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オーストラリア

作成年月日:2008年12月30日

雇用労働関係法令

【背景】
オーストラリアは、20世紀を通して中央集権型の労使関係制度を維持し、その制度の下で連邦政府及び州の労使委員会は、「労働裁定 (Awards) 」によって、賃金を含めたさまざまな労働条件を制定した。連邦政府と州政府がそれぞれの管轄を管理したが、対象範囲は産業部門によって異なった。
1980年代以降、中央集権型の制度は、企業の個々の変化に対応するには適応性に欠けると見なされるようになった。問題は、労使法において複数の州にまたがる労使争議への連邦政府の権限を制限するオーストラリア憲法にもある。過去25年間を振り返れば、当初は企業ごとにそれぞれの条件を制定する契約形態だったのが、近年にはAWA(Australia Workplace Agreements:オーストラリア職場協定)による雇用主と労働者間の個々の契約へと移行してきた。このため、AWAが州レベルの産業関連法の大部分より大きな影響力をもつようになった。この法制度下では、連邦法が法人企業の全労働者に適用された。州及び特別地域が所轄する労使法は、規模の小さい非法人企業のみを対象としている。この法制度は、非常に複雑で、雇用主にとって過度に有利であると見る者が多かった。
前保守政権によって導入された「旧職場関係法 (Work Choices) 職場選択」は、2007年11月24日の連邦選挙で政治的論議の的になった。前政権が選挙で敗れた敗因は、それを導入した労使関係法にあると見る者が多かったからである。
現政権を担う労働党は、総選挙で年間有給休暇、育児休暇、祝日、時間外労働、時間外勤務の賃金率、不当解雇及び一時解雇等の労働条件について労働者を保護すると提案した。新政権は、AWAを雇用主が使用しないよう、段階的廃止に向けた対応に着手した。新しい制度が完全に機能するまで、暫定的に2年間の個人契約を結ぶ移行措置をとった。
政府は、2008年11月下旬に「新職場関係法案 (Fair Work Bill) 2008」を議会に提出した。法案の重要な特徴は、2州以上にわたる労使紛争を解決する際に、連邦政府は直接介入するのでははく、労使関連の法律を制定することによって対応することである。
この法案は、前政権の「旧職場関係法 (Work Choices) 職場選択」よりも短く、複雑さの度合いも低くなっている。ただ、本報告で言及する重要な条項の大部分は承認される見込みは大きいものの、現行の法案のままで上院を通過できるかどうかはまだわからない。現政権は、2010年1月から新職場関係法を施行することを目標にしている。

※参考:
「新職場関係法案」<http://www.workplace.gov.au/NR/rdonlyres/
F902366C-E559-481D-8C99-19D8DFC431EA/0/fwbill2008.pdf
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1.1 雇用労働関係法令一覧

前述したように、2009年以降は「連邦職場関係法 (Federal Fair Work Act)」が労働関連の法制度で大きな影響力を持つようになる。この制度を運営する機関はFWA(Fair Work Australia:フェア・ワーク・オーストラリア)で、その長官は、州の産業担当機関との協力関係を促進する必要がある。現段階では、現在の各州の労使裁定委員会の存続、及びその権限の一部又は全部の連邦機関への委譲等については未定である。連邦政府は、新しい労働関連の法制度を大部分の事業所及び労働者に適用することを目指している。現在、この法制度が適用されている労働人口は、全体の80%である。連邦政府が州政府の説得に成功し、権限の委譲が行われれば、新しい労働関連法制度は全労働人口の90%に適用されることになる。この法制度の対象外となるのは、州及び特別地域の公務員及び小規模の非法人企業だけである。
新制度では、従来の非常に複雑な州レベルと連邦レベルの労働裁定が簡素化されて分かりやすいものになる。制定作業が進行中の労働裁定制度は、基準を汎用性のある項目に絞り、全産業部門を対象にし、法案通過時にFWAに移行するAIRC(Australian Industrial Relations Commission:オーストラリア労使関係委員会)が策定作業を行なっているが、2010年1月1日までに完成させる必要がある。

※出典:
The Parliament of the Commonwealth of Australia, House of Representatives, Fair Work Bill 2008, <http://www.workplace.gov.au/NR/rdonlyres/
F902366C-E559-481D-8C99-19D8DFC431EA/0/fwbill2008.pdf
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1.2 労働基準関係法令

