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ブラジル

作成年月日:2008年10月30日

雇用労働関係法令

1.1 雇用労働関係法令

ブラジルの労働法は、「1943年5月1日付大統領令 (Decreto Lei) 第5452号」により、現行のCLT (Consolidacao das Leis do Trabalho:統一労働法) の原型が定められた。労働者の影響を強く受けていた当時の大統領により、“労働者保護”の色彩が強い労働法が定められた。ブラジルの労働法の特徴は、労働賃金以外の税負担金が重く、雇用者側にとって過重な労働コストになる等の問題がある。ブラジルの雇用労働関係法令にはヒエラルキーがあり、それを段階的に示すと次のようになる。

【雇用労働関係法令のヒエラルキー】

  1. 憲法 (Constituição)
    憲法は雇用労働関係法令の最高位にあり、労使関係のいろいろな規則が憲法第7条において34項目にわたり示されている。この憲法は1988年10月5日付で発布されたものであるが、その中には本来労働法で定められるべき細則まで盛り込まれている。
  2. CLT
    「大統領令第5452号」により、現行のCLTが定められた。これがブラジルの労働規定の根幹をなしており、922条に及ぶ膨大な法律である。
  3. 労使協約 (Convenção Coletiva 及び Acordo Coletiva)
    • Convenção Coletiva
      企業代表組合 (Sindicato Empresarial)、労働者組合 (Sindicato dos Trabalhadores) 間の団体交渉で制約されたもの。法律と同じ拘束力を持つ。
    • Acordo Coletiva
      労働者組合が特定の企業と団体交渉を行い成約したもの。当事者間において法律と同等の効力を持つ。
  4. 判例 (Jurisprudencia) 又は確定判決(Sumula)
    労働裁判所又は最高裁判所の労働問題に関するいろいろな判例の中で、特に司法権の観点から確立している判例。
  5. 労使契約 (Contrato Individual de Trabalho)
    個人との労働契約であり、労使契約は当事者間の同意でもって成立するが、個人契約書も当事者間では法令と同じ拘束力を持つ。例えば、労働者を採用するにあたり、特別条件として何年間か勤務した場合のボーナス支給、特定期間以上勤務した場合、会社の株式を保有する権利を持つ等がある。そのような条文が個人契約の中に記載されている場合、当事者間には法律と同等の効力が発生する。
  6. 社内規定 (Regulamento Interno)
    特に就業あるいは就労に関する社内規定であり、労使関係に影響する。

1.2 労働基準関係法令

1.2.1 労働契約

【正規雇用のための労働者登録】
会社を設立した場合、「CLT41~48条」により、労働者登録を行うための帳簿 (Registro de Empregado) に登録しなければならない。その登録は、企業が労働者を正式に雇用登録するために必要な帳簿であり、労働局に報告される。従業員登録を怠った場合、第47条に罰金を科すことが定められている。
ブラジルでは労働に従事する場合、労働手帳の取得が義務付けられており、一般労働契約の場合、「労働法第29条」に基づき、労働手帳に会社名、採用年月日、給与、役職等の項目が記載される。一方、企業側の労働者登録帳簿にも同様の事項が記載され、それによって労使関係が立証されることになる。労働者が保有する“労働手帳”は、正規雇用を証明する重要な書類であり、厚生年金、社会福祉関係、医療サービス、年金を受ける際にも重要な記録となる。現在は社会福祉手帳と一緒になり、“労働及び社会福祉手帳”となっている。
ブラジルの統計によると、労働者として正規登録がなされているのは全国8千万人の労働人口の約4割にしか満たない。つまり、ブラジルの労働者の6割がアンダーグランドで労働に従事しており、本来の労働者としての保護を受けておらず、社会福祉制度上の義務も果たしていないことも意味する。
労働手帳への必要記入事項が欠落した場合の罰則については、「CLT第36~39条」に規定されている。労働局の監査によって、問題が発見された場合、労働局から事務手続きについての指摘を受け、罰金を科される場合もある。実際には、労働者登録をしていない場合も多く、未登録で就労している。
【ブラジルの労使関係の定義】
ここで注意しなければならないのは、労働契約がない場合でも労使関係成立とみなされる場合があるということである。ブラジルの労働契約については、「CLT第2及び3条」に次のように定められている。

  • 労働法上の雇用関係
    [第2条:雇用者とは]
    個人又は法人が事業のリスクを負い、人的労働を使用し、報酬を支払い、指導する者。
    [第2条第1項:雇用者に準じる者]
    雇用関係の発生は、自由職業、社会福祉団体、文化スポーツ団体又はその他の営利を目的としない団体において、労働者として雇用する場合も雇用者とみなす。
  • 労働者
    [第3条]
    雇用者に従属し、賃金を受領し、継続的な労務を提供する自然人は被雇用者とみなす。
    [単項]
    雇用の種類及び労働条件に関して、精神的、技能的及び身体的労働に差別をしてはならない。

上記のとおり、労使関係は雇用者に対して個人が労働力を提供する場合、労働契約の有無に関わらず、労使関係が成立する。これを具体的に示すと次のようになる。

表1-1 労使関係が成立する要因(労使契約の有無に関わらず発生)
雇用者側 被雇用者側
  1. 雇用者は事業のリスクを負って仕事する。
  2. 事業を実施するに当たり社員を採用する。
  3. 被雇用者に指示及び指導する。
  4. 労働の対価として報酬を支払う。
  1. 継続性のある労働力の提供。
  2. 特定個人を評価しての雇用。
  3. 雇用者の指示及び指導に従属する。

