職業訓練は何歳まで通える?注意点や活用すべき制度についても紹介

キャリア
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長年の会社員生活、お疲れ様でした。
「定年を迎えたけれど、まだまだ元気だ。社会とのつながりを持ち続けたい」
「でも、この年齢から新しい仕事を探すのは難しいだろうか…」

そのように感じている方も、少なくないのではないでしょうか。
再就職への意欲はあっても、年齢の壁やスキルの陳腐化に不安を感じ、一歩を踏み出せずにいるかもしれません。

もしあなたが「もう一度働きたい」「新しいスキルを身につけたい」と少しでも思っているなら、「職業訓練」という選択肢を考えてみてはいかがでしょうか。
この記事では、シニア世代のそんなお悩みに応えるため、以下の点を分かりやすく解説します。

  • 職業訓練に年齢制限はあるのか、という疑問への明確な答え
  • 60代、70代からでも挑戦しやすいおすすめの訓練コース
  • 訓練期間中の生活費を支える給付金制度について
  • 実際に訓練を受けて就職するための具体的なコツ

年齢を理由に諦める必要はまったくありません。
この記事が、あなたの新たなキャリアへの扉を開くきっかけになれば幸いです。

【結論】職業訓練に年齢制限は原則なし!

「職業訓練は何歳まで受けられるのだろう?」という疑問をお持ちの方も多いでしょう。
結論から言うと、職業訓練(ハロートレーニング)の受講に、原則として年齢の上限はありません。

年齢を理由に受講を断られることは基本的にないため、60代や70代の方でも安心して挑戦できます。
ただし、一部のコースでは例外的に年齢要件が設けられている場合があるため、その点には注意が必要です。

学びたい意欲があれば誰でも挑戦できる

職業訓練は、再就職やスキルアップを目指すすべての人を国が支援する公的な制度です。
そのため、年齢や性別、これまでの学歴や職歴は問いません。

最も大切なのは「新しいことを学んで、就職したい」というあなたの意欲です。
実際に、多くの訓練コースでは20代の若者から60代、70代のシニア世代まで、幅広い年代の人々が一緒に学んでいます。

一部の訓練コースには年齢要件あり

原則として年齢制限はありませんが、ごく一部のコースでは年齢要件が設けられていることがあります。
これは、訓練内容や就職先の企業の事情によるものです。

年齢要件が設けられることがあるコースの例 理由
企業実習が必須のコース 実習先の企業が若年層の採用を希望している場合があるため。
特定の資格取得を目指すコース 資格によっては、受験資格に年齢制限が設けられている場合があるため。
体力を要するコース(例:一部の介護、建設系) 安全上の配慮から、一定の体力が求められることがあるため。

これらのコースはごく一部であり、多くのコースは年齢不問で応募できます。
興味のある訓練コースが見つかったら、まずはハローワークの窓口で募集要項を詳しく確認することが大切です。

職業訓練で活用できる2つの制度を簡単解説

職業訓練には、大きく分けて「公共職業訓練」と「求職者支援訓練」の2種類があります。
どちらを受講できるかは、「雇用保険(失業手当)を受け取っているかどうか」で決まります。

ご自身がどちらに当てはまるか、下の表で確認してみましょう。

訓練の種類 主な対象者
公共職業訓練 雇用保険(失業手当)を受給している求職者
求職者支援訓練 雇用保険(失業手当)を受給できない求職者

公共職業訓練

公共職業訓練は、主に離職して雇用保険(失業手当)を受給している方が対象です。
失業手当を受け取りながら、再就職に必要なスキルを学ぶことができます。

  • 訓練期間: 3ヶ月〜2年程度と、比較的長期の専門的なコースが多いのが特徴です。
  • 費用: 受講料は無料です。ただし、教科書代や作業着などの実費は自己負担となります。
  • メリット: 失業手当の給付期間が延長されるなどの優遇措置があります。

求職者支援訓練

求職者支援訓練は、雇用保険を受給できない方向けの制度です。
具体的には、以下のような方が対象となります。

  • 65歳以上で離職したため、雇用保険の対象外となった方
  • 自営業を廃業した方や、フリーランスとして働いていた方
  • 長年、専業主婦(夫)だった方
  • 雇用保険の加入期間が足りず、失業手当を受けられない方

この訓練の大きな特徴は、一定の要件を満たせば、訓練期間中の生活費を支援する「給付金」を受けながら無料でスキルを学べる点です。
多くの中高年の方にとっては、こちらの制度が主な選択肢となるでしょう。

職業訓練受講給付金とは?

