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米国

作成年月日:2009年9月29日

雇用労働事情

2.1 労働市場の状況

 米国経済は1930年の金融恐慌以来最悪の状態となっている。政府の経済復興策の効果が少しずつ出始めているとする経済学者もいるが、2009年7月現在、国民の多くが仕事を失い、実際は経済回復の兆しは見えていない。株価や住宅用不動産の下落で金融資産は大きく目減りし、異常に高い失業率と雇用機会の縮小により、労働市場は最悪の状況である。労働市場に関するデータは連邦政府の労働統計局のホームページ(http://www.bls.gov)で公表している。

2.1.1 過去3年間の労働力人口、就業者数、失業者数及び失業率

 労働統計局(Bureau of Labor Statistics:BLS)によると、2009年6月の失業率は9.5%で、失業者総数は1,470万人であった。2007年12月時点と比較すると、失業率は4.6%上昇し、失業者は720万人増加した。製造業、建設業、ビジネスサービス業(コンサルタント業や人材派遣業など)多種多様な業界で失業者が出ている。

表2‐1 失業率と失業者数
失業率 失業者数(万人)
2009年6月 9.5% 1,470
2008年6月 5.5% 850
2007年12月 4.9% 750
2007年6月 4.6% 700
2006年12月 4.4% -
2005年12月 5.1% -
※出典:
Bureau of Labor Statistics, “Employment Situation Summary”,
http://www.bls.gov/news.release/empsit.nr0.htm

 2009年6月時点の失業率を分類別に見ると、成人男性10%、成人女性7.6%、20歳以下(若年層)24%となり、人種別では、白人8.7%、黒人14.7%、ヒスパニック12.2%、アジア系8.2%である。2009年6月時点では、過去6カ月間失業状態であった長期失業者数は1カ月前と比較して、43万3,000人増加し、440万人になった。長期失業者数の総失業者数に占める割合は30%になっている。
 フルタイムの仕事が見つからずパートタイムの仕事に就いたり、経済的理由から働き始めたりする者(例えば、夫がレイオフにより失職したために、妻が働きに出るなど)は非自発的パートタイム労働者(Involuntary part-time workers)と呼ばれ、2009年6月時点で900万人になり、2007年12月に不況が始まってから440万人増加している。
 過去1年間職探しをしているが、調査の直近4週間に就職活動の実績がない者は労働統計上、労働予備軍(Marginally attached to the labor force)として分類される。この予備軍は失業者と認められないが、2008年より61万8千人増加し、220万人になっている。この220万人の労働予備軍のうち、79万3,000人(対前年比37万3,000人増)は、職が見つからずに就職をあきらめた求職意欲喪失者(Discouraged workers)である。
 正社員の数も減少し、2009年6月には46万7,000人が失職した。失業者数は2008年11月から2009年3月までは月平均67万人であったが、2009年4月から6月までは月平均43万6,000人となった。
 製造業の失業は深刻である。2009年6月だけで13万6,000人が職を失い2008年9月以降190万人に達した。6月の失業者数は、自動車やその部品企業で2万7,000人、金属加工1万8,000人、コンピュータやエレクトロニクスは1万6,000人、工作機械では1万4,000人などである。自動車業界では不況以降33万5,000人減少し、3分の2の規模になっている。

2.1.2 業種別労働者数

表2‐2 産業別就業者数     (単位:人)
産 業 就業者数
2008年6月
就業者数
2009年6月
増減人数
農業、狩猟業、林業 448,000 438,490 ▼9,510
漁業 ‐   11,100 ‐  
鉱業、採鉱業 718,300 671,700 ▼46,600
製造業 13,632,000 11,920,000 ▼17,12000
電気、ガス、水道業 563,500 570,800 ▼7,300
建設業 7,433,000 6,432,000 ▼1,001,000
卸売業、小売業、修理業
(自動車、二輪車、家電製品)
15,301,700 14,793,100 ▼508,600
ホテル、レストラン業 11,996,300 11,598,400 ▼397,900
運輸、倉庫、通信業 4,546,000 4,273,000 ▼270,000
金融仲介業 8,278,000 7,802,000 ▼476,000
不動産、賃貸業 2,167,900 2,024,600 ▼143,300
官公庁(公務員) 22,427,000 22,511,000 +84,000
教育 2,823,900 2,906,300 +82,400
医療、社会福祉 15,808,700 16,180,600 +371,900
地域、社会、個人サービス活動 2,501,000 2,549,100 +48,100
自営業 推定10,500万人 推定10,500万人 0
国外機関 推定1,500万人 推定1,500万人 0
合 計   約1億2,500万人※ ‐  
この表はすべての業種を網羅してはいないため、合計約1億2,500万人は全就業者数ではない。米国人就業者数は現在1億4,000万人で、2008年からは500万人減少したと推測される。
※出典:
Bureau of Labor Statistics, “Employees nonfarm payrolls by industry sector
and selected industry detail”,http://www.bls.gov/news.release/empsit.t14.htm