以上のような条件がそろうと、労使契約の有無に関わらず雇用関係は成立する。また、雇用者は法人もしくは自然人だが、被雇用者側は常に自然人である。アウトソーシングの形態で下請け業者に仕事を依頼するにあたり、労働者派遣組合 (Cooperativa) 、専門サービスを提供する企業と契約した場合は、“法人と法人”の契約になる。その場合、労使契約は発生しないが、内容によってはサービスを受ける側が連帯責任を負う問題が発生する。“法人と法人”間のサービス契約についても仲介業者、派遣会社を通り越し、サービスを受ける法人と実際に役務を提供した個人とが直接労使関係があるとみなされる場合もある。

【労働契約上の時効】
「CLT第11条」には労働契約上の時効に関する規定がある。労働法の時効は農村労働者及び都市労働者に分けて規定し、労使関係から生じた債権に対する訴訟について、次のような時効期間を設けている。

  • 都市労働者に対し5年。ただし、契約消滅後2年を限度とする。
  • 農村労働者に対し契約消滅後2年。

すなわち、都市労働者の場合、労使契約が継続している場合、その労働者が労働裁判に訴える場合は過去5年間にわたって権利を主張できる。また、労働契約が既に解消又は消滅している場合、2年経過すると労働契約に関する事項が発生し、権利がすべて消滅する。しかし、2年以内であれば過去にさかのぼって不服を申し立てることができる。会社を辞める時点では当事者が納得の上で清算したつもりでも、その後不景気でなかなか再就職できず、2年間のうちに金銭的にも余裕がなくなった場合、知人、友人、親戚からの助言等によって1年後に訴訟を起こすというケースが多い。したがって、雇用契約を解消してから2年間は訴訟の可能性があることを認識する必要がある。

1.2.2 解雇規則

労使契約は、期限付き契約及び期限のない契約に分かれている。一般の労働契約は無期限である。これは「CLT第477条以降」に記載されているが、被雇用者を解雇する場合、30日前の事前通告を行う必要がある。さらに第478条には、会社都合で被雇用者を解雇する場合、1年働くことによって補償金として1カ月分の給与を支払うことが記載されている。ただし、これは現在FGTS(Fundo de Garantia por Tempo de Servico:勤続年限保証基金)の退職積立金の40%を企業が支払うことで清算される。FGTSは、企業が毎月、被雇用者の給与の8%相当を被雇用者のFGTS口座に積み立てている。したがって1年間で13カ月分の給与を含め13回支払うと給与の104%になり、1年働いて1カ月相当の退職金が積み立てられる計算になる。会社側が解雇する場合は、このFGTSの積立残高の40%のペナルティを支払わなければならない。
また、労働契約を解消する場合、会社都合、本人の申出であっても休暇及び13カ月給与に対する清算をしなければならない。その場合は、年間の比例計算になる。1年以上就業した労働者が辞める場合、所属の労働組合で労働契約の解約手続きを行うことが第477条に定められている。労働組合の管理の下で清算手続きの完了及び契約解消が確認されるが、後になって労働裁判を起こすケースが多々見られる。

1.2.3 賃金、労働時間、休憩、休日、年次有給休暇、時間外及び休日労働、時間外の割増賃金

【賃金】
CLTに定められる規定は次のとおりである。
[第457条]

  • 賃金は、契約の固定額にとどまらず、雇用者が支払う手数料、歩合、取り決めた賞与、旅行の日当、特別手当を含む。
  • 補助費用、被雇用者が受給する賃金の50%を超えない旅行手当は、賃金に含まれないものとする。

[第458条]
法律のすべての効力に関して、現金での支払のほかに、食料、住居、衣服、その他の現物支給で、企業が契約に従い、あるいは習慣として通常、被雇用者に支給するものも賃金に含まれる。ただし、いかなる場合でもアルコール飲料又は有害な薬品による支給は許されない。
[第459条]
労働の形態にかかわらず、賃金の支払いは1カ月を超える期間で取り決めてはならない。ただし、手数料、歩合及び賞与の場合は、この限りではない。
[単項]
月給で支払う場合は、最も遅い時でも支払日翌月の5営業日までに支払わなければならない。
[第460条]
賃金の取り決めがない場合、又は取り決めた額の証拠がない場合は、労働者は同一企業で同じ労務を行っているものと等しい賃金を受給する権利を有する。
[第461条]
本条の目的に関して、同一価値の労働とは、同一生産性で、同一の技能的完成度で、勤務期間の差が2年を超えないものをいう。
[第462条]
雇用者は、被雇用者の賃金におけるいかなる減額も行ってはならない。ただし、減額が前払い、法律の規定又は団体協定から生じたときは上記の限りではない。
[第463条]
現金による賃金給付は国の現行通貨によって支払われる。
[第464条]
賃金の支払は、被雇用者が署名した受領証と引き換えに行われなくてはならない。被雇用者が非識字者の場合は拇印押捺で行い、それが不可能な場合は第三者への依頼により行われる。
[第465条]
賃金の支払は、職場で業務期間中又は業務後に行われる。
[第466条]
手数料、歩合の支払は、関連の取引が終了した後に要求しなければならない。
[第467条]
雇用者又は被雇用者側の理由による労働契約の解除の場合で、賃金の金額の一部についての争いのある場合は、雇用者は被雇用者に対して争いのない賃金の部分を労働裁判所に出頭の日に支払わなければならない。これを怠る時は、争いのない部分について倍額を支払わなければならない。

【最低賃金】
現行の国家賃金政策により労働者は法律に定める全国一律の最低賃金を受給する権利を有する。この他に自由職業に対する最低賃金、労使協約に基づく職種別最低給料が制定されている。