1.2.1 労働契約

現在作業中の連邦労使法改正によって、雇用主と労働者が個別に結ぶ契約の重要性が低下し、企業ごとにそれぞれの条件を制定する契約形態の増大が見込まれる。新制度では、ある職場の労働者の多数が労働協約に賛同した場合、その企業は誠意を持って当該協約の交渉を行う必要がある。
労働協約の骨子は、10項目の国家労働基準 (National Employment Standards) に忠実である必要がある。また、労働協約は、10項目の基準が保護する最低労働条件を損なわない範囲で、条項の追加ができる。

1.2.2 解雇規則

  1. 解雇(解雇予告及び解雇手当)
    雇用主は、労働者の解雇に際して解雇日よりも前に書面による通知を行わなければならない。雇用主は、1年未満の勤続者には1週間以上前、5年以上の勤続者には4週間以上前に解雇に関する通知を行う必要がある。また、勤続2年以上で45歳以上の労働者には、これらの条件よりも1週間早く解雇に関する相談を行うものとする。労働者は、解雇手当を受ける権利を持ち、勤続年数に応じて4~12週間分の給与に相当する手当が支払われる。ただし、この条項は、期間従業員、臨時従業員、重大過失によって解雇された従業員には適用されない。

1.2.3 賃金、労働時間、休憩、休日、年次有給休暇、時間外及び休日労働、時間外の割増賃金

  1. 労働時間
    通常、労働時間は1週38時間を限度とする。ただし、妥当な範囲で時間外勤務を求めることもできる。正規労働者の場合、26週間までの平均労働時間は、1週38時間の基準を満たせばよい。
  2. 柔軟な労働編成の要求
    勤続12カ月以上の労働者又は将来にわたって長期的に勤務を続ける見込みのある臨時労働者は、就学前児童の世話のために柔軟な労働編成を要求できる。
  3. 育児休暇
    (2) と同様、12カ月以上の勤続者のみが対象である。12カ月以上の勤続者は、12カ月までの無給産児休暇を受ける権利がある。さらに、もう12カ月の無給産児休暇を要求することもできるが、これに対して、妥当な理由がある場合は、雇用主側が拒否することもできる。
  4. 年次休暇
    労働者は毎年4週間、交代勤務の労働者は毎年5週間の年次休暇を受ける権利がある。この年次休暇は、受給対象の労働者が通常の賃金水準の給与を休暇中も受けられる有給休暇である。企業は、労働者の年次休暇をクリスマス等通常業務が停止する期間にあててもよい。
  5. 個人休暇、介護休暇、慶弔休暇等
    労働者は、これらの有給休暇を年間で10日間受けることができる。これは、年間を通じて蓄積(例えば、勤続6カ月で5日の有給休暇の権利)し、また、未消化の有給休暇は何年かにわたって蓄積することができる。この有給休暇は、労働者本人の病気療養目的、また家族の介護のためにも利用できる。これらの目的のために、2日までの無給休暇及び近親者への予期せぬ事態等に対応するために2日までの慶弔休暇を受けることができる。
  6. 地域活動休暇
    この休暇は、陪審義務(雇用主は、最初の10日間だけ有給休暇扱いにする必要がある)又は山火事、洪水等の自然災害に対応するために国内で行われる緊急ボランティア活動への参加を対象とする。
  7. 長期勤続休暇
    労働者は、従来取り決めで規定されている長期勤続休暇を利用することができる。
  8. 公休日
    労働者は、連邦政府が定める8公休日と州政府又は特別地域政府が定める8公休日をとることができる。ただし、雇用主は、さまざまな条件の下で、労働者に対してこれらの公休日に労働するように要請をすることができる。
  9. フェア・ワーク情報文書(Fair Work Information Statement)
    雇用主は、雇用労働関係法令上の労働者の権利に関する情報を1年に1回以上、労働者に知らせなければならない。

1.2.4 若年者、女性、労働安全衛生、アウトソーシング(委託業務や派遣労働)

新職場関係法案が扱う雇用労働関係法令のほかに、雇用主及び労働者に関連する連邦法及び州法がある。連邦レベルでは、「性差別禁止法(1984年)」が最も重要である。以下のような雇用主の行動は、差別と見なされる場合がある。

  • 女性の雇用を拒否すること。
  • 転勤又は降格させること。
  • 常勤からパートタイムへの変更又はその逆の変更を行うこと。
  • 常勤の女性労働者を臨時職員に変更すること。
  • 就労時間を減少又は増加させること。
  • 勤務日数を変更すること。
  • 技能や難度の点で低レベルの仕事を与えること。
  • 昇進、転勤、訓練等の機会又は雇用関連の恩恵享受の制限又は妨げること。
  • 解雇。
  • その他の損害を与えること。