2.1.3 新規学卒者の就職状況

 地域によって差はあるものの、高校や大学の新卒者にとって就職は極めて厳しい。就職活動に苦労している学生の例を以下に紹介する。
 オハイオ州クリーブランドの新聞記事から引用すると、2007年にマーケティングを専攻した女子学生はBMW社で3カ月のインターンシップを経験した。上司は働きぶりに満足したが、彼女は正社員になれず、インターンシップをもう1年延期した。2009年6月現在でもまだ就職できていない。2007年12月の不況が始まって以降、オハイオ州では28万6,000人が職を失い、そのうち3分の2が2008年秋以降に失業し生活に困窮している。2009年4月には失業率は10.2%にまで上昇した。オハイオ州では毎年数万人の学生が就職活動を行っている。企業は職歴経験が少ない者からレイオフするため、社会に出て間もない者がレイオフされ、就職活動に加わってきており、求職状況はさらに厳しくなり、競争倍率は5倍にもなっている。
 労働市場は買い手市場である。企業は新卒を採用する代わりに、5年ほどの経験者を新卒の給与で採用している。また、現状では社員の紹介や口ききによっての応募があるため、募集広告を止める企業も多い。社員からの紹介は企業にとって経費がかからず、良い人材を獲得できるため、このような紹介を社員に促している企業もある。オハイオ州では学卒への求人数は少なく、あっても給与が低くなっている。2009年の求人数は前年に比べ22%下がっており、給与は2008年の新卒平均4万9,624ドル※1から4万8,515ドルへと下がっている。
 企業の3分の2以上は新卒の採用計画を見直しているといわれている。以下、オハイオ州の記事を引用する。
 「卒業時に就職が決まっている学生の割合は2007年時の51%から、2008年時26%、2009年は19.7%まで減少している。全米大学協会の調査によれば、2009年卒業の61%の学生は現況下では就職は厳しい、しかし、52%は3カ月以内に就職できる自信があると回答している。大学のキャリアセンターには数年前に卒業した社会人も求人情報を探しに来ている。彼らのほとんどは卒業後に就職したが、その後レイオフされた者で、パートタイムの仕事に就いたり、技能を活かしてフリーで仕事をするのも多い。」
 大卒資格者の失業率は大卒でない者に比べて低い。大学を卒業して間もない社会人(大卒23〜27歳の層)は高年齢層に比べて、失業率が高く就職も安定していない。また、大卒でありながら、大卒の資格を求めない仕事に就く者も多い。

※1
1米ドル=90.1469円(2009年9月29日現在)

  1. 大卒23〜27歳の層の失業率
    2009年第1四半期:6.0%
    2008年第1四半期:3.7%
    2007年第1四半期:3.0%
  2. 全米の失業率
    2009年第1四半期:8.0%
    2008年第1四半期:4.9%
    2007年第1四半期:4.5%

 職が見つからない学生は、海外も含めたボランティアに就いたり、インターンシップに就いたり、起業を始めたりしている。今の学生は2年前の学生に比べ、就職への期待度は低く、大学院へ進学するものもいる。院卒でも就職状況は厳しく、もし良い仕事を得たいのなら、勤務地について希望を伝えるのは控えた方が良いという。
 フロリダ州南部の状況を見てみると、2009年6月時点、州全体で失業率は約10%、89万3,000人が職を失っている。マイアミ市の失業率は低く8%であるが、州の主要産業である建設業界では11万3,000人も職を失い、新規採用はほとんど期待できない。しかし、医療分野は好調で常に看護師が不足しており、看護学校卒業生はすぐに職を得ている。不況の時でも、医者と看護師の求人は多い。

2.1.4 離職者の現状

 労働統計で離職率(Quits Rate)は自ら希望して転職する人の割合を示している。2009年5月時点では1.3%と過去8年間で最低となっている。2008年5月時点と比較すると、34%に相当する90万4,000人減少し、今や170万人にまで減少した。すべての業界で離職率が減少しているのは、転職先を見つけるのが難しいからであり、現状の仕事に不満を持つ者が少なくなったというわけではない。
 一方、レイオフのように会社都合による退職(Non-voluntary separations)もある。労働統計によると、5月には2,933件の大規模レイオフ(1件当たり少なくとも50人がレイオフされる)が実施され、失業保険の申請数は31万2,880人であった。5月には対前月比で221件増加し、過去1年間で1,232件増えたことになる。5月のレイオフのうち、製造業は1,331件と1年間で倍に増えている。2007年12月の不況の始まりから2009年5月までの18カ月間で大規模なレイオフ件数は3万7,059件、失職者数は381万1,307人にも上っている。大規模レイオフの37%は製造業で1年前に比べ25%も増加し、内訳は輸送機器が4万6,816件、製造機器は1万2,472件であった。事務管理サービスと資源回収業で合わせて大規模レイオフ全体件数の11%を占めた。