【労働報酬の定義】
労働報酬の定義について確認しておく必要がある。報酬が仕事に対する対価であれば賃金の一部をなすが、仕事を行うための便宜であれば賃金を構成するとは言えなくなる。例えば、従業員のアパートの管理費用を会社が一部補填している場合、これは従業員に仕事をさせるための間接的報酬であり、仕事に対する待遇の一部とみなされる。
よく問題になるのは報酬又はボーナスの支払である。その場合の見分けるポイントは、それが継続的、習慣的なものであるか否かである。例えば、銀行員は労使契約の中に年2回のボーナスの支払をする規定が含まれている。その場合、労使契約に明記されていれば、賃金に相当する。また、決算ごとに純利益の何%かを労働者に支給し、それが3回以上続く場合、完全に賃金の一部とみなされ、支払は義務となる。
ただし、法令化された労働者に対する企業利益の分配(法律第10101)では、この制度に即しての利益分配は特別扱いになっており、労働法及び税務上、報酬として該当しないという特別条文があり、その法律に基づいた“報酬”の支払であれば問題はなくなる。しかし、例えば企業が労働者の意識向上のため、年間売り上げ1億レアルを目標とし達成した場合、報酬として1%支払う。また、同じようにセールスマンに歩合として売上成果に対する報酬を労働報酬の形で支払うとなると、完全に賃金の一部になる。したがって、労働法上に定められる負担金納付の義務も生じてくる。また、歩合の場合、週休に対しても相当分の追加支払が必要となる。

【労働時間】
労働時間に関しては、「CLT第58~59条」及び憲法においても1週間当たりの労働時間が44時間と規定されている。この週44時間の規定に加え、第58条には原則として1日の労働時間は8時間を超えてはならないという規定がある。つまり1日当たり8時間(昼食時間及び休憩を含まない実働時間)、1週間の労働時間数は44時間までと定められている。ただし、労使協定の中には週最高40時間という規定もあるため、CLTだけでなく、労使協約も考慮しておかなければならない。
週25時間以下の労働時間の場合は、パートタイムの取扱いが適用される(CLT第58条)。原則は1日8時間の労働時間だが、CLT上は第59条に超過勤務が認められており、1日最高2時間と規定している。企業によっては土曜日に出勤している場合があるが、20年前まではブラジルでも土曜日は通常午前8~12時まで仕事していたが、現在土曜日を休日にしているところが多くなった。

【時間外労働及び割増賃金】
超過勤務に対する報酬は通常時間の50%増しで、日曜勤務の場合は100%増しと定められている。さらに労使契約の中で、業種によっては50%増しではなく、80%増しの場合もある。また、裁判所の判決で特定業種について70~80%増を認めた判決もある。

【深夜就業】
深夜就業については、第73条では夜10時~翌朝午前5時までを“深夜就業”と定め、1時間を52分30秒として計算され、最低20%の割増賃金が設定されている。

【残業】
管理職にある者は、残業手当を受ける資格がない。それは “Cargo de Confiança”という管理職の立場にあるためである。例えば、“Gerente”は、会社の役員や経営者を代表する管理職に相当し、社員に対して給与の差が4割以上ある。また、従業員を解雇できる等強い権限を持った役職である。しかし、名目だけの管理職であれば、残業手当はすべて支払われる。
一方、上級の役職には就いていないが実際には役員と同じような権限を持ち、社員の人事決定、罰則の適用、給与も役員並という場合は “Cargo de Confiança”とみなされ、残業の支払いが認められない場合もある。

【休日】
ブラジルの法定休日は年間で12日ある。このうち4日は州、都市、地域ごとの休日で、8日は連邦政府が定めた休日である。州、都市、地域ごとの休日のうち1日は地方自治体の創立記念日、サンパウロの場合は1月25日、残りは宗教祭日である。現在問題となっているのは“カーニバル”である。カーニバルの週の月及び火曜日は法律上は平日であり、水曜日は半日休み、地方によっては1日休みとなっているが、これらは単なる慣習であり、労働法上の休日にカーニバルは入っていない。この3日間の扱いをどうするかという問題が出てくる。ブラジル人労働者をカーニバル中に出勤させることは現実には不可能である。したがって年末に翌年度の就業カレンダーを作り、この日数分の労働時間を通常の就業時間に加算して相殺するスケジュールを作り、労働組合の事前承認を取っておくことが望ましい。実現可能な方法として、11月頃までに翌年度の年間就業プログラムを作成し、事前に従業員に発表し、同意を得た上で労働組合に提出することである。

【週末出勤の場合の相殺】
労働法上は、週末出勤の場合は翌週の1日に代替休日を与えれば問題はない。しかし、実際にはそれが行われるケースは少ない。企業利益の従業員の参加に関する暫定措置令が法律化された際、法律には小売店の日曜営業を認める規定がある。ただし、1カ月のうち、最低1度の週休は必ず日曜日にとるよう定められている。それ以外の場合は、翌週に与えてもよい。つまり、労働法上は翌週に代休を与えることで問題は解消される。

【休憩時間】
休憩時間については「CLT第66条」に規定されている。1日の就業時間は8時間、さらに2時間を追加して最高10時間と規定されている。この場合、翌日の労働開始時間まで最低与えなければならない休憩時間は、11時間と規定されている。しかし、実際には必ずしもこのルールは守られていない。例えば本来就業時間が午後5時までであるが、夜10時まで就業したとする。翌日は、平常通り朝8時から始業した場合、休憩時間は10時間でこれは規定に違反していることになる。この場合、被雇用者に対して支払うべき残業手当を支給していれば、従業員からのクレームは発生しない。しかし、労働局からの監査があった場合、規定上の最低11時間の休息を与えていないため、罰金を科される場合もある。
「CLT第67条」には週休についての規定があり、1週間のうち継続して24時間の休息を与え、また昼食休憩には最低1時間の休憩を与える必要がある。ただし、社内食堂、作業現場に食堂がある場合は、労働局に申請して許可を得ると最低40分に認められる。
労働時間が連続6時間を超える場合は最低1時間の休息時間を与え、6時間未満でも4時間を超える場合は15分間の休憩を与える必要がある。さらに「CLT第72条」に記載されていることは、キーパンチャー、事務計算、帳簿記入等の仕事をした後は10分間の休憩を与える必要がある。労働裁判の判例には、コンピュータ、電話マーケティング等の仕事をする人はイヤホン、コンピュータを使用して仕事している場合、90分ごとに10分間の休息を与えなければならないとの判決が出ている。