「訓練を受けている間の生活費が心配…」という方もご安心ください。
求職者支援訓練を受講する方で、一定の要件を満たす場合、「職業訓練受講給付金」が支給されます。
これにより、経済的な心配をせずにスキルアップに集中できます。

給付金には、主に以下の2種類があります。

給付金の種類 内容
職業訓練受講手当 月額 10万円
通所手当 訓練施設への交通費(上限あり)

ただし、この給付金は誰でも受け取れるわけではなく、収入や資産に関する要件を満たす必要があります。

給付金の主な支給要件
– 本人収入が月 8万円以下であること
– 世帯全体の収入が月 25万円以下であること
– 世帯全体の金融資産が 300万円以下であること
– 現在住んでいる所以外に土地・建物を所有していないこと
– 全ての訓練実施日に出席すること(やむを得ない理由を除く)
– 過去 3年以内に、不正に特定の給付金を受給していないこと

これらの要件は厳格に審査されます。
ご自身が対象となるかどうか、詳細は必ずハローワークの窓口で確認してください。

高齢層の方におすすめの職業訓練コース6選

「自分にはどんなコースが合っているのだろう?」と悩む方のために、シニア世代の体力や経験、そして再就職のしやすさを考慮したおすすめのコースを6つご紹介します。

おすすめコース 特徴 こんな人におすすめ
1. パソコンスキル 事務職の基本。Word、Excelなどを学ぶ。 事務職希望の方、在宅ワークに興味がある方
2. ビル設備管理 年齢不問の求人が多く、安定した需要がある。 安定して長く働きたい方、コツコツ作業が得意な方
3. 介護職員初任者研修 社会貢献度が高く、未経験から挑戦できる。 人の役に立ちたい方、人生経験を活かしたい方
4. 医療事務 体力的な負担が少なく、全国に求人がある。 安定した環境で働きたい方、座り仕事が希望の方
5. 造園・グリーンメンテナンス 趣味を仕事にできる。自分のペースで働きやすい。 植物や自然が好きな方、体を動かすのが好きな方
6. 清掃・ハウスクリーニング プロの技術を学べる。短時間勤務も可能。 未経験から始めたい方、整理整頓が得意な方

1. パソコンスキル

今やどんな仕事でもパソコンスキルは必須です。
事務職を目指す方はもちろん、販売や軽作業の仕事でも、簡単なデータ入力や報告書作成が求められることがあります。

このコースでは、Wordでの文書作成やExcelでの表計算など、仕事ですぐに役立つ基本操作を基礎から学べます。
PC操作に苦手意識がある方でも、講師が丁寧に教えてくれるので安心です。

2. ビル設備管理

オフィスビルや商業施設、マンションなどの設備を管理する仕事です。
ボイラーや空調、電気設備の点検やメンテナンスを行います。

この業界は年齢不問の求人が多く、定年後の再就職先として非常に人気があります。
訓練では、ボイラー技士や危険物取扱者といった関連資格の取得も目指せるため、未経験からでも専門性を身につけて安定した仕事に就くことが可能です。

3. 介護職員初任者研修

超高齢社会の日本において、介護サービスの需要はますます高まっています。
介護職員初任者研修は、介護の仕事に就くための入門資格です。

この仕事は、体力も必要ですが、それ以上に利用者とのコミュニケーションや寄り添う気持ちが大切にされます。
あなたの豊かな人生経験そのものが、大きな強みとなるでしょう。
「人の役に立ちたい」という思いを形にできる、やりがいの大きな仕事です。

4. 医療事務

病院やクリニックの窓口で、受付や会計、診療報酬の請求業務などを行う仕事です。
景気に左右されにくく、全国どこでも求人が見つかりやすい安定した職種と言えます。

体力的な負担が少なく、座って行う業務が中心のため、長く働き続けたい方にぴったりです。
専門知識が必要ですが、訓練でしっかりと基礎を学ぶことができます。

5. 造園・グリーンメンテナンス

庭園や公園、街路樹などの手入れを行う仕事です。
植物が好き、ガーデニングが趣味という方には、楽しみながらスキルを身につけられる絶好のコースです。

体を動かす仕事ですが、自分のペースで進められる作業も多くあります。
訓練で専門知識を身につければ、地域のシルバー人材センターに登録して活躍の場を広げることも可能です。

6. 清掃・ハウスクリーニング

オフィスや商業施設、個人宅などを清掃する仕事です。
「掃除なら誰でもできる」と思われがちですが、プロは専用の機材や洗剤を使いこなし、効率よく高い品質のサービスを提供します。