2.1.5 職種別技能労働者数

表2‐3 職能別労働者
主な職能 人数
代表取締役社長(Chief Executive) 301,930
執行役員・本部長(General and Operations Managers) 1,697,690
法務職(Legislators) 64,650
営業マネージャー(Sales Managers) 333,910
情報システムマネージャー
(Computer and Information systems managers)
276,820
購買職(Purchasing agents) 286,990
顧客苦情処理職
(Claims adjusters, examiners, and investigators)
277,230
人事・教育・労務管理職
(Human resources, training, andlaborrelations specialists)
217,440
経理・監査職(Accountants and auditors) 1,133,580
証券アナリスト(Financial analysts) 236,720
融資・貸付職(Loan officers) 321,850
コンピュータプログラマー職(Computer programmers) 394,230
コンピュータソフト開発職
(Computer software engineers, applications)
494,160
コンピュータ管理専門職(Computer support specialists) 545,520
建築設計士(Architects) 110,990
土木技師(Civil engineers) 261,360
電気技師(Electrical engineers) 154,670
電気・電子技術者
(Electrical and electronic engineering technicians)
162,330
市場調査職(Market research analysts) 230,070
社会福祉職(Social and human service assistants) 332,880
弁護士(Lawyers) 553,690
教育・訓練・司書士職
(Education, training, and library occupations)
8,451,250
※出典:
Bureau of Labor Statistics, “Occupational Employment and Wages News Release”,
http://www.bls.gov/news.release/ocwage.htm

2.2 賃金

 従業員にかかるコストは、2009年5月の労働省労働統計局が実施した全米従業員就業コスト調査で発表された。この統計は連邦及び州政府の公務員と民間企業(農業は除く)の従業員を対象にしており、コストの内訳は次のとおりである。

表2‐4 平均賃金
  連邦・州政府公務員、
民間企業(除農業)の全平均
民間企業平均
政府・企業が支払う時間給コスト $29.39(100.0%) $27.46(100.0%)
給与分 $20.49(69.7%) $19.45(70.8%)
福利厚生分 $ 8.90(30.3%) $ 8.02(29.2%)
表2‐5 福利厚生費の内訳
社会保障、メディケア、失業保険、
労災保険など(法的な税負担コスト)
$2.28(7.8%) $2.27(8.3%)
有給休暇(病欠、バケーションなど) $2.08(7.1%) $1.86(6.8%)
医療保険、障害者補償保険など $2.52(8.6%) $2.14(7.8%)
補助手当など $0.70(2.3%) $0.78(2.8%)
退職金積み立て $1.31(4.5%) $0.96(3.5%)
※出典:
Bureau of Labor Statistics, “Employer Costs for Employee Compensation news release text”,
http://www.bls.gov/news.release/ecec.nr0.htm

 全正規従業員数1億10万人の2009年第2四半期の平均週給(給与の支払いは一般に2週間ごとである)は734ドルで、前年比2.1%上昇した。週給についてのデータは人口調査(Current Population Survey)で集計される。以下要点を述べる。

  • 男女別所得(週給ベース)では、男性815ドル、女性652ドル
    人種別所得では、ヒスパニックが547ドル、黒人592ドル、白人754ドル、アジア系909ドル
  • 人種別男女所得の比率を見ると、黒人女性は男性の91.5%、ヒスパニック88.9%、アジア系80.6%、白人79.1%
  • 黒人男性の中間値は620ドルで白人男性(842ドル)の73.6%である。黒人女性の中間値は567ドルで白人女性(666ドル)の85.1%と女性の所得格差は少ない。
  • 男女の年代別所得で見ると、男性は55〜64歳が964ドル、45〜54歳が961ドル、女性では55〜64歳が721ドルで最も高い。
  • 職能別では、管理職や専門職が最も高く男性は1,250ドルで、女性は900ドルであり、最も低いのはサービス職である。
  • 学歴別所得では、25歳以上で高校中退者は465ドル、高校卒業者は630ドル、大学卒業者は1,140ドルである。修士や博士課程修了者の中で上位10%は、男性で週3,434ドル以上、女性では2,130ドル以上の所得を得ている。