【年次有給休暇】
年次有給休暇については「CLT第129条」以降に記載されており、すべての被雇用者は毎年、報酬の損失なく一定の年次有給休暇を享受する権利を有する。1年間就業することによって、5日以内の欠勤の場合は30日、6~14日の欠勤の場合24日、さらに15~23日の場合は18日、24~32日の場合は12日間の有給休暇の権利が発生する。「CLT第130条」にはパ-トタイム労働の場合の休暇について記載されている。
休暇は、12カ月間働いて初めて休暇の権利が発生することになる。規定上は翌12カ月間中に雇用者は、被雇用者に都合のつく時期に休暇を与える。この12カ月が過ぎると、被雇用者の希望で休暇が取得できる。通常は、被雇用者側から休暇の要求時期が打診され、それを尊重して手続きをとることになる。この際、企業側が不当解雇をする場合は、年次休暇及び第2休暇の権利が発生する。
労働者が1年未満で辞める場合、2つの事例が考えられる。1つは労働者の都合で辞める場合で、休暇に対する権利は全くない。もう1つは企業側が解雇する場合である。労働者側から見て不当解雇の場合は按分計算で休暇の権利が出る。例えば、6カ月の就労後に解雇する場合、1年間で30日の休暇の権利があるため、その半分の15日間の休暇の権利が発生する。

  • 休暇の取り方について
    年次有給休暇を取るのは原則年1回で、例外的に2回とされている。労働者が家族の休みに合わせて休暇を与える、学生の場合は学校休暇に合わせる等細かい規定がある。
    集団休暇については「CLT第139条」に規定されている。集団休暇はクリスマスから正月にかけて行う。その時期を利用して会社の整備、レイアウト変更を行うこともある。しかし、集団休暇を取る場合、組合の同意を必要とするため、組合との関係によっては集団休暇が取りにくいこともある。そのため、法律上の集団休暇方式ではなく、あくまでも労働者本人たちの任意で休暇を取ることが多い。

1.2.4 年少者、女性、労働安全衛生、アウトソーシング(委託業務や派遣労働)

【女性労働者の保護】
労働法上、女性に対してさまざまな保護がある。「CLT第372~401条」では女性の不衛生環境での就業及び残業も認めない等がある。ただし、憲法第5条では男女同権の原則があるため、厳密にはこの条文も憲法の平等の原則に反しているという意見もある。しかし、行政令その他では女性、男性の扱いに違いが存在する。
女性に対する保護の中で重要な点は、妊婦に対する保護である。憲法でも規定されているが、妊婦に対する保護が「CLT第391~393条」に規定されている。妊婦に対する保護での留意点は、期限付き及び無期限労働契約においての対応である。
通常、企業での試用期間はCLTでは90日が最高となっている。業種によっては90日が労使協定で45日に短縮されている場合もある。3カ月間の試用期間を結び、最後の1カ月の時点で妊娠していることが証明された場合、妊婦に対する職場保証が発生する。この場合、職場保証及び期限付きの試用期間の契約との関係は、裁判所の判例によると、たとえ妊婦に対しても職場保証されていない。これは、採用された時点で90日の期限付き契約であるため、“期限付き契約”が優先されるからである。無期限の契約の場合、妊婦は出産後120日までの職場保証が発生する。

【年少労働者の保護】
年少労働者についてCLTの規定により次のような条件で認められている。
[第402条]
14~18歳までの労働者を年少労働者という。
[単項]
年少者労働は、専ら家族の者が労働する職場、父母又は後見人の指揮の下にある作業場で、「CLT第404~405条」に従うものの労働を除き、本章の規定によって規制する。
[第404条]
18歳未満の者に対しては、夜間労働を禁止する。“夜間労働”とは、夜22時~翌朝5時の間の労働である。
[第405条]
次のような労働は年少者が行ってはならない。

  • 危険又は不衛生な場所での労働。
  • 年少者にとって有害な場所での労働。

[第408条]
年少労働者の法的責任者は、労働が当該年少者の心身両面に有害であることを条件に、労働契約の消滅を申請することができる。
[第411条]
年少労働者の労働時間は、一般労働時間に関する法規定によって規定される。
[第424条]
年少労働者の学習時間を著しく削減し、健康、身体形成に必要な休息を短縮し、教育を妨げる職から年少者を離職せしめるのは法的責任者、父母又は後見人の義務である。
[第425条]
18歳未満の年少労働者の雇用者は、事業所又は企業において善良な習慣及び公の秩序、並びに労働安全衛生の規則を遵守し、留意しなければならない。
[第427条]
企業又は事業所で年少労働者を雇用している雇用者は、通学に必要な時間を年少労働者に与えなくてはならない。

【労働安全衛生】
労働環境の安全、衛生及び医療に関する問題は、「CLT第162~164条」に規定されている。ここでは企業の業務によって、労働安全に関する専門家又は労働関係の専門医を雇う必要が規定されている。
企業と最も関係が深いのは「CLT第164条」のCIPA(Comissao Interna de Prevenção de Acidente do Trabalho:安全委員会)に関する規定である。CIPAの場合は、被雇用者代表と雇用者代表とで構成される安全委員会であるが、被雇用者代表は任期が1年で、その後1年間は一時的職場保証が発生する。組合運動が激しい時は、労働者には1年間の職場保証があるため、CIPAのメンバーを通じて組合側が企業に圧力をかけることがよくあった。
また、安全医療に関して災害防止のための防具の提供について「CLT第166条」に規定されている。この防具の問題、「CLT第168条」で規定されている採用時の健康診断書の提出、さらに職種によっては6カ月ごとの難聴に関する検査等の細則もある。
防具の問題、入社時の健康診断書の提出の案件は労働裁判、特に労働災害、職業病に関わる労働裁判に大きな影響を持つため、注意を払う必要がある。労災を防ぐための防具については、単に防具を従業員に提供するのみではなく、企業がその使用を徹底させなければならない。事故が発生した場合、管理不十分として雇用者側が責任を問われるケースがある。また、入社時の健康診断書の提出の重要性は、入社時点で既にあった病気か、又は入社後、就業によって発病したものなのかを裏付けるデータとして非常に重要である。