新職場関係法案では、若年労働者、障害のある労働者、訓練中の労働者等に異なる条件及び給与水準を設定しても差別とはならない。若年労働者、障害のある労働者、訓練中の労働者等については、全国一律の最低賃金規定が制定される。

【労働安全衛生】
労働安全衛生問題は、労働問題を管轄するいくつかの機関が扱っている。各州及び特別地域には、Work Cover、Work Safe、Work Safety Authority等の担当機関があり、労働安全衛生法の適用状況の監視及び違反への対応を行っている。ASCC(Australia Safety and Compensation Council:オーストラリア安全補償委員会)は、全国レベルの助言機関で州及び特別地域の管轄の枠を越える労働安全衛生基準の制定を目的とするが、強制執行を行う権限を持たない。州及び特別地域の各政府、雇用主、労働組合執行部は、この分野に関する国家方針文書に合意し、職場で発生する死傷件数の削減目標を設定している。
一般的に、各州及び特別地域の労働安全衛生機関は、安全及び衛生に関係する多くの法律に関係している。例えば、ニュー・サウス・ウェールズ州労働局は、以下の7つの法律を制定した。

  • Occupational Health and Safety Act 2000
  • Workers Compensation Act 1987
  • Workplace Injury Management and Workers Compensation Act 1998
  • Workers Compensation (Bush Fire, Emergency and Rescue Services) Act 1987
  • Workers Compensation (Dust Diseases) Act 1942
  • Sporting Injuries Insurance Act 1978
  • Rural Workers Accommodation Act 1969
※出典:
Australian Safety and Compensation Council <http://www.ascc.gov.au/> accessed on 30 December 2008.

1.2.5 就業規則、労働協約

調査中

1.2.6 その他

「オーストラリア独立契約者法2006 (The Commonwealth Independent Contractors Act 2006)」は、契約を結ぶ個人事業者を保護し、正当な労働形態として個人事業者の労働契約を承認することを目的にする。この法律は、前政権によって制定されたものだが、新体制になった現段階でもこの法律の廃止又は修正に向けた動きは見られない。
「オーストラリア独立契約者法」は、従来の「職場関係法 (Work Place Relations Act)」から個人事業者を引き離すために導入された。“独立契約者”は、労働者としての法的身分を持たないまま、ほかの事業者にサービスを提供する者である。“独立契約者”は、一般に雇用主に雇用されるのではなく、サービス利用者と仕事内容に限定した労働契約を交わして業務を行う者を指す。この労働契約では、サービス利用者は、1回ごとに取り決めを行い、代金を独立契約者に支払う。大抵の場合、法律が定める最低限の権利、福利厚生等の恩恵は受けられない。また、所得税の税務申告、老齢退職年金への支払い等、雇用主が労働者のために行う諸手続きは、独立契約者が自ら行わなければならない。独立契約者の労働形態は、ほかの事業者と直接取引がある、人材派遣会社等の仲介業者を通して仕事を請け負う、ほかの労働者を雇用している、単独で仕事を請け負っている等多様である。
新職場関係法案では、独立契約者に業務を委託する又は業務から独立契約者を外すことを含め、人又は組織が他者に強要又は脅迫して要求を実現することは違法である。雇用主は、従来の制度で守られていた雇用主の権利が新制度でも存続するか否かに関心を持って見ていた。つまり、雇用主は、労働組合の組合員が自分たちに迫って従来から利用している多くの独立契約者を外して労働者を採用させること憂慮していた。新しく労働者を採用すれば、潜在的な労働組合員となり、将来的には人件費の膨張につながり、雇用主の負担の増大が予想されるからだ。

※出典:
The Parliament of the Commonwealth of Australia, House of Representatives, “Independent Contractors Bill 2006” <http://www.workplace.gov.au/NR/rdonlyres/
616B785D-D915-4872-9A8A-03624CCF3FF3/0/icbill2006em.pdf
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1.3 労使関係法令

1.3.1 労働組合

新職場関係法案では、労働者を代表するあらゆる種類の組織を含め、労働組合は、「労働者組織」と呼ばれる。ある職場で代表を立て、労働協約に交渉を望む労働者の集団等、労働組合以外の組織の設立も可能である。新制度では、従来の職場関係法が労働組合に行っていた厳しい制限が、ある程度緩和される見込みである。新職場関係法案では、組合は、加入する可能性と権利がある労働者のいる職場(従来からの組合員の職場でもある)に立ち入って活動する権利が生じる。ただし、ある産業部門内の企業すべてに同一の労働協約を適用するパターン交渉 (Pattern Bargaining) の禁止、無記名投票による抗議行動の要請等は、新職場関係法案でも維持される。さらに、組合が組合員だけを特定の職場に採用する「クローズドショップ協定」の強行は、従来と変わらず違法である。