2.2.1 法定最低賃金の最近の動向

 連邦政府が定めた最低賃金は2009年7月24日に改定され、時給6.55から7.25ドルになった。29州では、まだ7.25ドル以下の時給を定めているが、改定されることになる。7州は既に改定し、14州とワシントンDCは上回った額を最低賃金と定めている。連邦・州政府どちらにしても、最低賃金は高い額が適用される。
 最低賃金は、長年5.15ドルであったが、2007年7月に5.85ドルへ、2008年6.55ドル、2009年7.25ドルへと推移してきた。引き上げの理由は失業者の増加と給与カットであった。2008年は310万人が失業し、2009年上期だけで失業者は340万人に上った。レイオフで失業した人々は以前よりもかなり低い給与の仕事に就いている。また、失業期間が6カ月以上の失業者が440万人にもなり、そのうち失業保険の支給期間も過ぎてしまった者も多い。経済学者はこのような時期に最低賃金を引き上げると企業は賃金上昇分を吸収できないであろうと述べている。最低賃金改定法は景気後退の数年前に議会で可決されており、企業の多くはこの最低賃金改定に応じられず、地域によっては雇用拡大が遅れるところが出てくるかもしれない。最も影響を受けるのはレストラン、特にファストフードレストランで今回の不況で直撃を受けた小売業も影響が大きい。賃金の安い労働者を擁護する人たちは、たとえ国民の多くの生活が大変になっても、最低賃金の引き上げは良いことだと唱えている。
 最低時給7.25ドルだと週労働40時間で年収は1万5,080ドルになる。全米の週当たりの平均労働時間33時間で計算すると、年収は1万2,441ドルになる。米国では政府が定めた貧困状態(Poverty level)とは1人当たり年収1万830ドル、1世帯当たり(4人家族)2万2,050ドル以下であり、生活保護を受けるにはこの年収以下でなくてはならない。確かに、最低時給での生活は大変であるが、家族と同居するティーンエイジャーにとっては充分な給与である。経済が好調の時には、ほとんどの仕事は連邦や州政府が定めた最低時給よりも高かったが、今の不況時では、最低時給の仕事しか見つからない。政府に生活保護を申請する最低時給の労働者が増えている。一方、企業の業績悪化により国の税収が減少すると共に、生活保護手当などの社会福祉予算が削減されており、低所得者層には大変厳しい状況である。

2.2.2 賃金もしくは給与の実態調査結果

 職業、給与、将来の成長業種などの実態調査は数多く行われており、以下、労働調査局がまとめた最新記事「米国トップ10職種」から引用する。

  1. コンピュータシステムソフト技術者 8万1,140ドル
    企業のコンピュータ導入・運用及び維持管理を指導し、また、企業内ネットワーク(Intranet)を導入する業務である。
    資格はコンピュータサイエンスや情報システムの大学卒である。
  2. コンピュータアプリケーションソフト技術者 7万6,310ドル
    開発言語(C++やJavaなど)を使ってアプリケーションソフトを開発する業務である。
    資格は大学卒、複雑なソフト開発の場合は大学院卒である。
  3. バイオメディカル技術者 7万520ドル
    生体や医薬に関する問題に取り組む総合的な知識が求められる技術者で、例えば、人工臓器や人工器官の研究開発などを行う。
    資格はほとんど大学院卒である。
  4. 医療看護師 6万9,250ドル
    健康維持に関する診断、治療、予防を行い、医師の監督の下で患者への処方箋も出せる。資格は公認医療看護師プログラム履修者で大学卒である。
  5. 環境技術者 6万9,250ドル
    大気汚染、オゾン層破壊、野生動物保護に関する問題を調査、研究することで、環境改善や保護を進める業務を行う。
    資格は大学卒である。
  6. コンピュータシステムアナリスト 6万7,520ドル
    現システムの問題点を分析し、新しいシステムの導入を検討、計画を立て企業の投資効率を最大にする業務である。
    資格は複雑なシステムかどうかによるが、短期大学から大学院卒で、専門の教育や検定資格の取得が必要な場合もある。
  7. データベースアドミニストレーター 6万1,950ドル
    データベースを計画作成、検査、修正、また顧客の要望を識別したり、新しいユーザーをシステムに組み入れたりするなどの業務を行う。
    資格は業務の複雑さに応じた技術知識や専門教育修了者である。
  8. 理学療法士 6万1,560ドル
    身体機能に損傷を受けた患者の機能回復を行う業務である。
    資格は理学療法の教育を修了し、公的な理学療法士の資格所持者である。
  9. 通信ネットワークシステム技術者 6万1,250ドル
    インターネットの構築、導入を行う。特に企業内ネットワーク、LAN, WANなどとの接続検査及び評価を担当することが多い。
    資格は2年生専門学校(コミュニティーカレッジ)や大学卒である。
  10. 水資源管理者 6万880ドル
    水資源の水量、供給、循環に関し、環境保護や治水管理につながる業務を行う。資格は大学卒だが、大学院卒も増えている。