1.2.5 就業規則、労働協約

【団体労使協定】
毎年1回、ブラジルでは賃金基準を引き上げる時期がある。そこでの交渉の結果、協約ができ、 “Sindicato Patronal” 、 “Sindicato Profissional”という組合同士の協定書を作成する。団体交渉を行う時期は業種によって異なる。例えば化学工業関係、繊維は毎年11月で、銀行は9月である。またこれと同じように1企業、複数の企業、労働者組合が直接交渉を行い成立すると、Acordo Coletivoという名称で法律的には団体協約と同じ効力のある書類が作成される。団体労使協約については、CLTにおいて次のとおりに規定されている。

  • 団体労使協約
    [第611条]
    団体労働協約は、規範的性格の合意であって、これにより、2又は3以上の産業、職業の部門代表組合が当該代表範囲において労働の個人的関係に関して、適用されるべき労働条件を定めるものである。
    • 職業部門代表組合は、1又は2以上の対応する経済的職種の企業と団体協定を結ぶことができる。この協定は、協定企業の範囲でその労働関係に適用されるべき労働条件を定めるものである。
    • 産業別又は職業別代表組合の連合若しくは総連合(連合を欠く場合)、組合組織化はされていないが、これら団体に拘束された部門の関係を規制するため、その代表の範囲で、団体労働協約を締結することができる。
    [第624条]
    公共機関又は政府官庁の決定に従う料金、価格の引き上げを決定する賃金の増額又は調整の条項の効力は、これら公共機関は官庁の事前審査、料金又は価格の高騰の可能性及びその高騰の価額に関する明白な宣言に依存するものとする。
  • 特定企業と労組の協約
    [第611条第1項]
    職業部門代表組合は、1又は2以上の対応する経済的職種の企業と団体協定を結ぶことができる。この協定は、協定企業の範囲で、その労働関係に適用されるべき労働条件を定めるものである。

1.2.6 その他

【労働条件の変更】
1988年の憲法制定以降、組合の重要性が注目され、ほとんどのCLT上の変更及び規定は、団体交渉、特に組合の参加が必要条件になっている。組合との関係は“対立”ということではなく、“対等な立場で”話し合える雰囲気を作る必要がある。その理由は、いろいろな意味で組合の同意を得なければ就業規定の変更ができないためである。また、原則として給料は、一旦規定すると下げることができない。しかし、就業時間、その他の変更は憲法上、給料も含めて労使協約がある場合は減給も可能である。つまり、現行の労働法の一部、特に就業時間、就業条件の変更について、原則として労働者にとって不利な変更は、労働法上は無効とみなされている。しかし、1988年憲法以降は、労働者と労働組合の同意の下に行われた変更であれば、変更を認めるということになっている。したがって、労働組合との関係は非常に重要である。

【労働者の国内化規定】
CLTに被雇用者の3分の2(給与面から規定)はブラジル人で構成されていなければならない規定が「CLT第352条及び第359条」にある。しかし、これは憲法第5条及び第5条第13項に規定されるブラジル人及びブラジルに居住する外国人に対する平等の原則に反するとの理由から無効であるとの法廷論争がある。労働管理局は、本法律、政令に基づき行政管理を行っているが、反対意見があるにも関わらず、管理局からはいろいろな指摘がある。ブラジルでは、ブラジルに在住する外国人もブラジル人も全く同じ権利が憲法5条の中で保証されている。例えば、ブラジルでは外国人が社会保険院(INSS:Instituto. Nacional de Seguro Social)に年金を支払っている場合、事故で死亡した場合でも遺族に対して額面の50%が支給される。

  • CLTに定められる規定
    [第352条]
    特許による公共事業を行うもの、工業又は商業活動を行う個人又は団体の企業で3人以上の被雇用者で構成されるものは、その人事においては、本章に規定する以上のブラジル人の割合を保持しなくてはならない。工業又は商業活動の一般的名称には、労働省令に定める活動のほか、下記において行われるものが含まれる。
    • 一般工業事業所。
    • 通信、陸上、海上、河川、湖沼及び航空輸送の業務。
    • ガレージ、修理工場、自動車給油所及び馬屋。
    • 水産業。
    • 商業事業所。
    • 一般事務所。
    • 銀行事業所又は団体経済、保険業及び投資業の事業所。
    • ジャーナリズム、広告及び放送事業所。
    • 薬店、薬局。
    • 理髪店、美容院。
    • 大衆娯楽施設(演劇参加者を除く)及びスポーツ・クラブ
    • ホテル、レストラン、バール及び同種のもの。
    • 病院及び理学療法施設で有料のもの。ただし、宗教的誓願によって労働する者を除く。
    • 鉱業。
    • 独立団体、公社、官民混合会社及びその他の直接又は間接行政機関でその人事にCLTの規制する労働者を有するもの。
    [第359条]
    いかなる企業も外国人が正規に記入している身分証明書を呈示しない限り、業務に外国人を雇用してはならない。
    [単項]
    企業は、労働者登録帳簿に関連の資料及び当該身分証明書の番号を記録しなくてはならない。