1.3.2 労働争議解決システムに関する法令

新制度では、FWAが以下の機関を統合する。

  • オーストラリア労使関係委員会
  • オーストラリア産業登記局
  • オーストラリア公正給料委員会
  • オーストラリア公正給料委員会事務局
  • 労働環境局
  • 労働環境オンブズマン
  • オーストラリア建設部門委員会(2010年2月1日から)

新制度は、従来の法律偏重の敵対的措置を改め、諸手続きに必要な手順を減らすことを目指している。政府によると、中心的課題は、「制度の利用者に公正で、効率性が高く、高品質のサービスを提供すること」である。FWAは、労働裁定の制定、最低賃金規定の制定、協約の承認、不当解雇の申し立てへの対応、善意の労働交渉や労働協約に関する勧告、職場における労働争議の解決に向けた労働者と雇用主への支援等を行う権限がある。
FWAには、フェア・ワーク監督局 (Fair Work Inspectorate) が置かれる。フェア・ワーク監督局は、FWAとは異なる統制の対象を持つが、共通する業務は実用性を考慮して統合される。フェア・ワーク監督局は、雇用主、労働者、両者の代表等が新職場関係法を遵守するように支援し、必要ならば司法制度を通じて法の強制執行も行い、雇用主の敷地内で文書や記録の検分、複写等を行う捜査権限を持つ。これによって、捜査官は初めて国家労働基準、労働裁定、労働協約、賃金規定の違反に対する捜査と強制執行を行えるようになる。
連邦裁判所及び連邦行政裁判所には、フェア・ワーク部 (Fair Work Divisions)が設けられる。フェア・ワーク部は、新職場関係法の下で生じる問題を審問し、柔軟な救済措置を講ずる。裁判所は、単に罰則を課すのではなく、違反状態の改善及び矯正を考慮し、差し止め命令等適切な裁定を行うことができる。現段階では、州及び特別地域レベルの裁判所は、従来の司法権限を維持する。
新制度では、雇用主は正規の労働者機関との交渉を拒否できない。FWAは、労働協約には、紛争解決を行う第3者機関に関する条項及び労働協約が扱う労働者に関する条項が必ず含まれるように監督する。
提案中の新職場関係法案では、連邦裁判所及び連邦行政裁判所は、休暇、解雇予告等の国家労働基準及び賃金、時間外勤務の賃金率、手当等の労働裁定に関連するコモン・ローによる雇用契約を施行する権限を持つ。また、州及び特別地域の裁判所は、これらの問題に関する訴訟を審理する。従来の少額訴訟の取り扱い機関は、連邦裁判所のフェア・ワーク部にまで拡大され、州及び特別地域の裁判所の規定も含め、少額訴訟の最高限度額が、10,000豪ドル※1から20,000豪ドルに引き上げられる。それによって、労働者は、簡単で対応の早い手続で賃金の過少支払いに対する申し立て等、自分の権利を守るための訴訟を行える。少額訴訟の手続きにあたって、フェア・ワーク部は、証拠を重視する正式の規則に縛られず、法的形式や専門的事項に拘らず、問題内容を重視しながら略式のアプローチをとれる。裁判所は、当事者が弁護人をたてることを許す裁量権をもつが、この裁量権が必要とされるケースは多くない。

※1:
1豪ドル=64.4687円(2008年12月31日現在)

1.4 労働保険関係法令

1.4.1 労働者災害補償保険

事故補償保険法には、1) 仕事に関連する傷害及び疾病の予防を目的とした労働安全衛生法、2) 職場で傷害を負った者の保護を目的とした労働者災害補償の2種類があり、州と特別地域の担当機関が施行している。