2.2.3 役職別給与体系のサンプル

 給与体系は企業や組織によってさまざまである。公務員や大企業でははっきり職務別給与が定められており、公務員の場合は給与と福利厚生は公表されている。一般に、職務別給与はトップに至るまで、段階的に定められている。
 民間企業の給与体系は公表されていないが、かなりの情報はウェブサイト「サラリードットコム」で調べることができる。したがって、求職者はこのサイトを応募の参考にし、社員は給与交渉の参考にすることができる。また、企業は同業他社との比較に利用している。
 大企業は政府機関と同じような職種・職務別固定給与の体系で、営業やマーケティング職には業績に応じた給与体系を備えている。金融業などは特に従業員の意欲を駆り立てるためにボーナスを用意しているし、ほとんどの業界では営業部門に売り上げに応じたコミッション(歩合)や利益に応じたインセンティブ(報奨金)などを導入している。
 企業は給与に関する方針を明確にする必要がある。給与には固定給と、コミッションやインセンティブなどの変動給(Variable Pay)がある。新興企業は売り上げや収入が変動するため、始めは固定給を低く抑え、業績が向上し始めると、目標値達成への従業員のやる気を鼓舞するために、賞与を導入し始める。業績が落ち込むときは、低い固定給のみにとどめている。大企業は売り上げ・収益が比較的安定して見込めるので、固定給が高い。
 給与体系を作るには、著名な調査会社が発行している業種別給与比較調査報告書を参考にすると良い。この報告書には職種や職務記述書(Job Description)ごとの給与幅が掲載されている。給与は業界、職種及び地域によって異なるため、希望の勤務地域の職務記述書をよく調べることが重要である。
 給与は企業のミッションやビジョンに則して、業績目標(Goal)の達成度に応じて支給されるべきものである。定期昇給や勤務年数による給与システムは業績目標達成には逆効果である。給与体系を作ることは理想とする企業文化を創造することでなくてはならないが、業績評価だけの給与体系では企業全体のチームワークの向上にはつながらない。したがって、企業は自社文化のあるべき姿を入念に作り上げ、その文化達成への貢献度に応じた給与体系にする必要がある。給与体系をどのようにするかは、採用及び人事管理の方針と密接に関係している。もし、企業が従業員を優秀な技能集団にしたいならば、同業他社よりも高い給与を支給する必要がある。給与が同業他社よりも安ければ、二流の人材しか応募してこないため、優秀な技能集団にすることはできない。言い換えれば、企業が給与を低く抑えたいならば、低い技能労働力や高い離職率に目をつぶらなければならない。
 失業者があふれているときは優秀な人材を以前よりも低い給与で採用できる。しかし、景気が回復したときに、従業員の多くは他社に比べ給与が異常に低いと感じ、いとも簡単に転職してしまう。給与に不満を持つ従業員ほど会社全体の士気に影響するものはない。福利厚生が平均を上回る企業では、少ない給与でも従業員の意欲を維持できる場合もある。給与体系の一部である福利厚生の設定は極めて重要な要素である。
 ボーナスは業務目標をどれだけ達成し、企業へどの程度貢献ができたか従業員個人ごとに査定されるが、支給はグループ(部門など)の業績達成を基にすべての従業員に対して行われることもある。また、ある期間の経常利益に応じて従業員に公平に配分する企業もある。ボーナスの支給については、業績目標に対しての実績を定量的に判断し、従業員に分かりやすく、一貫して公平で、透明性がなくてはならない。企業はボーナス支給の意味を従業員に充分理解、納得してもらうことが、従業員のモチベーションや業績の向上につながりやすい。従業員それぞれに支給されるボーナスの額は秘匿情報であるが、査定方法は明確で分かりやすいものにし、従業員に公表すべきである。そうすれば、従業員のやる気に結びつく。

2.3 労働時間の現状

 労働時間に関しては、農業以外の民間企業従業員(管理職を除く)の6月週平均労働時間は0.1時間減って、33時間になり、1964年以降で最少になった。製造業は39.5時間で0.1時間増え、時間外労働時間は変わらず2.8時間であった。
 以下、2009年6月時点の産業別労働時間を前年同月と比較して示す。

表2-6 産業別労働時間   (単位:時間)
産 業 週平均労働時間 対前年 同月比
2008年6月 2009年6月
天然資源採掘業 45.4 43.2 ▼2.2
建設業 39.4 38.2 ▼1.2
製造業 41.1 39.8 ▼1.3
貿易、輸送業 33.8 32.8 ▼1.0
情報関係業 37.2 36.1 ▼1.1
金融関係業 36.6 35.7 ▼0.9
レジャー及びサービス業 26.1 25.0 ▼1.1
※出典:
Bureau of Labor Statistics, “Employment Situation Summary”,
http://www.bls.gov/news.release/empsit.nr0.htm

2.4 労使関係の現状

 今回の不況は、就業者の大幅な減少をもたらし、労働組合に影響を与えている。労働組合員が多い自動車業界、建設業、及び公務員ではレイオフが多く、これらの業界では組合員数だけでなく、徴収する組合費が減少している。したがって、組合の企業への影響力は減小しているが、一方、民主党のオバマ大統領が労働組合を支持しているため、この点では政治的なバックアップは増しているといえる。