【個別労働契約(Contrato Individual)】
「CLT第442~456条」には個別労働契約に関する規定があり、成文化された書類の有無に関わらず、「CLT第2条及び第3条」の条件が整えば雇用関係が成立したものと見なされることが「CLT第442条」に規定されている。従って、成文化された労働契約書がなくても証人あるいは就労していた事実関係を立証できれば、雇用関係に関わるいろいろな権利の申し出が可能である。労働者登録帳簿に記載がなく、労働契約書がない場合でも雇用関係の事実を基に意義を申し出ることが多々ある。
この個別労働契約の中で、特記される点がいくつかある。1つは期限付き労働契約書についてで、「CLT第445条」の中に最長2年間を超えてはならないという条文がある。外国人労働者が仕事のためにブラジルに入国する場合、入国ビザを取得しなければならない。ビザには永住を目的とした“永住ビザ”、その他に就労を目的とした“一時滞在ビザ”がある。後者の就労ビザの基になるのが労働契約で、その労働契約書の期限が2年となっているため一時滞在ビザの期限は2年間で、1回の延長によって計4年間のブラジル滞在というのが一般的である。したがって、期限付き労働契約は最長4年が可能である。期限付きの労働契約は1回のみの延長が可能であって、それ以外は無期限の労働契約に切り替えなければならない。
期限付きの労働契約に関して、試用期間の労働契約は原則として90日を超えてはならない。ただし、労使協定で90日が45日又は30日に短縮されている場合があるため、業界によっては労使協定の内容を核にする必要がある。

【下請け制度:労働者組合制度“Cooperativa”】
「CLT第442条」の中の労働者組合制度について、いかなる業界の組合でも組合員と組合との関係には雇用関係は有り得ない、さらに組合を経由してサービスを受ける側との関係においても雇用関係は成立し得ないという条文が1994年の法令8949号で追加されている。
労働組合を通じてのコストは保証負担金 (INSS) 、その他の付帯金が20%かかる。その場合、従業員として雇った場合の間接コストが100%に対して20%程度で済む。したがって、金銭面では非常に安いコストになるとの観点からこの労働組合を利用して仕事を行っている企業も多い。サービスを受ける企業に対してサービスを供給するのが労働組合、それを構成するのが組合員だが、「CLT第442条単項」では労働組合と組合員の間には雇用関係がないことが明記されている。注意が必要なのは、内容によっては直接、組合員とサービスを受ける側との雇用関係が成立するリスクがあることである。

【労働契約の変更について】
労働契約の条件変更は原則として労働者の同意がなければ有り得ない、また同意が得られた場合でも労働者の利益を損なうような変更は無効であることが「CLT第468条」に規定されている。これはブラジルCLTの労働者保護の象徴的な条項で、全く融通性がない。条件変更する場合の手段として考えられることは、労組を中に入れて問題解決する方法しかない。

【労働者の利益参加】
労働者の企業利益又は成果に対する参加権については、「2000年12月19日付法律10101号」によって法制化された。1946年の憲法においても定めはあったが、1994年までは具体的な細則や法令化が行われていなかった。1994年末になって当時の政権の末期に暫定令として国会に上程され、その後6年半にわたり同暫定令の再公示が繰り返されて、2000年の12月に法律化された。
この法律の内容は、企業の当期利益に対して、労働者の利益参加を認めるものである。配分については、労使双方が話し合い、いろいろな規定が設定される形になっている。
その話し合いには2つあり、第1は被雇用者代表、企業代表及び組合代表の三者会談で決める形式である。第2は企業組合と労働者組合の協約に利益参加の規定を盛り込むという方式がある。禁止条項としては、利益参加の対象期間は、6カ月間を下回ることは認めらない。さらに同法律の3条に記載されている重要な点は、利益参加の名目での支払いに対しては、給与に対して付随する負担金の納入義務、休暇、13カ月給与の計算対象にはならないことである。
また、利益分配を3回以上継続した場合、一種の既得権になるという問題があったが、この利益参加による法令に基づいた支払いであることを明らかにしておけば、その問題は解消できる。したがって、この方式を適用することにより給料で最低水準を保証した上、利益参加で企業利益を従業員に還元補充することが可能になってくる。給与に付随する納入金、労働法上の権利に波及する問題が避けられる意味でも企業は検討する価値はある。

【労働法上の名誉毀損】
最近の労働訴訟の中で非常に増えてきている問題が名誉棄損である。1988年憲法以前、名誉棄損は物質的、有形の損害が中心であり、精神的被害に関する問題は数字的に把握できないという理由からほとんど顧みられなかった。ところが、1988年憲法制定以降、従来の判例に基づき、労働裁判でも雇用者側に過失があった場合、単なる物質的損失のほかに、精神的被害を償う意味で賠償金を請求できる条文がある。これは、1988年憲法に謳われ、労働者差別、名誉毀損等の問題が労働裁判でも取り上げられるようになってきた。代表的なものがマスコミ等で注目されるセクシュアル・ハラスメントだが、それだけでなく、会社都合で解雇した場合の名誉毀損、精神的被害、苦痛を与えた等の理由により損害賠償の対象になる。当初この問題は民事裁判所で取り扱われていたが、最高裁の判断により労働関係の名誉毀損は労働裁判所の管轄となった。ブラジルの労働裁判は労働者保護が強い傾向があり、この問題について雇用主側は十分気を付ける必要がある。