【労働者災害補償】
雇用主は、労働者の職場での怪我、職務に関連する死亡又は病気の補償のための保険料を支払わなければならない。保険料は、産業分野、州及び特別地域によって異なる。ニュー・サウス・ウェールズ州の保険料の基本率は、賃金の1.77%であるが、その料率は産業分野で異なる。また、ヴィクトリア州の平均料率は1.62%で、オーストラリアで2番目に低い数字となっている。
ニュー・サウス・ウェールズ州の「労災保険料率に関する2008年度の最新行政指導要綱」は、産業分野ごとの安全に関する記録が料率の決定に大きく関係している。ほとんどの州では職場の安全性向上による補償金の支払額減少により、最近の保険料率は引き下げられる傾向にある。
すべての雇用主は、労災保険料を州又は特別地域の当局を通じて支払わなければならない。その保険料は、仕事に起因する怪我及び病気に苦しむ労働者への補償金の支払いに充てられる。通常、労働者は定期的収入のほかに、医療費、リハビリ費用の補償、あるいは回復不能な傷害及び職務遂行能力の損失にあたっては一括給付金を受給できる。

1.4.2 雇用保険

オーストラリアには雇用保険制度はなく、“センターリンク (Centrelink) ”として知られる政府機関を通じて、失業者は直接給付金を受け取る。受給資格のある申請者は、まず全員が初期失業給付を受ける。この初期失業給付には成人向けには再出発給付金 (Newstart Allowance) 、21歳以下の若者あるいは25歳以下でフルタイムの学生向けには若年者給付金 (Youth Allowance) がある。再出発給付金の受給要件は、以下のとおりである。

  • 21歳以上で老齢年金対象年齢以下であること。
  • 失業中であること。
  • 活動契約 (Activity Agreement) を締結する意思があること(通常、求職活動や職業訓練受講に合意することを意味する。)。
  • オーストラリア居住者であり、新規移住者の2年間の待機期間中に該当しないこと。
  • ストライキ中でないこと。
  • 収入及び所有資産の条件を満たしていること(ほかに収入源がある場合、配偶者に所得がある場合、換金可能な資産がある場合等は、政府給付金の一部あるいは全部を受け取れない。)
  • 活動要件を満たすこと(求職活動を続けており、多くの雇用主と面接等を行っているという証拠の提出が求められることがある。)。

給付額は資産、ほかの収入源あるいは配偶者収入等によっても異なる。高収入を得る専門職等は、収入が絶たれた場合に、個々に契約していた所得保障保険を受け取る場合もある。しかし、給与から差し引いてこの種の保険料に充てる雇用条件はオーストラリアでは稀である。

※出典:
Australian Government <http://www.australia.gov.au/> accessed on 30 December 2008.

1.4.3 健康保険

オーストラリアには、「メディケア (Medicare)」といわれる全国規模の公的医療保険制度がある。この制度は、一定以上の所得の各々に1.5%を課税して保険金をまかない、すべての国民に基本的な医療サービスを提供している。この加入義務のある基本的な医療保険以外にも、自主的に加入する個人医療保険制度が多くある。こうした保険に加入することで、各種の付加的医療サービスを受けることができる。健康保険は、雇用形態とは無関係であり、一般的には雇用主が労働者に対して健康保険を雇用契約の一部として提供することはない。

1.4.4 年金

オーストラリアには、低所得者又は財産の少ない人向けの老齢年金制度がある。65歳以上の男女がこの年金を受給できるが、場合によっては女性は63歳から受給開始できる。受給資格は複雑であり、年金受給額は資産や所得に応じて段階的に決められる。
老齢年金に加え、“退職年金 (Superannuation) ”という全員参加の退職保険制度がある。この制度では、雇用主と労働者が、労働者の所得の一部を各種の退職年金基金に拠出する。加入するには、18歳以上(又は、週30時間以上の労働を行う18歳以下)であり、かつ、1月あたり450豪ドル以上の収入がなくてはならない。雇用主は、労働者の所得の9%以上を労働者が希望する基金に拠出しなくてはならない。労働者が追加拠出することもできる。退職年齢に達すると、労働者は退職年金を非課税の通常所得又は一括給付金として受け取れる。ただし、この退職年金に関連する法律は、まだ複雑なままである。

※出典:
Australian Government Australian Taxation Office, Changes to Super <http://www.ato.gov.au/super/pathway.asp?
pc=001/
007/131&mfp=001/007&mnu=37571
> accessed on 30 December 2008.