2.4.1 労働組合の現状

 労働組合を支持する新しい法案、つまり「従業員自由選択法(Employee Free Choice Act:EFCA)、通称Card Check」は今年の議会で審議される予定で、注目を集めている。この法案は2007年にケネディ上院議員が中心となり、当時のオバマ及びバイデン両上院議員と最初に提出したもので、従業員による労働組合の結成を容易にし、かつ雇用者(企業)がその行為を妨害すれば、罰則を強化するという法案である。賛同者は中間所得者層を守る意味で重要と指摘しているが、一方反対者は主に米国商工会議所(U.S. Chamber of Commerce)や全米レストラン協会(National Restaurant Association:NRA)で、人件費が上昇し、経営に影響すると主張している。両者ともロビイストや宣伝に数百万ドルつぎ込み対抗している。
 現在、労働組合加入者は労働人口全体の12%にとどまるが、労働組合は過去75年間で、失業保険や社会保障の充実、週40時間労働の実現などを果たした実績がある。しかし、企業側は福利厚生や給与面で以前よりも優遇しているため、組合は不要であると感じているようである。従業員も就業不安が高まってきていることから、組合の結成をためらっている。
 今年民主党が過半数を占めたため、この法案が可決される可能性は高い。この法案の重要な点は、組合結成の是非を問う投票が無記名投票からより開かれた記名投票に変わるため、組合が従業員に圧力を掛けることが可能になり、組合の立場がより強くなることである。また、法案は強制仲裁を導入するため、組合に有利に働くことになる。この強制仲裁は本来従業員のストライキを減らすためのものだが、企業にとっては逆に財務的な負担が生じることになる。特に政府と公務員には影響がある。というのも、通常労使間交渉は互いに合意するまで法律の範囲内でいろいろな駆け引きが行われるが、行き詰ると従業員側がストライキを起こす。しかし、ストライキは労使共に資金的な負担を強いるため、互いに譲歩する意識が働くことになる。
 警察官や消防士がストライキを起こすことを禁止している州は多いが、何らかの強制交渉を認めている州も約20州ほどある。両者が合意できない場合、組合、市及び州政府が第三者を選び、両者の意見を踏まえて合意を促している。この方法は迅速な解決を導くはずであるが、2005年と2006年の29件の事例では、実際には解決に15カ月も掛かり、迅速とは言えなかった。また、第三者の仲裁委員会は裁定結果に何ら責任を負うことがなく、政治的な処理であるため、両者にとって満足な解決策にはなりにくい。デトロイト市の1978年の例では、警察官と消防士の申し立てに対し、仲裁委員会が市政府に4,600万ドルの生活保証金の支払いを命じたケースがある。これにより、既に疲弊していた市の財政は破綻し、結局警察官の25%削減を実施した。改善していた犯罪率がレイオフ後に増加したため、警察はやむをえず1981年に向こう3年間の給与凍結に同意した。仲裁命令が出たことで破綻した市もあり、公務員の争議を認める州(仲裁を認める州)は認めない州に比べ、市政府の経費が3〜5%も高くなっている。
 EFCA(従業員自由選択法)が議会で可決されると、仲裁命令が生じた場合の民間企業の賠償負担は公共企業の比ではない。納税者へ付けを回す州や市政府とは異なり、民間企業はこのコスト負担が経営競争力の低下を招くことになる。企業は生き残りを賭けて、日々改革とコスト削減に取り組んでいる。しかし、仲裁命令が出ると、企業はこの契約に関わる経営管理を2年間凍結しなくてはならず、例えば、401Kプラン(年金)への企業負担金から社外発注に至るまで、事業内容の知識もなく、利益を上げる気もない政府の仲裁委員会から審査や指導を受けることになる。
 企業だけが仲裁に影響を受けるわけではない。現行では、組合役員が決定締結する契約は一般組合員の投票による事前承認が必要となっている。しかし、仲裁が入ると、この投票が行われることはない。言い換えれば、EFCA法は各従業員の組合結成のための投票権を取り上げ、仲裁命令は契約内容の賛否投票権まで取り上げる。したがって、この法案では、労働組合の幹部のみが影響力を持つことになる。

2.4.2 労働争議の現状

 1947年から1980年の間には、労働者によるストライキや企業のロックアウトのような1,000人以上の大規模な労働争議が年間200件以上発生した年が多く、最少は1963年の181件、最多は1952年の470件であった。1981年以降は減少し、2003年は11件であった。2003年11月から3カ月間と、2008年11月から2009年5月までは大規模な労働争議は一切発生していない。近年で最も有名な労働争議は、2007年11月5日から2008年2月12日まで続いたハリウッドの脚本家組合(Writer Guild of America)のストライキで1万2,000人以上の映画、テレビ、ラジオの脚本家が参加した。脚本家の収入は古くからの慣習で低く抑えられていたが、ストライキはこれを打破する目的で、ディズニーやソニーピクチャーズを含む全米映画及びTV会社397社を代表する全米映画テレビ制作者同盟(Alliance of Motion Picture and Television Producers:AMPTP)に対して行われた。それぞれの代理人による交渉の結果、脚本家は収入を増やすことができたが、このストライキで閉鎖を余儀なくされたロサンゼルスの制作会社の被害総額は20億ドルにも及んだ。

2.5 募集、採用、雇用、解雇の現状

 全米の現在の失業率は9.5%で2008年より3.9%増加している。今年5月から6月では少し上昇し、州や地域で違いが見られる。38州とコロンビア特別区は増加、5州は減少、残り7州では横ばいであった。6月の非農業従事者数は39州とコロンビアと特別地区で対前月比減少、10州で増加、残り1州は横ばいであった。最も減少が大きかったのはカリフォルニア州の6万6,500人、次にテキサス州4万600人、オハイオ州3万3,000人それにミシガン州3万1,300人であった。米国4地域の2009年6月失業率を対前年同月で見ると、最も悪化したのは、中西部で+4.2%、西部は4.1%の増加で、共に10.2%になった。一方北東部は8.6%であった。