1.3 労使関係法令

1.3.1 労働組合

労働組合に関する規定は「CLT第511~569条」に定められており、労働者組合及び雇用者組合(企業組合)があり、それぞれが経済的条件を擁護するため組織化している。労働者側の組合が職種別に作られているのに対し、企業組合は産業別に組織されている。例えば、機械金属労働組合は機械工場の労働者組合であり、同様に銀行員組合も組織されている。組合の制度として憲法上、同一地域に複数の組合を作ることは禁止されている。したがって、日本のような企業内組合はブラジルでは認められていない。例えば、サンパウロ市に特定職種の組合は1つしか認められていないが、同じ金属機械分野でも工作機械、自動車関係、農業機械、精密機械等範囲が非常に広く、内容は大きく異なる。
組合は、労働者組合と企業組合が存在するが、これらの上部団体は、州単位としては連盟、全国レベルでは連合である。FIESP(Federação das Indústrias:サンパウロ州工業連盟)は、サンパウロ州の企業組合である。国レベルとしてはリオにあるCNI(Confederação Nacional de Industrias:全国工業連盟)である。労働組合の資金源として、組合に対する納入金があるが、これは憲法第146~149条に基づく税金である。企業の場合は資本金に比例した組合納入金が定められており、従業員の場合は3月の給与から1日相当分の納入金を差し引き、4月にそれぞれが所属する組合に納める。

1.3.2 労働争議解決システムに関する法令

【労働裁判所】
ブラジルの司法権は、STF(Supremo Tribunal Federal:最高裁判所)があり、その下にTST(Tribunal Superior do Trabalho:高等労働裁判所)がある。高等裁判所には、案件に応じて労働裁判所、選挙裁判所、軍事裁判所がある。
労働裁判所については、TSTの下に地方労働裁判所がある。サンパウロ市の場合は、第二管轄裁判所があり、さらにこの下に100カ所程の第一審が持ち込まれる裁判所がある。労働者側から訴訟を受けると、それに対して企業側が反論を申し出る。第一審の判決が出ても、両者のいずれかは第二審へ上訴できる。ブラジルの制度は “Dupla Grau” と言い、第一審、第二審と2回にわたって審理される。第一審の判決が上訴され、第二審で確定して始めて、判決が執行される。したがって、ある意味、第一審判決は仮処分的性格がある。第二審の判決で、地方労働裁判所の判例に相反するようなものがある場合、高等労働裁判所へ上訴することができる。しかし、上訴した場合でも第二審の判決に基づき、有利な判決を受けた方がそれを行使することができる。第三審への上訴は、あくまで内容の再審査という意味で、判決文の仮執行は、第二審判決によって行われる。
TSTまで行く事例は、連邦法令の条文に反するような判決文になっている場合、上訴できる。さらに高等裁の判決が憲法に反する場合、最高裁に上訴できる。しかし、大半が第一審、第二審で終わる。サンパウロの場合、第一審の結論が出るまで2~3年、第二審が約1年であり、結論が出るまで約3~4年かかる計算になる。この第二審で確定判決が出ると、判決執行に関して “Liquidação” という清算手続きに入る。これもすぐに支払いが始まるわけではなく、プロセスが長引き、案件によっては5~6年かかる場合もある。そのため、弁護士費用、その他の費用で第一審の結論が出た時点で和解し、請求額の60%程度の和解に持ち込むこと、分割払いにする等で早めに決着をつけることになる。企業は弁護士に任せる場合が多いが、内容によっては直接相手と話し合って解決したほうがコストを抑えられ、相手も交渉に応じることが少なくない。
順序としては、原告が訴えると裁判所から被告に通告が来る。通告書には原告の申請書のコピーが添付されてあり、申請書を受け取ってから会社側は具体的に事実関係の把握及び申し出の正当性を確認して、弁護士とともにに反論書を作成するのが一般的である。
また、特定人物が過去に労働裁判を起こしているか確認する方法としては、労働裁判所の “Cartório de Distribuição” 、又は “Secretária” という事務局で、証明書の申請をすれば確認できる。ただし、地域ごとに裁判管轄区域が違うため、一カ所でブラジル全土における過去の労働訴訟が確認できるというわけではない。また、労働者採用時に人材会社を通じる場合は、無犯罪証明書、過去の訴訟の前歴証明書を添付させることもできる。また税金についても租税完納証明書、INSSへの納入金の滞納についても申請すれば証明書がもらえる。

【社内事前調停委員会】
ブラジルでは年間200万件に上る労働裁判があるが、その大半は訴訟金額が小額のものである。そこで労働裁判所の効率化を図るため、社内事前調停委員会 (Comissão de Conciliação Prévia) というものを法制化した。この法律は2000年1月12日付9958号であり、裁判所に持ち込む前に労働者代表と雇用者代表で構成される委員会で事前に調停を行い、問題の解決を図るものである。このメンバーは最低2名、最高10名で構成されている。これは企業ごとに委員会を設立してもよいし、組合を基にした委員会を設立してもよい。調停が成立した場合、その調停内容は司法裁判の判決と同じ拘束力を持つ。反対に調停が合意に至らなかった場合は、その事実関係を書類でまとめ、それに基づき労働裁判を申請することができる。さらにこの委員会について組合も企業もまだ本当に真剣に考えていないことも指摘できる。労働法に関わるトラブルは当事者同士が話し合って解決するということを優先しているのがこの法律だが、その具体的処置を進める企業も組合もまだ動きが鈍い。

【簡易裁判制度】
Procedimento Sumaríssimoという簡易裁判制度が2000年1月12日付法律第9957号で制定され、訴訟金額が最低給与の40倍(6,000レアル程度)までの案件は、簡易裁判制度に申請できる。この裁判制度のメリットは、裁判が迅速で普通は判決文の執行まで5~6年かかるのが、15日以内に第一審判決が出るというものである。ただし、規定上は15日だが、実際には数カ月間を要している。

【労働裁判における手続き】
労働裁判の具体的手続きについては、「CLT第763~909条」に訴訟手続法が定められている。本条文は、弁護士、法学者の専門家が研究する内容だが、企業側が実際に訴訟の当事者である場合、また、手続き上に疑問がある場合、第763条以降を参照することが必要となる。