1.5 職業能力開発法令

オーストラリアには、VET(Vocational Education and Training:職業教育及び訓練)制度を通した技能開発を直接扱う法律がほとんどない。個人がさまざまな産業部門で資格や技能を得ている見習い制度は、新職場関係法案を含む州レベル、連邦レベルの法律、規制、見習い訓練生を雇用する雇用主への奨励金給付等の取り決めに準じて運営されている。
各州は、見習い訓練、研修生訓練の設置及び管理に関する法律と規則がある。これは、見習い訓練生と研修生に関連分野のOJT(On-the Job Training:実地訓練)の機会を与えるためである。これらの法律は、見習い訓練及び研修生訓練を上述の取り決めに沿って策定する方法、取り決めの解除、保留、別の労働者への適用等の方法を規定している。また、これらの法律は、雇用主と見習い訓練生及び研修生の間に生じた紛争の解決方法を扱い、双方の責任範囲の概要を示している。

1.5.1 職業能力開発制度

技能開発は、VET制度における大きな問題であり、教育部門、とりわけ大学が中心になって技能不足問題に取り組んでいる。MCEETYA(Ministerial Council on Education, Employment, Training and Youth Affairs:雇用教育訓練及び青少年問題に関する閣僚諮問委員会)が、教育・訓練部門全体の全国レベルでの提携を進めている。MCEETYAの最新の公式声明では、将来の技能開発の問題を次のように説明している。
「各閣僚は、労働参加と生産性向上の課題に取り組み、技能・労働力開発の改革を達成するためにCOAG※2(Council of Australian Government:オーストラリア政府協議会)の関与が重要であることを確認した。また、各閣僚は、公式認定技能を持たないオーストラリア人への職業資格取得促進の重要性、高技能資格を持つ高能力労働者の比率を高めることの必要性を認識している。
各閣僚は、オーストラリア経済が求める技能人材を供給する上で、VETが決定的に重要であることにも同意した。全国技能訓練制度は、労働者の退職・離職に伴う技能不足の補填、高度な職業資格をもつ労働者の需要増大等複雑な要請に対応できるものにしなければならない。
各閣僚は、また、スキルズ・オーストラリア (Skills Australia) が中核業務として、現在及び将来の技能需要の分析を行い、技能訓練の需要見通を政府に報告する必要性を指摘した。各閣僚は、技能問題に関する情報提供で、技能需要に取り組む際の優先課題を示し、産業部門の人材開発需要を的確に把握するために、スキルズ・オーストラリアが以下の業務を行うべきであるとした。

  • 調査を委託し、関係者に助言し、企業と労働者に訓練を継続するよう告げる。
  • 技能開発への政府の資金投入の優先順位を示して将来の技能需要に関する勧告を行い、訓練部門の改革に関して助言する。
  • 州の関係機関と連携し、州が管轄する分野でも技能需要の優先順位を考慮した対応を浸透させる。

スキルズ・オーストラリアは、COAG、MCVTE(Ministerial Council for Vocational and Technical Education:職業訓練・技術教育に関する閣僚協議会)等各政府機関で横断的に共有する技能需要の優先順位を確定し、技能不足及びそこから生じる生産性低下の問題に対する全国的な取り組みに寄与する。

オーストラリアの職業技能開発は、主に各州及び特別地域政府と連邦政府の公的資金によって行われている。MCVTEはVETを扱っており、連邦政府、各州・特別地域政府のVET担当閣僚によって構成されている。
MCVTEは、2005年11月に設立され、1年に1回以上の会議を行い、戦略的方針、優先順位の決定、計画立案、複数の産業部門にわたる問題(将来の技能需要を考慮した技能・労働力開発等)を含む技能訓練制度全体を統括している。
MCVTEの実務を担うのは、連邦政府、各州及び特別地域政府のVET担当部門の最高責任者によって構成されたNSOC(National Senior Officials Committee:全国高級官僚委員会)である。MCVTEは、NQC(National Quality Council:国家品質協議会)とNISC(National Industry Skills Committee:全国産業技能委員会)から助言を受ける。また、MCVTEは、ブリスベーンのクイーンズランド州教育省内に設けた事務局からも支援を受ける。
現在の技能開発への全国的取り組みに関する基本政策文書は、「Shaping our Future: Australia's National Strategy for VET 2004-2010」である。主な目標は以下のとおりである。

  • 産業界が、世界経済での高業績を支える高技能労働者を有すること。
  • 雇用主と個人がVETの主体となること。
  • 学習と雇用を通じて地域社会と地域を経済的、社会的に強化すること。
  • 勤勉なオーストラリア人が、成長可能な職に就くための技能を習得し、学習重視の風潮が多くの国民に共有されること。

連邦政府は、閣僚レベルの各協議会の下に、技能関連の問題に関して教育職業訓練省に助言を行う7名で構成される顧問団を設けた。この顧問団は、現在の情報を分析し、今後調査と分析が必要になる分野を明確にする。連邦政府によると、顧問団は、将来の技能需要に以下の方法で取り組むことになっている。