訓練では、そうしたプロの技術を学ぶことができます。
短時間勤務の求人も多く、体力に合わせて働きやすいのが魅力です。

高齢層でも職業訓練校で就職成功するためのコツ

「制度のことは分かったけれど、本当に自分にもできるだろうか…」
そんな不安を解消するために、シニア世代が訓練を成功させ、再就職につなげるためのコツをお伝えします。

  • 若い人ばかりのクラスに馴染めるか心配
  • 訓練後の就職が本当にできるのか不安

このような心配は無用です。
いくつかのポイントを押さえれば、きっと充実した訓練生活を送ることができます。

クラスの年齢層は?シニア世代の仲間はいる?

訓練コースによってクラスの年齢層は様々です。
WebデザインやプログラミングといったIT系のコースは比較的若い世代が多い傾向にありますが、心配する必要はありません。

特に、今回ご紹介したパソコンスキルやビル管理、介護といったコースは、20代から70代まで非常に幅広い年代の方が集まります。
同年代の仲間と励まし合いながら学べるのはもちろん、若い世代から刺激を受けたり、逆に人生の先輩として頼られたりすることもあるでしょう。
年齢の垣根を越えた新しい交流が生まれるのも、職業訓練の大きな魅力の一つです。

訓練後の就職は可能?採用に繋げる3つのポイント

訓練後の就職は、ご本人の努力次第で十分に可能です。
採用を勝ち取るためには、以下の3つのポイントを意識しましょう。

  1. これまでの人生経験を「強み」としてアピールする
    企業がシニア世代に期待するのは、長年の社会人経験で培われたコミュニケーション能力や責任感、真面目な勤務態度です。
    訓練で得た新しいスキルだけでなく、「これまで何を経験し、どう貢献できるか」を自分の言葉で伝えましょう。
  2. ハローワークの支援制度を徹底的に活用する
    ハローワークには、高齢者の就職を専門に支援する「生涯現役支援窓口」などが設置されています。
    専門の相談員が、履歴書の書き方から面接対策、求人紹介まで手厚くサポートしてくれます。一人で抱え込まず、積極的に頼りましょう。
  3. 働き方の選択肢を広げる
    正社員だけにこだわらず、パートタイムやアルバイト、契約社員など、柔軟な働き方も視野に入れてみましょう。
    まずは短時間勤務から仕事に復帰し、徐々にペースを掴んでいくという方法もあります。条件を少し広げるだけで、思わぬ良い出会いがあるかもしれません。

受講までの簡単4ステップ|ハローワークでの申し込みから入校までの流れ

「受講してみたい!」と思ったら、さっそく行動に移してみましょう。
申し込みから入校までの大まかな流れは、以下の4ステップです。

ステップ 内容
Step 1 ハローワークで職業相談をする
まずは、お住まいの地域を管轄するハローワークに行き、「職業訓練を受けたい」と相談します。ここで、制度の詳細やあなたに合ったコースについてアドバイスをもらえます。
Step 2 受講したいコースを選び、申し込む
募集中のコース一覧から、希望のコースを選びます。ハローワークの窓口で申込書を受け取り、必要事項を記入して提出します。
Step 3 選考試験を受ける
多くのコースでは、面接や簡単な筆記試験(国語・数学)などの選考が行われます。訓練への意欲を伝えることが最も重要です。
Step 4 合格・入校手続き
選考に合格したら、指定された日時に訓練校で入校手続きを行います。いよいよ訓練生活のスタートです。

職業訓練校に何歳まで通えるのかについてまとめ

この記事では、職業訓練の年齢制限や、シニア世代におすすめの制度・コースについて解説しました。
最後に、大切なポイントを振り返ります。

  • 職業訓練の受講に、原則として年齢制限はありません
  • 雇用保険を受給できない方でも、月10万円の給付金を受けながら学べる制度があります。
  • パソコン、ビル管理、介護など、シニア世代の経験や特性を活かせるコースが多数用意されています。
  • 人生経験を強みにし、支援機関を活用すれば、訓練後の再就職も十分に可能です。

長年の経験は、あなたにとってかけがえのない財産です。
そこに新しいスキルが加われば、キャリアの可能性は無限に広がります。

年齢を理由に「もう遅い」と諦める必要はまったくありません。
まずは小さな一歩として、お近くのハローワークに足を運び、相談することから始めてみてはいかがでしょうか。