1.4 労働保険関係法令

【労働者災害補償保険、雇用保険、健康保険、年金に関連する社会保険制度】
ブラジルにはINSSが管理する社会保険制度があり、国民健康保険、雇用保険、労災保険及び老齢年金、家族手当等が統合した形で制度化されている。社会保険は法人及び個人の負担により、NISSに納入される。負担額は被雇用者の場合は、給与に応じて8~11%、雇用者側は支給給与額の総額に対して20.0~22.5%。自営業者は政府が設定する基礎給与額に対して20%の負担率で納入する。
老齢年金の支給は、保険料の納付期間が男性の場合35年間、女性の場合は30年間と定められている。年齢による規定では、男性65歳、女性60歳に達することを条件として支給される。公務員の退職年金は、最後に受領した賃金額が保証されているため、年金財政を圧迫する原因となっている。
そのほかに障害、疾病によって労働が継続不能になった場合も支給対象となる。疾病及び労災の場合、社会保障制度上、支給される手当は離職の後16日目から開始される。失業保険は、3~5回の分割払いにより、労働省が定める補償額が支払われる。妊婦に対しては、企業から出産休暇中(120日間)出産給与が支払われ、企業は社会保障財源から償還を受ける。妊婦は出産後5カ月まで雇用保障があり、この雇用保障期間はさらに団体協約により3カ月間延長される。

【勤続年限保証基金(FGTS)】
FGTSは、憲法第7条第3項に労働者の権利として、社会保障及びCLT上、労働者の権利を保護するために定められている。本制度は、雇用者側である企業に労働者のため退職手当を積み立てることを義務付けている。基本的には労働者が退職する場合、退職金として支給する制度であるが、退職金のほかにも住宅購入、失業等、規定に基づいた名義人の必要資金と認められる場合、支給することができる。
企業はFGTSとして、被雇用者の月給の8.5%に当たる金額をFGTS口座に積み立てなければならない。また、被雇用者が正当な事由なく、解雇された場合、雇用者は当該積立金に加えて40%上乗せして支払わなければならない。

1.5 職業能力開発法令

1.5.1 職業能力開発制度

労働法上、雇用者は被雇用者の一定比率の人数を企業見習生として雇用し、彼らをSENAI(工業実習訓練サービス)又はSENAC(商業実習訓練サービス)において職業教育を受けさせるという教育訓練制度がある。本制度は若年労働者の職業訓練制度の一環として定められているが、組織及び設備が整備されていない場合が多く、監督の不行き届きもあり、本来の目的を果たしていないのが現状である。雇用者は、被雇用者の教育、訓練を普及するため、次のような名目で、全被雇用者の給与総額から一定割合で支払う義務がある。

  • SESI(工業社会サービス)及びSESC(商業社会サービス)
    商工業に関する種々の講習を開催し、教育指導、文化、スポーツ、娯楽等の活動を行う。企業は被雇用者の給与総額の1.5%相当を負担する。
  • SENAI及びSENAC
    工業商業の教育機関であり、雇用者は被雇用者の給与総額の1%相当を負担する。
  • 教育給
    教育を普及する目的で雇用者は被雇用者の給与総額の2.5%相当を負担する。

上記とは別に、企業研修制度がある。研修生は中等及び高等教育、その他の職業養成機関に通学している学生を企業が研修生として受け入れる制度である。学生及び企業は約束の文書を取り交わし、教育機関が仲裁する。本制度には雇用関係はないが、一般に研修が同企業に就職するための見習い期間としての役割を果たしており、研修終了後、雇用契約を成立させる場合も多い。

1.5.2 職業能力評価制度

調査中

1.6 その他の雇用労働関係法令

1.6.1 職業紹介制度

調査中

1.6.2 外国投資法により進出した企業で、海外から招聘され就労するものの労働許可条件

【外国人の就労ビザの取得】
ブラジル現地法人を設立した後、日本人が出向する形をとることが一般的である。その場合、ブラジル政府から労働ビザを取得しなければならない。労働を目的としたブラジルの入国ビザを取得するためには原則として以下の3種類がある。

  1. 商用ビザ
    商取引及び交渉のために短期滞在をする場合に利用する(期間は最長90日間で、1回のみの延長可能である)。
  2. 業務ビザ
    業務ビザは、技術者等がブラジルの受入れ工場等で技術指導を行う場合の短期の労働ビザ(期間は最長2年間で、1回のみの延長可能である)である。なお、日本からブラジル現地法人へ指導者が赴く場合、最近は“業務ビザ”に加えて、“技術支援ビザ”と呼ばれる90日間と1年間のビザが認められている。
  3. 永住ビザ
    永住ビザ取得には、以下の2種類の方法がある。
    1. 個人の資本でブラジルに会社を設立し、1人につき5万ドルの投資が行われれば、永住ビザ(労働許可証)を取得することができる。このビザは個人に対してブラジル当局が発給するビザであり、法人に対して発行される永住ビザ証枠とは異なる。
    2. 外国の法人がブラジルで現地企業を設立し、その経営に外国人を赴任させる場合、1名につき20万米ドルの投資金によって永住ビザが発給される。ただし、5年後に更新手続が必要である。なお、会社経営管理者として永住ビザを申請する場合、出資者会の議事録を作成の上、候補者を事前に指名する必要がある。

一連の手続開始から会社設立及びビザ取得までの期間は、書類上に不備がなければ、通常3~6カ月間である。査証手続に関しては、当事者として要点、手続のプロセスを理解しておくことは重要ではあるが、査証代行業者、旅行代理店、弁護士事務所等、日本とブラジルにそれぞれ連絡事務所を構えている経験豊富な業者がいくつかあるので、実際の作業については業者を利用することが一般的である。

1.6.3 海外から招聘され就労するものの加入義務ある制度

調査中


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