 連邦法で定められた就業に関する主な規則を以下記述するが、詳細は労働省のホームページ上(http://www.dol.gov/compliance/guide/)で公表されている。

  1. 賃金と労働時間について(公正労働基準法、Federal Fair Labor Standard Act:FLSA)
     公正労働基準法は、最低時給、時間外労働手当、勤務表の記録保存、児童労働、自宅勤務などに関する規則がある。労働基準局賃金労働時間部がFLSAを管理している。企業は年俸制社員を除く従業員には最低時給7.25ドル(2009年7月24日改定)以上支払う義務があり、業種によっては、チップも給与の一部と見なされる。20歳未満の若年者の最低時給は、最初の90日間は4.25ドルである。雇用者は従業員を解雇してこの最低時給額で代用員を採用してはならない。法律は16歳以上の労働者の就業時間を制約していないが、週40時間以上働く場合には、超過分に対し時給の1.5倍を支払わなければならない。また、法律は16歳未満の若年者が就業できる仕事と就業時間に制約を設けており、18歳未満が就労してはいけない危険な業種も定められている。

  2. 移民国籍法(Immigration and Nationality Act:INA)
     移民国籍法の下で、外国人でも米国で就労することはできる。労働省の賃金と就労時間局は、以下4つの査証(ビザ)に関する規則を設けている。D‐1(パイロット及び客室乗務員用)、H‐1BとH‐1B1(専門技能所持者、ファッションモデルなど)、H‐2A(農業に従事する期間従業員)である。この法律により、企業は外国人従業員も含めすべての従業員の身分と雇用を証明する義務がある。

  3. 労働安全衛生法(Occupational Safety and Health Act:OSHA)
     労働安全衛生法は労働省労働安全衛生局の管轄の下、ほとんどの民間企業の職場に適用されている。ただし、運輸業や採掘業には別の規定がある。安全基準は落下、爆発、火災、落盤などの事故、機械や車両操作及び維持管理について定めている。また、衛生基準はさまざまな健康被害、防塵マスクや聴力保護具のような防護用具の使用、作業管理の見直しなどについて規定している。企業は労働安全衛生基準を遵守し、従業員は定められたすべての規則に従う義務があることが法律で規定されている。労働安全衛生法で、特に条項があるわけではないが、企業は一般義務原則の条項に従って、従業員に重大な障害を及ぼす危険が生じないよう、安全かつ衛生的な職場を備える責任を負っている。

  4. 従業員退職所得保障法(Employee Retirement Income Security Act:ERISA)
     従業員退職所得保障法は、企業の退職年金の運用受託者資格を定め報告と情報公開を義務付けている。同法では運用資産を定義し、適切な運用の実施及び加入者の意思を盛り込むよう定めている。

  5. 包括予算調整法(Consolidated Omnibus Budget Reconciliation Act:COBRA)
     包括予算調整法は、継続医療に関する情報の開示、届出要件を規定している。この規定は従業員20人以上の企業のグループ医療保険に適用され、従業員は退職後でも自費で一定期間この医療保険を継続することができる。

  6. 医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律(Health Insurance Portability and Accountability Act:HIPAA)
     医療保険の通算、継続についての条項を従業員退職所得保障法(ERISA)に追加した法律である。この法律で、転職者が医療保険を受けやすくなり、健康上の理由による就業差別から健康に問題がある者を守ることになる。小企業雇用者は一定の条件で医療保険内容を更新・変更することができる。また、企業に労働省管轄の年金給付保証公社(Pension Benefit Guaranty Corporation:PBGC)へ企業年金基金の保険料を払い込ませることで、退職年金の支払いを保証する仕組みができている。

  7. 育児介護休業法(Family and Medical Leave Act:FMLA)
     従業員50人以上の企業は従業員に家族の世話や介護のために12日以内の無給休暇を与える義務がある。例えば、家族の出産や産後の世話、養子縁組や里子の引き取り、従業員本人もしくは肉親の入院介護などに休暇が与えられる。

  8. 就業に関するその他の法律
    • 軍人雇用・再雇用権法
      (Uniformed Services Employment and Reemployment Right Act:USERRA)
    • 労働者調整・再訓練予告法
      (Workers Adjustment and Retraining Notification Act:WARN) レイオフ、工場閉鎖など従業員への事前通知
    • 労働者ポリグラフ保護法(Employment Polygraph Protection Act:EPPA)
      採用時に嘘発見 器などの使用禁止
    • 労使報告公開法(Labor Management Reporting and Disclosure Act:LMRDA)
      労働組合が組合員へ報告及び情報公開を行う義務

2.6 転職の現状

 労働省統計局の2009年5月末日時点の発表から、求人、採用、退職等について述べる。

  1. 求人率(Job Openings Rate)
     求人数は260万人で、前年同月比で−36%に相当する150万人、すべての業界と地域で減少した。5月の求人率は対前月比横ばいの1.9%で、小売業は増加し、ホテル業、飲食業と州・地方政府は減少した。求人数は公的機関への求人届出数を示している。