  1. 全国の企業と労働者が必要とする技能人材開発を的確に支援するため、独立した立場からの質の高い助言を連邦政府に提供する。
  2. 以下の項目を明確にする。
    • 将来の技能需要を明確にすることによって、経済活動に悪影響が及ぶ前に問題に対処できる。
    • 持続的技能不足を明確にすることによって、処理能力の低さによって生じている現在の問題を克服できる。
    • 持続的技能不足が生じている領域での技能人材開発の障壁を明確にする。
    • 失業、不完全雇用、技能の陳腐化等を防ぐために、労働者の維持、技能向上等を要する産業部門を明確にする。
  3. 2008年からの5年間で訓練件数を630,000件に増やすために政府を支援する。新しい訓練施設は、産業界の需要と助言を重視した全国技能訓練制度に沿って整備され、確実に企業と個人の必要性に応じた訓練内容になるようにする。
    • スキルズ・オーストラリアは、2008年9月にVETプログラムの運営方法に関する問題を多く提起する審議文書を発表した。この文書への意見は10月初旬までに行う必要があった。現時点では、この文書の審議結果に基づく決定は行なわれていない。現在、取り組みが行なわれている主要問題は、現行の助言手続きと規制手続きを簡素化する方法についてである。
※2:
COAGは、重要な行政施策全般に関する政府首脳間の協議機関である。首相、各州・特別地域の首相、地方自治体協会長からなる。
※参考:
Australian Government Department of Education, Employment and Workplace Relations, “Shaping our Future: Australia's National Strategy for VET 2004-2010” <http://www.dest.gov.au/sectors/training_skills/
policy_issues_reviews/key_issues/nts/dap/strategy.htm
>
Australian Government Department of Education, Employment and Workplace Relations, “Skills Australia” <http://www.dest.gov.au/sectors/training_skills/
policy_issues_reviews/key_issues/skillsaustralia/
>
Skills Australia, “Future Governance of the National Vocational Education and Training System” <http://www.skillsaustralia.gov.au/
Skills_Australia_public_papers.htm
>

1.5.2 職業能力評価制度

国家VETプログラムで使われている主要実績尺度 (Key Performance Measures) は、以下のとおりである。

  1. VETへの訓練生の参加と達成の水準
    VETに毎年参加する訓練生の数、認定過程によるものを含めて獲得される資格、能力単位等の数のことである。このデータは、NCVER(National Centre for Vocational Education Research:オーストラリア国立職業教育センター)が、VET修了生や能力単位取得者を対象とて毎年行う標本調査である「訓練生成果調査」を通して収集したものである。
  2. 訓練後に生じる訓練生への成果、VETプログラムに対する訓練生の満足度
    • 訓練終了後、雇用条件の改善が生じ、継続して訓練を進める訓練生、又は訓練によって恩恵を得たと考える訓練生の比率。
    • 自分が受講したVETプログラムに満足している訓練生の比率。
  3. 労働者の技能開発の需要を満たすために、VETを利用する雇用主の比率及びVETの利用に満足している雇用主の比率
    • 自らの労働者の技能開発の需要に対応するために、VETに関心をもち、利用する雇用主の比率。
    • 自らの労働者の技能開発の需要を満たすためにVETを利用し、成果に満足している雇用主の比率。
  4. VETを利用し、VETから良い成果を得るオーストラリア先住民の比率
    • VETを受講するオーストラリア先住民の数、オーストラリア先住民が取得する資格、能力単位の数。
    • 訓練終了後、雇用条件の改善が生じ、継続して訓練を進めるオーストラリア先住民訓練生、又は訓練によって恩恵を得たと考えるオーストラリア先住民訓練生の比率。
    • 自分が受講したVETプログラムに満足しているオーストラリア先住民訓練生の比率。
    • VET受講者の中で、オーストラリア先住民への帰属意識を持つ者の比率。
  5. 地域社会が経済発展と社会発展を支える要素としてVETを捉えている度合い
    現在この項目を測定するための尺度は、開発中である。
  6. オーストラリアのVETプログラムの効率性
    公的資金利用のVETからの生産高に対する政府支出の比率である。資金、VET関連支出等に関する効率性を測定する尺度は、ほかにも開発中の尺度がある。上記の尺度を用いて行われているVETプログラム内での監視と評価とは別に、生産性委員会 (Productivity Commission) が毎年行っている「行政サービス提供状況審査」の「政府全体の評価」の一部として、この分野の監視と評価を行っている。
※出典:
Australian National Training Authority, “Australia’s National Strategy for vocational education and training 2004-2010
<http://www.dest.gov.au/NR/rdonlyres/98206EC7-3B9A-4A58-991F-4F28010BF825/16445/national_strategy.pdf>
ustralian Government Productivity Commission <http://www.pc.gov.au/> accessed on 30 December 2008.

