の拡大が試みられているという事実、これらはEQFが現在も発展し続けている理由である。


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