  2. 雇用率(Hires Rate)
     雇用率は雇用総数(一定期間に正規、非正規、新卒、中途、パート、季節労働などすべてを含む雇用の総数)と現在の就業者総数の割合である。5月末日で雇用総数は400万人であったが、2000年12月以降で最悪の3%であった。雇用率が特に低かったのは輸出入を中心とした小売業であった。連邦政府が2010年度の国勢調査要員の一時採用を行ったので、連邦公務員の雇用率は昨年5月に比べ増加したが、農業を除く全業種で16%、82万9,000人減少した。地域別で見ると、北東部は大きな変化は見られなかったが、中西部、南部及び西部では大幅に減少した。

  3. 離職率(Total Separations Rate or Turnover Rate)
     離職率は自主退職、レ イオフ、懲戒解雇、及び定年退職を含み、5月は対前年比で全産業が減少し3.3%であった。5月時点の自主退職者数は前年同月比で34%、90万4,000人減少し、170万人となった。自主退職率は1.3%で変わらず、過去8年間で見ると昨年同様最低であった。産業別、地域別で見ても大幅に減少した。

 レイオフと懲戒解雇の数字は季節調整されており、民間企業で220万人(退職率は2%)、公務員で12万1千人(0.5%)、農業を除く全産業で230万人(1.7%)であった。5月の統計では特に大きな変化は見られなかった。この5月末時点の退職率を前年同月と比較すると、ほとんどの業種で大幅に増加したが、ヘルスケア、福祉関連、芸術や娯楽業界では減少した。地域別では中西部が特に増加したが、その他の地域では大きな変化はなかった。
 離職者数に占める自主退職者数とレイオフ・懲戒解雇者数の割合の推移をみると、自主退職者数の割合は2008年1月に59%、2009年4月に38%、2009年5月は40%と減少しているが、レイオフ・懲戒解雇者の割合は2006年8月に33%、2009年4月に54%、2009年5月は53%と増加した。残りは定年退職者の割合である。
 離職者数と採用者数を2009年5月までの1年を月別で比較すると、いずれの月も離職者数が採用者数を上回っており、5月時点の累計離職者数は5,780万人で累計採用者数は5,290万と約490万人も就業機会が失われている。

2.7 その他の雇用慣行

 米国の労働市場は現在失業者が多いため、企業にとっては買い手市場である。したがって、給与や福利厚生を下げても人材を採用できる状況にある。低い給与でかつ福利厚生に不満があると、従業員がいずれ会社から離れていくことを理解している企業は長期的視点から適切な給与体系を継続している。給与を含めた福利厚生、例えば、有給休暇、バケーション休暇や医療保険などが手厚い企業では離職率が低く、生産性や仕事への意欲は高い。以前は一般的であった企業拠出年金(Pension Plan)は企業の拠出負担が大きいため、今では従業員と企業が共に拠出する401K(確定拠出年金)のような年金プランを用意している優れた企業などもある。
 福利厚生などに関する労働省統計局の調査によると、年間の有給休暇日数は平均10日、入社2年目から取得できるバケーション休暇(無給)は平均9.4日となっている。中規模以上の企業の半数以上は、従業員に対して確定給付型年金あるいは従業員も拠出する確定拠出年金プランを備えている。全体の75%の企業は医療保険に加入し、従業員の保険金の一部を負担している。
 企業が人材の採用や社員の引き留めのためにボーナスやインセンティブ(報奨金)を活用することは一つの流れになっている。また、企業がフィットネスクラブの年会費、授業料補助、フレックスタイム、託児サービスを持ち、また、社内にクリーニング店を備えているところもある。魅力ある職場環境、フレックスタイム、在宅勤務やカジュアルな服装などは企業の魅力を増やす重要な福利厚生である。

2.7.1 企業の慣行

 企業は従業員の仕事と生活の時間バランスを重要視してきている。コンサルティング企業のコーポレイトエグゼクティブボードでは、このバランスを上手くコントロールできれば、従業員の勤労意欲が高まり、離職率が減少すると指摘している。
 仕事と生活時間のバランスについて男女5万人を対象とした調査によると、従来の考え方と違い、バランスを重視するとの回答が多かった。このバランスが上手く取れていると回答した者の21%は仕事に意欲を持ち、33%は今の会社に満足しているとの結果であった。しかし、ある企業での調査では、全体の16%しか仕事と生活時間のバランスに満足せず、まだ改善の余地があることが分かった。従業員の約3分の1は業績目標に対して充分な働きをしていない。会社の福利厚生プログラム(プライベートの時間を増やせるプログラム)を知る従業員は3人に1人だけであった。例えば在宅勤務、フレックスタイムや託児サービスなどの福利厚生プログラムには利用申請が必要であるが、知っていると答えた従業員の25%だけがこのプログラムに満足している。半数はまだ利用していない。従業員は仕事の進捗を自己管理できる点でこのプログラムを良いと考えている。従業員の63%はフレックスタイムを、62%は仕事量の適量化を、その他は仕事時間の自己管理を望んでいる。したがって、企業はこのような福利厚生プログラムについて明確に従業員に伝える必要がある。


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