1.6 その他の雇用労働関係法令

1.6.1 職業紹介制度

当時の政権は、1996年に公的な職業紹介サービスを提供していた「連邦雇用サービス (Commonwealth Employment Service)」を民営化し、組織を「ジョブ・ネットワーク (Job Network) 」に移行した。民営化された職業紹介制度では、地域の民間企業に委託して、失業者及び生活保護受給者に職業紹介サービスを提供するようになった。また、政府の福祉機関であるセンターリンクを通じて求人情報を提供するサービスも行っている。センターリンクは、失業者の個別の必要性を評価し、ジョブ・ネットワークの適切な機関に紹介している。個々の求職者は、センターリンク事務所内のコンピュータ端末及び電話を使って求人広告に関する問い合わせができる。
政府は、“Job Search”というオンラインサービスも提供しており、生活保護受給者に限らず、どの求職者も利用できる。政府による職業紹介サービス以外にもオンライン職業紹介サービスがある。これらオンライン職業紹介サービスのいくつかは、インターネットによって取って代わられつつある新聞の求人欄とリンクしている。これら以外にも、雇用主から料金をとって適切な人材を捜すサービスを提供する民間企業も多い。その対象は、ほとんどの場合、上級管理職の欠員補充、パートタイム事務職員の募集等である。従来の職業紹介サービス以外にも、国内労働市場の規制緩和に伴って、人材派遣部門が成長しており、建設業部門、運輸・倉庫業部門を中心に幅広い産業部門で活動している。

※参考:
Job Search <http://jobsearch.gov.au/default.aspx>
My Career <http://mycareer.com.au/?s_rid=
smh%3Atopnav
>
Careerone <http://www.careerone.com.au/>
Seek <http://seek.com.au/>

1.6.2 外国投資法により進出した企業で、海外から招聘される労働者の労働許可条件

雇用主指名永住ビザ (Employer Nomination Scheme) は、オーストラリアの企業が外国人を招いて国内の職に就かせる際に使うものである。企業が国内居住者から特定の職に適した人材を見つけられない場合に、企業は、雇用主指名永住ビザ等のプログラムを使って外国人を採用することができる。これらのプロブラムは、高技能職の求人を対象とする。
オーストラリア企業に指名されてこれらのプログラムを利用する者は、一般に一定レベル以上の英語運用能力が必要である。求人対象者の配偶者、子供等の扶養家族もプログラムの対象になるが、医療検査を要する場合がある。
ほかの関連プログラムで重要なものとして、労働協約プログラムがある。このプログラムでは、業界団体等がDEEWR(Department of Education, Employment and Workplace Relations:連邦教育労働省)と交渉し、国内労働市場で予想される技能人材不足に対応して、海外から一定の労働者を採用することができる。労働協約は、外国人の採用が、オーストラリア国民の雇用機会及び訓練機会を奪うのを防ぐよう考慮されており、これを利用する雇用主や業界団体は、国民の雇用、教育、訓練、就業等の機会を促進する必要がある。

※参考:
Australian Government, Department of Immigration and Citizenship, Employer Sponsored Migration <http://www.immi.gov.au/allforms/booklets/1131.pdf>

1.6.3 海外から招聘される労働者が加入する制度

これらの移住プログラムの利用者が、国内の制度に加入する際には、特別な必要事項はない。


参考文献

  1. Australian Government Australian Taxation Office, Changes to Super <http://www.ato.gov.au/super/pathway.asp?pc=001/
    007/131&mfp=001/007&mnu=37571
    >
  2. Australian Government Productivity Commission <http://www.pc.gov.au/>
  3. Australian Government <http://www.australia.gov.au/>
  4. Australian National Training Authority, “Australia’s National Strategy for vocational education and training 2004-2010 <http://www.dest.gov.au/NR/rdonlyres/98206EC7-3B9A-4A58-991F-4F28010BF825/16445/national_strategy.pdf>
  5. Australian Safety and Compensation Council <http://www.ascc.gov.au/>
  6. The Parliament of the Commonwealth of Australia, House of Representatives, Fair Work Bill 2008, <http://www.workplace.gov.au/NR/rdonlyres/
    F902366C-E559-481D-8C99-19D8DFC431EA
    /0/fwbill2008.pdf
    >

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